●リプレイ本文
■昼の映像。
「今回も多分キメラが相手だな。幽霊など存在するはずないのだ!」
天野 天魔(
gc4365)は町を歩きながらいつも通りの独り言を呟く。
天魔はまず、以前の七不思議で出会った津ケ谷先生のところを尋ねた。津ケ谷先生に、廃校になるまで務めていた人を知らないか尋ねたところ、ここに尋ねるといいと住所の書かれたメモを渡してくれた。
天魔は礼を言い、すぐにその先生の家へと向かった。家から出てきたのは老女であった。名前は松田小枝。天魔が来意を伝えると、不機嫌そうにするも部屋にあげてくれた。
天魔はまず廃校と道場の関係について尋ねた。が、彼女は知らないという。
次には行こうになった理由を尋ねると、子供たちの数が減ってしまったので他の学校と合併したのだと言う。
「それに、近くで行方不明者も出てたしね」
小枝はぶっきらぼうに答えていく。
「ほう。行方不明者が出てきたのは、廃校が決まるときだったのか?」
「そうだよ。それに奇妙な噂もあったしね。七不思議とかなんとか、そんなだったと思うけど」
忌々しげに言う小枝。
「当時の七不思議について何か知っているのか?」
「知らないよ。子供たちの噂にいちいち突っ込んでちゃ教師なんて勤まらないからね」
ふむ‥‥と腕を組む天魔。
「それでは最後の質問だ。黒宮佐貴子という名に心当たりは?黒宮という姓でもよいのだが」
「知らないねぇ。生徒の名前も全部覚えているわけじゃあないし」
聞きたいことを聞き終えた天魔は礼を言うとともに、小枝の他にも廃校で勤めていた人がいるかどうか尋ねた。小枝は嫌な顔をしながらも他の職員の居場所を教えてくれた。ただし、名簿は渡さないと言われてしまったが。
他の職員のもとも尋ねた天魔だったが、小枝の時と同じく曖昧な情報しか得られることが出来なかった。
「あのオカルト娘ぇ!何した?!」
相賀翡翠(
gb6789)は叫んだ。警察へと向かう道中、沢渡 深鈴(
gb8044)が手を離そうとしないのだ。
「あの、だって、クロエさんが‥‥」
深鈴は峯月 クロエ(
gc4477)との会話を思い出した。
「深鈴君、ちょっと聞いて欲しい話が‥‥実はネ‥‥」
「えっ?!ええっ!?」
「というコトなので手を繋いでいないと霊が見えますヨ」
とクロエから怪談話を聞かされた深鈴はその話を信じ込んでしまい、それから翡翠の手を一瞬たりとも離していないのだ。
「だから、ひ、翡翠さん‥‥!あの‥‥て、手を繋いでいていただけませんか?」
目を潤ませて懇願する深鈴。
「まぁいつも通りだからいいんだけどな」
翡翠は深鈴の手を握り返しながら警察署を目指し、七不思議の話の中にあった子供惨殺事件及びその周辺で類似の事件が有ったかどうかを聞くことにした。
が、やはり警察は知らないと言う。
念のため翡翠たちも資料を調べてみたのだが、そのような事件は見当たらなかった。怪しそうなのは、行方不明事件程度である。
警官に別れを告げて、今度は2人で周囲の聞き込みを開始した。
まずは老人たちに、竹林に纏わる昔話について聞いてみる。
「竹林の噂ねぇ。そんなものあっただろうか?」
聞かれた老人たちは揃って首をかしげる。昔からの噂などは無いようだ。さらに子供たちにも聞き込みを行なう。どうやら廃校の周辺は子供たちが近付かないようにと、大人たちが呼びかけているようだった。
「ああ、お父さんやお母さんの言う通りだ。廃校と裏山の方は物騒なんで、近づかねぇようにな。お前らに何かあっと家族が悲しむことになる。辛い顔させるんじゃねぇぞ」
子供たち1人1人にそう言い聞かせながら調査を進めていった。翡翠の呼びかけに、深鈴も隣で頷きながら相手をしていく。
「‥‥わかったよ。それにしても兄ちゃんたち、どうして大人なのに手を繋いでるの?」
