タイトル:【京都】力継ぐ運命・破マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/20 15:51

●オープニング本文


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●京都府丹後・富士原邸
 日本三景と呼ばれる景色のひとつ、天橋立を眺めることのできる傘松公園。
 その麓に大きな屋敷があった。
 富士原氏と呼ばれる丹後地方を統治している家の屋敷である。
「天羽君(あまはのきみ)様、八洲・狛(やしま・こま)というものが謁見を求めております」
「入れなさい、夫であった富士原・猛(ふじわら・たける)に仕えていたものです」
 和装の侍女からの報告を受け、十二単を着込んだ妙齢の女性が答えた。
 長い黒髪をして、屋敷により天橋立を眺める姿は平安時代の光景に思える。
「失礼します。ご無沙汰しておりました、天羽君様」
 しばらくして、短めの髪を逆立てた男が片膝を立てて姿を現した。
 粗暴そうな身なりをしているが、男は礼をして尽くしている。
「狛、京都市の方で世話になっていると聞きました。主人の亡きこの地に戻ってきたのは何用でしょう?」
「申し訳ございません。確証なかったため、今までご報告にあがりませんでしたが、猛様のエミタを継ぐものを京都市で見つけました」
 天羽君が狛の言葉に驚きを見せた。
「山戸・沖那という少年です。こちらに猛様のことを聞きに来るでしょう」
「‥‥山戸という苗字ですか、京都にずっと住んでいたのでしょうか?」
「いえ、以前は島根の方に‥‥天羽君様? お加減が優れないようですが‥‥」
 狛が説明をしている最中、天羽君は血相を変えてふらりと倒れ掛かる。
「いえ、大丈夫です。下がってよろしい」
「はっ、後日沖那をつれてこちらに謁見に参ります」
 頭を抑えていた天羽君は青い顔をして狛を見送った。
 狛がでていくのを確認したあと、天羽君は視線を天橋立に向けなおす。
 深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「もし、島根に預けた子に猛のエミタが移植されているとしたら‥‥この世の中はなんと残酷なのでしょう」
 胸の奥からあふれてくる感情に耐え切れず天羽君はその場で泣き崩れる。
 2009年12月末日のことだった。
 
●京都府丹後
「刀を持ったキメラ退治か‥‥OK、片付けるから一晩とめてくれないか?」
 地元民からの頼みを聞いて、山戸・沖那はやすやすと承諾する。
 京都市を出てこうして働きながら沖那は生活をしていた。
「よし、いくか! あけましておめでとう。年初めの人助けやらせてもらうぜ」
 笑顔で住民と別れようとしたとき、悲鳴が聞こえてくる。
「ハニワキメラだ! ハニワキメラが来たぞー!」
「ちっ、早速仕事か‥‥あんたらは逃げろっ! ここは俺が食い止める!」
(「お嬢の誕生日には間に合いそうもないな」)
 逃げ惑う人に避難指示を出しながら、沖那はキメラの集団に一人突っ込んだ。

●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
フォル=アヴィン(ga6258
31歳・♂・AA
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN
佐伽羅 黎紀(ga8601
27歳・♀・AA
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
鬼非鬼 つー(gb0847
24歳・♂・PN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

●真実の糸
「人斬りの妖刀がモデルとかいう話でしたが、富士原氏の所持品だったとも。八洲君、富士原氏は曰く付の刀を多くお持ちで?」
 ラルス・フェルセン(ga5133)は間延びのない口調で案内人である八洲・狛に話を持ちかける。
「非SESのだな。しかし、お持ちであった‥‥が正しい。遺体からエミタ摘出後こちらで遺体と共に非SESの刀剣類すべて埋葬したのだが‥‥なぜこうも流出しているのかがわからない」
「沖那君は出雲の養父母の元にどこかから預けられたとか‥‥それも高貴な方であったとあちらで聞いています。富士原氏の名前がタケルというのも引っかかりますね」
 静かに聴いていたフォル=アヴィン(ga6258)が二人の話に入ってくる。
「タケルというのは沖那の覚醒時の人格だったか? 本当は、自分の事だからな〜本人が聞いた方が、良いと思うが‥‥なんか複雑に絡んでそうだな〜色々と」
 神無月 翡翠(ga0238)が頭をガシガシと掻いてぼやいた。
「沖那君は剣術なんか習ったことがないといっていましたが、実戦経験もないはずなのに熟練度の高い能力者と戦いあえたことがあります。そして、初の依頼のときに手段を選ばず敵を倒すために一般人を一人斬ったこともあるんですよ‥‥そのとき、沖那君は」
「タケルと名乗ったか‥‥エミタの力といってもそこまで上手くいくものでもないだろう?」
 説明をするラルスへ堺・清四郎(gb3564)が頷きながら言葉を出す。
「ええ、沖那君のエミタは『死んだ能力者についていたもの』を移植されていました」
 フォルがラルスの代わりに堺へ答えた。
「そこまでお前たちは知っているのか‥‥それならば、まず確定か」
 一緒に説明を聞いていた狛が驚いたあと、顎に手を置いて呟く。
「何が決まりなんでしょうか?」
「適合職も一緒ならば‥‥山戸は富士原猛様のエミタを移植されたものだ」
 狛のはっきりした言葉をラルスとフォルは静かに聴きとめた。

