タイトル:【Hw奪還】死闘遊戯マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/05 23:28

●オープニング本文


 ――カナダはオタワにあるUPC北中央軍の戦艦ドック。
 そこには完成したばかりのユニヴァースナイト弐番艦が船体を横たえ、出航の時を待っている。
 船体は壱番艦と同じ、白地に赤のラインが入ったカラーリング。しかし、壱番艦と異なるのは、特に目を引く艦首に付けられた対艦対ドリルだろう。その上に主砲の対衛星砲SoLCが燦然と輝き、艦橋の前後に三連装衝撃砲が搭載され、取り囲むように連装パルスレーザー砲が設置されている。
 また、艦底部には艦載機を発射させる遠心カタパルトが2基備えられている。
「いよいよですな」
「ああ。これで我が軍もバグアに後れを取る事はなくなる。奪われた地を取り返す事も出来る」
 弐番艦を感慨深く見つめる2つの人影。1つはUPC北中央軍を指揮するヴェレッタ・オリム(gz0162)中将。もう1つはこの弐番艦の艦長覇道平八郎中佐だ。
「欧州軍がグラナダ攻略に動いてくれたお陰で、東海岸側のバグアの主力部隊も今は迂闊に軍を動かせまい。西海岸の都市を奪還する好機だ」
 オリム中将は壁に備え付けられたモニターを操作し、北米の地図を呼び出す。西海岸の南に、作戦の目標値が赤く点滅していた。
「ハリウッドですか」
「正確にはロサンゼルスだが、ハリウッドと言っても過言ではない。ハリウッドを取り戻す事が、本作戦の最優先事項だからだ」
 ロサンゼルスはまだ完全なバグアの支配地域ではないが、市街地にバグアの侵入を許してしまっている競合地域故に、ハリウッドで映画が制作できない状況にあった。
 アメリカ人にとって映画はアイデンティティの1つであり、北アメリカの「歴史」なのだ。
 ハリウッドを取り戻す事で、北アメリカ人の士気を大いに高める事が出来る。それは消耗品でしかない一般兵の補給に直結していると言えた。
 もちろん、それだけではない。北アメリカを南北に貫くロッキー山脈の存在だ。バグアといえども一部の機体を除き、ロッキー山脈を越える軍の展開は鈍るのだ。東海岸側のバグアの目がグラナダに向けられている今なら、西海岸側のバグアとメキシコのバグア軍を相手にするだけで済む。

 斯くして、オリム中将の指揮の下、ロサンゼルスならぬハリウッド奪還作戦が開始される事となった。
 
●チャイナタウンの夜
 ロサンゼルスのチャイナタウン。
 ブロードウェイを挟んで並ぶ漢字の看板を掲げる店が建ち並んでいる。
 夜にはネオンが輝き、優美な曲も流れて賑わう町だ。
 そんなチャイナタウンの酒場に派手な服を着た男が数人の黒ずくめを引き連れて入ってくる。
「兄ちゃんはどこかで見たような顔だが、有名人かい?」
「ククッ‥‥そんなところだ」
 男は口元だけで笑い、店にいる男達を値踏みでもするかのように見回した。
「人探しかい?」
「ああ‥‥だが、ここには強い男はいそうにない」
 店主からの質問に男は鼻で笑い店を出ようとする。
 飲んでいた男達はその言葉が不服なのか男を睨み付け出した。
「若造がいきがるんじゃネェよ。このチャイナタウンの男は皆、ガキのころから武術を収めてるんだよ!」
「そうか、それならどこまでやれるか俺が見てやろう‥‥ゾディアックのアスレードがなぁ!」
 男の言葉にアスレード(gz0165)が自ら名乗りを上げる。
 背後に控えていた黒ずくめ達がローブを取ると腐り落ちた顔をした姿が現れた。
「アスレード!? 後ろにいるのはキョンシー!」
「さぁ、宴を楽しもうじゃないか! 逃げ惑い、怯え、それでも生きるために牙を剥け!」
 一斉に逃げ出そうとする人々をキョンシーと共に追い立てるアスレードは高く笑う。
 夜のチャイナタウンに笑い声が広く響き渡った。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
夏 炎西(ga4178
30歳・♂・EL
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
イリアス・ニーベルング(ga6358
17歳・♀・PN
ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA

