タイトル:【OC】祭り準備!マスター:九頭葉 巧

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 11 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/03 23:45

●オープニング本文


「おい、武典」
「なに?」
「涼しくなったよぁ」
「ああ、そうだね」
「この時期ってさ‥‥ほら、あるだろ?」
「なにが?」
「お前なぁ‥‥この時期に学校でやることと言ったら‥‥」
「学園祭よねっ!!」
「ぐわっ!!」
 カンパネラ学園。
 教室でいつものごとくだべっていた国川良治と平井武典。机にうつ伏せていた良治の背中に、強烈なキックが炸裂する。
「あ、宮原。久しぶり。元気だった?」
「いってーな!おいルイカ!てめぇ、なにしやがる!」
 床に吹っ飛ばされた良治を尻目に、武典はキックの主に挨拶する。
「武典くん、おはよ〜!私はいつでも元気印よ!」
「無視すんじゃねぇよ!」
 床から飛び起きた良治はルイカに抗議するも、ルイカは面倒くさそうに視線を向けるだけだった。
「うっさいわねぇ。挨拶くらいでなんなの、この男は?」
「まったくだね」
「あの本気蹴りのどこが挨拶だ!つか武典には普通に挨拶してんじゃねぇか!」
 叫ぶ声もどこ吹く風である。
「まぁいいわ。それより良治。あんたいいこと言ったわね」
「はぁ?」
「学園祭よ!学園祭!オペレーター業にかまけて大事なことを忘れてたわ!やっぱり学生業を怠ってはいけないよね!」
 びしりと指を指すルイカに、良治の怒りもどこかに飛んでいく。
「そ、そうそう!学園祭だよ!やっぱこれを無くして学業とは言えないよな!」
 2人して意気投合する中で、武典が言い放つ。
「で、何をやるとか決めてるのか?」
「「ぜんぜん」」
「‥‥そんなことだろうと思ったよ」
 ため息を吐く武則だが、2人はとりあえずやる気である。
「とりあえず準備からだよな!」
「そうね!人は‥‥まぁなんとか集まるでしょ!なんたって学園祭よ!参加しないなんて不届き者がいるはずないわ!」
 わいわいと騒ぐルイカと良治だが、武典の方もまんざらではなさそうだ。
「‥‥学園祭か」

●参加者一覧

/ 新条 拓那(ga1294) / UNKNOWN(ga4276) / Letia Bar(ga6313) / ガーネット=クロウ(gb1717) / アーク・ウイング(gb4432) / ソウマ(gc0505) / 赤槻 空也(gc2336) / ヘイル(gc4085) / カズキ・S・玖珂(gc5095) / 空圖(gc5180) / リウル(gc5194

