タイトル:【El改革】Accidentマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/02/13 03:43

●オープニング本文


「やぁ、ユイリー。調子はどうだい?」
 ベルディット=カミリア(gz0016)はリンゴやバナナなどの入った籠を持ってユイリー・ソノヴァビッチの寝ている救護テントへと尋ねる。
「あ‥‥ベルディットさん」
「今は寝てな。しばらくたまった疲れが来たんだよ」
 起き上がろうとしたユイリーをベルディットは寝かせなおした。
 シカゴの演説で倒れてから、ユイリーの調子は芳しくない。
「でも、まだやらなければいけないことが‥‥」
「あんた一人で抱え込むんじゃないよ。国として動くにはもうちょい人手がいるもんさ」
「すみません‥‥」
 肩を叩くベルディットにユイリーは俯き気味に答えた。
「後はあんたの事務所ももうちょいましな形にしないとね。傭兵達の買い付け専門書の置き場がありゃしないよ」
「予算は学校建設を除いても大分集まりました。復興の資材も一杯もらえたようですが‥‥使える人がいませんからね」
 エルドラドに協力してくれることは嬉しいが、正直ユイリーの手に負えないレベルまで状況が進んでいる。
 支援を受けれることは嬉しいのだが、扱いきれないのが現状だ。
「絵本は子供達に配ってきたが、余った分をどこに置くか困ったもんさ」
「学校ができれば図書室も‥‥ですね」
 ユイリーは苦笑する。
 国を動かすという本当の意味での大変さが今のしかかってきていた。
「まずは農業からさね。道具があっても人手がなきゃ余裕のある暮らしもないさ」
「そう‥‥ですね」
「あとはあたいに任せなよ」
 長々とした話を切り上げ、ベルディットはユイリーの頭を撫でて救護テントを後にする。
 エルドラドの大地に照りつける太陽は暑く、これからの厳しい道のりをあらわしているようだった。

●転機
「‥‥たしか、この辺だったね」
 双眼鏡で確認しているとジャングルの中に小屋のようなものをベルディットは見つけ出す。
 UPC軍によるアンドリュー一派の調査が行われる中、一つのアジトらしきものが見つかったとのことでベルディットが直接出向いていた。
「あれは白衣‥‥丁度いい、交渉の余地ありさね」
 ベルディットは小屋から井戸へと向かう白衣の男の後をつけていき、井戸の傍から声をかける。
「おい、あんた。学者か医者かい?」
「専門は農業だが? 何のようだ?」
「丁度いい、エルドラドの土地と研究費弾むから戻ってこないかい?」
 ベルディットが顔を見ると、白衣の男は初老のようだ。
 白髪の混じった髭をさすって考える。
「UPCがわしを追放したのにここで引き込むか‥‥だが、びくびくするのは疲れた。乗ろう」
「交渉成立、そいじゃ。いくよ」
 ベルディットが男の手をとったそのとき、エルドラド軍人がベルディットの姿を見つけた。
「UPC軍の女だ! 博士をつれていくきだぞ!」
 ズダダダンと銃声が響きベルディットと学者の足元の土が爆ぜる。
「逃げるよっ、あんたを殺すわけにはいかないからね。できれば、あいつらも捕まえてエルドラドの国民に戻したいとこだねぇ」
 ベルディットの黒髪が赤くゆらめく炎のように伸びた。
 小脇に男を抱えると赤髪の女豹がジャングルを駆ける。
「農地作業で人呼んでいたから、これで気づいてくれりゃあ御の字かね」
 ジャングルを駆けつつ、ベルディットは照明銃を打ち上げた。

●参加者一覧

ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
赤村 咲(ga1042
30歳・♂・JG
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
佐伽羅 黎紀(ga8601
27歳・♀・AA
春野・若葉(gb4558
18歳・♀・FC

