タイトル:プール掃除!マスター:九頭葉 巧

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/04 23:45

●オープニング本文


「暑い‥‥な」
「当たり前じゃないか。走ってるんだから」
「じゃあなんで、お前は、そんな涼しそうな顔してるんだ?」
「これくらいのランニング、どってことないさ。君の方が鍛え足りないんじゃないの?」
「なんだとっ!」
「ほら、まだ元気あるじゃないか」
「この野郎‥‥。まぁそれはともかく、変じゃないか?」
「なにが?」
「この時期にランニングだぞ?おかしいじゃないか」
「‥‥もうちょっと情報をくれないと、君が何に疑問を抱いているのかわからないんだけど」
「今何月だ?言ってみろ」
「六月も後半。そろそろ七月になろうかってところだね」
「ほら。おかしいだろ」
「だから何が?」
「武典。お前、ここに来る前はどこにいた?」
「日本の学校だよ。ごく普通の学校だ」
「俺もそうだ。で、この時期学校では何をやっていた?」
「まぁ普通に勉強を‥‥確か中間テストも終わって一息ついてたところじゃないかな」
「テストなんぞはどうでもいい。問題は、今俺たちがやっている体育の授業に何をやっていたかだ」
「そりゃあ、水泳の授業があるとかで準備を‥‥」
「それだ!」
「?」
「この時期に水泳の授業をやっていないなんておかしいだろ!」
「はぁ」
「なにが悲しくてこの時期に延々とグラウンドを走らなきゃならんのだ!この時期、学校での唯一の楽しみといえば水泳!プールだろう!!」
「そんなこと思っているのは君だけじゃないか?」
「いや違うね!健全な男子学生は皆、水泳の授業を楽しみにしているはず!むしろお前のほうが少人数派だ!」
「そうかなぁ」
「こらぁー!そこ!無駄口叩いてないでさっさと走れー!」
 体育教官の怒声が聞こえてくる。カンパネラ学園の生徒、国川良治と平井武典は一旦会話を止め、走り出す。武典は平然とゴールを迎えたのだが、良治はゴールをした瞬間に地面にへばりこむ。
「よーし。今日はここまでだ!次のこの時間だが‥‥よろこべ!次は水泳の時間だ!」
 教官の言葉を聞いて、良治は思わず飛び起きる。
「学園に屋内プールがあるのは知ってるな。次からはそこで泳力の訓練をおこなってもらう。戦場では何が起こるかわからん。海上の戦闘もあるだろうし、不測の事態で海に投げ出されることだってあるだろう。そんなときに泳げないなんてことがあっては問題外だからな」
 この季節ってこともあるがな、と教官は小さく付け加えた。
「そこで水泳の授業を行なうってわけだ。で、プールを使うに当たって、まずはプールの掃除から始める。次はプール掃除からだ。早く終わったら自由に遊んでもいいからな。そんなわけで、水着の用意をしておけよ。では、解散」
 水泳の授業と聞き、ざわざわと話し始める生徒たち。もちろん、良治も例に漏れない。
「おい聞いたかよ武典!水泳の授業だって!俺の願望通りじゃないか!」
「でもプール掃除だなんてめんどくさいだけじゃないか」
「ばかやろう!水泳も大事だがプールの掃除だなんて滅多にできないことだぞ!楽しそうじゃないか!」
「そうかなぁ」
 わくわくと目を輝かせる良治に対し、武典はあの大きなプールを掃除するのがどれだけ大変かを想像していた。

●参加者一覧

/ 石動 小夜子(ga0121) / 弓亜 石榴(ga0468) / ロジー・ビィ(ga1031) / 新条 拓那(ga1294) / アンジェリナ・ルヴァン(ga6940) / 砕牙 九郎(ga7366) / 百地・悠季(ga8270) / 麻宮 光(ga9696) / 紅月・焔(gb1386) / 二条 更紗(gb1862) / エリザ(gb3560) / 冴城 アスカ(gb4188) / 龍鱗(gb5585) / 結城 有珠(gb7842) / 月明里 光輝(gb8936) / 紅月 風斗(gb9076) / ソウマ(gc0505) / 音無 音夢(gc0637) / 如月 芹佳(gc0928) / 姫川桜乃(gc1374) / 黒崎 裂羅(gc1649) / 春夏秋冬 立花(gc3009) / エレシア・ハートネス(gc3040) / 黒渚 玲二(gc4024) / 白菊 揚羽(gc4067

