●リプレイ本文
●ヤクソク
12月25日のクリスマス。
特別な空気が広がっているのは何も街中だけではない。
ここラスト・ホープのライヴ会場は熱気に包まれていた。
「ここまで‥‥声が聞こえるね」
ラシード・アル・ラハル(
ga6190)は半ズボンサンタ衣装に着替えて控え室の方へ移動している。
「お、いたいた。サンタの格好似合うじゃないか」
緋沼 京夜が廊下を移動するラシードを見つけて声をかけた。
「京夜‥‥来てくれてありが‥‥とう」
照れ笑いするラシードを京夜は両手で頬を包み額を合わせ抱擁する。
「‥‥ラスの人を幸せにする笑顔。楽しみにしてるからな」
「うん‥‥がんばる」
一瞬、驚いたラシードだったがすぐに笑顔で京夜に答えた。
●成長の実感
「『Catch the Hope』から各自ユニット曲、ソロ曲で、ラストは『Natural』という流れでいくわよ。衣装もサンタコスから、各自の個性を大きく出した衣装に着替えて最後は統一衣装ね」
「できれば、IMPメドレーとかいいと思うのですが‥‥」
「メドレーは尺の都合上厳しいです‥‥すみません」
大和・美月姫(
ga8994)が鷹代 由稀(
ga1601)の説明に手を上げて意見をだすも、マネージャーのライディ・王(gz0023)が申し訳なさそうに断りをいれた。
「衣装の用意は私の方でやっておきます。ステージの演出はライディさんとスタッフさんでいいのでしょうか?」
臨時スタッフとして参加している白岩 椛が手帳に各自の順番と時間をメモしてタイミングを計りだす。
「ボクも手が空いているときは手伝うよ。だから、パートタイミングはその辺を考えて入れ替えとかもした方がいいかな?」
裏方作業も以前のCM撮影から興味をもっているジーラ(
ga0077)が積極的にかかわりだした。
アイドルたちもそれぞれが成長し、それぞれの道を見つけている。
「サンタコスだけど、あたしはトナカイ着ぐるみでいいよね? ギャグ担当だからね」
葵 コハル(
ga3897)は衣装を準備する椛にそんな注文をつけた。
「その流れなら私は着替えせず‥‥にソロまで行くつもりなので一番手です。あ、でもサイン会とかはできればサンタコスのほうがいいかもしれません」
日程を確認していたミオ・リトマイネン(
ga4310)も由稀に提案をだす。
「サイン会については各自、自分のアピールをメインにお任せよ。ただし、ステージの上はきっちりそろえましょう」
由稀がビシッと締めると控え室のドアをノックする音が聞こえた。
「は〜い」
ライディがドアを開けに出ると、ライブ会場のスタッフが花束を持ってくる。
「コハルさん、ミオさん、由稀さんにファンの方から花束が来てますが、どうしましょう?」
このとき、3人はアイドルとして成長したという実感を得たのだった。
●Catch The Hope!
