タイトル:【IMP】食玩を作ろうマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/11 16:08

●オープニング本文


「この度はありがとうございます」
「こちらこそ、そちらには期待していますよ」
 スーツ姿の男性同士が握手を交わす。
 ここはラストホープのドローム社オフィス、製菓部門の会議室だ。
「ご期待に添えるようにしっかりとプロデュースさせてもらいます」
 会議室からでていくドローム社のネームプレートをつけた男性を、もう1人の男性‥‥米田時雄は笑顔で見送る。
 扉が閉じられると米田はそばにいた秘書に打ち合わせをしていた資料を手渡した。
「今度、ドローム社からでる食玩のプロデュースを勝ち取れました。ここはIMPも乗っからせていただきましょう」
「この資料を見る限り、食べるものはウェハースタイプのもののようですね。レトロな雰囲気を感じますが‥‥同封するものについては指定なしですか」
 秘書は目を通しながら米田に思いついた疑問を口にする。
 どこにでもあるといえばあるものであり、新しさは感じられなかったためだ。
「挟む中身についてバリエーションを増やしたり、同封するものを変わったものにしようかとは思っています。この辺は意見を聞きたいですし、傭兵にコンタクトをとってください」
「傭兵にですか? アイドル傭兵限定でなく?」
「ええ、傭兵にです。ターゲットとしては比較的そちらよりで考えています。彼らの年齢層は若い子も多いですからね」
 秘書に対して眼鏡を光らせた米田はきっぱりと答える。
 
 すぐにUPC本部に依頼が出された。
 
 『貴方の手で食玩をプロデュースしませんか?』

 傭兵らしからぬ依頼は果たしてどうなることやら‥‥。

●参加者一覧

ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
緋霧 絢(ga3668
19歳・♀・SN
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
常夜ケイ(ga4803
20歳・♀・BM
月神陽子(ga5549
18歳・♀・GD
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG

●リプレイ本文

●緊急参戦!
「食玩? 語らせるとちょっと長くなりますがよろしいですかな?」
 鈴葉・シロウ(ga4772)は眼鏡を光らせて米田に詰め寄る。
「手短にたのみゃーせ。品ができにゃーと意味ないでよ」
「え、えっと挨拶よろしいでしょうか? 赤宮と申します。アイドルではありませんが、よろしくお願いします」
 残念そうなシロウに代わって、赤宮 リア(ga9958)が米田に礼儀正しく頭をさげた。
「べっぴんだがね、アイドルとか興味にゃーか?」
「え、遠慮させていただきます」
 さらっと流したシロウとは違い、営業スマイルを輝かせて米田はリアに詰めるもあえなくスルーされてしまう。
「おほん、品ができなければ意味がないのでしょう? スカウトは次の機会にしてくださりません?」
 服の隙間から包帯が見え隠れする姿ながらも月神陽子(ga5549)は気丈に振舞った。
「おお、それもそうだがね。先にIMPのメンバーははいっとりゃあから着いてくるでよ」
 陽子の包帯をみながらも米田はあえて触れない。
 振り返り、アイドル達が準備をしているドロームLH支社の会議室へと3人を連れていくのだった。
 
●たかが食玩、されど食玩
「傭兵向けの食玩、ねぇ‥‥。傭兵と一口に言っても色々いるからなぁ‥‥中々難しいかも。まぁ色々考えてみようか」
 ジーラ(ga0077)はイスに座りながら、上を見上げた。
 殺風景な白い天井だけが視界に入るだけで、アイディアは固まらない。
「おー‥‥ついにドロームからの依頼をゲットしたと‥‥ウチの社長ってスゴいね」
「おみゃあさんがたのお陰だでよ。一年前の状況からじゃ想像できんかったで」
 素直に関心する葵 コハル(ga3897)の頭を米田がワシワシっと撫でた。
 確かに、売り込みよりもオファーが増えてきたのは事実である。
「それでもアイドルの仕事としては少しハードルが高いと思います」
 ミオ・リトマイネン(ga4310)は自分ではあまり買わない未知の領域に頭を悩ませていた。
「食玩は玩具がメインでお菓子がおまけとなりやすいので、そんなことのない様にしないといけませんね」
 ドローム社から提示された資料を配りながら、緋霧 絢(ga3668)は一番重要とするコンセプトをホワイトボードに書き込む。
 
