タイトル:【DoL】敵中模索マスター:京乃ゆらさ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/28 02:30

●オープニング本文


 シカゴ南東に位置する都市インディアナポリス。
 北米初の大規模反攻作戦が展開される中、シカゴ奪還とほぼ時を一にしてミルウォーキー・インディアナポリス両都市を奪還、シカゴを中心とした新たな防衛ラインを構築する事が決定された。そうする事で全方位に対応、あるいはユニヴァースナイト直掩機を作戦地域に極めて近い場所から出す事によるKV戦闘時間の延長を考えての事だった。また晴れてシカゴを奪う事ができれば、重要拠点デトロイトの防衛線を西に布く事にもなり、五大湖一帯の維持が容易になる利点があったのである。
 しかしここは競合しているとはいえ敵性と言っても過言ではない程に戦力差のある地。作戦の見通しは暗い。そんな死地へ、兵士達は赴かねばならなかった‥‥。

 アメリカ有数の文化都市インディアナポリス。中心部のビル群と北西の大公園、イタリアを思わせる水路が特徴の大都市である。だがそこは今、バグア軍に支配され以前の姿を留めていなかった。巨大建築は瓦礫と化しライフラインも完全ストップ。ただ公園の巨大な池のみが緩やかに、平和に時を刻んでいた。
「都市部における歩兵部隊志願者はおらんのか!!?」
 インディアナポリス解放作戦を遂行する傭兵達が集められた大部屋に、男の甲高い声が響いた。「甲高い声」から分かるように、今、前で歩兵部隊の説明を行ったのは実行部隊の尉官クラス。戦場ではいくら叫んでも声が届かない事など日常茶飯事。その結果少しでも高い声の方が聞こえる可能性があるという事で、暗黙のうちに皆がそのような声になっていたのである。
「‥‥貴様らの中には金と命が大事な奴も多かろう? だが心配は無用だ。これは外周部からの予備砲撃を行った後の突入である! さらに我々の先鋒に立つようにKV隊が突入する! したがって我々歩兵部隊が掃討するのはそれらの取りこぼしたキメラだけとなる」
 むしろあちらよりも楽かもしれんぞ、と軍人。
「しかし大型キメラやワームに出くわした場合は‥‥?」
 気の弱そうな声で誰かが質問する。演説していた軍人、そして同じ部隊の司令部の面々なのだろう、計7人ほどが一斉に笑い声を上げる。
「そんな事も分からんようなガキは必要ない。お前は早くママの所へ帰るべきだろう」
「他にそんな馬鹿はいないだろうな? 我々は屈強な敵にも立ち向かう覚悟で戦っている。もちろん臆病風に吹かれて誰彼構わず助けを求めるのは止めんが‥‥仲間の事も考えろよ。KV隊も、空の友軍も‥‥眼前のワームだけで手一杯のところを、我らを助ける為に余計に動くのだ!」
「でしたら私たちもKVで時間をかけて捜索しつつ掃討した方が早いのでは‥‥」
「馬鹿か。戦車と機械化歩兵、KVと歩兵能力者。KVの穴を埋める形で我々が間近の敵を倒す!‥‥貴様のような奴が仲間を殺すのだ! 去れ!!」
 豪快に嗤う軍人達。傭兵蔑視、民族主義。しかし戦術的な観点では、多少蛮勇が過ぎるものの極めて真っ当な考えの持ち主でもあった。
 ざわりと傭兵の半分ほどが殺気立つ。その中で、やってられるかという人間と見返してやるという人間に分かれる。しかしそんなもの意にも介さないとばかりの大尉。
「他に質問はないな?」
 ならば改めて問おう。
「貴様らの中で歩兵部隊志願者は前へ出ろ!!」


――――インディアナポリス解放作戦・歩兵部隊作戦概要――――
 作戦目的:歩兵部隊による当該地域の完全制圧
 予想される敵戦力:未知数(ゴーレム、ヘルメットワーム等から小型犬キメラまで多種多様)

 作戦地域の現状は、キメラ、砲撃により大きな建造物は概ね倒壊している模様。道には瓦礫が転がり、白煙が未だ朦々と立ち込めている中での作戦行動となる。十分に注意、活用する事。
 各員、不退転の覚悟でこれを遂行する事。戦績如何によっては勲章の――。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
クロード(ga0179
18歳・♀・AA
鷹司 小雛(ga1008
18歳・♀・AA
翠の肥満(ga2348
31歳・♂・JG
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
イレーネ・V・ノイエ(ga4317
23歳・♀・JG
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM

●リプレイ本文

「突入」「おおぉぉ!」
「後続はまだか!」「俺が活路を拓く!」
「おれ帰、ら‥‥けこん‥‥」「将来の話はあれだけするなと‥‥」
 快晴。気温10℃。湿度良好。しかしそこから見える空は淡く蜃気楼のよう。バグア軍とUPC軍は激しい戦闘を繰り広げ、街は刻一刻と崩れていく。そして戦場に響き渡る、人外の咆哮と悲痛なる叫び。非効率的な攻撃しかできないと知りながら突撃する一般兵。その血肉で得た地歩を固めていく本隊。KV隊は善戦している。それでも、全体的な質は敵が上だったのである。
 北から進軍したUPC軍。包囲に割ける十分な量と質はない。ならばと、一方向から押し出す作戦に出た。順調とは言えないが、量で圧倒していく人間。そうしてようやく8人の出番が、来た。

「‥‥凛、悔しくなんてないんだからなっ」
 街中央、崩れたモニュメントサークルでやや涙目な勇姫 凛(ga5063)が誰にともなく。
「どしたの?」
 興味を示す月森 花(ga0053)。
「‥‥志願者は前に出ろって時に周りの皆が一斉に」
「後ろ下がって凛クンだけ取り残されたって事?」
 頷く凛と、励ます花。笑顔が眩しかった。一方進んで歩兵に身を投じた者は、意気揚々と戦闘準備を整えていた。
「やはり戦闘は生身に限る」
 リュイン・カミーユ(ga3871)が白銀の髪を靡かせて。
「同感ですわ。わたくしの可愛い武器達と共に、この空気の中で舞う‥‥ああん♪」
「ああ。KVはどうもな」
 鷹司 小雛(ga1008)が身悶えている横で、リュインの銀糸は鮮やかな黄金に色を変えていた。
「不整地を踏破して陣地を確保するのは、歩兵の本領ですから」
「キメラ‥‥掃除はしっかり手早く」
 生粋の歩兵、という風体の綿貫 衛司(ga0056)が自らの得物を最終点検しつつ。クロード(ga0179)はすらりと月詠を抜く。
「期待以上の働きをせぬとな」己を厳しく律するイレーネ・V・ノイエ(ga4317)が、やや面白そうに「今回は些か挑発に乗せられたようだが」
「クンショウの為にも精々働いてやりましょう。個人的にはビン牛乳1年分の方が良いですが」
「勲章か。あの男から直接『貰ってやろう』じゃないか。奴が生きていればな」
 翠の肥満(ga2348)の言葉に不敵に返したのはリュイン。ともあれ士気が高いのは良い事だった。
「そろそろ行きますか。戦闘音も遠ざかったようです」
 そして制圧行動に移った。