『今年最後のIMPライブ、みんな楽しんでる〜!?』
雪村 風華(
ga4900)こと『ふ〜か』がマイクパフォーマンスを先行してやりだす。
『IMPの仲間、ファン、沢山の支えにありがとう。そして、今日は私がお返しする番です。ステージを一杯楽しんでください』
続いていつになく真剣な表情をした常夜ケイ(
ga4803)が観客に向かって手を振りながらでてきた。
バックバンドもその間に準備をしていく。
『それでは、最初の曲。IMPのデビューシングルで「Catch The Hope!」をどうぞ』
他のミニスカサンタとは違い、巫女服のような白と赤を織り交ぜたやや和風サンタ姿の加賀 弓(
ga8749)が曲の開始を合図した。
バックバンドがイントロを引き出すと、舞台袖にいたメンバーがステージにそろいだす。
『我が歌を聴くがいい!』
ルード・ラ・タルト(
ga0386)こと『たると』がステージの真ん中に立って大きく叫ぶと歌が始まった。
いつもとは違うディストーションギターアレンジのされた曲調で流れるCatch The Hopeの伴奏。
そこでジーラとたると、ラシードがダンスを披露した。
たるとにいたっては派手なブレイクダンスを決め、観客を魅了する。
曲も終わり、ライトが激しく光ったかと思うとステージは暗転した。
●お色気パート
『お次はユニット・ソロパート。今日は新曲多いから期待してねー』
ステージは手馴れた由稀のMCによって進んでいく。
着替える必要のないミオが白いファー付のサンタ風レオタードにサンタ帽のちょっとセクシーな衣装でギターを片手にステージに立った。
お色気アイドルとして有名になっているミオらしいスタイルである。
『今回‥‥初めて作詞、作曲しました‥‥聞いてください』
スタンドマイクの前に立ち自己主張をしている胸をベルトではさむようにギターを構えるとミオは曲を弾きだした。
―一日の夢 明日への夢― 作詞・作曲:ミオ
♪〜〜
たった一日 主役になれる日
その一日だけは 主役になれる日
カレンダーに丸を付けて 指折り数えて
その日を待つの
何日も前から 何を着るか考えて
プレゼントも ケーキも用意して
ドキドキしながら その一日を待ってるの
朝からハートは高鳴って 少しメイクに気合入れて
待ち合わせもソワソワ
なのに貴方ったらいきなり遅刻
一瞬一秒も無駄にしたくないのに
でもその笑顔を見るだけで
ちょっと頼りない腕を組むだけで
全部許してあげる
さ、舞台の幕は上がったばかり
今日の主役は私と貴方
めいっぱいにいきましょ
〜〜♪
アップテンポのリズムに合わせ胸を揺らしてミオは歌いきる。
「「みおちゃーん、せくしー!」」
客席から聞こえた声にミオはテレながらお辞儀をするとステージの脇に下がった。
『はーい、歓声ありがとう。私には何もないのか! といいたいけれど、ここは抑えて次にいくわよ』
ミオが歌っている間に白を基調にした男物のカジュアルスーツ。アクセサリは銀十字のペンダントといった姿に着替えてきた由稀がライトに照らされステージに上がる。
『次は私達ユニットの曲ですよ』
ステージの反対側から白いワンピースへと着替えた弓が出てきた。
二人の衣装は椛の機転で用意されたものであり、具体的なものは決めずじまいだったが助かっている。
『そうだったわね。それじゃあ『Come Across』で2曲続けて聴いてちょうだい』
由稀の大きな声と共にイントロが始まった。
―Aim today― 作詞:加賀弓
♪〜〜
きらきらと舞い落ちる銀を見上げて
いつかと同じ願いを 僕は君と約束交わす
いつかと同じ今日を また過ごそうと囁く
真白な地面に足跡刻み歩んだ 君といる今日を目指し
過ぎ去る今日を抱きしめ また訪れる君といる今日を目指す
僕と君の約束を この白い聖夜に誓おう
〜〜♪
―Time― 作詞:鷹代由稀
♪〜〜
止まっていた時計の針 動き出す
踏み出せなかった闇の中 君という光を見つけた
辿り着くには遠いけど 失った時間取り戻すため 踏み出すんだ
もう止まらない 止まっちゃいけない
動き出した時の中 旅を続けるんだ 約束の場所まで
〜〜♪
しっとりした大人のバラードナンバーとアップテンポのポップスが二人によって歌われる。
