タイトル:ゴキメラバスターズ参マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/01 01:22

●オープニング本文


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 2008年1月。
 ゴキメラを駆逐するために、我々は能力者を通じて捕獲作戦を決行した。
 初期からゴキメラにかかわるメンバーも少なくなり、この戦いが困難になることを感じていた。

 そして、来る2008年2月大きな反抗作戦に出るべく、対ゴキメラ装備の開発およびゴキメラ専用特殊部隊『ゴキメラバスターズ』が結成される。
 大きな反抗作戦に我々はでた。

                          UPCゴキメラ対策チーム所属、坂本正臣特務中尉


●結成ゴキメラバスターズ
「何? 異動だと!?」
 上からの指令書を読んだ坂本は驚愕する。
 この時期にあたって人事異動とのことだ。
 しかも、指令主は謎の研究員である。
「特殊部隊に編入。以後は現地UPC軍と協力の上で対策に出るべし‥‥か。つまりは結局のところゴキメラとは縁が切れないわけだな‥‥」
 坂本はため息をつく。
 そして、同時に四国の基地にて北米の研究機関の人間とともに対ゴキメラ兵器の開発にもかかわるという指示もある。
「階級もと特務中尉に昇進か‥‥やってられんな」
 舌打ちをして、坂本は書類をデスクにほうり投げた。
 成果を出しての昇進ではなく、機密保持のための昇進は坂本の望むものではない。
「やれやれ、喜んでくれると思ったのだけれどね」
 気がつけばいつのまにやら白衣を着た少年が坂本の部屋の入り口に立っていた。
「ここにこられるということは‥‥君が前回の依頼主か‥‥」
 能力者の例もあるため、もはや年端もいかない存在が基地内を歩く事に坂本は違和感を感じなくなっていた。
「そうだよ。今は『ガブリエル』とだけ名乗っておくよ。対ゴキメラの研究をここでやりたくってね」
 白衣よりも白い肌をした少年はそう名乗り、坂本を冷たい目で見ていた。
「新兵器のプランはこんなところだね。君らが持ち帰ったサンプルを元に進めてみたよ」

<プランA>
強化トリモチシート‥‥持ち運びしやすい携帯品。1行動消費で使用し、1スクエアを埋めるトリモチエリアを形成できます。
           中に入ったゴキメラの移動を阻害します。3ターンの間移動できなくなります。
           複数のゴキメラを捕らえることもできますが、その分効果時間は短くなります。
<プランB>
スタンネット‥‥ランチャータイプの武器で、ネットを射出後、電流を流してゴキメラを感電させようとするもの。
           ダメージはないが、感電にさせることにより2ターンの間行動不能にさせることができるらしい。
<プランC>
ウィリー・パーカー‥‥ゴキメラを解析して調合をしたWP発煙弾。手榴弾タイプで射程2。
           半径10mを覆う事ができ、ゴキメラを窒息死させようというもの。
           能力者への影響不明。計算上は幼生体キメラを倒せるらしい。使い捨て。

「用意のいいことだ‥‥テストを現地でやるつもりか‥‥」
 プラン案を見て、坂本はこのガブリエルという存在が信じられなくなった。
 遊びでやっているとしか思えない。
「そういうことだ、対ゴキメラチーム『ゴキメラバスターズ』としての初仕事だよ」
 ガブリエルはパソコンを起動させて勝手に陣取り作業を始めた。
「俺たちは映画のヒーローじゃないんだがな‥‥」
 坂本はこのキメラよりも『厄介』な存在に頭を悩ませた。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
クリストフ・ミュンツァ(ga2636
13歳・♂・SN
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
九条・運(ga4694
18歳・♂・BM