●リプレイ本文

●黄金郷に日が昇る。
「お互いそれなりの体格だから、狭くなっちゃうわね‥‥ごめんね?」
 補助席のナレイン・フェルド(ga0506)が操縦席に座るUNKNOWN(ga4276)に心苦しそうに声をかけた。
「なに、旅は道連れってね」
『前方に照明銃? 誰かいるんですか!』
 隣で飛んでいた赤村 咲(ga1042)が照明銃のような光を見つけたらしく、大きな声で通信しているのが聞こえてくる。
「何があったの?」
『どうやら、ベルディットさんが追いかけられているようですよ。できれば、追いかけてきているエルドラド軍人を捕らえたいとかいっています』
 心配するナレインに咲が答える。
「赤いのも無茶が好きだな、ナレイン。パラシュートをつけてこのまま下へ降りてくれるかい?」
「ええ、わかったわ」
 UNKNOWNの指示を受け、ナレインが荷物を抱えパラシュートと共にコックピットから飛び降りた。
『赤村君。手錠を先に渡しておきますね?』
 すでに覚醒をし、間延びのない口調のラルス・フェルセン(ga5133)が咲へ道具を渡し、ナレインに続き飛び降りる。
『私は現地で下準備してくるから、後は任せたよ』
「そうだな、我々の本当の仕事はそっちだからな‥‥とにかく動くとしよう」
 春野・若葉(gb4558)の言葉にUNKNOWNは囁き返し、帽子を被りなおすと機体をエルドラドの空港へと向けるのだった。

●襲撃のさなか
「ああ、今、ベルディット少尉と合流したよ。敵の数は10、敵はあたし達よりも学者先生の口止めをしたい感じだね」
 ズダダダッと銃弾が弾け飛ぶ中、キョーコ・クルック(ga4770)が無線で仲間へと連絡を取る。
 エルドラドの地図といってもここはジャングルないであり、殆ど役に立たない。
 自分は方位磁石を持っているからまだしも、他のメンバーは大丈夫だろうかと不安にもなっていた。
『広い道に出ると遮蔽物がありませんから、なるべくジャングル内を移動しつつ西の道路へ向かってください』
「了解」
 同じく先行降下してきた佐伽羅 黎紀(ga8601)から無線を受け、キョーコはベルディット=カミリア(gz0016)の方を確認する。
「それじゃあ、走るかね。学者先生は大丈夫かい?」
「年寄りなのだからもう少し休ませてくれると助かるんだが‥‥」
 初老の男が息を整えつつ、見上げると目の前を銃弾がよぎり、地面へと吸い込まれる。
「ごたごた言ってる状況でもないねぇ」
「学者先生は今度はあたしが持つよ」
 呆れるベルディットと共にキョーコが初老の男をお姫様抱っこをして持ち上げた。
「妙な気分じゃの‥‥」
「話していると、舌噛むよ。先生っ!」
 ベルディットと京子が別々の方向へ飛び出し、追っ手を撹乱する。
「学者博士を狙え! 裏切りものには死を!」
「そうは‥‥させません」
 キョーコの方を追ってた兵士へ横から終夜・無月(ga3084)が飛び出し、『豪力発現』を使い、全力で押さえ込んだ。
 くしゃっと音がなり、兵士は動かなくなる。
 『傷つけることも』『痛みを与えることも』なく、能力者としての無月の力は命の灯火を握り潰していた。
「貴様っ! よくもカルロスを!」
 一つの消えた灯火は、それを見ていた同志達への怒りの炎として広がる。
 アサルトライフルが無月を狙うが、その攻撃を無月は盾扇で弾いた。
「このっ、化け物っ! うぉぉぉっ!」
 兵士の一人がアサルトライフルを持って突撃してくる。
「っ‥‥」
 目の前で人をあやめたことを後悔するよりも、無月の体は目の前の殺気に対して動いた。
 盾扇で弾き、押さえようとしたところで兵士は手榴弾のピンを抜いて自爆する。
 ぶちゃっと肉片が飛び散り、無月の顔を汚す。
 押さえたはずの男の服の破片が無月の手に残っていた。
「あっちむいて‥‥ほいっ!」
 呆然とする無月に咲と打ち合わせていた合図が聞こえる。
 合図に少し遅れながらも無月がサングラスをかけるとまばゆい閃光が辺りを覆いつくした。
 