●出雲と京都
「数だけ多いぜ、くそっ」
 10体目となるハニワキメラを倒して、沖那は悪態をつく。
 住民を襲うわけでもなく、沖那をまっすぐ目指してきたのは助かった。
 なるべく引き寄せながらまとわりつこうとする敵を沖那は夕凪で斬り裂いている。
「大丈夫か? 加勢に来たぜ」
「ったく‥‥新年早々、山戸とキメラ退治か‥‥今年も‥‥変わり映えしねぇ‥‥一年だな‥‥これはよ‥‥」
「やぁ、精が出るねぇお兄さん‥‥鬼の手でいいなら貸そうか?」
「これで逃げずに倒せる。悪いけど、頼む」
 麻宮 光(ga9696)、玖堂 暁恒(ga6985)、鬼非鬼 つー(gb0847)の3人が現れると、敵の軍団に向けていた背中を仲間に見せた。
 それを合図に3人のグラップラーは『瞬天速』を使い一気に間合いを詰める。
 一度通りの少ない広場のような地形に沖那が誘導していたので、全力でハニワキメラを潰しはじめた。
 いくつもの戦場を駆けてきた三種の風の動きに一瞬、沖那は見とれる。
「それにしても沖那さん同性にモテモテですね。もっとも、見とれた相手が女性だったらあの人に密告しちゃいますよ」
 佐伽羅 黎紀(ga8601)が見とれている沖那の頬をむにっと摘まんで微笑んだ。
 目は笑っていない。
「う、うるさいな‥‥あんたには関係ないだろう!」
 顔を赤くした沖那は夕凪をふるってハニワキメラに向かった。
「土くれごときに鬼は倒せないぜ」
 瞳を銀(しろがね)にし、肌を赤くしたつーが鬼金棒を振るってハニワキメラを薙ぐ。
 フォースフィールドで受け止めきれず、ボロボロと崩れ落ちた。
「埴輪なら埴輪らしく、土の中に埋って大人しくしておけ!」
 『疾風脚』で脚力も強化した玖堂も隙間を縫って動き、ショットガンでひるませたあとに爪のついている蹴りで潰す。
「玖堂さんは沖那君から離れないでください。疲労たまっているのは沖那君のほうなのですからね」
 黎紀は玖堂に注意を促しながらもヴィアとサーベルの両方を振るってハニワキメラを倒した。
 沖那に加勢が着たようにハニワキメラも増援がきて苦戦したが、無事倒しきる。
「‥‥終わったか? 周囲への被害はどんなもんだ‥‥?」
 光が周囲を確認するも、差して被害は見当たらなかった。
 逆を言えば、沖那を狙ってきている可能性が高いことを示している。
「お疲れさんだ‥‥まあ今年も‥腐れ縁が‥続くみてぇだな‥‥?」
 思案する光とは別に玖堂が沖那の肩を叩いた。
 暴走がなかったこともその理由のひとつでもある。
「ちょっと、そこの人聞きたいことがあるんだがいいかい? ハニワキメラってのはこの辺じゃよく出るのかい? 出雲って印象があるんだけどさ」
 仕事の後の一杯とでもいうように手持ちの瓢箪をくいっとしたつーが街の老人に尋ねた。
「この丹後には天橋立がありますように日本神話や大和朝廷などに縁のある土地なのです。しかし、ハニワキメラはここ最近数が増えているようですが」
 老人は答えながら、沖那の方を向くと目の色を変える。
「おお、猛様の若きころにそっくりな少年ですな。死んだ猛様の生まれ変わりとしてこの地を平和にしてくれるはずですぞ」
 沖那にべたべたとさわり老人は涙を流して感激しだした。
「沖那君がタケルの生まれ代わり‥‥ですか」
 黎紀は老人の言葉を反芻し、別の意味を考え出す。
 しかし、すぐに首を振ってその考えを消し去った。