『続いては、IMPのアダルトな魅力担当、某所水着コンテストでも入賞をした弓のそろを聞いてね』
『そ、そういう紹介の仕方は‥‥こまります。はい、コミックレザレクションの時から考えていた新曲を聴いてください「Easy’s(イージス)」』
由稀の紹介に照れつつも弓が一礼をし、歌いだした。
●アクションパート
「時間が開いちゃったけど、初めてのハニーフラワーのステージ。頑張らなくっちゃね?」
「次の出番、主役は私とふーかだ。全力で目立つ!」
初ステージを心配していたふ〜かだったが、たるとはいつも通りのため安心する。
由稀達が盛り上げている間に着替えを済ませて、照明の上に二人は立っていた。
『我らはハニーフラワー! ちゃんと知ってるだろうな!』
由稀から紹介をされると、たるとはマイクを片手に覚醒し、光りだす。
『ハニーフラワーでは初めてのステージだから楽しんでね』
『よし、いくぞふーか!』
ふ〜かが挨拶をするとたるとは叫んで照明の上からジャンプした。
くるくると空中で回転をしながら、着地してマイクを持つ手を高く掲げる。
『ならば、聞くがいい!』
『それじゃ、今日のために作った新曲だよ。ハニーフラワーでSnows』
ふ〜かの合図でアップテンポな曲が始まった。
―Snows― 作詞:ふーか
♪〜〜
この瞬間(とき)に生まれたあなたとの絆
鈴の音が二人を祝ってる
あなたといれるなら
白い奇跡が舞い降りる夜
街の灯りが二人を優しく包み込む
零れ落ちた涙が白雪に溶けて
あなたが欲しい 全て委ねる
〜〜♪
二人が歌うのはお互いに好きだったのに一歩を踏み出せなかった二人が、聖夜に一歩を踏み出す、そんな切ない気持ちを希望あふれたアップテンポな曲調に乗せた歌である。
白をベースにふ〜かは赤、たるとは青のアクセントとしてリボンやリストバンド、ブーツをつけた衣装はアニメヒロインさながらだ。
「「二人ともかわいいー!」」
男性だけでなく女性ファンからも声が飛び、二人のアクロバティックなダンスに歓声が沸く。
『みんな! いい夢見れた? そうだったら、ふ〜か嬉しいな☆』
猫かぶり縁起をきっちり決めた風華はウィンクを飛ばしてステージ袖に下がった。
「やっぱり‥‥軽い拷問だよ‥‥」
ハニーフラワーとバトンタッチで入れ替わったジーラがステージに立つ。
『皆、今日はきてくれてありがとう。ライブはまだまだ続くから一緒に盛り上がっていこうね! ‥‥ぁ、こ、この格好はボクの趣味じゃないんだからね!』
「ジーラたーん!」
『た、たんってつけないでよ‥‥ばか』
ジーラの格好は育ての姉が送ってきたってきたねこみみふーど&ぐろーぶにゴスロリ仕様だ。
いつものスポーティな格好とは違った可愛い魅力あふれる選択である。
『と、とにかく曲いくよ! ボクの新曲だからちゃんと聴かなきゃだめなんだからね!』
ツンデレらしさを遺憾なく発揮して、ジーラは踊りながら歌いだした。
―Holy Bell― 作詞:ジーラ
♪〜〜
チープなLove Song ずっとバカにしていたよ
チープな運命だとか あるはずないと思ってたから
あの日キミと出会った 本当に些細なこと
手を寒いからと 包み込んだ瞬間に
真白な雪の中で 小さな鐘が鳴るよ
誰も気付かない 私だけが気付いてる
祝福の鐘を鳴らせ! もっともっと大きく!
始まってしまったその気持ち なくさないために
祝福の鐘を鳴らす きっとキミとこれから
走り始めたこの気持ち 止められないから
〜〜♪
ジーラといれかわりでステージに上がったのはコハルである。
『初の作詞曲だよ。サンタクロースの代わりに皆へプレゼントこれで冬なんか吹き飛ばすよ!』
太ももの真ん中くらいまでのパンツに、インナーが背中の開いたノースリーブのホルターネックというロックテイストの強い衣装のコハルが元気に歌いだした。
―Winter Rush― 作詞:葵コハル
♪〜〜
キミと過ごす初めての冬 色づく街みたいに
わたしの胸も弾んでる
待ち合わせ30分前 期待と不安が
白い息に流れていく
先に待つわたしを見て 慌てて走る君の手をとり
人波みを駆け抜けよう
木枯らしなんかかき消して ギュッと手を握り締めて
二人並んで街並みを歩く 心まで暖かいのは 繋いだ手のおかげカナ
それでも恋人達を見て ちょっと不安になる わたし達も「恋人」で良いの?