●リプレイ本文

●恐怖再び
「あいつがいる‥‥」
 月森 花(ga0053)は月明かりに照らされる雑居ビルの屋上でアスレード(gz0165)を確認する。
 思わず身震いをし、両手で肩を抱いた。
 ドミニカ共和国にて目の前で消えた命を花は忘れていない。
『花、アイツは屋上にいるんだな?』
 いつにもまして淡々とした宗太郎=シルエイト(ga4261)の声がトランシーバーより聞こえた。
 アスレードに対して強い感情を持っているのは花だけではない。
「うん、いるけど‥‥ボクシングの試合をしているみたいだよ」
『あの野郎‥‥必ず一発殴ってやる』
 花の言葉を聞いているのかいないのか、宗太郎の口調は怒りがあらわだった。
 恋人である花でさえ恐れるほどに‥‥。
『まずは私が壁を駆け上がって上にあがります、あとで合流しましょう』
 イリアス・ニーベルング(ga6358)の宗太郎を落ち着かせるかのような声が花にも届く。
「ボクも少し遅れるけど、ちゃんと行くからね。もう、誰の命も失わせないようにしよう?」
 心配になって花も宗太郎へと声をかけるが、返事はなかった。

●耐えるとき
(「魚座‥‥何という傍迷惑な! 絶海の孤島に塔を築く位の甲斐性を持て!」)
 騒動に巻き込まれ、3階へ避難してきた夏 炎西(ga4178)は内に怒りを抱く。
 アスレードがはなったキョンシーキメラは15体、どのように配備されているかはわからないが、まともに戦うのは危険すぎだ。
 今はSES武器を持ってすらいないのだから‥‥。
「みんな、聞いてくれ。黙っていて悪かったが、俺は‥‥能力者だ」
 炎西と同じく食事に来ていた神無 戒路(ga6003)が黒髪を白に染め上げ、体中に赤い呪印を浮かび上がらせた。
 ”覚醒”と呼ばれる変化に共に避難してきた客達は騒ぎ出す。
「能力者ならあいつらを倒して俺たちを脱出させてくれ!」
「そうよ、こんなところでじっとしていることなんてないわよ」
「皆さん、落ち着いてください。能力者といっても万能ではないんです。私たちはキメラに対抗するための武器を持ち合わせていません。貴方達と同じなんです」
 炎西も立ち上がり、覚醒を行なった。
 左鎖骨から頬にかけて黒い炎のような痣が浮かぶ。
「そういうことだ。だが生き残るための協力はできる‥‥手伝ってくれ。これだけの騒ぎだから仲間がすぐにやってくるはずだ」
 覚醒を解いた神無は協力を求めた。
 騒いでいた一般人も落ち着き、頷いた。
「まずは二手に分かれましょう。男性の方は私達と一緒にテーブルやイスを使ってバリケードを、女性や力のない方はテーブルクロスやカーテンをはずしてロープを作ってください」
 炎西は落ち着いた様子の人々を見て一安心し、作業を指示する。
 てきぱきと動ける能力者に感心しながらも、一般客は作業に入った。
「あれ、そういえば逃げているときにライディさんを見かけたような‥‥」
 ふと、炎西は騒動で3階に上がるときにみた知り合いの姿を探すが見当たらない。
「気のせい‥‥ですよね」
「おい、自分で言っておきながら手伝わないのか?」
「すみません、今行きます」
 神無が注意すると炎西は頭によぎった不安を取り払った。
 簡易ロープを垂らしていると、すぐに引っ張られギシギシと鳴り出す。
 そして、ブレイズ・S・イーグル(ga7498)が姿を現した。
「タイミングが良かったな。応援を聞きつけてこっちにきたら丁度ロープが垂れてきぜ」
 背中にコンユンクシオ背負ったブレイズの姿に一般人たちは安心した様子を見せる。
「お前の武器も仲間が今持ってくる、そろったら反撃返しといこうか」
 3階に降り立つブレイズが不敵に笑い返した。
 ロープは揺れ続け、次々と助けが来ることを知らせている。
 反撃の時も近かった。

