タイトル:ゴキメラバスターズ壱マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/19 00:13

●オープニング本文


 2007年11月に『黒き悪魔』とも呼ばれる『ゴキメラ』が日本の四国で目撃され、能力者の活躍により駆逐された。
 
 だが、その戦いは終わりではなく始まりでしかなかった‥‥。
 能力者と『ゴキメラ』との長きに渡る戦い。
 それを忘れぬために、ここに記録文書をつづることとする。
 
                             UPC四国分隊513小隊・隊長、坂本正臣
                            
●再来、黒き悪魔。
 2007年12月某日。
 
 四国のとある競合地帯において、『ゴキメラ』は発見された。
「くそ、なんでヤツが‥‥。総員撤退っ! 深追いするな!」
 坂本は再び見る『はいよる黒きもの』に対して、デジャ・ビュを感じていた。
 それは、生き残った隊員たちも同じである。
 数は二匹。
 しかし、強靭な牙。
 1mを越す巨体。
 さらにフォースフィールドを持つゴキメラは普通の『黒き悪魔』というよりも、『悪夢』にしか見えなかった。
 光を嫌うということで、照明弾などで追い立てるのが能力者ではない坂本にできる最大限のことだった。
「もうすぐ、夜が明ける! そうすればヤツは出てこれない! それまで持ちこたえるんだ!」
 照明弾や、煙幕でゴキメラを廃屋へ追い立てる。
「う、うわぁ、隊長! 助けてください、たいちょぉぉぉっ!」」
 だが、一人の隊員が近寄りすぎたためかゴキメラの牙の餌食となり、廃屋へ連れ込まれていくように声が遠のいていった。
「だから、深追いするなと‥‥、俺はまた隊員を失うのか‥‥」
 坂本は首にぶら下げた1月前にあの世へと送りだした仲間の形見をグッと握りしめた。
 そして、目の前の廃屋を強くにらむ。
「いや、まだだこれ以上被害を出さないためにも『能力者』にたよるしかない」
 山の上から照らし出される光が、夜を通した戦闘の終結を告げる。
 しかし、これからが本当の『戦い』になることを誰もが予感していた。

●参加者一覧

御山・映(ga0052
15歳・♂・SN
幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
リズナ・エンフィールド(ga0122
21歳・♀・FT
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
クリストフ・ミュンツァ(ga2636
13歳・♂・SN
ラマー=ガルガンチュア(ga3641
34歳・♂・FT
九条・運(ga4694
18歳・♂・BM

●リプレイ本文

●いざ、始まりの地へ‥‥
 2007年12月某日、四国。
 高速移動艇にのって、能力者達が四国の地へとやってきた。
「依頼人の坂本少尉だな? 能力者の時任だ」
 軽く敬礼をしながら、時任 絃也(ga0983)は高速艇から降り立つ。
「よく来てくれた、こんなところへ来てくれて感謝する」
 坂本は敬礼を返して、絃也に声を返した。
「坂本隊長さん、おひさしぶりですぅ〜、きゃわわ〜」
 軍人らしいきりっとした挨拶のあと、気の抜けるような声が高速艇の中から聞こえてきた。
 幸臼・小鳥(ga0067)が荷物を一杯背負ってでてくる。
 荷物の量はバランスを崩しこけそうになるほどだ。
 倒れそうになる小鳥を後ろから巨漢が支えた。
「やれやれ、荷物の持ちすぎだよ」
 しかし、2m近い身長の男の声は優しく、頼りがいのあるものだった。
「はぅあ、ありがとうございますぅ〜」
 ラマー=ガルガンチュア(ga3641)は小鳥の荷物を支え狭そうに出てきた。
「今回もいろんな人が来てくれたか‥‥以前より精神的には楽かな」
 頼りがいのあるメンバーがそろった事に坂本の顔はどこか緩む。
 最後に、御山・映(ga0052)がピョンと飛び出し、一言述べた。
「『ゴキメラ』片手で数えられる数だからまだ良いですけど、何十匹も来たら大惨事です」
「ああ、そうさせないためにも君達を呼んだ。対策本部で計画をねろう。日が暮れる前にカタをつけよう」
 映の言葉に坂本は答えながら、本部への移動を始めた。
 
