●リプレイ本文
●遺跡潜入準備
ガイツ・ランブルスタインの要請を請けた傭兵たちは、遺跡の近くにある街のホテルでガイツと合流をした。
「ガイツ殿、久しぶりね。物書きのアドバイスは出来ないけど、警護なら任せて」
「よ、ガイツ。また護衛しに来てやったぜ」
以前ガイツの依頼を請けたアンジェラ・D.S.(
gb3967)と守剣 京助(
gc0920)は軽い口調で挨拶を交わす。
「おう、2人とも。この前はお世話になったな。今回もよろしく頼むよ」
「取材とはいえ、あまりはしゃぎ回らんでくれよな」
木場・純平(
ga3277)もガイツに挨拶をしながら言う。
「それはわかってるさ。俺も一応、そこそこ危険な目には遭ってるからな」
純平とガイツが握手を交わしたところで、セレスタ・レネンティア(
gb1731)はふと思った疑問を問いかける。
「‥‥戦場ジャーナリスト‥‥いや、小説家ですか?」
「いや、そんな大層なもんじゃないさ。もっと軽い、ただの旅行記みたいなもんだ。でもなぁ、他人に見せるって考えるとなんか緊張しちまってなぁ」
「記事が書けないって?もー、しょうがないわねぇほんとに。手伝ったげるわよ。感謝しなさいよね?」
エスター・ウルフスタン(
gc3050)の言葉に、ははは‥‥と笑うガイツであった。
「はぁ、記事ね‥‥俺なんかで良ければ手伝いはするが‥‥ま、キメラを遺跡から退かせてからの話だな」
飲兵衛(
gb8895)は自分の武器の準備をしながら言う。
「それで早速なんだが、これから行く遺跡の地図とかってどっかにないのか?」
京助が尋ねると、ガイツは少し考えてから言った。
「そうだな‥‥遺跡の近くに行けばもしかしたらあるかもしれないな。昔は観光名所だったみたいだし」
「にゃーん!じゃあ私が行く〜!ガイツさん、ネタ探ししよ〜♪ネタネタ〜♪」
過月 夕菜(
gc1671)が自前の猫の手帳を取り出し、手を上げた。彼女はガイツの冒険の話と町の情報を集めにこの依頼に来ていた。早速目的を達成しようと楽しげである。
「そういえばガイツさんって世界の冒険家ですよね!今までの冒険の話とか聞きたいなぁ〜♪依頼が終わったら教えてねぇ〜!」
手帳を構えながら早速取材モードである。
「ああ、俺の話でよかったら存分に聞かせてやるよ」
ガイツも満更ではなさそうだ。もともと、こういう話をするのは慣れている。
「あたし遺跡って初めて。遺跡と言うからには、もしかしたら宝物があるんかいな」
レティア・アレテイア(
gc0284)はぽつりと呟く。
「うーん宝物はないかな‥‥さすがに。ま、とにかく行ってみますか」
「そうね‥‥。コールサイン『Dame Angel』、遺跡内で障害となりうるキメラ群を
速やかに排除実行するわよ」
アンジェラの言葉と共に、一行は遺跡へと向かった。
●探索取材
一行は遺跡の近くにある店を訪ねた。そこは遺跡がまだ観光名所だったときは土産物などを売っている店だったという。だが、この戦争が始まってからはそれどころではなくなってしまった、という。そこの主人に尋ねてみると、昔使っていた観光用の簡単な地図があるという。その地図を借り、傭兵たちは遺跡の中へと入っていった。
遺跡の中に入ると、傭兵たちはガイツを中心に円形の形に陣を取り、遺跡の内部を進んでいった。
「迷路の探検‥‥。なんだか‥‥冒険モノの映画みたい‥‥?罠とかは‥‥ないかもしれないけど‥‥慎重に行動しないとね‥‥」
幡多野 克(
ga0444)はマッピングをしながらも珍しそうに周りを見渡す。
「本当、迷路みたいって聞いてたのは伊達じゃなかったか‥‥」
飲兵衛も実際に遺跡の中に入ってみて驚きを隠せないようだ。
遺跡は、古い石造りの都市であった。石の壁が縦横無尽に張り巡らされ、家らしき建物と複雑に絡み合っている。
まるで敵の襲来に備えているかのような造りだが、それはこの都市が作られた歴史から見てもあながち間違っていないだろう。
「斥候担当の3人は大丈夫かしら‥‥」
セレスタは無線機の手に取りながら心配そうに呟いた。
本隊よりも先に、斥候部隊として進んでいくのは守剣 京助と過月 夕菜、そしてセラ(
gc2672)である。
「まるでダンジョンだね〜」
セラはスキル『探査の眼』と『GooDLuck』を使い、前衛を行く。手には先ほど借りた地図を持ち、迷わないように道を確認しながら進んでいる。
「遺跡の探索って何故かワクワクするよね〜♪」
夕菜はスキル『隠密潜行』を使いながらも、手帳になにやらメモを取っている。彼女は隊の中でも中衛を担当していた。そんな隊の後衛で2人の背後を守るのは京助だ。
「背中は気にせず探索しな」
大剣を片手にゆっくりと歩く。