『お菓子を捨ててはいけません。最後まで食べましょう』

「重要だね」
「重要です」
「そのコンセプトでゴーゴー♪ 早速本題を詰めていきましょう」
 常夜ケイ(ga4803)の一言で皆一斉に資料を見だした。
 
●まずはお菓子から
「単純なウェハースでは無く、砂糖不使用で代わりにドライフルーツを練りこんで甘みを出すなど、健康面に配慮して欲しいところですわね」
 陽子がドローム社からの要望でもあるウェハースの意見をぽつりと出す。
「私はウェハースにチョコをコーティングさせたものがいいかなと思うのですが‥‥」
「でも、チョコでコーティングすると暑いところだとベトベトになるんだよねー」
 リアの意見にコハルが難色を示した。
「『いつでも、どこでも、手軽に』の三拍子は押さえたいとこだがね」
 商品を売り出すに渡り、米田なりに考えているコンセプトを両腕を組みながら話す。
「依頼中の一息などで取れると確かに‥‥でも、しっかりした甘さのものが嬉しいです」
 お茶を飲みつつ、ミオが構想上のお菓子に思いをはせた。
「『戦う傭兵のお供』であることを妥協してはなりませんわね」
「そのキャッチフレーズはかなりいいね」
 陽子の口からでた言葉をジーラはすかさずホワイトボードに書き込む。
 『重要』と小さなデフォルメされたリンクスが前足で文字をさすイラストもついでにつけた。
「皆様の意見をまとめますと、ドライフルーツで味をつけた日持ちをするものということで中身にチョコを入れる形で味わけを今後つけてみるということでどうでしょうか?」
 絢がホワイトボードに書き込みをくわえる。
 空白の多かったホワイトボードもすでに半分くらいが文字で埋まっていた。
 字の大きさもわかりやすいように大きく書いてあるが、女性ならではの拘りが見え隠れしている。
「バリエーションとしてはお酒のおつまみ風とかどうかな? あとはサプリメント要素も欲しいかな?」
「本当の傭兵らしい大人バージョンってやつにゃーね? ビール味とかええがねぇ。あ、手羽先! これは外すわけにはいかにゃーよ!」
「しゃ、シャチョー。趣味に走りすぎちゃダメー!」
 ケイの案に身を乗り出して、賛同‥‥いや、自分の好みをぐぐいっと押し出す米田をコハルが思わずチョップでとめた。
「味の案については今でているものをとりあえず試作で作ってもらうということでどうでしょうか?」
 チョップを受けて倒れた米田に絢は無表情のままに聞く。
 返事は返ってこなかった。
「米田さんも気絶されているようですし、少し休憩にいたしましょう」
「そうしましょう」
 何事もなかったかのようにすすめる陽子に絢も頷く。
 冷静に対処できる二人を頼もしく思う反面、恐ろしく感じる傭兵達であった。