●作戦会議
 UPC四国分隊のテントの中に坂本の案内で能力者達は入っていく。
 中央に大きめのテーブルがしかれ、廃墟の見取り図が広がっていた。
「先人曰く『人類滅亡後はGが地球を支配する』とかいってたが、滅ぼすところまでくるのは予想外だったようだな」
 九条・運(ga4694)は持ってきた荷物の準備を整えていた。
 通常の黒い害虫の駆除に使うものであり、キメラに効く保障のないものばかりだった。
「だが、あいつ等は普通のヤツとは違う‥‥UPC軍の兵士が4人食い殺されているからな」
 見取り図を見つめながら、坂本は苦々しく呟いた。
「ええ、ただ聞くだけならネタですが。現実は酷くホラーでスプラッタな存在ですね」
 クリストフ・ミュンツァ(ga2636)も見取り図を眺めながら答えた。
「廃墟となったところはもともとはファミリーレストランだったところだ。広さはそうでもないが、テーブルや椅子などもあるし厨房やトイレの区画もある」
 指揮棒でそれぞれの場所を指しながら、確認を坂本はした。
「隠れる場所は多いということですわね」
 如月・由梨(ga1805)は戦場に似つかわしくない和装をしていた。落ち着き払っている由梨は一切気にしていないようではあるが。
「そうなるな、時間的に厳しかったこともあったが、後で気づいたこととはいえ‥‥すまない」
 坂本は深く礼をした。
「気にしないで。それより、坂本隊長。暗視ゴーグルなどは貸していただるかしら? できれば光度調整のできるものがいいのだけれど‥‥」
 リズナ・エンフィールド(ga0122)は本部で掛け合っても貸してもらえなかった装備について尋ねる。
 能力者の数もふえ、本部の備品も追いつけていないのが現状だ。
「性能がいいものは、激戦区へ回されているのが現状だ。そこまで性能は良くないが、暗視ゴーグルはもっているだけ貸し出そう」
 坂本はリズナへ再び眉を下げ了承をした。
「それだけでも十分よ。それじゃあ、装備をしたら皆、行きましょう」
 リズナの掛け声に一同は頷く。
「では、時計あわせ。1400より作戦開始といこう。少尉、作戦終了後は廃墟を燃やしていいか?」
 絃也が自分の腕時計を見せ、それに全員は時間を合わせる。
 そのあと思い出したかのように絃也は坂本に尋ねた。
「もともと、そのつもりだ。中にいる隊員ももう生きてはいないだろう‥‥」
 坂本の脳裏に一月前の出来事がよみがえる。
「希望は捨ててはいけないよ。最悪な状況でも前は生きていたのだからね?」
 クリストフはにやりと笑い、坂本へ言葉を返した。
 日が落ちるまでの約3時間。
 それが決着までの時間となった。
 
●再会、はいよる黒きもの
 ファミレスの内部に入り、打ち合わせどおりに東側に進んでいく絃也、小鳥、リズナ、ラマーの4人。
 暗視ゴーグルをつけ、死角をつけないように固まって動いていく。
 薄暗いファミレスは不気味だった。
 平和な時代はにぎわっていたのか、テーブルや椅子が多く。メニューの残骸などが足元に転がっている。
「どうせくるなら、ちゃんと営業しているときに来たかったかな」
 最後尾のラマーが周囲を残りのメンバーより高い視線で見回す。
 その視線に、何かがカサササと動くのが見えた。
 奥のトイレルームに消えていく。
「今、奥へ何かが動いていったよ」
 その瞬間、ラマーの肌は赤鉄鉱のような色彩に変わった。
「了解、リズナと俺がフロント。援護に小鳥回ってくれ、ラマーは背後から別のヤツが来ないか警戒だな」
 各自は頷き、行動に入る。
 すり足で一歩一歩トイレルームに近づく絃也とリズナ。
 そのとき、ガサッと音がしてゴキメラが出てきながらの体当たりをかましてきた。
「出たわね!」
「させん!」
 だが、警戒していた能力者達が先手を取る。
 絃也のファングがゴキメラを叩き落とそうと三連撃をかます。
 しかし、すばやく動くゴキメラには1発当てるのがやっとだった。
「ちっ、図体の割りに早い!」
「前のGには効いたのですけどぉ」
 小鳥は鋭角狙撃でゴキメラの甲殻の内側を狙って攻撃を行う。
 矢は洗剤の瓶をつけた改良品だ。
 ヒュンと矢は飛ぶが、瓶がフォースフィールドにより、拒まれ速度が減衰。
 矢は丸まったゴキメラの甲殻にぶつかる。
 ほとんど影響が出ていない。
「ひゃぅ!? 効いていないですぅ〜」
 前回よりも手ごわい相手だと、小鳥とリズナは認識した。
「面倒ね‥‥」
 リズナがヴィアを抜き、斬りかかろうとしたとき、ゴキメラが攻撃に移った。
 ゴキメラの強力な顎がリズナと絃也を襲った。
 リズナは避け損ねたが、武器でその攻撃を防ぐ。
 しかし、絃也は腕に傷を追う羽目になった。
「広いフィールドでない分、厳しいわ」
 リズナは四肢に雷光をまとわせ、側面より斬撃を二発放った。
 ゴキメラはその攻撃を受け、じゅぐじゅぐと体液を出しながら息絶える。
「一匹だけ‥‥のようだね?」
 ラマーが気配を探るも発見できず、神妙な面持ちで見張る。
「わからんが、もう少し探そう」
 ラマーの言葉に絃也は傷口をながら立ち上がった。
「応急処置はしておいたわ、けれど‥‥前より強くなっているのは確かね」
 絃也に対して、リズナは手当てをする。
「このまま増えていったら‥‥」
 小鳥の脳裏に進化し続けるゴキメラの図が浮かぶ。
 それは悪夢以外の何者でもなかった。
「何か、解析すればわかるかもしれませんし。一部をUPCの研究所へ送ってもらうようにしましょう」
 ラマーはそういうと、ゴキメラの触覚をジュブリと引き抜ぬく。
 そのとき、「うぐあぁ!?」という声が聞こえてきた。
 もう一方が襲撃を受けたのかもしれない。
「援護に行くぞ。おちおち休めないな」
 応急手当てされた腕の包帯をぎゅっと締め、絃也は駆けた。