●リプレイ本文

 夏、である。
 学園の夏を楽しいものにするため‥‥というのは建前でほとんどは楽しむため、様々な傭兵たちが集まった。
「んー‥‥気持ち良い天気!まさにプール日和ですわねッ☆」
 プール施設へ向かう道中、ランニングにアロハシャツを着たロジー・ビィ(ga1031)は気持ち良さそうに太陽を浴びる。
「‥‥プールに来ること自体‥‥ずいぶん久しぶりですね‥‥」
 結城 有珠(gb7842)も久しぶりのプールに控えめながら期待を寄せているようだ。
『‥‥季節は巡り‥‥またやってきたか‥‥俺の季節が‥‥』
 紅月・焔(gb1386)はガスマスクの下にある眼をギラギラと光らせている。何を考えているかは‥‥まぁ、すぐに明らかになるだろう。
「あっついわねぇ‥‥」
 日差しをきつそうに見つめるのは冴城 アスカ(gb4188)である。
「それにしても天気が良いなぁ。絶好のプール掃除日和ってところか‥‥」
 同じく太陽を少し恨めしそうに見つめているのはソウマ(gc0505)だ。
「ふむ‥‥プールか‥‥。久しぶりだねぇ‥‥クックック」
 黒崎 裂羅(gc1649)は怪しげな笑みを浮かべながらプールを眺める。
「しっかし、あつはなつい‥‥じゃない。夏は暑いね‥‥何か寒くてごめん」
 黒渚 玲二(gc4024)は同行人の言葉を待たずして謝った。その同行人の白菊 揚羽(gc4067)は華麗にスルーし、
「やるからにはキッチリ、しっかりやるのが私ですから、黒渚は邪魔しないでくださいね?」
 と釘を刺した。

 カンパネラ学園のプール施設は、かなり巨大なものであった。施設棟の中に一際大きな施設がプール施設である。
「よーし集まったな!今回はこの屋内プールの掃除をしてもらう。はしゃぐのは構わないが、掃除はおろそかにするなよ!」
 プールの前で待っていた体育教官は快活な笑顔を振り撒いた。挨拶もそこそこに、まずは更衣室に案内される。そこで着替える者は着替えて準備をした。
「‥‥っと、その前に」
 如月 芹佳(gc0928)は女子更衣室の中を調べ始めた。
「よし。大丈夫かな。念のため、覗き対策をしておかないとね♪」
 乙女の安全を確保したところで、水着に着替え始めた。
「ん‥‥アンジェリナ‥‥水着選んできたよ‥‥」
 エレシア・ハートネス(gc3040)は一緒に来たアンジェリナ・ルヴァン(ga6940)に水着を手渡す。水着は水色と白のボーダー柄のタンキニだ。エレシアはオレンジのワンピース水着に着替えている。
「‥‥水着など着なくてもジャージとかで十分なんじゃないか?」
「‥‥そこはホラ、雰囲気。‥‥それに、終わったら‥‥遊ぶしね」
 エレシアは笑顔で水着を渡す。やれやれといった様子でアンジェリナは水着を受け取り、着替えを始める。
「さて石動さん!私も水着を用意してきたわ!これを着ちゃってください!」
 弓亜 石榴(ga0468)は着替えを始めようとした石堂 小夜子(ga0121)に水着を押しつける。小夜子は恐る恐る水着を広げてみて、驚愕。
「弓亜さん?!こ、これ‥‥」
「ふっふっふー。私自慢のエロエロ水着なのだ!」
 石榴が持ってきたのは、妙に布の範囲が狭い黒のビキニだった。小夜子は思わず赤面する。
「ほらでも、掃除のときはシャツを着ればいいからさ。というかシャツを着ることに意味が‥‥あ、いや、なんでもないよ。ほらほら」
 石榴の強引な押しに、小夜子はその水着に着替え始めた。

●更衣室&シャワールーム
 着替えを終えた面々の中でも、プールの内部を担当する人たちはぞろぞろと更衣室を出ていった。何名か残ったのは、プール以外の場所を掃除する者だ。
「更衣室かぁ‥‥更衣室って言うくらいなんだから裸になって掃除しよ!」
 女子更衣室では、姫川桜乃(gc1374)は服を脱いだまんまの姿で掃除を始める。裸で掃除することに同行人の春夏秋冬 立花(gc3009)と月明里 光輝(gb8936)はつっ込まない。なんかいろいろ慣れているんだろう。
「ん?」
 光輝は掃除を進めていると、不意に屈み、何かを掴んだ。
「サクちゃーん、りっちゃーん、見て見てこの虫すごくデカいよ〜!!」
 そのまま、掴んだもの‥‥プールの更衣室ではおなじみのなんだかよくわからんものすごく大きな虫を2人に見せつける。
「きゃあ〜!」
「きもい〜!」
 とかなんとか、騒ぎながら更衣室を走り回る。そんな中、白菊だけが黙々と更衣室の掃除を進めていた。
 更衣室から少し離れたところにある女子用のシャワールームでは二条 更紗(gb1862)と音無 音夢(gc0637)が掃除をしようとしていた。
「音無様。わたくしシャワーを浴びてから掃除をしたいのですが、よろしいですか?」
「ええ。いいですよ」
 音無の許可をもらった更紗は簡単にシャワーを浴び、スクール水着を着る。スクール水着には『4の5 二条』と大きく書かれていた。彼女の○学校4年生のときの物である。その時から随分と経っているはずなのだが‥‥いろいろなところがまったく成長していないというわけである。
「貧乳はステータスです。無乳には無乳なりの需要もあります」
 誰に語りかけるでもなく、自分自身に言い聞かせる。その上にTシャツと短パンを着て、シャワールームを出た。
「おまたせしました。それでは、やりましょうか」
 更紗の言葉に、音夢も頷く。彼女はメイド服のまま掃除を始めた。

