タイトル:snow draw blowマスター:間宮邦彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/28 19:48

●オープニング本文


「おー。降ったなぁ」
「積もったねぇ」
 家から一歩外へ出ると、視界の多くが白に染まっていた。
 吐く息の白さが、空気の冷たさを視覚も通して伝えてくれる。
 まあ目で見るまでもなく、肌を刺す冷気が充分に知らせてくれてはいるのだが。
「街の中はどうなってるかなぁ」
「車とか人通りの多い場所は溶けたりなんだりしちゃいそうだけどねぇ」
「だよなぁ。なんか勿体無いなぁ」
 玄関先の庭木に積もった雪を掬い、ぎゅっぎゅと握り固める。
 手の平を通して伝わってくる雪の冷たさが心地よい。
 小さな雪の結晶のひとつひとつが、肌をちくちくと攻撃しているかのようだ。
「ていっ」
「うわっ」
 ぼーっとしていた相手に、不意打ちで雪玉を投げつける。
 と言っても二、三歩の距離で、しかもほとんど手首の反しで投げただけだ。
 当たった雪玉は、割れることすらなく足元の雪の中に埋まる。
「もー。やめてよねぇ」
「いやーつい、なぁ」
 抗議しながらもにこやかで、反省しながらも朗らかで。
「‥‥あ」
「ん?」
 雪玉が当たった箇所についたわずかな雪を手で払いながら、ふと呟く。
「街の中の、あの、ねぇ、なんてったっけ、大きな公園」
「ん? ‥‥あー、あそこな。なんてたっけなぁ」
「まあいいや。あそこなら広いし雪いっぱいじゃない?」
「あーまあ確かになぁ。‥‥そんで?」
「行こう。遊びに。ね?」
「なるほど。いいなそれ。よし行こう」
 そうと決まれば、とばかりに二人は足早に家の中へと戻り、着替えと支度を始めた。

 陽はまだ高く、一日はこれから。
 人々が集い憩う公園は、今日は一面の雪化粧。
 ベンチも芝生も雪が積もっているから、足を止める人はほとんどいない。
 子供が数名、雪にはしゃいで遊んでいるだけだ。
 だが、ごく普通の二人の大人が、子供よりもはっちゃけた勢いで雪玉を投げ合い始めたことで‥‥

 ──乱入前提チーム無差別雪合戦が、幕を開けた。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
新井田 銀菜(gb1376
22歳・♀・ST
最上 空(gb3976
10歳・♀・EP
獅月 きら(gc1055
17歳・♀・ER
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
春夏冬 晶(gc3526
25歳・♂・CA

●リプレイ本文

「冬だ!」
 ──バッ!
「雪だ!!」
 ──ババッ!!
「ギラギラウィンタァァッ!!!」
 ──キラーン☆
 ポーズを決めて、歯を白く煌めかせた青年──ジリオン・L・C(gc1321)。
 その様子を、近くで雪合戦をしていた子供たちが呆然と眺める。
「‥‥おじさん、なに?」
「おじさんではない!」
 男の子の問いかけを、ややムキになって否定する大人げない大人の図である。
 ちなみに『誰?』ではなく『何?』という所が、不審感の大きさを物語っている。
「‥‥おにいさん、なに?」
 男の子の背中に隠れ、怖怖と問いかける女の子。
「ふっ、よくぞ聞いた‥‥俺様はジリオン! ラヴ! クラフトゥ! 通りすがりの、未来の勇者だ!!」
 ポーズを決めつつ胸を張っているが、世が世なら通報されてもおかしくない内容だった。
 まあ‥‥本人が言うのだから、未来の勇者なのだろう。
 つまり今はただの人、ということになるが。
 子供たちからの、可哀想な人を見る目には気づかず、
「この公園はコレより熱き魂をぶつけ合う戦場!」
 持っていた雪玉を完全に握り潰しつつ叫ぶジリオンだが、
「いいな! 我こそはという者は、俺様と勝負ァッ!?」
 横っ面に雪玉の直撃を受けた。
 胡散臭い大人をいつまでも放置しておくほど、子供たちは甘くないようだ。