●甦る刃
「止まれ‥‥どうやら、出迎えがいるらしい」
 堺が移動を制し、蛍火に手をかける。
 木々の間から光が反射しながら動き、落ち武者のような姿をした男達が刀を持って現れた。
「また、刀かよ? 普通は、こんなに、似たような物現れないと思うんだが、やっかいだな」
 既知感を感じる翡翠だが、敵の持っている刀が以前戦った妖刀キメラという確証はない。
 6体ほど現れた男達は濁った瞳で能力者たちを見ると一斉に飛びかかってきた。
「あの刀は猛さんのものですか?」
「その通りだ。キメラとなっているかもしれない」
 覚醒し、犬のような頭部となった狛にラルスはエネルギーガンを撃ちながら聞けば予想していた答えが返ってくる。
「ならば、得物をまず落としてみましょう」
 近づいてきた落ち武者キメラに『先手必勝』で機先を得たフォルは朱鳳を使い『急所狙い』と『流し斬り』による腕を狙った一閃を放った。
 ズバァと腕が飛んで刀が地面に落ちるかと思いきや、空中を回転した刀がフォルへ加速した突きをしだす。
 キィンとパリィングダガーでフォルは受け止め、当たりだと確信した。
「刀と落ち武者は別々か‥‥ならば‥‥! こい!」
 堺は斬りあいをしつつ、鍔迫り合いと見せかけた『紅蓮衝撃』の一撃を見舞った。
 バキンと刀キメラが砕ける。
「京都で斬り合いとは‥‥まるで幕末だな」
 堺は呟くも落ち武者キメラにがぶりと噛み付かれた。
 そのまま、攻めに転じ様とするが敵は2体のキメラが合わさって1体のようなものである。
 手数では押し切れず、カウンター戦術に移らなければならなかった。
「無茶をせずに確実にいきましょう」
 落ち武者キメラと刀キメラに挟み撃ちされたラルスが翡翠の援護を受けて『急所狙い』と『ファングバックル』で刀キメラを砕く。
「ゾンビの方は物理攻撃が聞きづらいようです。超機械の射程内に入るように動きますので皆さんも協力してください」
 一歩離れて状況を確認していた翡翠が連携を頼みだす。
「わかった」
 狛も『真音獣斬』で牽制していたのをやめ、翡翠を囲むように敵を誘った。
 ラルスが『布斬逆刃』で非物理攻撃をしたこともあり、負傷を受けつつもキメラを排除しきる。
「この家紋に見覚えありませんか?」
 落ち武者キメラの鎧に家紋を見つけたフォルが狛へと聞き出した。
「これは! ‥‥富士原家のものだ。しかし、今こんな鎧で戦うことはない‥‥いったい何故?」
 動揺を隠さず、狛は答える。
 富士原・猛に縁のあるものが二つ、バグアによって合わさって襲ってきたのだ。
「埋葬した刀が流出しているという話だったな? 一度墓を確認した方がよくないか」
 いやな予感がすると続けながら堺が狛を見る。
「狛さんはどう思います?」
「なんともいえないが、富士原家ならびに丹後全土にかかわる問題になりそうだ。天羽君様にも報告しよう」
 ラルスの問いかけに狛は口元に指を置き思案しながら答えた。

●猛とタケル
「ハニワキメラと戦いましたが、この地方では良く出るキメラのようです」
「ふーん、こっちは妖刀キメラと一緒に富士原家の落ち武者と斬りあいをしてきたところだぜ」
 合流を果たした二班は狛の案内で天橋立の麓にある富士原御殿へと向かう間情報を交換する。
 沖那が猛と呼ばれるこの地方の守護者と似ているようであり、エミタは猛のものであるということが合わさった。
 導き出される答えは‥‥。
「天羽君様へ山戸・沖那ならびに彼にかかわってきた能力者をお連れしたと伝えてくれ」
「お入りなさい」
 閉まった門に向かって狛がいうと、門の奥からせせらぎのような声が聞こえてくる。
 門が開くと十二単を着た女性が縁側のようにせり出した場所に立っていた。
「天羽君様だ。無礼の無いように頼むぞ」
「あれがねぇ‥‥」
 沖那がひょいと狛の後ろから顔を出し、天羽君を見ると天羽君と目が合う。
「猛! ああ、やはり貴方は‥‥うっ!?」
 天羽君は沖那をみるやいなや『猛』と叫んだ。
 しかし、すぐに胸を押さえてその場に倒れこむ。
「侍女衆はいないのか! 天羽君様が倒れられた!」
 狛が大きく声を出して御殿の奥へと進みだした。
 侍女たちが現れ、すぐに解放始める。
「沖那君を見てータケルといいましたね〜」
 カマをかける手間が省けたと思いながらも、ラルスは複雑な心境だった。
「ああ、何か助けた街の爺さんにも似たようなこといわれたぜ」
 能力者達と沖那はその場で置いてけぼりを食らっている。
 しばらくして、能力者達は奥へと案内された。
 近くでみる天羽君は見た目麗しい妙齢の女性だが、やせ細っていて健康には見えない。
「このような姿で申しわけありません。主人‥‥富士原猛の亡きあと治世を行ってきましたが疲労が来てしまったようです」
 白い長襦袢を着た天羽君は辛うじて微笑みを浮かべ、沖那へと手を伸ばした。
「貴方には苦労させないように猛と話をして出雲へと預けてきましたが‥‥この京都に来るなんて」
 沖那を見る彼女の姿は子をいつくしむ母親そのものである。
「そんなこと‥‥いまさら言ったって‥‥どうしていいかわかんねえよ」
 大人しく顔や手を触られ、撫でられる沖那だが表情は喜んでいなかった。
 出生を求めていたはずなのだが、再会に感動よりも困惑しか浮かばないといった顔である。
「困るのも判るが、一晩天羽君様のそばにいてやってくれ。頼む」
 狛が礼をして頼むと沖那はしぶしぶ頷いた。
「天羽君様にいくつか確認したいことがございます。質問等よろしいでしょうか?」
 フォルは一歩進み、一礼をする。
「ええ、お話ください。変わりに沖那について知っていることを聞かせてくさい」
 とめようとする狛を手で制した天羽君はフォルの話を聞くべく、静かに微笑んだ。
 