●友を助けに
「タイミングを合わせていくよ。1、2‥‥さんっ!」
 巡回しているキョンシーキメラを『隠密潜行』にて背後から近づいた花、神無、ラウル・カミーユ(ga7242)は花の合図で一斉に仕掛ける。
 エネルギーガンによる神無とラウルの射撃とサプレッサーをつけた花の小銃「S−01」の不意の攻撃を受け、一体のキョンシーキメラが倒れた。
「まずは一体。あと二体は巡回していたから近くの部屋のVIPから下へ逃がすとしよう」
 神無が倒したキメラに一瞥を与えながら音の変化を探る。
 足音などが大きくなるようなら引き寄せてしまったことになるのだ。
「そうだね。もしもし、誰かいる?」
「この声は‥‥ラウル?」
 ラウルがノックした部屋からはライディの声がし、ドアの鍵を開けて出てくる。
「巻込まれ屋サンめ☆」
 無事であることを喜ぶと共にラウルはライディの頭をウリウリと弄った。
「いたいいたいっ!?」
「お楽しみのところ悪いが、この階で他に人のいそうな部屋はあるか? 目星がつけれるならそれに越したことはない」
 戦闘中にじゃれあうラウルとライディの間に神無は割って入り、ライディに質問投げる。
 花はその間巡回してくるであろうキョンシーキメラの方へ意識をまわしていた。
「この部屋に集まっているのは一部です。まだ他の部屋にもいると思いますが‥‥」
「お客様のご予約ではあと一部屋だけです。ここが303ですから、305の部屋で向かい側になります」
 部屋にいたチャイナドレスの女性がライディの言葉に付け加える。
 どうやら従業員のようだ。
「協力感謝する。階段を挟んで対面か」
「全滅させた方が早いよ。さっさと片付けよう‥‥」
「そだね‥‥階段まで護衛しながらいこっか。そのまま迎撃って感じで」
 ラウルの提案に二人は頷き、行動に出る。
 避難誘導にはライディも協力したためスムーズにいくが、やはりキメラと鉢合わせになった。
「足か頭を潰す‥‥だから、お前達は全力で3階へ降りろ」
 神無が『先手必勝』を使いキョンシーキメラへ先に攻撃を仕掛けながら指示を出す。
「絶対脱出させるから、僕達を信じて指示に従ってよ」
 ラウルは小銃「シエルクライン」にて『影撃ち』と『強弾撃』を織り交ぜた攻撃をキョンシーの足を狙って撃った。
『おい、こっちが厳しい‥‥援軍をよこしてくれ』
 戦闘のさなか、時任 絃也(ga0983)からの通信がくる。
「アスレードにとっておきたかったけれど、そうもいかないね」
 花は味方の危機を聞き、貫通弾をスナイパーライフルにこめるとキョンシーキメラに向かって叩き込んだ。
「邪魔を‥‥するな!」
 花が貫通弾を喰らわせたキョンシーキメラの首を宗太郎が跳ね飛ばし、そのまま屋上へと駆け上がる。
 イリアスは少し戸惑いながらも後に続いた。