●リプレイ本文

●学園祭準備
「お祭りってのはただ歩くのも面白いけどさ。準備して色々振舞う方もまた格別の面白さがあるんだよねぃ♪」
 新条 拓那(ga1294)はカンパネラ学園を見回して言う。根っからのお祭り男体質の彼は、カンパネラ学園で祭りが開催されると聞いていてもたってもいられず、準備に参加することにしたのだ。
「学園に来てみたら‥‥何だ、これ。学園祭の準備か‥‥?」
忘れ物の捜索と男の名誉挽回――という名の埋め合わせ――のために学園を訪れた赤槻 空也(gc2336)だったが、学園がこんなことになっているとは知らず、多くの学生たちが準備に勤しんでいる様子を見て驚いていた。
「部外者も手伝って良いのですか?せっかくですし、学生気分を味わってみたい、です」
 空也の同行人、ガーネット=クロウ(gb1717)は学園祭の準備の様子を見て、目を輝かせている。意中の人とも一緒に出掛けられたので、楽しみも倍になるというものだ。服装が普段よりも女の子なのも、彼女の気持ちを物語っている。
「学園祭が近付いてるせいかな。学園の空気が落ち着いてないというか、高揚していますね」
 ソウマ(gc0505)はやれやれと言った様子で続ける。
「多少騒がしくなるのは良いんだけど、ハメを外し過ぎる人が必ず居ますからね。しっかり釘を刺しておかないと」
 とため息調子で語るものの、わくわくしている様子が見え隠れしている。
「仕官学校のようなものだと思っていたが‥‥全然違うみたいだな」
 カズキ・S・玖珂(gc5095)は生徒たちののびのびとした様子に驚いている。
「何でうちが‥‥まぁいいけど」
 初めての依頼がまさかの学園祭準備と聞き、空圖(gc5180)は一息つく。が、いくら学園祭の準備とはいえ依頼は依頼。少々緊張気味の様子は隠せなかったが、それでもなんとかやろうと思い直す。
「さぁて、みんなよく集まってくれたわね!じゃあ早速やりま‥‥」
「ル・イ・カーーっ!!学園祭の準備だってぇ?これはお手伝いするしかないよね!ってことで来たよーっ」
「きゃわっ!?」
 はりきって挨拶をしようとした宮原ルイカの後ろから思いっきり抱きついてきたのはLetia Bar(ga6313)だ。
「学園祭とかいいねぇ〜演劇、屋台、フォークダンス‥‥こういうイベント事でクラスの模様がいろいろ変わるんだよねぇ♪ルイカはどうかなぁ〜?」
「ちょ、ちょっとLetiaちゃん!」
 抱きついた勢いでそのままぐりぐりと頬ずりするLetia。不意をつかれてはさすがのルイカも形無しである。
「久しぶりだな宮原。Letiaも相変わらずみたいだな。そっちの2人も初めまして、よろしく。ヘイルだ」
 じゃれあっている2人を横目で見ていた国川良治と平井武典に、ヘイル(gc4085)は冷静に挨拶を交わした。
「やぁやぁヘイルくん。いやぁ、何にしても準備含めて青春だ!少年、少女よ、おおいに羽ばたくのだー♪じゃ、ちょっくらいってくるよ!頑張って!」
 と言いたいことだけ言うと、最後にルイカギュっと抱きしめて、Letiaは風のように去っていった。
「あのねーちゃん、ルイカに似てないか?」
良治がぼそりと言う中で、ルイカはちょっとずれたバンダナを付け直し、精一杯の笑顔で、
「さーて、気を取り直して始めるわよ!」
 校舎をびしりと指さしてそう言った。

「世間ではKV少女とかいうのが流行っているようないないような。まあ、何にしろ、皆が好きに作るよりは作業効率が上がるかな」
 教室の一室。アーク・ウイング(gb4432)は生徒たちを集めて衣装の作成をしていた。話している通り、仮想用というかコスプレ用のKV少女の衣装である。
 学校の手芸部の人達や女子を交えて、お子様や成人まで対応できるようにいろいろなサイズのものを用意しておく。
 KV少女というだけあって大体は女性用のコスプレ衣装なのだが、一応男性用のKV風衣装も用意していたが、こちらは衣装というよりもKVの着ぐるみに近い形となっていた。
 雑談も交えて衣装を作っていくと、あっという間にメインとなる衣装は何着か作ることができた。
「それじゃあ、あとはみんなの好きなKV少女の衣装を作ろうよ。さすがに、衣装がワンパターンだと、お客さんにあきられるかもしれないしね」
 と、アークは促す。自分が乗っている機体や憧れの人のKV‥‥様々な衣装が出来上がっていく。
「さーて、あとは更衣室が必要かな。教室を区切るものがいるなぁ。そういえば、ヘイルさんが本部をやってるって言ってたね。ちょっと聞いてみよう」
 1階の教室に向かうと、そこにはヘイルとルイカたちが忙しそうに話し合っていた。
「どうせなら来校者参加型のものにしたい仮装学園祭にして、ミスコンや飛び入り自由のアドリブ劇等、参加型の企画をメインにするのはどうだろうか?」
「なるほどねー。お客さんに企画を作ってもらうわけだ。うん、面白そう!」
「でも、いきなり参加しろって言われても難しくねーか?」
「ならこちらである程度シュチュエーションを用意しておこう。わかりやすく手軽に参加できるように各企画は注意するようにしようか。あと、後夜祭なんかもやったらどうだろうか?キャンプファイヤーとかを用意してだな‥‥」
「火気は先生たちが厳しいんじゃないかなぁ」
「あのー‥‥」
 とアークが声をかける。
「ん?どうしたんだ?」
「当日にお客さんとかが着替えられるために、教室を区切って更衣室を作りたいんだけど、暗幕とかベニヤ板とかあります?」
「ほう。わかった」
 ヘイルは早速無線でどこかに連絡する。
「体育倉庫に暗幕があるそうだ。板とかもあとで届けるようにするよ」
「本当?ありがとう。それじゃあよろしく頼むね」
 アークは礼を言うと、教室に戻っていった。その間も、様々な連絡が本部に入ってくる。無線はひっきりなしに鳴り、その対応に追われていく。
「こちら本部。資材が足りない?――西B3の屋台で余っているな。大丈夫だ、そちらに回せる」
「――大型の木材は北倉庫にまとめてある。まだ8セットは有る筈だ。それを使うといい」
「予算が足りない?ふむ。その程度ならこちらで立て替えよう。売上金から返済だぞ?」
 時には身勝手な依頼も入ってくるが、そこもなんとか汲み取るのが本部の役目。ヘイルはてきぱきと学生たちに指示を出していった。