「仲が良いからだよ」
そこは肯定するのも忘れない、翡翠であった。
「佐貴子君、今回も怪談話をしましょうカ」
その頃クロエは依頼人の黒宮佐貴子の自宅を訪ねていた。隣では今回初めて佐貴子を訪ねるLetia Bar(
ga6313)が手土産を持って立っている。
「サキコ!宜しくさねぇ〜♪これ、お土産の手作りマフィンっ」
「‥‥ありがとう」
表情に出さずに礼を言い、今回も2人を自室へ通す佐貴子。そしてまずは挨拶代わりと、クロエと共に怪談話に花を咲かせた。ただしLetiaだけはこう思っていた。
(今夜は‥‥怖くて、寝れないっ)
「そういえば、クロエさんたちは毎回調査のたびにビデオと撮っているのですガ、佐貴子君は見たいですカ?」
「‥‥見たい」
「それでは、今回は検証会が終わったら佐貴子君に渡しますネ」
佐貴子と約束をし、また怪談話に戻るクロエ。
「レティア君は妖怪と幽霊どっちが好きですカ?」
と急に話を振られ、とっさに、
「えっ‥‥妖怪?まだ実体がありそうで‥‥」
となんとか答える始末である。これでは今夜どころかずっと怖くて眠れなくなりそうな危険を感じ、Letiaはやや強引に話に割り込んだ。
「怪談も色々と‥‥ところでサキコは能力者に興味あるんだって?」
佐貴子はほんの少しだけ髪を揺らして首肯した。Letiaは佐貴子の前で覚醒をする。瞳が変化し、額に金色の模様が浮かび上がった。
「この状態で戦うんさ〜ねぇ‥‥ってサキコ!近い近い!」
Letiaの変化した姿を見るやいなや、佐貴子はぐっと近付き、Letiaの顔をじーっと見つめ始めた。
「面白い面白い面白い面白い」
「えっと、能力者になれるとしたらどうする?何したい?」
佐貴子の顔が数センチのところにありながらも、Letiaは聞いた。
「‥‥‥‥研究?」
考えたことがなかったように、疑問系で答える佐貴子。長い髪を揺らしながら首を傾げる。
「‥‥そだ!廃校を時々みてるって聞いたんだけど、何か思う所あるのかな‥‥不思議以外の事でも教えて貰えれば調査するし。何なら今からでも廃校を見て回る?」
「‥‥行く」
佐貴子は、今回はよくわかるように髪を揺らして頷いた。
「このところあたしは良いところが無い!何とかしなきゃ、何とか‥‥」
月読井草(
gc4439)は焦りながら図書館で資料を漁っていた。
「創始者というのがいるらしいが、どうやらこいつが死んでから狂っていったみたいだな。滅んだ後のことは‥‥うまく言い伝えられていないな‥‥」
隣ではヘイル(
gc4085)も資料を広げてうなっている。とりあえずヘイルはこの資料の編者の白城早季子という名前を控えておいた。どうやら白城早季子という人物はこの周辺の郷土史を研究している者らしく、他の本にも共同研究者として名前が列ねてあった。
「そもそもこのガッコの創立はいつなんだろ。‥‥へぇかなり長いんだ。やっぱり道場に繋がるのかな。あ、そうだ。お山の昔話の本でも探そうかな」
と井草は席を移動した。ヘイルは廃校付近の航空写真を調べている。最新のものと10年程前のものをコピーして手元に残しておいた。
「今回はこれくらいにして、そろそろ行こうか」
「‥‥うん」
2人は図書館を出て、ヘイルのAU−KVで廃校へと向かった。
廃校に到着した2人。ヘイルは昇降口にAU−KVを置き『不眠の機竜』を発動させた。が、AU−KVに反応はない。
「フン。これは『まだ』仕掛ける心算は無いということかな?まぁ、好都合か」
その状態を維持して廃校の中に入る。相変わらず嫌な空気が漂っている。
以前訪れた井戸と家庭科室をカメラに収め、その後屋上へと向かう。屋上から裏山の方を見て、図書館から持ってきた航空写真と見比べる。
「中央部だけ竹が成長していない?」