A班:衛司・小雛・翠・リュイン
B班:花・クロード・イレーネ・凛

●開始11分の攻防
 当該地域をA班が南下し、煙の中を掃討していく。建物は真中から倒壊し、瓦礫に屹立する槍のようになっていた。
 衛司と小雛が前衛。敵を誘き寄せる事を目的にやや身体を露出させつつ、空を警戒して壁際を進む。リュインが遊撃、翠は援護として広範に目を光らせる。
「行きましたわ!」
「覚悟!」
 小雛の刀――ひばりを掻い潜った巨大蟲を衛司が仕留める。その骸を跳び越えてくる大型犬。しかしその牙は2人に届かない。隙だらけの横合いから、リュインがその爪を振るって紅い肉塊へと変える。2人の足下に転がる敵。
「翠の!」
 呼びかけつつリュインが背後の鼠を葬る。その頭上を抜ける3つの銃弾。翠のライフルが、滑空してきた飛行型を射抜いていた。
「良い連携ですわ」
「帰ったら1杯が待ってますからね」
「酒なら私も付き合いたいところです」
 衛司が乗ってくる。軍に酒はある程度不可欠だった。
「それよりイイモノですよ」
 話しながらも歩を進め、敵を撃破する。
 と、右手に見える横長い建物。
「駅舎、車輌‥‥潜む物には事欠かんな」
 入らないか、とリュイン。反対する理由もなく、一行は侵入する。
 中は大部分が倒壊し、穴の開いた天井から淡い光が射していた。瓦礫を越えて行き着いたのは、格納しかけで横転した連結2両。遠目からも解る程に小型キメラで溢れていた。
「下手なかくれんぼだ。次は鬼交代と言いたい処だが」
 リュインが目配せする。4人が構える。
「我も生憎暇ではない‥‥!」
 翠が割れた窓に弾丸を叩き込む。
「コレ、使いますか」
 衛司が懐から手榴弾を出す。大尉から嫌味を言われつつ一つだけ手渡された物だった。ピンを抜き、1秒持って投げ入れる。車輌中空で爆発。爆風に煽られているうちに近い扉へ衛司と小雛、遠い方へリュインが突っ込む。
 衛司と小雛が確実に仕留めるのに対し、リュインは車輌内を駆け巡り裂いていく。そこに翠の射撃が加わる事で、敵はもはや鉄の塊で身動きが取れない状況だった。前から後ろから、次第に敵は数を減らしていく。そして最後の敵。
「‥‥散れ」
 爪によって飛散する鼠。ものの数分で一つの拠点を潰していた。


「廃墟ばかりで‥‥虚しい」
 嘆いたのはB班クロード。B班は開始地点から大通りを西進する手筈になっていた。花が周囲を注視しながら同意する。
 クロード、凛が小型キメラ2体を屠る。今のところ援護するまでもない戦いが続く。
「クロードさぁん」
 生来の気質か、無機質な物ばかりの中で少しでも自分の気持ちを盛り上げようと花が話しかける。横ではイレーネが比較的近い建物の2階窓に見えた影付近に6発お見舞いしていた。
「何?」
「どうしたらそんなに綺麗になれるんですか〜」
 戦場でなければ「あ〜ん」と泣きつく勢いである。前では凛が瓦礫だらけの道を器用にローラーブレードで突進していた。
「‥‥私には花さんの方が羨ましい」
「何でですか! も〜ボクなんか‥‥イレーネさんは?」
「そう言われてもな。貴公も魅力的だ」
 うぅ〜と花が唸っているところに、凛が滑ってくる。
「何か、凛達ばかり戦ってる‥‥」
 多少非難の色を込めるが、それは彼女の前に用を為さない。花の談義がさらに続く。
「凛クンも美人さんだよね〜」
「な‥‥」
「ねね、化粧水とか使ってるの? こんな綺麗なの」
 つつ、と近寄って肌を眺める花。凛の頬に赤みが差す。
「り、凛は男だっ! そ、その気になればきみ‥‥」
 言い差したその時。頭上を過る巨大な影。空を滑るように動いたそれは、4人とすれ違った少し後に停止し。
「ッヘルメ‥‥」
 それは誰の声か。H・ワームへの警戒を呼びかける間もなく、空のワームから大質量の光線が降り注いだ。
 盛大に砕け散る建物。蒸発する瓦礫。耳をつんざく大音量。生身という小さすぎる的のおかげで直撃は避けられたが、今度は頭上に飛来する石という凶器が待っていた。必死にかわし即座に横道の壁際へ退避する4人。誰しもが白煙を被り、小さな擦過傷を負っていた。
「無事か?!」
「‥‥大丈夫」
「うぅ‥‥目立ちすぎちゃった‥‥?」
「大通りの真ん中を歩きすぎるのもいけない、かも」
 とりあえずの無事を確認する。
「ワームも去ったようだ」
 イレーネが大通りを窺う。
「こ、これからはもっと警戒しよ〜‥‥」
 花が覚醒する。大通りに戻り、再び元の西進ルートへ。
「‥‥うん。もう1匹も逃がさないよ」
「‥‥ああ。貴公は遠距離を警戒してくれ」
 花が静かに首肯する。その激しい変貌に他の3人は多少面食らいながらも、今度はやや壁際を進み、改めて索敵掃討を開始した。