『ちょ!何これ!?これ掃除じゃん!誰も更衣室なのに脱いでないじゃん!水着のエンジェルは何処っすか!?何!?俺の情熱空回りっすか!?』
 男子更衣室では焔が何やら大騒ぎをしている。どうやら、依頼の内容を『更衣室』としか見ていない様子だった。どんな勘違いをしたのだろう。
「ほら、さっさとやっちゃいましょう。水着のエンジェルはプールにいますから」
 ソウマは人手の足りなさそうなところを手伝おうと考えていた。ほとんどの人がプールの方に行ってしまったので更衣室の掃除をしようと思ったのだが‥‥残ったのは焔だけであった。仕方ないので、2人で掃除を始めようと用具を取り出しながら声をかけた。
『なにぃ!そういう作戦か!よろしい、ならばすぐにエンジェルたちと合流するぞ!』
 ソウマの言葉を聞いた焔は、一気に掃除のスピードを上げた。変な人と一緒になっちゃったなぁ、と思いながらソウマも手を動かす。
「片目だけだと不自由だな〜」
 男子のシャワールームでは玲二が独り言を呟きながら手を動かしていた。事前に掃除の仕方を調べていたので、汚れを丁寧に落としながらてきぱきと掃除していた。
 同じくシャワールームでは紅月 風斗(gb9076)も掃除に励んでいた。

 数十分後。人数は少ないが、男女更衣室とシャワールームの掃除を終えることが出来た。まだプール掃除の方が終わっていない様子だったので、ぞろぞろとプールの方へ移動をする。
「‥‥こっちきな」
 更衣室とシャワールームにいた全員がプールの方へ向かったのを確認して、風斗は音夢をシャワールームへ呼んだ。音夢がそちらに行くと、不意打ちで抱き締めてキスをする。
「‥‥ん」
 誰もいないシャワールームにキスの音が小さく響く。
「音夢が可愛いからつい‥‥な」
 風斗が唇を離してから言う。
「もう‥‥。でも、いつもと場所が違うだけなのに‥‥なんだか恥ずかしいですね‥‥」
 音夢は頬を染める。
「さあ、私たちもプールに向かいましょうか。サボりは認めませんよ」
 最愛の人と甘い時間を過ごしたい気持ちもあったが、メイドとして掃除に手を抜くわけにはいかなかった。

●プール掃除
 メインのプール掃除の方もちゃくちゃくと‥‥わいわいと続いているようで。
「‥‥おおっと石動さん。何か出るトコがまたー」
「ひゃ!ちょっと‥‥弓亜さん!」
 水着の上にシャツとジャージを着てきた小夜子と石榴だったが、石榴は掃除もそこそこに石動の胸をもみしだかれている。しかもあえて、一緒に来た新条 拓那(ga1294)の目の前で。
「そこ、そーゆーことしない!俺にどーしろっていうのさ!」
 小夜子の様子を見ても、なんとか冷静に石榴を止めようとする拓那。しかし内心はもうドキドキである。石榴はとりあえず胸もみを一旦止め、デッキブラシを持つ。
「いや、私もただふざけてるんじゃなくて、2人には感謝したいと思ってさ。石動さん、この前の水中戦の時、アドバイスをくれてありがとね。ホントに助かったよ。新条さんも‥‥いつもいろいろありがと」
 先ほどの様子から一転して、少し真面目な顔をして2人に感謝を述べる石榴。
「弓亜さん‥‥そんな、いいですよ。お礼なんて」
 小夜子と拓那が返事をした瞬間、
「だから2人には感謝の気持ちを込めて‥‥それー!!」
 石榴は目にも止まらぬ速さで、小夜子の履いていたジャージをずり下ろした!
「きゃー!!」
 そしてそのまま写真を何枚も撮影!
「ククク…これこそ水着の形態が下着とあまり変わらないので、何でもないのにえろっぽく見えるという必殺技!」
 得意げに解説をする石榴。
「いいかげんに‥‥してください!」
「きゃう!」
 小夜子のげんこつが石榴にクリーンヒット。
 拓那は小夜子のあまりに刺激的な姿に、そのまま倒れてしまった。