●月下の闘士
「おらぁっ! 次、来いよ。俺を一発でも殴れたら帰らしてやるぜ?」
 アスレードがやや一方的に殴っていた男を蹴り飛ばす。
 蹴られた男は死んではいないが体中に青痣をつけ気を失っていた。
 男を抱える他の一般人は誰一人挑もうとしない。
「おやめなさいッ! アスレード!」
 イリアスが中央の階段から飛び出し、宙返りをしながら着地した。
「ほう、能力者か‥‥おもしれぇ、多少は楽しめそうだな?」
 アスレードはイリアスの獣毛に覆われた竜腕を見るとにやりと笑い構えた。
「私が一発殴れたら、お話を聞かせていただけますか? 貴方が姿を消し、ゾディアックのリーダーとして姿を現す現在に至るまで‥‥」
「『一発』でも俺を殴れたらな?」
 ふっと鼻で笑いアスレードが指を立ててくいくいと動かし挑発する。
「その挑戦受けて立ちましょう」
 イリアスが拳を振るい、『瞬速縮地』にて間合いを詰めた。
 しかし、気が付いた時には背後にアスレードが立っている。
 通り過ぎたわけではない。
 間合いは見切っていたはずだ。
「おいおい、踏み込みが甘いぜぇ?」
 何でもないかのようにアスレードはイリアスのほうを振り向きながら裏拳を放つ。
 空気を切る音よりも先に拳がイリアスの右腕に到達した。
「早いっ!」
 単純な攻撃だが圧倒的スピードが違っている。
 当てられた腕から骨の砕ける音が響き、だらりとたれた。
「まずは腕一本。あとは足二本と腕一本‥‥それくらいは耐えてくれよなぁ?」
 アスレードの笑みをイリアスは睨みで返し、動く腕でファイティングポーズを取る。
「おい、てめぇら死にたくなかったら降りろ!」
 そのとき、屋上に爆発音と共に怒号が響いた。
 二人が見ると宗太郎がランス「エクスプロード」でコンクリートを穿ち、砕いている。
 一般人のほうへ避難するための呼びかけのつもりだったのだろうが、恐怖におののき誰一人動くことなどできなかった。
 宗太郎は舌打ちをしつつ、アスレードの元へ歩く。
「ククク‥‥その目、いいぜ。俺を殺しにくる目だ。何があろうと挑むような」
「海禅寺は人形じゃなかった! 命を、想いを、軽い気持ちで踏み荒す‥‥てめぇは絶対許さねぇ!」
「一般人の避難よりも俺を倒そうとするてめぇと俺は何が違うというんだ? えぇ、正義の傭兵さんよ」
 宗太郎を見ず、イリアスを片腕だけで攻めるアスレードは笑った。
「あいつが立ち直るまで、てめぇにあの日を忘れさせねぇ!」
 怒りが頂点に達した宗太郎はアスレードに向かって駆け出す。
 月下にて3人の異能者がぶつかり合った。
 
●犠牲者を弔い
「食い散らかすとは手癖の悪い人形だ‥‥潰す。エアトリガァッ!」
 一方、2階に降りたブレイズと炎西、絃也は共に戦闘を続ける。
「はぁぁっ!」
 ブレイズがソニックブームを放ち、避けたキメラを飛び上がった炎西のベルニクスが斬り裂いた。
 2階にはキメラが2体だけだが、一階のほうから足音が近づいてくる。
 料理人であろうか、白い服を着た死体が床に転がっているも、悲しんでいる暇すらなかった。
「次の客がくるか‥‥ここで倒すしかないな」
 近距離で殴り続けたため負傷の酷い絃也が荒い呼吸を整える。
 3階の窓から侵入し、。
「人形相手じゃ腹のたしにもならねぇ。数がきて何ぼだろう?」
 ブレイズが腐った肉のこびりつくコンユンクシオを振るう。
「必殺技を撃つのもいいですが練力にだけは気をつけてくださいよ。話に聞く限り、今5体くらいしか倒していない計算になります。15体中の5体なのですからね」
 炎西が上の階へ繋がる階段を眺め、螺旋階段の下を見直した。
 その隣にブレイズ、絃也が立つ。
 キョンシーキメラの青白い肌が階段の下に集まりだしているのが見える。
「俺が援護に回る、二人で詰めて戦ってくれ」
 絃也が得物をスコーピオンと小銃「S−01」へと持ちかえると怪談を駆け下りながら射撃していく。
 ダララララッと銃声が響き弾丸がキメラへとめり込む。
「厨房の方は救えませんでしたが‥‥せめて、ここで盾となります‥‥!」
 『疾風脚』を使い軽やかに動く炎西が銃火にさらされながらも進んでくるキョンシーキメラを頭部を狙って『急所突き』を放った。
 だが、キメラも首を吹き飛ばされながらも鋭い爪の生えた腕を振るいガムシャラに攻撃を仕掛ける。
 避けたい炎西だったが狭い階段ではそうも行かず、攻撃を受けながらも確実に戦力を奪う方向に動いた。
「貰ったぜ‥‥ファフナーブレイク!」
 ブレイズも踊り出て絃也の銃火と階段という場所で動きのとりづらくなっているキメラを『豪破斬撃』と『紅蓮衝撃』をあわせた技で屠る。
 ファイターらしい強烈な一撃はキョンシーキメラの体の大半を吹き飛ばした。
 だが、まだ下にもいたのかキョンシーキメラが次々と上がってくる。
「おい、こっちが厳しい‥‥援軍をよこしてくれ」
『ただいま急行中。そのまま待て』
 絃也がリロードするタイミングで通信を行とすぐに返事が帰ってきた。