「わぁ。新条さんすごいですね!どうしてこんなに早くテント作れるんですか?」
「はは、実はこういうことやるのは初めてじゃないのさ。皆と同じくらいの頃は毎年やったもんだよ、こういうこと」
「へぇー。新条さんの学校はどんなことやったんですか?」
「そんなに変わんないよー。焼きそばとかたこ焼きとか喫茶店とか‥‥縁日みたいなのもあったかなぁ」
 学生たちと屋台の準備をしながらふと学生時代を思い出し、懐かしさを噛み締める拓那。
「新条さん!屋台はこんな感じでいいんスかね?」
「そうだなぁ。ここはもっとお客さんの流れを考えて‥‥こっちの方が順番を待ってるお客さんの邪魔にならないだろ?」
「なるほど!了解ッス!」
「新条さーん!こっちはー?」
「はいはーい」
 過去の経験を活かし、妙なこだわりがありつつも的確なアドバイスをしていく。すっかり頼れる兄貴分となっていた。
「学園祭とはこんな感じなのか‥‥」
 逆に学園祭を体験したことが無いカズキは、いろいろなことに驚きっぱなしのようだ。だが、こんな雰囲気も悪くない。屋台設営の板やパイプなどを運んでいると、味わったことのない気分の高揚があった。
 とはいえ、屋台の数に対して少し人が少ない。カズキは無線機を取り出し、本部に連絡を入れる。
「こちら玖珂。屋台の設置が予定より遅れている。できれば男手が5人ほど欲しい。Over」
『了解だ。だが少し待ってくれ。こちらも少々手が足りなくてな。なんとか空いてる人を探してみる』
 どこもかしこも忙しいようだ。
 それでも数分後。手伝いの生徒が駆けつけてくれることとなった。一通り設営が終わると、次は屋台の装飾に移っていった。
「まぁ、たのしいからいいんだけどな」
 空圖はぼそりと呟きながらも、黙々と店の装飾をしていった。女顔に似合う、かわいらしい装飾を屋台に施していく。
 自分が担当したところの装飾が終わると、水を飲みつつ一息つく。
「ふぅ‥‥ざっとこんなもんか。さて、もう一仕事だ」
 と、次は他の屋台の準備を手伝いに行った。しかし、人付き合いが苦手な空圖。人が集まっているところに来ても一言、
「手伝いに来た‥‥」
 と言い、黙々とペンキを塗り始める。
「お!助かるよー。よーし、お兄さんも手伝っちゃおうかなー」
 拓那も腕まくりしつつ屋台に彩りを加えていった。

 Letiaは美術部や絵の得意そうな生徒たちを階段に集めていた。周りにはアートシートと大量のペンキが揃えられている。
「さーて!私たちは階段アートをやってくよっ!」
「おー!」
 大きな筆を使い、大胆に好きな色を乗せていく。
「あはは、学祭とかって準備が一番楽しいよね!」
「そうですねー!こんなこと出来るのって学園祭しかないですからね!」
 Letiaと女子生徒たちはノリが合うらしく、わいわいと楽しそうに絵を描いていく。
「あとはどんなの描きます?」
「そうだねぇ‥‥デフォルメのAU−KVをこんな風に描いて‥‥『うぇるかむ とぅ かんぱねら!Let’s enjoy!!』って感じ?」
「いいですねそれ!かわいい!」
「あっ!Letiaさん、顔にペンキついてますよ」
「気にしない気にしない!これもまた学祭準備のご愛嬌ってやつよ!」
「あはは!そうですね!」
 一通り絵が完成したところで、今度は絵を階段に貼り付けていく。
「あ、そうだ。ついでに『カンパネラ学園祭』ってでっかい看板も作ろうか♪」
 Letiaの提案に生徒たちも賛成し、美術部員が看板となりそうな大きな板を持ってきた。そこにも絵と文字を書き加えていき、
「じゃーん、完成♪みんな頑張ったねっ、お疲れ様!」
 顔も手も、ジャージも服もペンキまみれだがLetiaたちは構わずに抱き合って喜び合う。
「ちょっと休憩したら、他のところも手伝いにいこっか!」
 はーい、という元気な声が校舎内に響きわたった。