●合流
「5人を確保、2人死亡で、3人は逃走ですか‥‥」
 合流を果たし、状況を確認したラルスは重い表情で呟く。
 銃撃がやんだこともあり、一部の人間はベルディットと共にアジトの調査を行っていた。
「少々、手荒になりますけど‥‥舌をかまないように縛らせてもらいますね」
 黎紀は縄で手を縛りつながれたエルドラド軍人達の口を縛る。
 自決したものがいる限り、こうしなければならないのはつらいことだ。
「あ、UNKNOWNさんが帰ってきたわ」
 ペイント弾で汚れた軍人達を見ていて悲痛な面持ちをしていたナレインが戻ってきた仲間を見つけると元気そうに声を出す。
「缶詰とか携帯粗食による生活をしていた‥‥すでにも抜けの殻だったところを見るとここを捨てたようだ」
 咥え煙草に帽子を被りなおし、UNKNOWNは見てきたものを伝えた。
「あなた以外でアンドリューの方に専門家とかいなかったの?」
 ナレインが学者の男に対して、顔を見つつ聞き出す。
「あのアジトにはわしだけだったな。元々のエルドラドの中枢にいた専門家の多くはアンドリューと共に逃亡しているから、数はもっといるはずだ」
「それならー。そういう方たちも説得して、エルドラドに戻ってもらえると〜いいですねー」
 ハード面ではなく、ソフト面の問題にエルドラドが差し掛かっていることを感じるラルスはそう願うのだった。
 
●説得
「我々をどうするつもりだ!」
「別段、とって喰うわけではない、さ」
 UPC軍の収容所の方へつれて生きたUNKNOWNはつれてきた兵士の縄を解き飲み物を差し出す。
「私は人らしく生きて欲しいだけだ。私には親バグア派、反バグア派等関係ない‥‥戦いなどくだらん」
「そんなものは偽善だ! 貴様ら傭兵の存在がエルドラドを潰してきたことに変わりはない!」
 UNKNOWNの言葉に若い兵士は怒りをあらわにし、コップを叩き食ってかかった。
「たしかにそうさ、あたし達がエルドラドの最後を決めちまったかもしれない。けどさ、リズィーは国民のために私達の前で命を絶ったんだよ。自分のことを気にかけて逃げれない国民のためにさ‥‥」
「嘘だ! お前達が殺したに決まっている! 今日だって仲間を殺したお前達だ。信じるものか!」
 兵士の男は騒ぎ、説得に応じる様子を見せない。
 そこに、様子を見ていた黎紀が一歩進んで兵士と視線を合わせた。
「この国に最初に来た時の理由・理想はなんですか? 銃はこの国で必要? 貴方達が守っているのは何? プライドですか? 違うでしょう? 国民を守るのが軍人ではないのですか?」
 問いかけゆえに答えを兵士は探さなければならない。
 しばらく押し黙り、答えが見つかったかのように顔を黎紀に向けた。
「‥‥今、この地で平等の扱いをされるのなら投降しよう」
「あたいのできる限りであんたらの扱いは保障するさ。ま、エルドラド国民に酷いことをしていたわけじゃないなら、国民にも無事迎えられるだろうさね」
 様子を見守っていたベルディットは兵士に対して、手を伸ばす。
 兵士はしぶしぶといった様子でその手を握った。
「‥‥戦いなどくだらん事は私がすればいい。皆の平和乱す、侮蔑な目向ける者が私の敵だ」
 丸く収まった様子の中、UNKNOWNが兵士に対して帽子を被りなおしながら微笑んだ。
「その上から目線が侮蔑のように感じるものだっているんだ。敵を倒すというのなら、自分で自分の頭を撃てばいい」
 怒りきわまった表情で兵士はUNKNOWNに言葉を吐き捨てるとラルスにつれられて別の部屋の仲間の方へと歩いていく。
「あ、前に買っていたっていうトラクターの搬入は終わったよ。あと、農地整備の呼びかけようのチラシも作ってきたけど‥‥どうしたの?」
 しばらく思い空気が漂う部屋に若葉がチラシをもってやってきた。
「人の感情というものは複雑にできているのだと改めて感慨にふけていたところだよ」
「自分達が結果的にやっちまったこととはいえ‥‥何ともいえない気分だね」
 UNKNOWNとキョーコは静かに答えるが、若葉は何がなんだかといった様子で首をかしげる。
「何でもありませんよ。作業に移りましょう♪ 嫌がるくらい声をかけていきますよ」
 無理に笑顔を作り、黎紀は両手を叩いて重い空気を砕くのだった。