「さーて、準備は完璧ですの!お掃除開始ですわ!」
 水着に着替えたロジーはデッキブラシを構えてプールの中で胸を張る。そこでふと思いついた。
「デッキブラシ掛け競争なんか楽しそうですわね。誰か一緒にやる方いませんか?」
 と呼びかける。すると、
「あ、あたしやりたいな」
 スクール水着の上にTシャツを着て、アクアサンダル履いている百地・悠季(ga8270)が挙手する。
「でも先に排水溝をやっちゃいたいから、ちょっと待ってて」
 そう言うと、排水溝に溜まっていたごみをかき出し、タワシでごしごしとこする。
「じゃあ、あたしも手伝っちゃうわ。その方が早く競争できそうですからね」
 ロジーも手伝ったことで、すぐに排水溝の掃除が終わった。
「さて!じゃあやりましょうか!」
「わたくしも参加していいかしら?」
 競争を始めようとしたところで、カンパネラジャージを着たエリザ(gb3560)もそこに加わる。
「やるからには負けませんよ」
 エリザは強気に言う。
「ふふ‥‥あたしも負けませんよ。それでは、よーい‥‥スタート!」
 ロジーの掛け声で3人は勢い良く走りだした。
「ん?」
 エレシアに貸してもらった水着の上にTシャツを着たアンジェリナは、その様子を見て言う。
「ふむ。割りと広いし、あのように一気に駆ければ一緒に足腰の鍛錬になるだろうか」
 すぐに覚醒し、走りだしながらデッキブラシをかけ始めた。
「あ‥‥アンジェリナ‥‥危ない」
 エレシアが注意するも時すでに遅く、勢いよくアンジェリナは勢いよくすっころんだ。
 盛大な音を立てて転んだアンジェリナを見て、真面目に掃除をしていた有珠が駆け寄る。
「‥‥大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
 心配そうにする有珠とは逆にアスカは、
「あっはっは〜!アンジェリナ、大丈夫〜?」
 と面白そうに笑いながら声をかけた。
「む‥‥大丈夫だ」
 アンジェリナは面白くなさそうだ。ゆっくりと立ち上がり、今度は気をつけて掃除を始める。
「おいおい大丈夫か?手伝ってやろう」
 砕牙 九郎(ga7366)はそんなアンジェリナの様子を見て手伝うことにした。アンジェリナの分も洗剤を撒き、ゴシゴシとしっかり擦って汚れを落としていく。アスカはアンジェリナのことを弄りつつ、同じようにデッキブラシで汚れを擦っていく。
「プール掃除なんていつ以来だろう‥‥」
 龍鱗(gb5585)は昔を懐かしみながら仲間と一緒に掃除をしていく。その格好は上着を脱ぎシャツの袖とズボンの襟を捲くっただけのものだ。
「転ぶのは気をつけなきゃなー。でも、フェンサーの機動力を活かせば、広いプール掃除も難しくないはずだよね?」
 芹佳は水着姿のまま覚醒し、気をつけながら掃除をしていった。
「いやー。いい光景だなぁ」
 麻宮 光(ga9696)は女性たちが真面目に掃除している様子を見て満足そうだ。だいたいの女性たちは水着か、水着の上にシャツを着て掃除している。この光景を見れただけでも、
「来た甲斐があったよなぁ。やっぱ夏はこれだね」
 と一人心地だ。しかし、あまりジロジロ見ているといらぬ疑いをかけられると思い、掃除をしていく。
「ククク‥‥真面目だねぇ」
 裂羅はデッキブラシを振り回しながら皆が掃除する様子を眺めていた。