●脅威の生体
 一方、西側は前回も戦闘を経験した映とクリストフ、そして今回初となる運と由梨だった。
 運は今回が初依頼であり、緊張していた。
「向こうの班よりは前衛として頼りないかもしれないが、男として女を盾にするわけにはいかん!」
「しかし、私も前衛職なので、前にでないと戦いづらいのですが‥‥どういたしましょう?」
 由梨が遠慮がちに運にいい、頬に手を当て悩む。そのしぐさに運は言葉を詰まらせた。
「守るべき相手が男で残念だったね」
 クリストフはくくっと笑い、周囲を警戒する。
 暗い場所に対しては懐中電灯を照らし動きがないかみる周到さだ。
「前回は野外で楽だったですけど、屋内戦だとあちらに歩がありそうです」
 映は超機械をいつでも動かせるようにして、進む。
 その間もいつも以上に心臓の鼓動が耳に響いていた。
「あとは‥‥あら?」
 由梨がふと床をみると、何かを引きずったような後が厨房のほうへ延びていた。
「どうやら、連れ込まれた人間はこの先。そうなると、連れて行った『ヤツ』もいそうですね。彼らは食欲旺盛のようですから」
 クリストフは手持ちのアサルトライフルへ弾を装填する。
 ガッチャンという金属と機械を合わせた音が静かだった室内に響いた。
「それじゃあ、行くぜ!」
 壊れかけたドアを運が蹴破る。
 しかし、何もおきない‥‥。
 いや、グチャジュチャという身の毛のよだつような音が聞こえてきた。
「この音は‥‥」
 ゆっくりとその方向をみると、連れ込まれた思われる兵士がぐったりと、横たわっている。
 その上にゴキメラはのしかかり、よだれをたらして食いかかろうとしていた。
「くそったれ! させるかっ!」
 運は覚醒し、俊足縮地でゴキメラに迫った。
 そのまま蛍火を抜き放つ。
 淡い光が、暗視ゴーグルによって少し強い光に見えてはいたが、関係ない。
 横なぎに払うが、ゴキメラにやすやすと回避された。
「くそっ!」
「落ち着いてください、救護者から離せれば上出来です」
 荒れる運に対して、クリストフは冷静に声をかけ、そのまま先手をとりアサルトライフルを飛翔するゴキメラに向かって撃ちはなった。
「ホラー映画はこの辺にしてもらいましょう。銃よりハリセンのほうがお似合いでしょうけれどね」
 ダダダダっと撃ち放たれた弾丸がゴキメラに当たる。
 しかし、羽を砕くまでには行かない。
 暗視ゴーグルにより視力は上がったが、その分視界が狭まってしまっている。
 室内を飛び回り、物陰に隠れるキメラを瞬時に捉えて撃つのは難しい。
 それでも当てられるのはスナイパーとしてのクリストフの実力だ。
「物陰にかくれても、この超機械は逃がしませんっ!」
 超機械でキメラの反応を探り、電磁波を映は発生させた。
 キィィィンという甲高い音共に、厨房内のものが揺れる。
 そしてゴキメラのうめき声があがった。
『グシャリュゥゥゥ!』
 効き目は以前よりも強い。
 もっとも、超機械の性能が良くなったからかもしれないが。
(「こういう特性に変化はないようです‥‥チェックしておきませんと」)
 映は思い、そのまま超機械によってゴキメラを退治した。
「死体の処理をしたいが、まずは救助からだな!」
 運は近づき生死の確認をしようとした。
 そのときだった。
 兵士の体がビクンと動く。
「おい! 動いたぞ!」
 嬉しそうにいう運。
 由梨とクリストフ、そして映は運に近寄る。
 誰もが生存を喜んでいた。
 しかし、その希望はあっという間に裏切られる。
 グジャリという、嫌な音が兵士の腹部から漏れた。
 運はそちらに目を向ける。
『ジャギャァァァ!』
 腹部を食い破り、ゴキメラの幼虫が飛び出し運にくらいついた。
 小さいながらも強力な顎が運の腕にくらいついた。
「うぐあぁ!?」
 悲痛な叫びが廃墟となったファミレスに響き渡った。
 