「とりあえず、何かあれば連絡が入るはずですから、その間色々見回り兼お手伝いでもしておきましょうか」
 ソウマはやれやれといった表情で校内を見て回る。しかし、周囲の祭りの準備の様子を見ていると嫌でもテンションがあがってくるものだ。適当にぶらついていると、ソウマの無線機に通信が入った。
「はい、こちらソウマ」
『ヘイルだ。実は頼みたいことがあってだな‥‥今こっちで企画した、来校者参加型の出し物の様子を見てきてくれないか?あいにくこっちは忙しくて手が離せないんだ』
「わかりました。任せてください」
 まずはヘイルに頼まれた『アドリブ劇』の教室にやってきた。題目は『現代版シンデレラ』。どうやらある程度までは話があるものの、基本的には来校者が参加して自由に話を作っていくものらしい。演劇部員で『魔猫』の異名を持つソウマにとってはまさにうってつけの出し物だろう。出し物の主催はカンパネラ学園の演劇部のようだ。
「実際に僕がお客だったとして参加して、どんな展開になっても大丈夫なように練習でもして見ましょうか」
 にっこりと不敵に笑うソウマに、演劇部にも緊張が走る。
 そこからソウマは、老若男女様々なシュチュエーションで演技をし、また演技指導をした。一通りを演技し終えたところで、ソウマはふと思いつき、新たな演技を開始する。
「にゃあー」
「!?」
まさかシンデレラの相手が猫になるとは思いもよらず、演劇部員は焦ったものだ。
 みっちり練習と打ち合わせをした後、ヘイルに頼まれたもう一つの場所へと向かった。
 そこは、いわゆるメイド&執事喫茶である。しかしただの喫茶店ではなく、希望した客は衣装を貸し出してメイドや執事になれる、というものだった。
「お客様はご主人様。奉仕の精神でおもてなしいたします。自分がやるだけでなく、お客さんに教えられるくらいまでにならないといけませんね」
 今まで色物喫茶で接客をする経験がたくさんあるソウマは、接客から料理までをアドバイスしていく。
「まずは、紅茶の入れ方かな?」
 礼節を重んじ、従順な家来として奉仕する心を演技を交えて教え、その心得もマニュアル化してお客さんにわかりやすく説明できるようにしたソウマ。何故かメイド姿と心得も熟知していたのは何故だろうか‥‥と、出し物の関係者全員は思ったがあえて口にはしなかった。