 はしゃぐ大人は、もちろん彼だけではない。
「きゃっほー! 雪だ! 冬だ! ──って、寒っ!」
 喜び勇んで公園に来たはいいが、吹き抜ける風に身を縮こまらせたのは、弓亜 石榴(ga0468)だ。
 ‥‥大人というよりは、少女だった。『大人』なのは身体の一部ぶ──
 ──精神的には、十二分に大人だろう。
「うー、寒いっ」
 石榴は腕をさすりながら、子供たちの集中砲火を浴びて涙目になっている青年を横目に、公園の中を散策した。
 歩いている内にふと、手付かずの雪面がそれなりに残っていることに気付く。
「──よし、かまくらを作って温まろう!」
 そうと決まれば善は急げと、行動を開始する石榴。
(暖を取れるようにまずは七輪でしょ? あとはお汁粉にお餅も必要だよね♪)
 心の中で声を弾ませながら、物資の買い出しに足を急がせる。
「っと、一人でかまくら作るのはめんど‥‥もとい難儀だし、ちょっと助けを呼んでみようかな」
 足は止めず、携帯電話を取り出してとある番号を選ぶ。
「──もしもーし。今タイヘンなコトになっちゃって‥‥今すぐ助けに来て!」
 そんな台詞を泣き真似をしながら言うものだから、電話の相手は激しく動揺していた。
 石榴は場所を告げると、急いでねと念を押し、通話を切った。
「労働力確保♪ さ、今の内に買い出し済ませちゃおうっと」
 実にそつのない行動力である。

 さて、戦場の様子だが──
 混戦の最中、無闇に叫んで無謀な勝負を挑むジリオンが一人で悪目立ちし、そのせいで標的にされる、という絵面になっていたが、その中で一際異彩を放‥‥愛嬌を振りまく物体がいた。
 その物体──ゆきだるまのきぐるみは、やけに渋い身のこなしで巧みに立ち回っていた。
 きぐるみ、もとい最上 空(gb3976)は、この戦場におけるアサシンだった。
「ふっふっふ、正面から撃ち合うなど愚の骨頂です! 空は頭脳プレイに走りますよ!」
 まるでどこかの誰かさんのことを言っているかのようである。あくまでも偶然だが。
 しかし実際、きぐるみの効果によって彼女はどこからどう見ても雪だるまである。
「この完璧な偽装を、見破られる筈がありません!」
 近くで見れば一目で怪しいと気づくが、遠目ならどう見ても雪だるまである。
 完璧な雪だるまを装うことに成功している空は、無警戒なジリオンの背後にこっそりと忍び寄ると、
「隙ありです! 背中がガラ空きですよ! 雪玉の洗礼を喰らって下さい!」
 衣服の中へ直接、雪玉を流し込んだ。
 思わぬ奇襲を受けたジリオンは、「ぬわーーーー!!!」と愉快‥‥悲痛な叫びを上げて、雪面を転げ回る。
「ふっ、悲鳴が心地良いですね! さぁ、次の獲物はどこですかねー♪」
 心底楽し気な声だが、その台詞がきぐるみの外見に相反しているせいで、見ていた者を一様に戦慄させた。
 蜘蛛の子を散らすように逃げる子供。
 異様さに警戒する大人。
 きぐるみの中で空は、狩人の目で次の標的を探した。

