●リプレイ本文
●大先輩との競演
「桜華さつきさんと競演ですよ! 大先輩ですよ。同じビーストマンとしても憧れますよ」
「そ、そうですね‥‥私も雑誌とか調べなおしましたけれど時代劇の主役をやったりとか本当にすごい方なんですね」
大和・美月姫(
ga8994)のいつになく気合の入った姿に加賀 弓(
ga8749)はたじろいだ。
「ああいう人と肩を並べて仕事をするんだと思うと、凄いところにいるなって自分でも思うよ。一年ってあっという間だね」
IMP初期メンバーでもあるジーラ(
ga0077)は今の立場に驚くばかりだ。
「こんにちわー、ミンナ始めましてっ! 僕が元シャイニング娘の桜華さつきだよ♪」
そんな時、控え室にさつきが姿を現す。
15歳くらいの外見で、身長も151cmと小柄ではあるが、放つオーラは彼女が一流であることをしめしていた。
「ど、どちら様‥‥ですの?」
「さっき話していたさつきさんにゃ」
オーラを感じたのか、Innocence(
ga8305)がバックコーラスとして参加する常夜ケイの後ろに隠れる。
「皆さん、あと10分で歌のリハーサルです。着替えとかの準備をよろしくお願いします」
控え室に訪れた臨時スタッフの白岩 椛が一礼と共に去っていった。
「あの、歌はさつきさんの曲と私達のCatch The Hopeを一緒にというのをやってもらいたいので、よろしくお願いします」
「サビを一緒に歌わせてもらってもいいかにゃ? できればリハで歌の指導もして欲しいにゃ」
「どっちもオッケー、いいステージにしようね♪」
美月姫とケイからの要望にさつきは笑顔で答える。
アイドルとしての大先輩との競演が始まろうとしていた。
●『ありがとう』を君に
(「由稀さんの素敵な姿を期待していますので、頑張ってくださいねっ♪」)
鷹代 由稀(
ga1601)の脳裏に『大切な人』であるイリアス・ニーベルングの声が再生された。
赤いルビーの指輪をそっと撫でると由稀はステージへと躍り出る。
『今日はライヴ&トークショー『Thanks』に参加していただきありがとうございます。そして、きっかけをいただいた米田社長もありがとうございます』
IMPリーダーとして活動してきた緋霧 絢(
ga3668)が深く礼をすると拍手が送られた。
『米田社長は拾ってもらえたし、仕事も一杯持ってきてもらっているから本当に感謝しているよ。ありがとー!』
葵 コハル(
ga3897)は人に紛れて見えない米田に向かって両手を振る。
『今回のテーマは『Thanks』‥‥ということで、あたしが今一番ありがとうを言いたい人を招待してます』
言葉を切って、由稀はチラッと客席のイリアスに視線向けた。
『‥‥最近、デビュー当初の気持ちを忘れてたところがあったの。そんな時にその子に出会った‥‥凄く困ってた。だから助けてあげたくて、笑ってもらいたくて‥‥』
由稀の言葉に会場が静まり、聞き入る。
『ここ半年ぐらいでは一番動き回ったかもね。助けたい、は能力者になることを決めた時‥‥笑ってもらいたいは、はアイドルになった時の気持ち‥‥思い出させてくれたから‥‥ありがとう、これからもよろしくね』
礼をした由稀に大きな拍手が贈られた。
『それじゃあ、皆。まずはおなじみの曲をスペシャルゲストの桜華さつきさんと一緒に歌うよ☆』
閑話休題といったように雪村 風華(
ga4900)がいつものペースで場の雰囲気を明るくする。
『ゲストといっても主役はキミ達IMPだよ。僕も一緒に歌うからミンナも一緒に歌おうね♪ 『Catch The Hope』』
ステージに出ていたさつきの一声と共に照明が落ちて、イントロが流れ出した。
一年前の3月に作られたIMPの1stシングルであり、希望の歌でもある。
曲が終わると拍手と歓声、そして口笛がライヴ会場内を埋め尽くした。
『一曲目はおなじみだったね。次はさつきさんの曲で『恋GOKOLO featuring”IMP”』で送るよ』
ステージの隅にいたジーラがMCのように曲案内をする。
リハーサルのときにライディに教わったように前を向き、自分の言葉で伝えるように心がけた。
イントロが流れ出すと、突如、Innocenceが自分の曲を歌いだす。
「わ、ストップです。メインで歌うのはさつきさんですからね?」
曲を区切り、ライディが慌ててInnocenceを止めた。
どよめく会場だったが、さつきがフォローを入れる。
『ちょっとしたアクシデントもライブならではだよね? それじゃあ、恋GOKOLOを歌うよ♪』
再び、ゆったりした曲が流れ出した。
IMPメンバーがさつきを囲うように広がって静かに続き、サビになるとケイとInnocenceがさつきの声にハモる。
『ちょっとアクシデントがありましたが、さつきさんありがとうございました』