 そうして掃除をしていくと、更衣室&シャワールーム組がプールの方にもやってきた。すぐにプール掃除の方にも加わる。
「お、やってるなぁ。白菊さん、自分たちもやりましょうか。こんな事もあろうかと掃除のやり方を調べておいて良かったよ」
「調子に乗らないで」
 玲二に蹴りを喰らわせる白菊。どうやら無理矢理連れてこられた腹いせらしい。
「ちょっ蹴らないで!転んだらどうするんだ!?」
 焦る玲二。その言葉を無視して白菊は掃除を開始した。仕方ないので玲二も掃除を始める。
『プールに舞い降りた水着の天使たちよ!私は帰ってきた!‥‥って、水着が少ない?!いやでも、あの水着の上にTシャツというのもなかなかオツなものだ!うん!OK!』
 先ほどから焔のテンションは上がりっぱなしだ。
「そんな大げさな。でも、いいですね。‥‥あ、二条さん」
 ソウマは自分の所属の隊長を偶然見かけ、声をかけた。
「あら。ソウマくん。気がつかなかったわ」
「僕もです。奇遇ですね‥‥って、二条さんはカンパネラの学生でしたね。その服装、似合ってますよ」
「ありがとう」
「それじゃあ、今日はお互い掃除をがんばりましょう」
「ええ。一緒に頑張りましょうね」
 にこりと2人は微笑みあった。
「皆さん楽しそうですね‥‥きゃ?!」
 プールサイドを歩いていた音夢は、掃除の際に濡れた床に足を滑らせた。すぐさま風斗が抱きかかえて支える。
「大丈夫か?ここは滑りやすいから気をつけろよ」
「はい。ありがとうございます」
 光輝、桜乃、立花の3人娘はデッキブラシを持ってプールに降り立った。桜乃は勢いよく、
「とりゃ〜〜〜〜!ん!?誰よ!こんなところにビート版置いておいたのは!‥‥って立花ちゃんじゃない!ビート版じゃなくて胸だったのね‥‥」
「どんな間違え方だ!全く。2人とも、楽しむなとは言わないけど、少しは真面目に掃除したら?」
「まぁまぁ立花ちゃん。それよりねぇ。ちょっとおんぶされて?」
「ん?まぁいいけど」
「立花ちゃんのないむねパワー!」
 立花をおんぶした桜乃は急に勢いよく掃除をし始めた!
「勝手に人を動力回路に組み込まないで頂戴!あと、ない胸言うな!」
 桜乃の勢いある掃除スピードを見て、思わず光輝は、
「おお、活発になった!‥‥流石ないむねパワー!!」
「え!?私のない胸パワーはそんなに有名なの!一体どんな動力回路が!‥‥ってやかましいわ!!」
 なんだか大騒ぎの3人娘である。

 全員で広いプールを綺麗にしていく。プールのほとんどを擦り終えたところで、九郎が言う。
「そろそろ水で流しながらやろうか」
 そう言ってホースを手にする。女性にかけてしまわないように、注意してかけようとしたのだが‥‥。
「九郎‥‥いや、苦労さん。頼みましたよ」
 光はこっそりと蛇口に行き、一気に水の勢いを上げた。
「うわぁ!」
 急に水の勢いが上がったことにより、手元が狂ってしまった。水はアンジェリカに直撃し、水まみれ。Tシャツが透けていい感じに水着が浮き上がる。
「‥‥なにをする」
「うわ、えとあの、違うんだ!すみません!」
「なにやってるんですか九郎さーん!」
「ぐおぉー!」
 光は知らん顔で九郎にデッキブラシアタックを加える。水で勢いを増し、九郎は一気に吹き飛ばされる。九郎の手から離れたホースをアスカが拾い、
「ナイスだわ光!‥‥あっ、手元が狂った〜」
 明らかに確信犯のアスカは、エレシアにも水をかける。
「‥‥あ‥‥わ」
 Tシャツで隠されたはずのエレシアの大きな胸もあらわになってしまう。さらにエレシアは水で足を滑らせ、ちょうど立花にぶつかってしまった。
 立花もバランスを崩して倒れてしまったのだが、ぶつかったのがエレシアの大きな胸だと知るといなや、
「でぇぇい!汚らわしいものを私にぶつけるな!」
と胸をはたき、
「胸なんて脂肪の固まり、なくてもそんな困らないもの!それなのにみんなありがたがってさ!そもそも知ってる?胸が大きくなったの繁殖期の合図の代わりで、決して月経も迎えていないような人間がそんなたわわに実らせていいものではない!大体巨乳好きは普通なのに貧乳好きは『貧乳萌へー、はぁはぁ』とか変人が多いの!主張が長い!?知るか!そちとら生まれてこの方ない胸なんじゃぁい!」
 と心の叫びを撒き散らしていた。
そこへ、すっかり集中力が欠けた更紗がふらふらとやってきた。そして、Tシャツの下から大きな主張をしている胸を見るやいなや、むにむにともみはじめた
「‥‥ひゃあ‥‥」
「大きい‥‥けしからん胸だ。わたくしには無い、存在感」
 物色するように他の女性の胸を観察するが、そこには『ない胸パワー』を発揮していた立花の胸があった‥‥いや正確には、無かった。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
 2人の視線が交差する。通じ合うものが、そこにはあった。