 買い物がてらの散歩で通りかかった公園は、予想外の賑やかさだった。
 新井田 銀菜(gb1376)は思わず表情を綻ばせ、
「皆さん楽しそうですね〜」
 とこぼす。
 折角積もった雪だから、雪合戦に興じるのは名案だと頷く銀菜。
 しかし自身が混ざって遊ぶには、些か服装が頼りなかった。
 仕方なしにと、手頃なベンチを見つけ、軽く払ってから腰掛ける。
「私は皆さんの活躍を観戦させていただきましょうかね」
 くすくすと笑いをもらしながら、銀菜は老若男女が入り交じった熱い戦いを眺めることにした。
 そうして、雪まみれで転げ回る子供や、ムキになっている大人たちの激闘なんかを楽しんでいると、
「お隣り、よろしいですか?」
 心地良い声が耳に、色鮮やかな桜色が視界へと滑りこんできた。
「あ、はい、どうぞどうぞ〜」
 銀菜はやや驚きながらスペースを空ける。
 ありがとうございます、と丁寧にお礼をし、獅月 きら(gc1055)は銀菜の隣りに腰を下ろした。
「すっごく楽しそうですね」
 銀菜と同様に雪合戦の様子を眺め、きらはほくほくの笑みを浮かべて言った。
「ですよね〜。皆さん大盛り上がりで」
 平和にはしゃぐ姿は、ただ見ているだけでも和やかな気持ちになれる。
 しばらくのんびりと雑談を交わしながら観戦していた二人だが、やがてきらは見ているだけでは物足りなくなったのか、
「良かったら参加してみませんか?」
 ベンチから腰を上げ、銀菜へと手を差し出した。
「私は見ているだけで充分楽しいですから、どうぞ行ってきて下さい」
 ほわん、とした笑顔で答える銀菜に、
「わかりました。それではまた」
 きらは華やかな笑顔を返し、雪合戦の方へと身体を振り向かせた。
 と。
(──んん?)
 きらの表情が見えなくなる間際、それまでの愛くるしい顔ではなく、どこか毒を含んだ気配を漂わせていたような気がした銀菜だったが、
(気のせい‥‥かな?)
 あんな可愛い子がまさかね、と思い直し、忘れることにした。
 しかし、戦場を見つめるきらの視線は、ある青年に真っ直ぐに固定されていた。
 さながら、格好の玩具を見つけたかのように。

「ハァーッハッハッ!!」
 辺り一帯に響き渡る朗々たる哄笑。
「ぬるすぎるぞ! 幾多の戦場を鼻歌混じりでくぐり抜けて来た俺様からすれば、この程度の雪玉ェ‥‥!」
 強気な発言も、底知れない体力を目の当たりにすれば、ハッタリに思えなくなってくる。
 いくらアレな言動でも、やはり能力者だ。
 疲れ始めた民間人では、相手が難しい。
 しかし子供を中心に、まだまだ元気な者も少なくない。
 そんな彼らの意気に応えようと思ったのか、ジリオンは物凄い勢いで雪をかき集めると、特大の雪玉をこしらえ、頭上に抱え上げた。
「うおぉぉ! 喰らえ! 勇者の必殺技!」
 態度は別として、さすがにこれは常人の領域を明らかに超えているのは誰の目にも明らかで、
「おっさん能力者かよー! ずるいぞ!」
 子供が抗議するのも致し方ないだろう。
 だがジリオンは意に介さず、
「勇者ならば問題はない! というかおっさんと呼ぶな!」
 開き直りと変わらぬ言い訳をし、巨大雪玉を構えた。
「いくぞ! 勇者! スノォォォォォ──」
 怪我をさせる気はないので、雪玉を命中させるつもりは毛頭ないのだが、迫力だけは本物だ。
 子供たち(大人も少々)は、きゃーうわーと悲鳴を上げて逃げ惑った。
 そんな彼らに向かって、自称勇者の必殺技が放たれようとした、その時──