●蝕む黒きもの
「運さん!」
 映が叫ぶが、くらいついたゴキメラはそのまま運にくらいつき離れない。
「ぐ、ぐそっ!」
 血が腕からあふれ出し、それを啜るベチャベチャという音が運の耳に聞こてきた。
 その光景に由梨は一瞬、止まる。
 あまりに常識はずれすぎたのだ。
「前回みつからなかったのは、こういうことでしたかっ!」
 最後の晩餐と思っていたゴキメラの行動は死体に卵を産みつける増殖行為だったのだ。
 このような事例は今まで発見されたことはない。
 極めて稀なケースだった。
 クリストフが急いで兵士との距離をあけようとするも、兵士の死体からもう一匹のゴキメラが孵化し、足にくらいつく。
「ぐっ!」
 ナイフで足をえぐられるような痛みがクリストフを襲いだす。
 アサルトライフルでゴキメラを殴り引き剥がそうとした。
「い、今なんとかします! うわっ!」
 映は超機械を動かそうとするが3体目の幼虫に飛び掛られ、超機械を落としてしまう。
 超機械を拾おうと体を動かすが、ゴキメラに馬乗りされた。
 幼虫といっても20cmはあるかというゴキメラに顔までこられ、映はおびえた。
 幾多のキメラと戦い、油虫が平気といってもこの光景は想像を超えた出来事だった。
 ジュルリとした涎がゴキメラの口から垂れ、映の顔に落ちる。
(「食いつかれる!」)
 そう思ったとき、援軍がきた。
「そうら、どきなさいっ!」
 ラマーのバトルアックスがゴキメラの不意をついてはじき飛ばした。
 壁まで飛んでいったゴキメラはフィールドを張りながらもグシャりと音がなる。
 その音に目を覚ました由梨が、運とクリストフにくらいついているゴキメラの幼虫を蛍火による全力攻撃で散らした。
「私としたことが、無様な姿をさらして申し訳ありません」
 揺らめく刃と瞬殺にいたる剣技とは裏腹に、由梨の態度は落ち着いたものであった。
 
●篝火を見つめて‥‥
 ボゥっと廃墟だったファミレスが燃えていった。
 クリストフの案により、窓などはすべて塞がれている。
「今回の戦いは酷いものでしたね‥‥」
 クリストフは火を見ながら呟く。
「こっちが強くなっていくように、相手も強くなるか‥‥」
 運も苦虫を噛み潰すような顔になってぼやいた。
「まだ、あれとの戦い続くんでしょうぅかぁ〜」
 小鳥もおなか一杯といわんばかりに嘆く。
「ヤツらが『もうでない』といえるまで、続くだろう‥‥今まで逝ってしまった部下のためにも、そこまで辿り着く」
 坂本は篝火に敬礼を送り、決意を述べた。
 能力者も坂本に続き敬礼を送る。
 今は、安らかに眠れという願いをこめて。