「むむっ!こっちも負けてられないわね!」
 水かけ騒ぎを横目で見た石榴は、
「よーし、それじゃあ水かけるよー。それっ!おー、凄い凄い、虹が出来た!」
 と無邪気に水をかけながら掃除をしている拓那のところに瞬間移動し、
「えい!」
 と拓那の向きを無理矢理変える。
「え!なに弓亜さん‥‥って、うわぁ!」
「きゃあ!」
目標はもちろん、小夜子である。水をあびた小夜子はもちろん、シャツの下水着が透けている。
「これで、水で透けたら下着っぽいという、非常にまにあっく嗜好が楽しめるんだよ。へっへっへっ」
 そしてそのまま何枚も写真をいただく。
「こら!弓亜さん!」
「おっと!逃げるが勝ちだぜ!」
 と石榴は身軽に逃げていく。正確には逃げたのではなく、他の女性の写真を撮りにいっただけなのであるが。
「ふふふ‥‥楽しそうですわ。あたしも水を浴びたいな」
 困り果てている拓那に、ロジーは追い討ちをかけた。
「はぁ‥‥着替えておけばよかった‥‥」
 先ほどの騒動に巻き込まれた龍鱗は、めんどくさがらずに着替えを怠った数十分前の自分を呪った。

 そのあと大騒ぎをしつつもなんとか掃除は終了。終わった頃にはほぼ全員がびしょ濡れであったのはきっといい思い出である。
 プールの管理者に掃除の終わりを報告し、今は水を入れてもらっている最中だ。遊びまでの休憩時間ということで、みんなゆっくりと休んでいる。
「はい、拓那さん。どうぞ」
 小夜子はクーラーボックスで冷やしておいた飲み物とタオルを手渡した。まだTシャツが濡れて透けたままの小夜子の姿にドキドキしつつも、拓那は素直に受け取る。
「あ、ありがとう」
「それでは、他の人にも配ってきますね」
 小夜子の姿に見とれつつ、タオルを顔に当てる。冷たくて、気持ちがいい。
 ロジーは持参したラムネを皆に配っていた。
「こう飲むんですよ!」
 片手を腰に持っていき、一気に飲み干す。
「ぷはぁ〜、ですわ!やっぱり夏はこれですよね!」
 きゃっきゃとはしゃぎながら飲み方まで教えているようだ。
「じゃああたしはお礼にこれをあげるわね」
 悠季はロジーにお返しにと、アイスバーを取り出して渡した。そして、ロジーと一緒に他の人たちにも配ってまわった。
龍鱗も持参した飲み物をクーラーボックスから取り出し、準備をしている。
「ジュース配るの?私も手伝うよ」
その様子に気付いた芹佳が龍鱗に声をかける。
「お、ありがとう。それじゃあお願いしようかな」
 2人で一緒にジュースを配って回る。
「皆お疲れ様。飲み物あるからどうぞ」
 先ほどの騒ぎの主犯とされた九郎は、力なくジュースを受け取る。
「ありゃ。せっかく教官に奢ってもらったのに、被っちゃったかな」
 ソウマはジュースを受け取りながらぽりぽりと頭を掻いた。演劇部仕込みの天使の笑顔で体育教官から勝ち取ったのだが。
「ま、いいか。遊び終わったあとにみんなに渡そう」
 そう思い直し、クーラーボックスへと入れなおす。
「ん‥‥お弁当作ってきたけど‥‥食べる‥‥?」
 エレシアはアンジェリナの分のお弁当を作ってきたようだ。
「‥‥ありがとう。いただくよ」
 アンジェリナは感謝しつつ、お弁当を食べた。
「うん。美味しい‥‥」
「みなさーん。こっちにはおにぎりがありますよー」
 立花は来る前に握ってきたおにぎりを皆に振舞った。みんながわれ先にと取っていくなか、なぜか立花は、満足そうな笑み以外の闇笑いを浮かべている。
「腹が減ってはなんとやらってね☆」
 光輝はそう言いながらおにぎりを口に運ぶ。今までの経験から何が入っているかわからない不安を抱きつつも、空腹には勝てなかった。そして、
「むぐぐ〜」
 見事当たりの練乳苺入りおにぎりを引き当てたのである。