●開始18分の攻防
 A班が担当地域の南端、東西に走る幹線道路に到達する。だがそこでも用心し、その一つ手前の細道を西進する事にする4人。遮蔽物も何もない場所を歩くには危険すぎた。
「‥‥大活躍ですわね」
 小雛が熱い吐息を漏らして抜き身のひばりを見つめる。そんな小雛に翠が言葉をかけた。
「そんなに愛しいものですか」
「ええ。翠様には解りませんか? この凛とした姿」
「確かに僕も仕事のパートナーとして、愛銃をはじめ最新兵器は可愛いものですが‥‥」
「でしょう? わたくし達、良い仲間になれそうですわ」
 認められて満面の笑みの小雛。翠は「興味深い」と苦笑するしかなかった。
「鷹司に翠の、お喋りも構わんがじき川に出る。川向こうにも姿を晒さねばならんからな。先制攻撃に狙撃手がほしい」
 リュインの言葉で翠が前衛に並びかけた時、衛司が。
「待って下さい。左手の幹線道路の方から音が近づいて‥‥」
 ガガァン!!
 前方左の建物が突然爆発したように吹っ飛ぶ。朦々とした白煙の向こうに見えたのは。
 吹っ飛んできたR−01と思しき1機と、ゴーレムの姿。
 さらには3体の中〜大型キメラが高速で詰めてくる。
「ッ何をやっている、軍は!」
「さすがにゴーレムに対し1機では危険ですわね」
「ですがこの状況では‥‥」
「‥‥歩兵なのに、こんな時に援護もできない‥‥!」
 4人が数瞬逡巡する。しかし。
「ここを離れるぞ」
「了解ですわ」
 冷静に。後ろ髪を少し引かれながら、予定通りに川に出る。そしてさあ北上して公園というところに、先程のキメラが迫ってきた。
「KVより我らの方が魅力的なようだ。あのキメラどもは判っているな」
 くっく、とリュインが紅い唇を震わせる。敵先頭は2M大の外見小型ゴーレムのようなキメラ、後の2匹は小型円盤に羽の生えた飛行キメラと多頭キメラ。多頭は首が既に2つに減っており、まだ判別はつかない。
「私が正面で受けましょう」
 正眼に刀を構えた衛司。意識を張り、塵一つ後ろに通さない覚悟。
 翠が後ろから射程いっぱいで先頭の胴体を撃つ。弾着を修正して徐々に顔面へ。しかしよろつくだけ。その間に小雛は、やっと出番と言わんばかりに荷物からコーネリアを抱き上げ、1発円盤付近に牽制する。その後ひばりを持ち直し先頭の敵へ。
 そしてリュインは足を活かし急接近すると、先頭の右足を交差気味に斬りつける。
「綿貫、鷹司!」自身はさらにその後ろの多頭に向かう。
「了解!」
 2人が先頭に駆ける。各々のスキルで威力を高めたその一撃は、一瞬の後見事に先頭の敵をなます斬りにしていた。いや、敵も避けられるはずがない。唯一の目と思われる箇所に、翠の銃弾がめり込んでいたのだから。
 ついで前衛2人は多頭と対峙しているリュインの許に走る。一方で翠は即座に空の敵に照準を合わせると、微動だにする事なく正確に鉛を撃ち込んでいく。飛行型は攻撃のみを遂行する命令を受けていたのか、下部から触手を伸ばしているだけ。前衛3人が多頭と戦う合間に触手をあしらっているうちに、次々に引鉄を引いていく翠。
「いくらヘルメットワームになりたくても」
 ガァン!
「お前は雑魚なんだよ!」
 翠が飛行型を撃ち落とした頃、多頭と3人の戦いは終息に向かいつつあった。2つの頭が3人に噛み付こうとするのを避け、その足の攻撃もいなす。誰かが攻撃を受ければ、その反対にいた仲間が敵を斬り裂いていく。手負いのキメラに3人の波状攻撃が襲い掛かる。
「ひばり!」
 大上段に構えた小雛の刀が日に煌く。斬。片方の首を落とす。それを受けて2人が最後の首へ向かい。
 数秒後、キメラは巨大な肉塊へと姿を変えていた。