双眼鏡で確かめるが、中央部だけ少し竹が陥没しているように見える。
「どうして私だけ‥‥。こうなったら何としても新しい情報を‥‥」
廃校に着いても井草はまだ焦っている様子だった。再び校内に入って、次の七不思議の題材であろう大時計を探そうと必死である。
その時、井草の視界に怪しい影が現れ、廊下を曲がっていくのが見えた。
「あ、あれは‥‥。よし、捕まえて手がかりを‥‥!」
「おい!月読!」
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
その時、ヘイルのAU−KVがけたたましいクラクションを鳴らした。
井草は影を追う。廊下を曲がった先にいたのは‥‥。
「‥‥‥」
黒宮佐貴子だった。
「おーいサキコ!1人で進んで行っちゃダメさ‥‥って、井草?」
そこへLetiaとクロエも現れた。クラクションの意味を知る傭兵たちは顔を見合わせ、一瞬にして警戒態勢を取る。
「‥‥佐貴子もいることだし、ここは一旦引こう」
4人は頷き、警戒しながら廃校を出た。Letiaとクロエは佐貴子を家まで送り届け、ヘイルと井草は再び廃校を探索する。しかし、誰もいない様子だった。
「‥‥逃げたのか?」
クラクションはいつの間にか止まっていた。
「キメラが出てるのってどれも水場が近くにあるんよなぁ。偶然‥‥なわけないわなぁ」
ぶつぶつと呟きながらキヨシ(
gb5991)は1人裏山の捜索を行なう。前回の地蔵キメラの足跡から注意深く探索していく。
「ん?なんや他にも足跡がありよる‥‥」
地蔵キメラのものとは少し違う足跡があることに気付いたキヨシ。しかも、少しだけ新しい。小柄の足跡のようだ。
その足跡も注意深く追っていくが、山のあちこちにあるためか居場所を特定するのが難しい。山を全て散策するには時間が足りなかった。探索は一旦中止し、皆との合流場所へと向かう。
■竹林の映像
廃校の裏門に合流した傭兵たち。皆で集めた情報を交換する。先ほどの廃校の一件も共有し、さらに警戒を強めて竹林へと向かった。
竹林の入り口に着き、ヘイルはビデオカメラを井草に渡し、AU−KVを装着して雄々しく声をあげる。
「これより決闘に行く。道を開けよ!」
そのまま先頭に立ち、大きく道を作るように掻き分けて進んでいく。天魔も先頭に立ち、他の傭兵たちも後から続く。
「ねぇ、ダーリン♪竹林デートって素敵だねっ」
「そうやなぁ、ハニー!」
と後ろでイチャイチャしているのはキヨシとLetiaである。ダーリン、ハニーなどと不自然なくらい言い合いながら竹林を進んでいく。
キヨシはこの機会に乗じてLetiaの腰へと手を伸ばす。しかし、Letiaは腰に伸びる手を払いのける。
(クッ、なかなかやるやないかい)
キャッキャウフフとやりあいながらも、水面下では激しい攻防が繰り広げられていた。だがもちろん、周りへの警戒も忘れてはいない。
「‥‥物音!って竹の鳴る音か」
「‥‥気配!?何だ鼬か」
「‥‥視線!!‥‥は竹林に入ったときから感じてるな」
天魔は先ほど拾った木の枝で竹をより分けながらFFの警戒を行なう。
翡翠も深鈴の手を取りながら隊の殿を務める。途中、拾った石を竹に投げながら天魔と同じくFFの警戒をしていた。
竹の中心部に近付いたとき、翡翠と天魔は同時に気付いた。
前方の竹にFFが展開されている。
と同時に、竹がざわめき始めた。風のような自然なものではなく、まるで生物の胎動。
すると前方の竹‥‥いや、竹型キメラが笹の葉を傭兵たちに向けて飛ばしてきた。鋭利になった葉が傭兵たちを襲う。
「そんな攻撃は効かへんなぁ」
いつのまにイチャイチャを止めたのか、キヨシは覚醒して『撃ち落し』で笹の葉を撃ち落した。
「剣山の正体見たりキメラかな、といったところか」