●農地改革
『倒れますよー。気をつけて下さいね〜』
 ラルスが咲から借りたKVに乗って密林の木々を引き抜くいていく。
 以前ならした土地からアマゾン川に沿って広げていた。
「みんなで一緒にやれば、なんだって出来るんだから♪」
 ナレインは汚れないように髪を束ね、自ら裸足になって鍬を持つ。
 そして、ラルス達KV乗りが木々を抜いていった場所から率先して耕した。
「広げるといっても人数から考えても2、3増やすくらいだろう。気合入れすぎないように耕した場所は畝を作ってカットしたサトウキビを丁寧に植えていくんだぞ」
 学者の男がサトウキビをリアカーにつんで引いてきた咲と共に現れる。
「おっ、準備進んでるね。今、子供達とかお爺様達を連れてきたよ」
 都市部の人間は隅の方まで移動する手段も少ないため、徒歩で4時間近く歩くことになるので今回は断念した。
 しかし、元々農家をしていた周辺の人々に手伝いを若葉は頼んできている。
 無論、農家の興味のある人達は今夜中にでもこちらへ付く予定だ。
「これ、サトウキビっていうんだよね。甘くて美味しいよね」
「食べるわけじゃなくて、これを植えて育てるんだ。今の時期だと来年の冬になってしまうけどね。やり方を覚えて春にまた植えればいいさ」
 咲が興味深げにサトウキビを見る子供の頭を撫でて糸目をより細くする。
「これを植えるんだー」
『こっちが〜整いましたよー。ナレインお姉さんが耕したあとにー土を盛り上げてから植えていってくださいね〜』
 カットしたサトウキビを興味深げにみる子供達へラルスが優しく声をかけた。
「よーし、土を盛り上げるのはあたしがやっちゃるよん」
 腕まくりをした若葉はコミュニケーションもかねて、若葉は率先して土の中に入っていく。
 チラシ配りをした都市部では子供はまだしも大人の傭兵に対するイメージの厳しいことを若葉は肌で感じた。
 だからこそ、自分から汚れることで少しでもイメージ転換のきっかけになって欲しいとも思っている。
「よっと。説得できた元エルドラド軍人をつれてきたさね。もう一組いるから、またもう一回くるさ」
 能力者達が合流しだしたころ、ベルディットがジーザリオに兵士達を乗せて現場へときた。
 降りた兵士達はばつが悪そうに何もいえない。
「おお、お前は孫の‥‥」
 ふと、手伝いに来ていた老人が若い兵士一人の顔を見て、幽霊でも見るかのように近づいていった。
「おじい‥‥ちゃん‥‥心配かけてごめんよ」
「よかった。生きて帰ってきてくれただけで、本当によかった」
 偶然にも離れ離れになっていた家族の再会。
 それがきっかけとなり、兵士達は農作業へと合流を果たした。
 総勢5人という少ない人数だが青年や壮年ともいえる人の合流は国民にとっても嬉しい出来事である。
『無理せずに進めていきましょ〜。危ないから子供達は近づいちゃだめですよ』
 感動的な光景を眺め、いっそう気合の入った黎紀が顔や手が汚れることも気にすることなく鍬を振るうのだった。