 周囲に、可憐な歌声が響いた。

 一度耳にすれば忘れられない透明な声で紡がれた歌は、混沌とした戦場に一瞬の静寂をもたらした。
 そして、
「ブァァッ!?」
 ジリオンが自分の抱え上げていた雪玉に潰されていた。
「──こんにちは、勇者くん」
 笑顔の下に毒を滲ませ、【呪歌】を唱えたきらがジリオンを呼ぶ。
 雪の中から這い出したジリオンは、
「おお! 僧侶きら! ひさしいな!」
 自身を麻痺させたのが彼女であることを気にもかけず、
「ふふ‥‥どうだ、俺様と再会の熱い‥‥握手でも‥‥」
 きりり、と雪まみれの格好のまま表情だけを引き締めて、彼女に手を差し出した。
「そうですね」
 しかしきらはジリオンとの距離は詰めず、
「魅力的な提案ですけど」
 事前に用意していた、足元の無数の雪球(表面を水で濡らしてガッチガチに固めたもの)をひとつ、拾い上げ、
「折角ですから、『こちら』を楽しみましょう?」
 ほとんどノーモーションから、しかし全力でジリオンへと投げつけた。
 【錬成超強化】と【鋭角狙撃】によって、その一投は完璧な不意打ちとして、ジリオンの鼻っ柱に命中した。
「ふぐぅうぉっ!?」
 仰け反るジリオン。
 間髪入れずに追い撃つきら。
「いやっ、ちょっ、まっ、おまっ」
 割と本気で痛がってる風に見えなくもないが、きらは微塵も気にせずぽいぽいと投げ続ける。
「‥‥あんなに可愛い顔して‥‥」
 傍観者に徹していた一般のお兄さんが、若干本気で引いていた。
 一方的にやられ続けながらも決して倒れず、立ち向かおうとしながらもその行動が愚直であるが故に、全く意味が無いどころか自分を追い込んでいるだけのジリオンにきらは、
「わー‥‥勇者って(ある意味)すごいなー」
 と、感心してみせた。
 但し、完全な棒読みで。

 一方その頃──
「ぬぉおおお!! だ、誰か援軍を、救援をお願いします! 大至急!!」
 皆の視線がきらとジリオンの二人に集中しているせいで、一人の美幼女が危機を迎えていた。
 奇襲戦法の為に距離を取りながら移動している最中に、空はうっかり転んでしまったのだが、その時に初めて気づいた。
 「し、しまった!? 倒れたら、自分では起き上がる事が出来ません!!」
 と。
「誰かー! 救援をー!」
 虚しく響く嘆き。
 それは誰にも届くことはない──かに思えたが、実は銀菜がこっそり気づいていた。
 だが気づいていながら、
「えいっ。やぁっ」
 可愛らしい掛け声と共に、雪玉をぶつけていた。
「むむっ!? 誰かいるのですか!? 助けて下さい!! 空に何かあったら全人類の大損失ですよ!!」
 随分と大仰な台詞だが、この際それは気にしないとして。
(ふふっ‥‥ちょっと楽しい‥‥)
 雪面に転がってごろごろと身悶えしているゆきぐるまのきぐるみに、銀菜はしばらく雪をぶつけて遊んでいた。
 なんと可愛らしいことだろうか。