ヘイルも覚醒して笹の葉攻撃を受け止める。翡翠もこのときばかりは深鈴の手を離し、盾で攻撃を受け止める。
次に傭兵たちは攻撃に出た。竹型キメラは攻撃をすればほぼ抵抗なく斬れるのだが、なにぶん数が多い。降り注ぐ笹の葉攻撃を受けながら、前衛の攻撃と援護射撃を繰り返して次々と竹型キメラを倒していく。
数さえ気をつければ、攻撃の威力も大したことはない。竹型キメラの残骸が竹林に散らばるのに、それほど時間はかからなかった。
すっかり空き地となった中心部。そこでLetiaと翡翠が刀での模擬戦を行なっていた。
「決闘ごっこなんていかにも危ない気がするなー」
と言ってビデオを構えていた井草も、いつの間にか、
「勝った者に妾が褒美をつかわそう」
「そうれ、どちらも負けるでないぞ」
「どうした、どうした?」
「ほれ、そこだ突け突け」
などとカメラを片手にノリノリである。
刀を何度か交えたのち、翡翠は切られたふりをし、地面に倒れた。
「首は‥‥もらわないよっ」
Letiaがそう言うと、何故か周囲にあった普通の竹がざわめいた。
「ふぅ、これで大丈夫かなっ」
模擬戦の間、周囲を警戒をしていた仲間たちも一息をつく。これ以上は何も起こらないようだ。
Letiaは持ってきた花と線香を竹林の中心に供え、手を合わせて言う。
「祟らずに、これからは子供達を見守ってやってさ‥‥」
■検証会の映像
「なるほど、今回もキメラの仕業だったわけね‥‥って、手を合わせてるLetiaちゃんの隣に、なんか映ってない?なんか武者みたいな‥‥」
「ええっ!!ど、どこさ‥‥きゃう!」
キヨシに後ろから耳元に息を吹きかけられたLetia。かわいい叫び声を上げる。
「この‥‥怪奇、竹林の粘着おと‥‥あーっ!」
「今日の俺はいつもと一味違うd‥‥ゲッ!」
Letia特製の塩ボールがいつものごとくキヨシに‥‥ではなく、キヨシが避けた先にいた宮原 ルイカに直撃した。
「げほっげほっ!」
ルイカは顔に直撃を受けてむせながらも、キヨシをうらめしそうに見つめる。
「キ〜ヨ〜シ〜く〜ん〜」
「あの‥‥俺のせいとちゃうやんな?」
後退りするキヨシだったが、ルイカの睨みは収まらない。Letiaがこっそりと塩ボールをルイカに渡すと、ルイカは大きく振りかぶって全力でキヨシの顔面に直撃させた。
「げふぅ!」
キヨシが塩まみれになったことを確認したところで、天魔がルイカに話しかける。
「危険すぎるので廃校と裏山を封鎖しないか、少女」
「げほっ‥‥うん、そうね。まだ危険が残ってるかもしれないし。私がULTに掛け合ってみるね」
そんな風にいつもの検証会を映しているカメラに向け、井草が近付いてくる。
「次はスプラッタじゃないと良いな。本当にさ。貴方もそう思わない?」
とカメラに向けて言ったところで、ヘイルもカメラに寄ってきた。
「以上で剣山林の捜査を終了。今回は廃棄は無しだ」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
映像を撮り終わったヘイルは電源を切り、テープを抜き出して弄びながら、
「さて、これがどう響くか‥‥。『貴様』はどうする?」
カメラの誰とも言えない『向こう側』に向け、挑戦的な笑みを投げる。
「それじゃあヘイル。そのビデオは俺とクロエが、少女に届けてくるよ」
「ああ。頼むよ」
天魔はヘイルからビデオを受け取り、後日クロエと共に佐貴子の家へと向かった。
「今回のお土産だ、少女」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
□鑑賞者
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクス。
<続>