「隊長は学生だった事が有るのですね」
 羨ましそうに空也を見つめるガーネット。彼女には学生の経験が無く、憧れを持っていた。
「まぁな。しっかし‥‥人も内容も濃過ぎねェか?俺が昔居た高校ぁもっと普通だったぜオイ‥‥」
 周りの準備の様子を見て半ば呆れ具合の空也。皆能力者ということもあるのか、確かにカンパネラ学園の学園祭は普通のよりも一線を越えている。
「それでも、皆さん楽しそうだからいいんじゃありませんか?」
「それはそうかもしれねぇ。だがな‥‥」
 と言ったところで空也のセリフが遮られる。
「空也くん!こっちお願い!」
「こっちも!重くて持てないの〜」
 と女子の声の助けを求める声――という名の荒使い――が空也に向けられる。
「こんなにこき使われるとは聞いてねぇぞ!!」
 先ほど2人は、空也の探し物を見つけるために校舎をぶらぶらしていたところで出し物の準備をしている女子集団に出くわした。どうやら困っている様子だったので声をかけたのだがどうやら男手が足りなかったようで、その結果、空也は散々こき使われている。
「ったく、年の近ェ女子と一緒にいるとなんか巻き込まれると思ったんだよ。わりぃな、ガーネットさん」
「大丈夫ですよ。むしろこういうことやったことがないんで、ちょっと楽しいです」
 ダンボールの箱を抱えつつ歩くガーネットは本当に楽しそうだった。憧れの学生気分を味わえて満足しているようだった。ダンボールの箱を3つも持たされて前がほとんど見えない空也は、隣のガーネットの表情を見てほっとしたようだ。
 準備もひと段落して解放された2人は、学園内をぶらぶらと歩き始めた。
「あ。ちょっと中に入ってもいいですか?」
 ガーネットはある教室の前で歩みを止めた。
「あぁ、いいぜ。俺は廊下で待ってるからさ」
 すみません、と一言言って教室に入っていく。その教室には『文芸部』と控えめな字で書いてあった。
「そーいや、仲のいい人がいるっていってたな」
 しばらく待つと、ガーネットは妙に気合の入った顔で出てきた。そして、
「あの!隊長!ちょっといいですか!」
 そういうと、空也を連れて図書館までやってきた。
(‥‥文芸部ンとこ寄ってから、ガーネットさん様子がおかしくね‥‥?)
 何か予感のする空也をよそに、ガーネットは話し始めた。
「あの‥‥さっき文芸部のとこで作品を見てみたんですけど、ああいう風にみんなに見てもらうのっていいなと思いまして‥‥それで私も書いてみようと思うんですけど、隊長、取材してみてもいいでしょうか?」
「あ、ああ。かまわねぇよ」
「それでは‥‥男はどういう台詞にグッと来るのでしょう?」
「グッとなぁ‥‥ま、まぁ。貴方が素敵だから一緒に居たい、的なのなら皆喜ぶと思うぜ‥‥貴方を信じてる、とかよ」
と、恥ずかしいながらも真面目に答える空也。その答えは男が男に向ける台詞だとは知らない。ノーマルな趣味を持つガーネット自身も、ドキンときている。しかし、芸術の為にと己を叱咤して続ける。
「守るのと守られるの、どちらが良いですか」
「んん、まぁ俺も男で前線張ってっから守る方がまだ良いが‥‥同じ立場が一番ラクかな」
「同じ立場‥‥ですか?」
 それは攻めと受けとどっちなのだろうと悩むガーネット。もちろん、戦闘のことではない。
 その後何問か質問をした後、礼を言ってその図書館を出た。この質問を元に執筆するのは今度でいいだろう。
「そういえば‥‥隊長の探し物、見つかりませんね」
「あぁ。どこにあるんだろうな」
 校内を歩いていると、KV少女のコスプレ衣装を作っていたアークと出会った。
「こんにちは、アークさん。何をなさっているのですか?」
「今KV少女の衣装を作り終わったから、みんなで試着会をしてるところなんだ」
「KV‥‥少女?」
 ガーネットの目がきらりと光り、そのまま空也を見つめる。
「な、なんだよ」
「隊長ならきっといけます」
 こくりと頷くガーネット。
「‥‥イケねぇよッ!っつかもう女装は俺懲り懲りなんだがよ!?誰が得すんだ誰がッ!」
「赤槻さん、きっと似合いますよ」
 アークもにこりとして頷く。
「だから俺はやらねぇよ‥‥って、離せ離せ!や、やめろぉぉー!!」
 そのまま2人に連れられて、空也は更衣室に消えていった。
 試着の様子を撮った写真は、ガーネットの宝物となったのである。

 日もだんだんと暮れていくが、準備のにぎやかな様子はまだまだ消えていないようだ。
 屋台が立ち並ぶ校舎の外も装飾が進んでいくと、学園の様子も随分様変わりしていった。
「うん、見た目は華やかだし、出てくるものもいい味してるし。これだったら当日は大繁盛間違いなしだね。やー、楽しみになってきた!」
 だいたいの準備が整い、満足気に屋台を見渡す拓那。カズキと空圖も満足気に自分達が作った屋台を見上げる。自分の作ったものが学園祭を彩る‥‥それはなんとも言葉にしにくい快感だった。
「よーし、ちょっと時間もあるようだし、みんなの屋台で出すものを持ち寄って試食会でもしよう!」
 拓那がそう言うと、学生たちも乗り気で準備を始めた。
「あれー?もしかして準備とか終わってそう‥‥って、いいにおい!」
 そこへ応援に駆けつけたLetiaたちがやってきた。
「ちくしょう‥‥なんでまた女装なんて‥‥」
「まぁまぁ隊長」
「いいじゃん!よく似合ってたよ」
「うれしくねーよ!‥‥ま、それはともかく、忘れ物が見つかってよかったよ。忘れ物は事務室に届けられるんだったな。‥‥忘れちまって悪ィなユウ‥‥兄ちゃん、頑張っからよ‥‥!」
 ぎゅっと弟の形見の白鉢巻を握る空也。ガーネットとアークも連れ立ってやってきた。
「学園祭って感じになってきましたね」
 演技指導と執事・メイド指導も終えたソウマは立ち並んだ屋台を満足げに眺めている。
「やぁ。みんなお疲れ様。俺たちもちょっと休憩しにきたよ」
「あー!疲れた疲れた!でもこの疲れもたまらないものよねー!」
 本部で一日中駆け回っていたヘイルとルイカたちもやってきた。
「みんな来たねー。じゃあ、みんなにごちそうしちゃおうか!」
 全員で集まって、いろいろな屋台の料理を堪能する。本番は忙しくて食べれないだろうから、これが堪能する最後のチャンスでもあった。みんなで出し物に舌鼓を打っていると、
「うむ。まだ残っていたのか。きちんと夜間作業届けを出しているかね?」
 そこにやってきたのは、ダンディな格好に身を包むUNKNOWN(ga4276)だ。くわえ煙草にフロックスコートの彼は今回、知り合いの教師と食堂のおばちゃんに頼まれて夜間の見回りにやってきた。
「そうだな。実は校内はまだまだ準備が終わってないところが多いのだよ」
 ヘイルは少し頭を抱える。間に合うように準備は進めようとするものの、どうも時間通りにはいかないのだった。
「まだまだ時間はあるわ!ぎりぎりまで頑張りましょう!さ、休憩は終わりよ!じゃあ私は届けを出してくるから! えーと、UNKNOWNさん?案内してちょうだい!」
「わかった。皆も決して無理をしてはいかん。本番はこれからだから、ね」
 UNKNOWNは不敵に笑い、ルイカと一緒に行ってしまった。皆も終わってないところの手伝いに出かけていった。