●おまけというよりやはり本題
 米田が目を覚ましたところで会議は再開する。
「さぁ、ついに本題ですね。食玩のおまけ‥‥それは子供達の夢。宝くじにも近いレアを当てる感動は忘れてはいけません」
 シロウは顎に手を当て、ニヒルに笑った。
 あまりに興奮してきたため、覚醒して頭部が白熊になっているがそこは誰もがスルーしている。
 監修担当を自負し、絢の代わりにホワイトボードの横にシロウは立った。
「まずはどんなものをいれるかだがね? 先方から指定はなかったでよ」
「これは悩みますね。普通に考えればKV模型ですね」
「KV模型シリーズはいいですわね。大規模作戦ごとでシリーズ化しやすいかと思います」
 絢、陽子はKVモノを推す。
「私もKV模型シリーズは考えていました。1BOX12個入り、20種類というところでどうでしょうか。S−01、R−01、バイパーをベースに他社の許可次第で岩龍やK−111も混ぜたいと思っています」
 きゅきゅっと軽快にホワイトボードへ書き込みながらシロウは具体的な売り出しプランを付け加えた。
「う〜ん、リアルな造形だとちょっと反対かな? デフォルメしたタイプなら女の子とかも買うと思うんだ」
 盛り上がりを見せる3人に対して、ジーラはクールに突っ込む。
「つまり、アレですね。KV少女をだせとそういうことですね」
 キラリンとシロウの目が光った。
 ロボを擬人化するというネタは最近はやりだしている。
 無機物と有機物の融合は新たな市場として確立しだしていた。
「そんな意見もあろうかと、用意していますよ。スケッチ」
「さすが監修を自負するだけあるがね、手回しがええがや」
 ささっとシロウがスケッチを配りだす。
 『S−01:素直クール』『R−01:突撃元気っ娘』など、KVの特殊能力を反映したかのような特徴を持った二次元少女が描かれていた。
「スィングフィギュアというのはどうでしょう? ラストホープで有名な方たちのものとか‥‥」
「UPCやUTLの関係者ならまだ交渉の余地はあるが、一介の傭兵まで含めるとなると管理がちょっと厳しいがや。今後の交渉次第ってことで今回はパスでたのみゃー」
 ミオの意見は米田により保留となった。
 もっとも米田の本音としてはアイベックス協力なので、もっと自社アイドルを売りたいというのも合ったかもしれない。
「ふむ、ですがKVについては大丈夫ならこの擬人化少女スィングフィギュアというのも1つの手かもしれませんな」
「購買意欲とコスト問題、消費者と生産者の要求を満たす為に! あたしはカード型のオマケを押したいと思います!」
 シロウが話をまとめようとしたとき、今まで黙っていたコハルが机をバシンと叩いて立ち上がる。
「武器とか防具とかショップ売りしているのをメインに解説でうちらIMPがデフォルメで書かれているとかいいと思うんだ」
「傭兵メインならそういうのもありだがね」
 ふむと米田がサングラスを光らせて笑った。
「トレカというのもありなんじゃないかなぁ。傭兵同士で遊べると面白いと思う」
「種類が膨大になってしまうのがネックですね。レアデッキを組もうと思うとそれだけ買って食べないといけませんね」
 メリットとデメリット。
 ホワイトボードを埋めつくほどに書かれた商品内容に兼ね合いが一番難しいと傭兵達は唸った。

●何か忘れていませんか?
 一度解散し、数日後傭兵達はドロームLH支社に集められた。
 ドローム社の製菓開発部の人間も含めての試食会である。
「あのー、そういえば気になったのですが‥‥」
「赤宮さんどうかされましたか?」
「いえ‥‥この商品名って相談されてませんよね?」
 廊下にて発せられたリアの一言にその場にいた傭兵達は固まった。
「そういえばぜんぜん考えてなかった‥‥です」
「プロデュースする商品内容ばかりで、名称については盲点でしたね」
 ミオと絢が無表情に答える。
 声に動揺が混ざっているのは確かだ。
「どれになってもいいようにと私は考えてきたんですよKV模型なら『KVリアルコレクション』、武器シールなら『SESアームズギャラリー』、デフォルメキャラなら『UPCマスコットパーティ』とかですけど」
「うーん、その辺は社長に投げて決めてもらおう。うん」
 ジーラは努めて明るく答えるが、試食会の会場に向かう足どりが重くなる。
 不安を抱えながら傭兵達は試食会会場の扉を開けた。
 