緊張の収まりきらないジーラに変わってライディがMCを一時的に引き継ぐ。
『それじゃ、ライヴパート最後の曲は今日の為に作った新曲だよ』
復帰したジーラが客席に向かって大きく話した。
風華、絢、由稀が続けてステージの手前まで出ると一言ずつ述べる。
『タイトルは‥‥、Gratitude』
『全体曲としては久しぶりとなります』
『最後まで聞きなさいよ!』
そして、照明がやや暖かな色合いに変わり、感謝を伝えるために作った静かなバラードが流れ始めた。
♪〜〜
どんな時でも笑顔で
私の帰りを願っていてくれたから
あなたがいるから戦える
帰る場所があるから前を向ける
苦しくても、つらくても
絆を胸に、出会えたキセキを誇りに
今、全ての人に伝えたい
ありがとう
〜〜♪
●いっつぁトークショー
休憩を挟んで着替え終わったアイドル達がステージに椅子を並べて集まった。
『次はトークショーの時間だよ。ボク達に質問したい人、挙手!』
ジーラの問いかけに大勢が手を上げる。
『えーと、そこの”漢”って描いたTシャツを着ている人、どうぞ』
「一年を振り返ってどうですか?」
『この一年は傭兵だったこともあるけどそれ以上にアイドルの仕事のおかげで本当に駆け足だった気がする。仕事仕事の毎日だったけど、その分充実感も一杯だったね』
ジーラがまず答えた。
『あっという間に過ぎた一年でした。名古屋でデビューして、気づいたら今ここにいる‥‥みたいな感じで』
『1年ですか、丁度初期メンバーは名古屋防衛戦の少し後に結成されたんですよね。傭兵としてもアイドルとしても色々充実した1年間だったと言えますね』
『名古屋から始まってこの間のグリーンランドまで、大規模作戦に全部参加してきて大変だったなぁ、って。でも小隊のみんなとか依頼でとか色々な人に会えたのも良い思い出カナ?』
『目まぐるしかった〜。2年前は世界中を駆け回ることになるなんて思いもしなかったもん』
由稀、絢、コハル、風華と普通に答えだす。
『えと‥‥んと‥‥ん‥‥にゃ、にゃん?』
ただ、Innocenceは何故か猫のマネをしてごまかした。
『それ、答えになってないですよ』
ライディの突っ込みに会場がドッと笑いだす。
『次いってもいいでしょうか? IMPに加わった時は夢中でがんばってきました。良い勉強をしたと思います』
美月姫の回答で一問目は区切られた。
『では、次の質問〜。あ、そこのピンクのフリルを来た女の子』
「アイドルと傭兵の両立は大変ですか?」
『これはちょっとボクでは答えられないな。由稀どぞ』
ジーラから由稀にマイクが渡る。
『バタバタしてるのも楽しむタイプなんで、忙しさとか感じたことは無いかな?』
『それほど難しくは無いですね。戦闘に関しては基本的な体の動きはエミタAIがサポートしてくれるので、傭兵に必要とされるのは判断力くらいですから』
『わたくし‥‥のんびりさんだから‥‥えと。お昼寝大好きですわ?』
『アイドルも傭兵もどっちもやりたくてやってるから大変って事は無いですよ』
『なんか、コハルいつもとキャラ違わなくない?』
『ソンナコトナイデスヨ』
コハルの回答にジーラが突っ込みを入れると棒読みにコハルは答えた。
『うん、従軍すると生傷が絶えないし、ちょっと大変かな? 撃墜された事も1度や2度じゃないしね』
一方、風華は傭兵としてのリアルな目線で質問に答える。
『大変といえば大変ですね。私は特にスケジュール管理に苦慮してますね』
着物姿に着なおした弓はアイドルとしての側面で回答をした。
『自分で決めた事なので大変な事は承知の上です。けれどそれ程大変とは思いません。喜んでくれる皆さんのお陰です』
『みんないろいろ考えているんだね‥‥おっと、次の質問いくよ』
ジーラが感心するように言葉を漏らし、思い出したかのように司会進行を続ける。
「これからやりたい仕事はありますか?」
『これは答えられるよ。もっと裏方とかの仕事も知って、自分でもやってみたいなぁって。後はラジオとか俳優も出来たらいいなぁ』
『あたしもジーラと一緒でうちのマネージャーみたいにラジオやってみたいかな』
『映画等の映像媒体への興味はありますが、演技はあまり得意ではないので、そうしたものの練習からでしょうか?』
『もっと踊りに関わって行けたら良いなと思ってます。後はバラエティ関係も楽しそう、なんて』
『ミュージカルをやってみたいなぁ! 歌って踊って演技するって、私がやりたい事が全部入ってるんだもん』
『私はIMPではまだまだですから、出来ることをコツコツとやっていきたいと思います』
『歌のお仕事を通して行く先々の皆さんを元気付けられる事を続けたいです。映画のお仕事や出身のモデルのお仕事も良いですね』
『頑張って‥‥1人でも皆様を笑顔にしたいですの‥‥』