●開始21分の攻防
 B班はまず目を付けていたドームに赴く。しかし崩れていない外壁に囲まれた内部では未だゴーレム数体との戦闘が終わらず、別の場所を制圧するよう要請される。そこで4人は、近接している球場の中へと向かった。
 球場は外壁部分が内部へ崩落し、整備されていたはずのグラウンドは無残にも無機物に侵食されていた。
「いないのかな〜」
 花が薄く目を細める。しかし前半とはあからさまに声の調子が違う。これは『姿を現さなければ探し出して殲滅する、出てきたら優しく撃ってやる』というレベルだった。と。
「み〜つけた」
 花自ら、積み重なった瓦礫が良い具合に細いトンネルを作っている所を発見する。
「KVじゃ見落としてそうだね」
「クロードが先頭、すぐ後ろに勇姫、そして自分、最後尾に月森といったところか」
 イレーネが即座に布陣を決定する。先が見えないだけに、守備に寄っていた。
 中腰で入っていく一行。ところどころ通れる道が曲がりくねり、足下は土の後に再び人工の床に戻る。そして抜けると、そこには。
 網目に射す太陽。薄暗く陳列された鉄の直方体。その部屋を占有するは、蠢く鼠と場違いな虎、丸い外殻のようなもの。
「‥‥ロッカー?」
「控え室‥‥だね。それより」
 前衛2人が出口の少し先で並んで構える。
「キメラの巣か。駆逐せぬとな‥‥!」
 イレーネが向かってくる巨大鼠の方へ連続して撃つ。正確性を重視して3発ずつ。跳弾など無い程に高い命中率。それに花がショットガンで追従する。小鼠が一気に殲滅される。
「今の何匹なのかな。‥‥まぁ、あの世行きの順番が変わるだけだよね」
 花は再び小銃に持ち替え、今度は移動して斜線を確保、奥の外殻の急所を探して狙い撃つ。
 その頃、前衛の2人は飛び掛ってきた剣牙虎と目まぐるしい攻防を展開していた。
「一度剣を抜いたなら‥‥何事にも動じず‥‥!」
 クロードが爪を防ぎ、返す刃で薙ぐ。それを後退して避ける虎。と、微妙に開いた間を逆手に凛が疾る。
「燃え上がれエクスプロード‥‥凛の熱いハートをキメラの君に!」
 特撮のような場面。突撃槍が体勢を崩していた虎の横腹を貫いた瞬間に敵体内で小爆発が起こり煙を上げる。それでも凛に襲い掛かる虎。
「刃圏に入りし悉くを‥‥斬る!」
 気合一閃。クロードは懐に強く踏み出すと、渾身の一撃を虎にお見舞いした。胴が半ば以上に開き、内臓が空気に晒される。不快な血臭が急速に控え室に立ち込める。
 それを見ていた後衛2人はそれぞれ猛烈な射撃を加える。花は外殻、イレーネは巨大鼠。一つの場所で機械的に撃つ花と対照的に、若干近めから絶えず動いて鼠を翻弄するイレーネ。戦法は違えど行き着く結末は同じだった。花が外殻を破り決定的な一撃を加えた時、イレーネは鼠の右目に大量の銃弾を叩き込み、脳漿を飛散させていたのである。
 こちらもやはり、数分でキメラの拠点を潰していた。

●州立公園
 30分が経つ頃、両班は事前に決めていた川向こうの公園北東部に辿り着いた。変わらず細心の注意を払っての行軍である。そして無事合流を果たす8人。あとは後続司令部に直接引き継いで終了。
 となるはずだったのだが。
 設定した場所が多少まずかった。公園は土地が広く巨大建造物もあった場所。至近で未だ交戦中だった事もあり、2体の鉄巨人が8人を発見するや接近してくる。
「生身でゴーレムは‥‥もう嫌‥‥」
「逃げるのは難しそうです。またやるしかないでしょう」
 河南で共にゴーレムと戦ったクロードと翠が息を合わせる。8人とも傷を負っているも、気力は十二分にあった。敵は敢えて殴り殺す算段か、さらに来る。死闘を覚悟する8人。その時。
 ドォン!! 飛来するミサイル。
 そして轟音と共に、KV小隊が。
 中空で変形して間に降り立ち、突撃していく。うち1機が何か伝えたいのか、両腕を奇妙にカクカクと動かした。
「軍にも使える人間はいるじゃないか」
 引き継ぐまで見学する事にした8人。
 歩兵とKV。これこそが、合同作戦の華であった。