●プール遊び!
 綺麗になったプール。掃除は終わった。あとは、遊ぶだけだ。
「アンジェリナさん!エレシアさん!ビーチバレーで遊びましょう!」
 桜乃は光輝、立花とともにアンジェリナとエレシアを誘った。エレシアはすぐに誘いに乗ったのだが、アンジェリナはどうやら渋っているようだ。
「‥‥私は泳げないんだ」
「大丈夫大丈夫!そこの25メートルプールなら浅いからさ!」
「いや、でも‥‥」
「それ!」
「‥‥!」
 突然現れた悠季が、渋っていたアンジェリナをプールに突き落とした。
「突き落とし合戦だよ!」
 そのまま桜乃や立花、光輝も続けて落としていく。
「わっ!」
「きゃあ!」
「はわわ!」
 どぼーん、という景気のいい音が立て続けにする。
「アンジェリナ?!大丈夫か?!」
 密かに心配をしていた九郎が慌ててやってくる。が、
「ん‥‥足がつくなら、大丈夫か」
 アンジェリナは平気そうだ。
「すみませーん。あたしも混ぜてくださらない?大勢で遊んだほうが楽しそうですし!」
 ロジーが持参したビーチボールを持ってやってきた。
「ええ。一緒に遊びましょう!」
 みんな、快く仲間に入れてくれたようだ。
「ありがとうございます!あ、エリザさんもどうですか?」
「ええ、わたくしも参加させていただきますわ。どんな勝負でも負けませんよ」
 エリザも加わり、大人数で入り乱れてのビーチバレー対決となった。
「立花ちゃんなにしてるの!それはボールじゃなくてエレシアさんの胸よ!」
「はっ!?」
 立花が拾おうとしたボールが巨乳であったりなんかして、わいわいと水の中でボールを追いかける。
「立花さんは、ない胸パワーで頑張ってるなー」
 観戦していた九郎が楽しそうに応援する。
「どこまでメジャーなんですか!」
 もちろん、立花にボールをぶつけられたのは言うまでもない。

 風斗は音夢とともにプールの中にいた。音夢は掃除のときのメイド姿と違い、白のビキニ姿である。
「似合ってるぞ‥‥しかし大胆な水着だな」
 大胆な水着は、好きな人のため‥‥とは恥ずかしくて言えない音夢だ。
「そういや、泳ぎは得意か?よければ教えてやるぞ」
「お願いします。私、泳ぎがあまり得意じゃなくて」
 プールの端に掴まりながら、丁寧に泳ぎ方を教える。少し泳げるようになったら、自分で泳いでみるよう言い、少し離れる。
「うーん。上手く泳げません‥‥」
「少し違うな‥‥そっち行くから少し待ってな」
 と丁寧に泳ぎのフォームを教えようと音夢の身体を持ち上げたとき、偶然音夢の胸を触ってしまった。
「きゃ‥‥!?」
「これは‥‥なっ!?すまん音夢‥‥」
 2人して赤くなる。そのあと、なんだかおかしくなって2人で笑った。
「さ、続けよう」
「はい」
 ゆったりとした時間が流れていく。

「えと‥‥普通に泳げるといいのですが‥‥」
 パーカーを脱ぎ、花柄のワイヤービキニ姿となった有珠は、25メートルプールの端で泳ぐ練習を始めた。小学校以来泳いでいないので、まずは試してみる。
「えいっ!」
 こういうことは体が覚えているらしく、意外とすんなり泳ぐことができた。
「よかった。それじゃあ、完全に思い出すまで泳いでこよう‥‥」
 50メートルプールに移動し、黙々と泳ぎ始める。
(とりあえず‥‥今年は海に行くことを目標に‥‥。泳げないと困りますからね‥‥)
 頑張って泳いでいる有珠を横目に、裂羅はのんびりと泳ぎながら
「頑張ってるねぇ‥‥ククク」
 と言った。ちょっかいをしてやろうかと思ったが、なんとなく止めておいた。
「はふぅ〜」
 同じように水面にただ浮かんでいるのは更紗だ。先ほどの掃除のときに、テンションが上がってほぼ全員の胸をもみしだいてやった。そこで完全に体力を使い果たした更紗は、こうして浮かんでいるしかなかった。
「強く‥‥生きていきましょう‥‥」
 約一名以外の胸の感触を思い出しつつ、浮力の感じない自分の胸のことを想った。