それぞれが自分の言葉で目標を語った。
『それじゃあ、次の質問だけど‥‥』
時計をチラッと見たライディがジーラに予定変更を促がす。
「あ、ジーラさん。ちょっと時間押しているんで質問は後2つでお願いします」
「ん、了解」
マイクを一度離し、小声で了承したジーラがテンションをあげて司会を続けた。
『えっと、そこの和服をきたお人形さんっぽい人』
多くの観客が挙手するなか指名されたのは椛である。
「アイドルになって、一番良かったと思う事はなんですか?」
『一番よかったことかぁ‥‥ボクは考え方が変わったなって。アイドルなんて時代錯誤って思っていたけど‥‥な、何で笑うのさ!』
『いやいや、何でもないわよ。でも、一周年をこうして迎えられたのは素直に感謝だわ』
ジーラの照れ気味な回答に由稀がくすくすと笑いながら話を続けた。
『ここにいる中では私や美月姫さんとバックコーラスをしていたケイさんは約半年ですけれど、やはりファンができたというのは本当に嬉しいことですね』
『私は今一番よかったと思ってます。憧れのさつきさんと競演なんて夢みたいですよ』
弓や美月姫は一歩出遅れながらも確実に成長している実感を漏らす。
『僕も久しぶりにいいユニットに出会えてよかったよ』
さつきもマイクを片手に眩しい笑顔を見せた。
『えっと‥‥割り込みですみませんけど、さつきさんは自分に限界を感じたことはありますか?』
『限界は常に感じているよ?』
意外な回答に会場もステージの上にいるアイドル達もどよめく。
『でもね、限界までがんばって‥‥でも、その一歩先を目指すからがんばれるんじゃないかな? 諦めたらそこでおしまい。夢は自分の意思で掴むんだよ』
『学生諸君、今のメモだよ! メモ!』
さつきのいい言葉にコハルがびしっと客席を指さした。
『えっと、盛り上がっているところ悪いけど、最後の質問だよ。それじゃあ、非常口の辺りにいるのお兄さん‥‥かな?』
言っている傍から挙手する人の中からジーラは遠くで静かに手を上げ手いる人物を当てる。
「今年の目標はなんですか?」
『最近の自己紹介で定番にしてる『成層圏の向こうまで狙い撃つアイドル』を実践したいかも』
由稀がバァンと銃を撃つポーズを客席に決めた。
『強いて言えば、今年は飛躍の年としたいですね。最近は新メンバーも増えてきていますので、そうした皆さんと盛り上げて行きたいです。暗い時代だからこそ、心を明るく出来たら良いですね』
『リーダーと同じになってしまいますが、後輩も入り、少し先輩になりましたが初心を忘れずがんばります。あと、歌のレパートリーを増やしていきたいですね』
絢と美月姫は新メンバーに対する想いをうちあける。
『私は知名度向上でしょうか。相方の由稀さんと並んで恥ずかしくないようにしたいところです』
苦笑しながら語る弓ではあるが、ファンの何人からは「そんなことないよー」と各地でがんばっていることを知っている声が聞こえた。
『う〜ん、生まれ育った場所だし、日本をもっと安全にしたいかなぁ? こればっかりは、どこまで出来るかは分からないんだけどね』
『傭兵としてがんばるのもあたしらの目標だよね。でも、アイドルとしても世界中の人達を元気にできたらいいな』
風華とコハルがそれぞれ傭兵としての側面で目標を掲げる。
『えと‥‥あのね。わたくし‥‥好きな人、欲しいな、って‥‥』
ラストを飾るInnocenceの爆弾発言と共にフリートークタイムは終わりを告げるのだった。
●フィナーレ
『それでは観客の皆さんの中から一周年を記念した花束の贈呈をお願いします』
アイドル達の私物をサイン付きで出す抽選会も行われ盛り上がったイベントも終わりに近づく。
「由稀さん、とても素敵でしたよ」
花束を持ったイリアスが由稀の前に立ち、労いの言葉と共に花束を渡した。
「イルに祝ってもらえて嬉しいな。ありがとう」
「弓従姉さん、これからも頑張って下さい」
由稀とイリアスが笑いあっている横では、椛が弓に花束を渡す。
他のアイドル達へも一人一人花束が手渡された。
『皆さん、花束をありがとうございました。IMPも結成から一年たちましたが、これも皆様の応援あってのことです』
代表して絢が花束を片手に胸にある思いを口にする。
『私達が戦い、そして歌っていけるのも皆様のおかげです。これからも応援よろしくお願いします』
絢が礼をし、それに習って皆頭を下げた。
『僕からも、一言。こんなにファンに愛されているIMPが羨ましいって思ったよ。今、僕はフリーだけれどまたシャイニング娘として活動したくなるくらいに‥‥今日、ここにこれてよかったよ。また、一緒に歌おうね』
さつきからの祝辞と共に差し出された手を絢は握る。
二人の手がしっかりとつながれ、新旧アイドルの競演は拍手と声援によって締めくくられた。