●黄金郷という場所
「エルドラドの食糧事情は‥‥思ったほど‥‥深刻では‥‥なくなったようですね」
 開拓を手伝ってくれた農家の人から分けてもらったり、川で魚、密林で果物を取ってきた無月は食卓に並ぶものを見て微笑む。
「それは、私たちがいろいろなところに取りにいけてー、運ぶ足があるからじゃないでしょうか〜?」
「そうよね。車を持っている人もいないし、何よりガソリンスタンドとかもないのだから、厳しいわよねぇ」
 ラルスとナレインは別の方面から今回の状況を考えなおしていた。
「そうですね‥‥まだまだ、ですね」
 無月は目の前で息を引き取り、また自決した兵士のことを考えて料理を作る。
 彼らにも食べて欲しかったのだが、その願いは叶わなくなった。
『敵を倒すというのなら、自分で自分の頭を撃てばいい』
 UNKNOWNに対して吐き捨てるように言ったエルドラド軍人の声が頭から消えない。
 彼らにとって自分は敵なのだ。
 国を追い出され、仲間を殺された敵なのだ。
 身内を殺され、バグアを恨む自分に彼を批難することは‥‥できない。
「食事会の準備はどうだ? 水路延長工事はできたが、どうやら私は嫌われているらしい。あの兵士達とは話すこともままならなかったよ」
 UNKNOWNは肩を竦めつつ、調理場へと入ってきた。
 彼は重機の使用法やメンテナンス方法も教えようと思ったが、短い時間での付け焼刃にしかならず元々農家であった御仁に任せることにした。
「食事会のときはーそんなことないといいですね〜」
 間延びた口調ながらも心配の色が濃いためかトーンの下がったラルスがUNKNOWNを励ます。
「楽しく‥‥笑ってやれるといいがね」
「そうね。ユイリーちゃんにもこの料理食べて元気になってもらえれば嬉しいわ。‥‥私のものはちょっと見た目わるかもしれないけど」
 帽子を被りなおすUNKNOWNにナレインは笑顔を向けるが、自分の料理の腕を省みてすぐ苦笑した。
「いい匂いに‥‥つられて‥‥来たようですね」
 開けっ放しの扉の影から子供達が中の様子を眺めている。
「もう少しで‥‥できますが‥‥一緒に作りますか?」
 無月が笑顔を向けると子供達は頷き、近づいてきた。

●お見舞い
「あとから皆来ると思うけど、先にお見舞いにきたよ」
 キョーコが暖かい料理をトレイに載せて、ユイリーの寝込むベッドへとやってくる。
「あ、キョーコさん。ありがとうございます」
 ほっとしたような笑顔を向け、ユイリーは体を持ち上げた。
「ああ、そうそう元エルドラド軍人だった人達をさ、数人こっちに戻せたんだ。若い男の人でが増えたよ」
「そうですか‥‥あの、一つ聞いていいですか?」
「ん? なんだい?」
 キョーコの報告を受けたユイリーは安心すると共に、俯きながらキョーコへと問いかける。
「彼らに謝ってもらえましたか?」
「なんで‥‥いや、そうだよね。そうしなきゃいけないよね」
 昼間のことをキョーコは思い出した。
 リズィーを追い詰めて殺し、彼らを故郷から追い出したのは紛れもなく自分達傭兵である。
「アメリカでの演説で気づいたんです。事実を認めて謝ることから、分かり合うことがはじまるんじゃないかなって」
 キョーコはユイリーの言葉に何も返せなかった。
「ごめんなさい。ちょっと偉そうでしたね。料理いただきます」
「いいよ、早く元気になりなよ? 他も心配しているからさ」
 ユイリーにぎこちない笑顔で答えるとキョーコは戻っていく。
 傭兵達の立ち居地が揺らぎ始めていた。