●リプレイ本文

●わがままな大天使
「プランの方向性は決まったかね?」
 集められた能力者‥‥いや、ゴキメラバスターズたちを少年ガブリエルは値踏みし、横柄に振舞った。
「プランAを6、Bを2、Cを2が総意だ」
 時任 絃也(ga0983)は相談でまとめた資料をガブリエルに手渡した。
「ご苦労、それじゃあこれで作成をこちらの研究室で行おう。それと、なにやら要望がいくつかあるのかい?」
 資料をぺらぺらとガブリエルはめくる。
「そうそう、A案とB案を混ぜてトリモチランチャーとかできないか? 博士!」
 九条・運(ga4694)がガブリエルに詰め寄りながら聞いてくる。
 どこか目を輝かせた子供のようだ。
「できなくはないが、はずしたあと面倒だね。そう使うのなら除去剤もつくるが、コストはあがるぞ?」
「うーん、もうちっと考えさせてくれ」
「要望ではなく、質問なのだがプランBとCはフォースフィールドを無視できると考えていいのか?」
 悩む運をよそに、白鐘剣一郎(ga0184)がガブリエルに質問をする。
 ゴキメラにかかわるのは今回初めてだが、数々の報告書より脅威は理解していた。
「電撃のほうは通る感じだったね。ネットは阻まれたから感電死をさせるのは不可能。結構な電圧をかけてようやく一時的ショックが妥当という結論だね」
「ウィリーパーカーは対キメラ毒薬を調合したものだが、これについては煙幕効果と窒息効果以外ははっきりしていないね。そのデータ取りのために来たといっても過言じゃない」
 結果が出ていないことが不服なのか、ガブリエルは憮然とウィリーパーカーの検証データを眺める。
「インフルエンザのような効果は無理か‥‥」
「細菌兵器までいくと、ゴキメラ以外効かないようにするのなんて、あとどれだけサンプルと研究時間が必要かわからないよ。その過程でもっと恐ろしいものが生まれるかもしれないけれど、細菌兵器自体そこまで上が研究されてくれるかどうか、ね」
 絃也の呟きを聞きつけたガブリエルが意地悪な笑みを浮かべる。
「まともに使えそうなのはAとBといったころか‥‥」
 剣一郎はふぅと息をもらす。
 学者という人間は扱いづらいといわんばかりだ。
「弟の運がいっていたんだが、液体窒素弾を打ち出す冷凍銃というのは作れないか?」
 九条・命(ga0148)がガブリエルに聞きだす。
「専用銃そのものより、SES搭載銃で撃てる弾丸のほうが早いと思うけどね? そうだろ? もちろん、君が研究費を注いでくれるならいいものができるよ」
 にやにやと答えるガブリエルに命は一瞬殴りかかろうとするが、絃也に押さえられる。
「あの、最後にひとつ‥‥よろしいでしょうか?」
 遠慮がちに手を上げたのは如月・由梨(ga1805)だ。
「なにか?」
「いえ、対ゴキメラ兵器としてですが、元を断つために死体に毒や毒餌のようなものはできないでしょうか?」
「さぁね、なんともだよ」
「あと、卵を根絶やしにする方法もあればいいと思いますが‥‥」
「それは簡単だよ。ナイトフォーゲルのフレア弾でここら一帯を燃やせばいい‥‥もっとも、最終手段にしたいね」
 あどけなくみえるガブリエルの笑顔だが内容が内容だけに逆に恐ろしく感じたゴキメラバスターズだった。

●捕らえよ、ゴキメラ
「プランCは燻蒸式殺虫剤のようですから、建物内に追い込みたいたいところですね」
 クリストフ・ミュンツァ(ga2636)は基地付近の使われていない建物を物色していた。
 ゴキメラによる被害を防ぐため、あらかた避難されているため無人の建物はポツポツ存在している。
「ここなどどうでおざりましょう?」
 クリストフのお目付け役であるヴァルター・ネヴァン(ga2634)が森の奥で見つけたロッジの写真を見せた。
「森の中だし、終わったあとは火をつけて燃やせばいけそうだね。山火事には気をつけなければいけないけれど‥‥」
「その辺の処置は坂本特務中尉にでもたのみましょう。今はそこへゴキメラを追い込む策を考えましょうプランC以外なら訓練施設でなんとかなるでしょうしね」
 緋室 神音(ga3576)も探索を追え、戻ってくる。
 手元の地図は赤い枠で囲まれている部分とそうでない部分が分けられていた。
 赤い枠はゴキメラがいるため『Keep Out』されているエリアであり、地図の上でも囲まれていない部分は少ない。
「卵からどうにかする策は必要そうね‥‥どうしたものかしら」
 長い髪をかきあげ、緋室は息をつく。
「輸送時の振動で卵が砕けたということもありましたから、地震でも起きれば殲滅できるかもしれませんね。はっきりとはいえませんが」
 クリストフは緋室にそういい、ヴァルターに目配せをした。
「ゴキメラを追い込むえさを確保してまいりまする。お二人は残りの方に連絡を‥‥」
「オーケー、やっておくわ」
 緋室は答え、ヴァルターと別れた。