●激しい討論
「その台詞。消費者の前でも言えるのならば、メーカーの開発者など辞めてしまいなさい!」
 試食会会場に陽子の怒号が響く。
「そうはいいましても、顧客に対して大きな指摘は商品価値を‥‥」
 理由は簡単。ドローム社の担当がパッケージに『お菓子を捨てずに食べよう』という文面を入れることに難色をしめしたのだ。
「たとえ、おまけ(食玩)のおまけであろうとも、食品に携わるものにとって、自らが作った製品が食べられもせず捨てられる事など、恥だと知りなさい!」
 机からみを乗り出し、陽子が鬼のような形相で担当者に詰め寄った。
「この味はあたしは好きだよ。これで長期保存ができればいいとおもうよ〜」
 場の雰囲気をなだめるためにコハルが試食品のいいところをあげる。
「ふむ、それでは妥協案としてこういうのはどうでしょうか? パッケージデザインも含めKV擬人化少女で『私を食べてー』みたいな可愛らしくてモエモエな感じで注意を促すとか?」
 冷静に、されど己の吟じを貫きつつシロウは意見をだした。
「私の希望をいれるのであれば、IMPたちにモデルをやらせたいところです。もちろん一部のレア扱いとしてで構いません。シールタイプとすれば種類が豊富となり、保存食扱いにできるなら買いこみも自然となるでしょう」
 米田もスーツ姿に眼鏡でドローム社への売り込みをする。
「当社としてもそちらの人気を重視したいと思っていましたので、それで構いません。忠告文もキャラクターが話す柔らかなものならば大丈夫です」
 しばらく考え込んでいた担当も納得した。
「KV模型やブルーファントムやミユ社長フィギュアの方は食玩というよりはフィギュアコレクションということで検討してもらえれば幸いです。こちらも傭兵側の要望で多かったものですから」
 納得した様子の担当に米田が次期商品の売り込みを行い、試食会は終了した。
「紆余曲折いたしましたけれど、無事終わってなによりですわ。テレビで見かけるIMPの皆さんとご一緒できて光栄ですわ」
「傭兵がメインでも普通の子達も買ってくれるようなものになるといいよねー。そういえば社長、商品名は結局どうしたの?」
「それはCMを見てからのお楽しみだがや」
 試食会も終わり和気藹々となる中、コハルの疑問に米田は不敵に笑って答えた。

●CM?

 ♪〜〜
 
 パワフル♪ パワフル♪ 覚醒全開、傭兵だ!

 俺たちゃ強いぞ、エースを目指すぞ

 地球はあ・ん・た・いだ〜

 キメラ倒しは、任せておくれよ

 スチムソンシステム

 ステキな発明〜

 ガンガンHEAVY

 ガ♪ ド ♪ リングで〜♪

 傭兵さん、傭兵さん

 俺たちゃ人気者
 
 〜〜♪

 楽しげなリズムに乗せて、やや物騒な歌詞の並ぶ歌と共に常夜ケイがカメラの前に出てくる。
『外はさっくりウェハース、中はドライフルーツとチョコの甘さ広がる新しいお菓子! 女性に優しい糖分控えめでさらにハッピー!』
 出てきたチョコをパクリと食べると、目を閉じて唸りだすケイ。
『いつでも、どこでも、手軽に楽しめる保存食にも最適! 明日から依頼の必需品はこれで決まり!』
 ババンという効果音にあわせて商品の断面モデルからパッケージされた商品へと映った。
 パッケージにはプロテクターを装備した少女達が描かれている。
 少女の口から吹きだしがでていて『お菓子をすてちゃだめだぞ♪』などと可愛く忠告もしていた。
 よく見れば、それがS−01やR−01などKVがモデルとなっているのが分かる。
『『戦う傭兵達のお供』ドローム社から新発売の『Charging!〜KVガールズパーティ・名古屋編〜』を皆買ってね!』
 商品名テロップがドンと上から落ちてきて、それにあわせて屈んだケイが両手にシールを持っている姿で宣伝をした。
 
 
 『ラスト・ホープ内コンビニエンスストアにて近日発売!』
 
 傭兵達の夢(一部萌え)の合わさった商品がここに完成したのだった。