だからもっと近づきたくて 我慢できなくて腕を絡め 驚くキミを逃がさないよう
強引に温もりを交換する 落ち葉と一緒に踊るみたいに
〜〜♪
アップテンポの曲と共にコハルは歌って踊りきる。
「色っぽいよー! こはるちゃーん!」
客席からの声援に手を振ってこたえると、コハルはステージを後にした。
●ラストパート
IMPでは数少ない男性アイドルであるラシードがコハルと入れ替わりステージへと出る。
操作室にいた美月姫はミラーボールを動かした。
『エキゾチックな魅力が急上昇のラシードよ。新曲はバラードだから期待してよ』
緊張で動けないラシードを由稀がMCとして背中を押す。
(「大きな会場‥‥たくさんのお客さん‥‥あれ。僕、どうして歌おうと、思ったんだっけ‥‥?」)
しかし、ラシードの心は緊張にとらわれいた。
マイクを持ったまま視線が泳ぐ。
その先には京夜が見えた。
(「そうだ‥‥笑顔を‥‥」)
目を閉じ、見開くとラシードの耳に音が聞こえる。
モノクロトーンのグループ衣装のラシードが構えると曲が始まった。
―White Shine― 作詞:ラシード
♪〜〜
ねぇ気付いて 一人じゃない
僕はここにいる 君のすぐ傍に
泣いてもいいんだよ
虹みたいな笑顔 生まれること
僕は知ってる
真っ白な夜を きらきら埋め尽くす
この輝きを 君に贈るから
〜〜♪
ラシードに変ってステージに立ったのはケイである。
『私は今、アジアでチャリティー活動をしています。皆さん協力をお願いします〜』
セーラー服姿のケイはハートフルリボンを巻いた手を掲げて訴えた。
それを合図に曲が始まる。
―フレッシャー― 作詞・作曲:常夜ケイ
♪〜〜
ショーウインド
駆抜ける風はふた足速くて
日差しを浴びて輝く制服☆おんなのこ♪
渋滞待ちの交差点
昨日までは二人で青息吐息だったね
ガラスに映る新車見て、わたし思ったんだ
毎日が卒業、少しずつ卒業式
幸せの積み重ねが本当の幸福だねって
Anytime anywhareたぶん
貴方とならきっと飛立てそうな気がするよ
Maybe
どんな言葉よりも語り合える
きっと支えあえる
一緒に飛ぶよTake off
〜〜♪
ジーラの協力の元、スモークと花道のあわせ技が決まった。
『皆さん、本日はありがとうございます。今年もあと少しですけど、今日のライブを楽しんで来年に向けて一気に私達と一緒に駆け抜けてください』
派手な演出をしたケイのあとにIMP統一衣装にドレス系でアクティヴに仕上げた衣装の美月姫がソロパートのトリを飾る。
持ち歌である『駆け抜ける風』をアップテンポアレンジで歌いきった。
『最後に全員で歌うわよ。Natural!』
美月姫の歌の最中に各自でアレンジを施した統一衣装を身にまとい、ステージに現れ歌いだす。
個性が強く手も心の本質は同じだと示すような姿でアイドル達はライヴを大成功に導いた。
「時間のある限り多くの人と触れあいたいので、皆さんも協力してください」
その後のサイン会や握手会も美月姫やラシードががんばりをみせる。
傭兵アイドル達に幸あれ。