●荒らされた墓
「これが‥‥墓か?」
 翡翠が小高い山のような場所をみる。
 高貴な人の墓という割には地味としかいえなかった。
「大きな墓を作らせて民に苦労をかけさせたくはないというのが猛様の意思だ」
「覚醒の変化とかどうだった?」
 翡翠のつぶやきに近い問いかけに答えた狛へ光も突っ込んだ話を聞きだす。
「猛様は普段、優しきお方だったが、キメラと戦うときは修羅か羅刹かといった姿だった」
 そう、暴走した山戸のようにと狛は続けた。
「戦うときは無論SESの刀剣を複数もって戦われたな。いわくつきの刀類は飾るものとされていた」
 墓に近づき、封じられていた岩戸をあける。
 奥は洞窟で自然にできたものをうまく使っているというのが見てわかった。
「足跡が‥‥あるな。靴でも動物のものでもないようだ」
 覚醒し、蛍火を淡く光らせた堺が足跡を見つける。
 足跡といっても、楕円形できれいな跡だ。
「この跡‥‥昼間戦ったハニワキメラのだぞ?」
 つーの言葉に嫌な空気が立ち込める。
「奥に宝物と一緒に猛様の遺体も収められている!」
 狛が先に走り出し、それを能力者達は追いかけた。
 うねる道を越えたどり着いた部屋。
「嫌な予感があたったようだ‥‥」
 つーが酒を口にしつつ、呟いた。
 棺は砕かれ、一緒においてあるだろうとされる刀剣類も一切ない。
「んだよ、キメラがここから猛の遺体を持ち出したというのか? ややこしくなってきたぜ‥‥」
 頭をガシガシと掻きながら翡翠はため息を吐いた。

● 最後の言葉
「がんばっているので、私からお年玉ですよ」
 会合の終わったあと、黎紀は沖那へ白いお年玉袋を差し出す。
「あ‥‥ありがとうな」
 受け取った沖那は軽く礼を述べるだけで元気には見えなかった。
「ほら、沖那君―。磨利那様の誕生日を電話で祝いましょうよ」
 沖那の気を紛らわせようとラルスが携帯を片手に沖那に近寄る。
「掛け付けたいのは山々ですが、半端に放り出して戻っても磨理那さんにしばかれますしー。なので、ここは我慢して電話だけにしましょうね」
「そう‥‥だな。ああ、そうしよう」
 黎紀の言葉に踏ん切りをつけたのか、沖那の顔色がよくなった。
「あ、もしもし磨利那様。お誕生日おめでとうございます。本当はお伺い出きれば良かったんですが‥‥」
 フォルがラルスに続いて挨拶をしだす。
 沖那が自分の番を待つ間にふっと視線を外に向けた。
 二つの光‥‥人間の瞳と目があう。
「ほら、沖那君」
「お嬢、おめでとう! 悪い、ちょっと用事だ!」
 フォルから手渡された携帯に向かって心ここにあらずといった様子の祝辞を沖那はのべた。
『は? 何じゃ、何をいいだすんじゃ?』
 携帯電話を黎紀に渡すと沖那は屋敷の庭へ飛び出し、そのまま森の方へ消えていく。
「おい、山戸‥‥いっちまいやがったな‥‥まぁ、すぐ戻ってくるだろう」
 不安に思いながらも、玖堂は沖那を追わなかった。
 その日のうちに沖那は戻って来たが、翌日能力者の出発と共に沖那は姿をくらませる‥‥。
「エミタがあるから、あの子は戦わなければならないということなのでしょうか‥‥」
 天羽君は姿をくらました我が子の身を案じながらも今は祈ることしかできない自分を悔やんだ。