「おーい芹佳。一緒に遊ばないか?」
「いいよ。あ、龍鱗さんも一緒に遊ぼう」
「いいけど、何して遊ぶんだ?」
 そう言われると、光はビート版を取り出した。
「これで遊ぼう。フリスビーみたいな感じでさ」
 ビート版を見て、芹佳が何か思いついたようだ。
「ねぇ。それ投げてみてよ」
「いいよ」
 光はにやりと笑い、
「あっ、手が滑った〜」
 と、思いっきり九郎の方へとビート版を投げた。
「な、なぁ!?」
 ビート版が九郎に迫る。そこで芹佳は目をきらりと光らせ、覚醒。『迅雷』を使って一瞬でビート版の上に移動し、さらにその上を走る。勢いをつけて空高く舞い、水面にムーンサルトをして、どこから取り出したか、巨大ピコピコハンマーを構える。
「目標‥‥捉えた!」
 もちろん、目標は、
「なんで俺なんだ〜!」
 九郎である。勢いをつけた一撃が綺麗に決まり、九郎は水底へと沈んでいった。続いて芹佳が水面に落ち、水しぶきがあがる。
「九郎‥‥大丈夫か‥‥」
 対して心配もしてなさそうな龍鱗の呟きが聞こえる。
 少しして、芹佳が水面に上がってきた。
「ふむ。なんだか実戦でも使えそうな気がしてきたぞ」
 なんだか満足そうな芹佳に、光が声をかける。
「芹佳。むねむね」
「あ‥‥」
 紐タイプのビキニなのに無茶をしたからである。水着は外れ、胸が見えてしまっていた。
 慌てて腕で胸を隠す。
「み、水着‥‥!」
 芹佳はキョロキョロと周りを見渡す。
「ぷはぁ!」
 少し離れたところで、適当に泳いでいたソウマが水面に顔を出した。
「こんくらいしか泳げなかったかなぁ‥‥ん?なんだこれ?」
 ソウマの頭に、何かの布がひっついている。頭から外して見てみると‥‥
「こ!これは!?」
「か、返して!!」
 芹佳の悲痛な叫びが響く。芹佳の姿と自分の持っている布を見て、ソウマは赤面を隠せない。
「ご、ごめん!ほら!」
 芹佳は急いでソウマから水着を奪い取り、その場ですぐ水着をつける。
(お、大きいな‥‥)
 ばっちり目撃をしてしまったソウマであった。
 ‥‥そしてもう1人、目撃していた男がプールサイドで倒れた。
『ヴァ、ヴァルハラ‥‥』
 女性を観察することだけしかしていなかった、焔だ。
「あっはっは〜!!芹佳ったらおっかし〜!」
 アスカはプールサイドでみんなが楽しそうに遊んでいる姿を見ながらビールを美味しそうに飲む。この一杯は、いろんな意味で忘れられそうにない。大切な思い出になりそうだ。
 ぐいっとビールを飲み干したところで油断したアスカは、
「えい!」
「きゃあ!」
 っと、みんなを落として回っていた悠季に押されて水に落ちていった。

「ふぅっ!やっぱり水に入ると、ようやく夏って感じだなぁ。うん、後はゆっくり。こうやってのんびりできるのも久しぶりだしね♪」
 拓那は水の気持ち良さに感動しつつ、少し気合を入れて水に飛び込む。そのまま本気で50メートルを泳ぐ。かなり速い。泳ぎが得意なのだろう。
 自分の泳ぎを確かめたあとは、ゆっくりと泳ぐ。平泳ぎで顔を出しながら泳いでいると、小夜子がプールの端で足を浸していた。
「や、やぁ、小夜ちゃん」
「あ、拓那さん。ふふ‥‥暑い日にはこうするのが一番、気持ち良いですよね。拓那さんもご一緒にいかがですか?」
 微笑を浮かべる。
「う、うん。じゃあ一緒に」
 2人並んで水に足をつける。拓那はちらちらと小夜子のことを見る。Tシャツを脱いで、石榴に貸してもらった大胆な水着がそのまま直視できる。それが、なんというか、
「綺麗だ‥‥」
「え?」
「え、いや、俺なんか言った?思ったことがつい口に‥‥じゃなくて‥‥」
 完全にKOである。ただただ焦るばかりの拓那に、小夜子は恥ずかしげな笑みを浮かべて、
「ありがとうございます」
 と言った。2人ともそのあとは、沈黙してしまった。
「青春だねぇ〜」
 石榴は少し離れたところでのんびりと涼んでいる。今回ばかりは2人の邪魔をせずに、遠くから見つめるだけだ。
 ふぅ‥‥と1つため息をつき、
「‥‥『私らしく』出来たかな?」
 と独り言を加えた。

「‥‥ずいぶんと楽しそうですね」
 白菊はプールではしゃぐ他の参加者を見ながらついそう言ってしまった。そこへ、何本か個人メドレーを泳いできた玲二がやってきた。
「少し休もうと思ってさ」
 そのまま隣に座る。白菊は、玲二の方を向かない。
「今回はどうでした?白菊さん」
「‥‥まぁ、退屈しのぎにはなりました」
「その割には、楽しそうでしたよ?」
 にっこりと笑う玲二がなんだか憎らしくなって、白菊は立ち上がりそのまま玲二を蹴って水面に落とした。
「ぶはぁ!いきなり何するんだ!」
「沈んでいろ」
 さらに水面に上がってきた玲二を沈めようと顔を蹴る。その顔はちょっとだけ、楽しそうに笑っていた。
「うわ、ちょっとま‥‥ギャア!」

 「「「あ」」」
 たっぷり遊んだあとの女子更衣室。白菊、光輝、桜乃の3人が同様の声をあげた。
 服の下に水着を着てきてしまったので、下着の用意を忘れてしまったのである。
「「「‥‥どうしよう」」」
 ‥‥‥‥これもまた、プールのお約束ってことで。