●実験は己が身で
「そちら二体、追い込みいたしました」
 ロッジへゴキメラを追い込み、実験が始まる。
「この俺の体をやつ等に対抗するためにささげるぜ、博士」
 運は振り向きざまにクールに決めた。
「くだらないことをいっていないで、ゴキメラを掴んで離さないようにしてもらいたいね。退路確保の後ウィリー・パーカーを君のいる部屋に投げ込む」
「UPC軍で使う標準タイプの発煙筒と一緒だな‥‥焼夷手榴弾にも応用できるかもしれないな」
 坂本がウィリー・パーカーと名をつけられた兵器を手に取りつぶやいた。
「不味かったら、その方向だな。火傷でもいいからダメージが与えれるほうが有効だろう」
 坂本の言葉を聴き、絃也も頷く。
「いくぜ! うおおおおっ!」
 気合を入れるように叫び、運がゴキメラのほうに向かった。
 坂本を残し、残りは表口にトリモチシートを引く準備をする。
「ゴキメラごとき、恐れる俺ではない! 変身!」
 迫るゴキメラに物怖じ下もせず、運は覚醒をした。
 すでに2回の戦闘を経験し、相手に対して行動できる運は機敏に動く。
 ゴキメラの体当たりをさけ、運はサブマシンガンを叩き込んだ。
「以前より手ごたえない気がするが‥‥それならそれで!」
 殺さないよう下限をして戦う、運。
 そのとき、裏口かヒュンと手榴弾のようなものが投げ込まれた。
「待ってました!」
 運の声と共にプシューという音と共に勢い良く煙が上がりだす。
 視界が灰色の煙で覆われ、鼻や口から刺激を訴えだした。
 目も痛い。
 当のゴキメラは影だけではあるが、迷走している様子が見て取られる。
「ごふっ、こいつは‥‥キツイ‥‥」
 運の足元がふらつき、倒れそうになる。
『まったく、手間かけさせないで』
 ふらふらしている運の耳にくぐもった緋室の声が聞こえてきた。
「すま‥‥ない」
 ぐったりする運に、緋室はガスマスクを着けて入ってきた表口の方へ駆け出す。
 煙で視認が困難な中、虹色の翼が外へ向かう。
 それを察知したのか、ゴキメラの動きが変わった。
『こちらをおって来るようね、それなら話が早いわ』
 タッタンッと飛ぶようにかけて緋室は外へ飛び出しマスクを剥いで叫んだ。
 すぐ後ろから煙を抜けたゴキメラが追ってくる。
「すぐに来るわよ、マットとスタンネットの用意!」
「マットはできている」
 剣一郎が緋室に答え、スタンネットを一つずつ持ったクリストフとヴァルターが構えた。
 緋室が運を抱えながらマットを飛び越えて着地。
 ゴキメラも本能で危機を察知したのか飛び上がった。
「そうそうやらせないよ」
 クリストフの放ったネットはヒットする。バシィンと電流が流れゴキメラは落下し、ベチャッとトリモチの海にその身を沈めた。
「く、はずしましたか‥‥」
 ヴァルターが狙ったスタンネットはわずかにゴキメラに届かず、ゴキメラは飛びあがる。
「まずは確実に、だな」
 そのゴキメラも予想していたのか携帯していたハンドガンに武装を持ち替え、ゴキメラを撃ち落した。
 ベチャッと落ち、もう一体と共に鳥もちの上でもがく。
 そして、待機していた命と由梨によって確実にトドメを刺され、死体はガブリエルが回収することになった。
 クリストフは死体を個別で持ち出そうとしたが黒服に阻まれ、ガブリエルからも釘を刺された。
「あの煙以外はそこそこ有効そうですわね」
 ウィリー・パーカーを吸い込んでぐったりしている運を手当てしつつ由梨は呟く。
「もう少し検討する余地がありそうだな。あとは基地の一室を借りて行なうとしよう」
 死体を簀巻き状に包んだものを担いで、坂本はため息をついた。
「依頼主にしてやられたな、中尉殿」
 そんな坂本の肩たたき、絃也は励ますのだった。

●最終チェック
 その後、基地内でゴキメラの死体から重量を割り出し、相応の錘をつかった実験がいくつか行なわれ、データが取られた。
 今は『ゴキメラバスターズ本部』と書かれた看板のある部屋にてデータの検証、整理中である。
「シートの耐久力でいくなら、5体刻みで1ラウンド減少ってところかしらね‥‥強度を上げればもっともつかもしれないわ」
 緋室はトリモチシートについて検討していた。
「そうだな、できれば投げるタイプも欲しいところだ。はがしづらかったから、除去剤の用意がいるな。そうすればランチャーによる射出でも回収は楽になる」
 そういうのは絃也。
 今回の実験を通してトリモチシートの優位性を再確認し、ショップへの正式販売を強く願っている。
「ネットももう少し大きくして、当てやすくしたほうが良いでありまする」
「ウィリー・パーカーを無視して、そっちの方がいいかもしれないな」
 スタンネットを使った感想を述べるヴァルターに、復活した運が同意を示す。
「いくつか用意はしておいて、次回に報酬から天引きで追加できるようにしておこう。そのほうがいろいろ試せそうだからね」
 意見をノートパソコンに打ち込みつつガブリエルは答えた。
「ウィリー・パーカーも煙幕だけにするか、焼夷弾型にするかしてくれ‥‥現状では使いづらい」
 結局のところウィリー・パーカーは密閉された部屋であってこそ効果があるものであった。
 ただの煙幕の方が役に立つという失敗作である。
 細かな実験をして判明してよかったといったところだ。
「失敗作であったのはこちらも悪かったね。よって君らの希望していた分の変わりに煙幕弾と焼夷弾を3つずつ用意するよ。予算でいけばそれくらいは補えるだろうからね。スタンネットを5、改良型トリモチシートを10用意しよう。それで文句はないだろ?」
 謝りながらもどこか悪びれていない様子でガブリエルは答えた。
「問題ない。とにかく、次でこんな相手は終わらせよう‥‥」
 命の静かながらも響く声に他のゴキメラバスターズはしっかりと頷き返した。
 決戦は近い。