●格の違い
「ぐはっ‥‥っ!」
 アスレードからのフリッカージャブを受け、宗太郎の胴が揺らぐ。
「ほら、どうした? どうしたぁ」
 そのまま繰り出されるアスレードの連続攻撃に宗太郎の全身が軋んだ。
「そちらに集中しているならっ!」
「たかだか『二人』で俺を相手にしようなど100年はえぇぇっ!」
 宗太郎に集中しているアスレードに向かってイリアスが動く腕で攻撃をしようとするも蹴りによって弾かれる。
 圧倒的過ぎた。
 だが、宗太郎は倒れずアスレードをキッと睨んで槍を構える。
『絶対に許さない』
 そんな強い意志を持った眼だ。
「いい眼だ。こっちにくればいい尖兵になるぜ? 海禅寺よりも優秀な‥‥よ」
 宗太郎の気持ちを踏みにじるような言葉をアスレードが投げかけると、宗太郎の怒りはさらに高まる。
「うぁぁぁぁぁあっ!」
 『紅蓮衝撃』と『流し斬り』をあわせた技、【我流・鳳凰衝】をアスレードに放った。
 側面に回りこんでの二連撃が繰り出されるが目の前からアスレードが消える。
「どこだっ!」
「上だ、傭兵ぇぇ!」
 アスレードのカカト落しが宗太郎の右肩に叩き込まれた。
 肩の骨が砕けランスを握る手に力がはいらなくなるのを宗太郎は感じる。
「さぁ、この次は腕か? 足か?」
「その前にアンタの目だ‥‥」
 アスレードが宗太郎に向かおうとしたとき、その顔にペイント弾が当たった。
 宗太郎とイリアスが声のするほうを向けば花が銃を構えている。
「ちぃ、舐めたマネを‥‥」
「キメラは仲間が排除している‥‥残るはアンタだけだ」
 花が冷たい言葉でアスレードに言い放った。
「ククク‥‥楽しみは次に取っておくぜ、傭兵」
「逃がさない」
 花が引き金を引くもアスレードの指弾により弾かれ、その間にアスレードは屋上から飛び去る。
「ますます、興味がでてきました‥‥ね」
 去り行くアスレードを目で負いながら、イリアスは呟いた。

●制圧完了
「エレベーターもないと忙しい」
「本当だね」
 神無とラウルが到着したとき、一階は階段付近での攻防をしている。
「待ちくたびれましたよ。援護頼みます」
 血で汚れた服を翻し、炎西は真っ向からキョンシーキメラの群れに攻めこんだ。
「了解。もう‥‥数が多いな。数には数でGO!」
 エネルギーガンからアサルトライフルに持ち替えたラウルが点ではなく面による制圧に移る。
 飛び掛ってくるキョンシーに体を傷つけながらも階段からは退かずにとにかく射撃を続けた。
「これでラストだ! ギルティフレイム!」
 ブレイズが最後の一体を最大練力を使ったコンビネーションで屠る。
「盛大に使ったぜ。お陰でガス欠だ‥‥屋上はどうなっているのやら」
 一階を制圧し終え、覚醒を解いたブレイズが天上を見上げて呟いた。
『連絡遅れて申し訳ありません。アスレードに逃げられました‥‥』
 ブレイズに呟きに連絡を取ろうとした絃也の通信機にイリアスの悲しそうな声が流れ出した。