 夜。学校の外はすっかり暗くなったが、学園はまだまだ賑わっている。いつもなら退校を命じられてる時間であるが、学園祭の前日は特別に遅くまでいることが許可をされている。
 夜間の見回りの担当となったUNKNOWNは覚醒して『探査の眼』を使いながらぶらりぶらりと学園内を歩き回っていた。
「こら、どこに隠れているんだ」
 隠れて悪さをしようとする生徒には容赦せずに注意を加える。
「こんなところで寝てしまって‥‥まったく」
 準備に疲れて廊下で寝てしまっている生徒には毛布をかけてあげる。
「ううー。終わんないよー」
「どうしたんだ?」
 と準備が終わっていない生徒にも積極的に声をかけてやる。残りの準備時間を考え、間に合いそうなところまでは手伝ってあげる優しさを見せていた。
「これはこうすればいいんじゃないか?」
「うわ!すごい上手いですね!でも‥‥ちょっと上手すぎるかなぁ。ばれないかしら‥‥」
 UNKNOWNの手にかかれば、学園祭の出し物も芸術レベルまであがってしまうようだ。苦笑をしつつも、生徒たちに手作りの弁当を渡してあげた。
「ほら、頑張っているようだからな。これを食べて、最後まで頑張りなさい」
「わぁー!ありがとうございます!とっても美味しい!」
 学生たちの笑顔を見ながら、楽しく見回りを続けるUNKNOWNだった。

「さて、これでなんとか終わりそうだな」
「そうねー。いくら楽しいとはいえ、終わらなかったらシャレにならないものね。終わってよかったわー」
 学園祭本部でほっと一息つくヘイルとルイカたち。学園祭の本部もなんとか落ち着いたようだ。
「あ、宮原。黒宮嬢に招待状を出しても構わないかな?人混みは苦手とのことだが、仮装すれば平気かもしれんし、彼女に友人も増やしてやりたい。来た時の案内は俺が引き受けるが?」
「うん!全然大丈夫だと思うわ!じゃあ佐貴子ちゃんはヘイルくんに任せるわね!」
 などと言いつつ、帰る準備を進める。
「これは本番が楽しみさね♪無事成功しますように!」
 Letiaはまだ頬にペンキをつけつつも、楽しそうに笑った。
「さーて、本番は盛り上げていかないとね」
 とアークも呟いている。
「じゃ、じゃあうちはこれで。み、みんな。がんばろな」
 空圖は照れながらそう言い、学園を去っていった。
「‥‥今日は楽しかったです。ありがとう」
 とガーネットは少し寂しそうに空也に言った。
「これで俺の面目、躍如されたッスか?」
 にっこりと笑いながら返事をする空也に、ガーネットも笑顔で返した。
「さて、みんな。気をつけて帰るようにな」
 UNKNOWNが最後に生徒たちを帰していく。
 これで準備は整った。
 あとは本番を迎えるだけだ。
 生徒たちは本番への期待と不安を胸に、帰路に着いていった。