 雪合戦も収束に向かい、夕方に差し掛かった頃。
「よっし、できたー!」
 額に浮かぶ汗を手の甲で拭い、石榴はスコップを雪面に突き立てた。
 見れば、即席とは思えないほど立派なかまくらだ。
 悠に6、7人は入れる大きさだろう。
「お疲れ様、石榴さん」
「ありがとねー、野宮さん♪」
 石榴を『タイヘンなコト』から『助ける』為に呼ばれた野宮 音子(gz0303)は、パチン、と彼女と手を打ち合った。
「さあさあっ。早速温まろう♪」
 用意していた七輪と食べ物を、いそいそとかまくらの中に持ち込む。
 火を点してから程なく赤くなり始めた炭が、周囲の冷気を徐々に押し退けていく。
 その様子は、当然周りの人達の目にも留まっていた。
 空を助け起こした銀菜も気付き、
「あら? あんな所にかまくらが‥‥」
「むむ! なにやら美味しそうな匂いがしますね! 行きましょう!」
 空に手を引っ張られるようにして駆けつける。
「お、ようこそー。久しぶりだねー新井田さん♪」
「弓亜さんお久しぶりですっ。──あ、音子ちゃん!?」
「や、やー‥‥ご無沙汰‥‥」
 銀菜に呼ばれて、決まり悪そうにする音子。
 しかし彼女は柔らかく微笑むと、
「お久しぶりです」
 音子の手に自分の手をそっと重ねた。
 思わず音子の涙腺が緩みかけたが、
「ふぅー。かまくらは意外と快適ですねー。このまま冬眠出来そうですよ」
 空(きぐるみは流石に脱いだ)の絶妙に空気を読んだ──あるいは敢えて空気を読まなかった──台詞で、涙の代わりに笑顔がこぼれる。
 それを知ってか知らずか、飽く迄もマイペースな空は、
「いやー。やっぱり体を動かした後は、お腹が空きますね! お汁粉大盛りでお願いします!」
「あ、私にも下さいっ」
 銀菜も便乗し、石榴は嬉しそうに笑いながら、温めていた汁粉を振る舞った。
 とそこへ、
「こんにちは。おじゃましまーす」
 にこやかにやって来たきらと、
「全く‥‥未来の勇者じゃなければ、即死するところだったぞ!」
 彼女に文句を言いながらやってきたボロボロのジリオン。
「おー。獅月さんお久しぶりー。オータムフェスタ以来だね。その節はどーもでした♪」
「いえいえこちらこそ。あ、私もお汁粉いただいていいですか?」
「おっけー♪」
「俺様にも頼む」
「あ、もう品切れかな」
「なんだと!?」
「ウソウソ。あるよ。はいどーぞ」
「うむ。ありがとう」
 悪戯っぽく笑う石榴から手渡されるお椀を、妙に素直に受け取るジリオンだった。

 身体がすっかり温まった頃、きらはひとり、再び外へ出ていた。
 夕闇色に周囲が染まる中、かまくらから聞こえてくる賑々しい声を背に、手頃な大きさの雪だるまを作る。
 出来上がった雪だるまには、猫の耳をつけた。
「‥‥黒かったら、ノア。模様をつけたら‥‥Ag」
 くすくすと笑いながら、万感の思いを込めて、一生懸命に作り上げる。
 やがて完成した、二体並んだネコ型の雪だるま。
 それをぱしゃり、と写メールに収め、
「学校の友達に、見せたいな」
 彼女は目を伏せて静かに、呟いた。

 その間かまくらの中では、網の上で膨れ上がる餅を皆でつついたり、熱々のお汁粉一気飲み勝負を持ちかけたジリオンに、応じた石榴が飲むふりをしてジリオン一人に自爆させ、指を差して笑ったりしながら、和やかな時間が過ごしていた。
 そしてすっかり気が緩みきった頃、
「ところで野宮さん、会うの久しぶりだけど、少しは成長したかな?」
 完全な不意打ちで、石榴の手が音子の服の下に滑りこんで胸部のサイズを確かめた。
 有り体に言うと、乳を鷲掴んだ。
「──!?!?!?!?」
 手の冷たさと胸を触られた事とサイズを調べられた事に驚き混乱し、声にならない悲鳴を上げる音子。
「なんだー、全然育ってないじゃん」
 落胆する石榴に、銀菜が「こここ公衆の面前ですよー!?」とちょっとズレた叱り方をしたり、「あと数年で空が勝ちそうですね」と世紀の美幼女がにやりとしたり。
 ジリオンはそんな喧騒をどこかぼうっとした感覚で聞き、ずびびっと鼻をすすりながら、
「はー‥‥平和だなー‥‥」
 陽の暮れ始めた外を、のんびりとした心地で、眺め続けていた──