歩く音以外の音がしない。奇妙な静けさが周りに広がっていた。
「ほう‥‥ここの遺跡ってのはこんな感じなのか」
ガイツは傭兵たちに守られながら不器用にメモを取っていた。なるべく記事の材料にしようと必死である。
「ねぇ、ちょっと聴きたいことがあるんだけど」
そんなガイツの様子を見て、エスターが声をかける。
「ん?なんだ?」
「あんたさ、一般人なのに何でこんな延々と旅してんの?死ぬかもしれないわよ。なのに、何で?」
エスターの問いに、ガイツは少し考えたあとに答えた。
「だって、もったいないだろ?」
「‥‥は?」
「だってさ、世界はこんなに広くて面白いのに、それを知らずに人生を終えちまうってのはもったいないだろ?それに、バクアだかキメラだかなんだか知らないが、そういうやつらに邪魔されて諦めるのはしゃくだしな。だから俺は旅をしてる。ただそれだけの理由さ」
へへっと笑いながらペンで頭を掻くガイツ。エスターはその答えを聞いて、納得したようなよく分からないような不思議な表情をした。しかし、伝わるものはあったようだ。
「なにそれ?ばっかみたい」
「よく言われるよ」
エスターが再び、さらに気合を入れて護衛をしようとしたときに、傭兵たちの持つ無線機に連絡が入った。
『こちら京助だ。セラのお陰でスケルトンを見つけた。まだこちらに気付かれてないみたいだが、どうする?』
「了解だわ。すぐに合流するわね」
アンジェラがすぐさま応答する。
「戦闘が始まる様です‥‥先行組を支援します」
「俺も遊撃に参加しよう」
セレスタと純平は先行し、斥候隊との合流を目指して走り出した。
「俺たちも‥‥行きましょう」
克もそう言い、本隊は斥候部隊との合流を目指して歩を早めた。
京助は無線を切り、改めてスケルトンを見る。見つけたスケルトンは3体。骨を不気味に鳴らし、遺跡を歩いている。その様子が妙に遺跡の雰囲気とマッチしていた。
連絡をしてすぐ、先に走っていた純平とセレスタが斥候隊に合流した。
「さぁて、みんなも来てくれるみたいだし、さっさとやっちゃおうか〜」
夕菜は覚醒し、若干攻撃的になっている。その提案に他も同意し、同様に覚醒した。
セレスタと夕菜がまず銃で攻撃を放つ。更に夕菜は『影撃ち』で有力打を狙う。
突然の攻撃にスケルトンたちはまともに銃弾を喰らう。
そこへすかさず純平と京助、セラが接近する。
「仲間からもらったウラノスの切れ味、あんたで確かめてやるぜ!」
遺跡の通路は狭いため、京助は大剣を揺り回さずコンパクトに叩きつける。ひるんでいたスケルトンは直撃を受け、骨の残骸へと姿を変える。
純平は接近し、スケルトンの持っていた盾をつかんで無理にひっぱり、取り上げる。バランスを崩したこところで、拳の一撃を喰らわせた。
立て続けに2体倒したところで、もう1匹が剣を振りかざして襲い掛かってくる。
「甘いな!」
セラの盾がスケルトンの攻撃を受け止める。
「私はともかく私の盾の強度と重量を舐めてもらっては困る」
攻撃的な口調でスケルトンを押し返す。バランスが崩れたところで、他の人が攻撃を加え、3体目のスケルトンが倒れた。
「ふん。あっけないな」
セラが言い捨てる。覚醒前とは人格が変わってしまったかのようだ。
「大丈夫か‥‥って、あれ?」
本隊が全員合流したときにはもうすでに戦闘が終わっていた。
「なんだ。余裕だったんだな」
ガイツが安心したように言うが、他の傭兵たちはまだ警戒を解いていない。
「‥‥まだだ」
骨の気配が一層濃くなる。物陰や建物の屋上から次々とスケルトンキメラが姿を現れた。先ほどの戦闘の気配を嗅ぎつけてきたのだろう。残りの7体にスケルトンが一気に姿を現した。
「おいおい、大勢できやがったな‥‥」
「まるでファンタジー小説みたいだよ。やっぱ魔法生物かな」
レティアはそう言いつつ『拡張練成強化』を使って味方の能力を上げる。
「それじゃあ、ちょっと派手にいきますか。キメラ以外は当たるなよ!」
飲兵衛は覚醒と同時に先んじて『制圧射撃』を放つ。同様にアンジェラも『制圧射撃』を放った。
「各個撃破でお願いするわ!」
アンジェラが銃を撃ちながら叫ぶ。
銃弾が乱れ飛ぶ。スケルトンは少しひるんだが、そのまま構わず近付いてくる。
「キメラだから不死者ではないのかもしれないが‥‥大人しく土に還ってもらうよ」
克は『豪破残撃』で攻撃力を上げ、1体に向けて『流し斬り』で確実に仕留める。他の者も攻撃に移る。
「はっ、はー!」
京助は少しでも広い場所にスケルトンをおびき寄せ『流し斬り』でスケルトンを盾ごと叩ききった。
「これでどうだ!」
夕菜はスケルトンに対し『弾頭矢』で攻撃。火薬が破裂し、骨がバラバラとなる。
「うわわ!」
ガイツは乱戦に驚き、思わず声を上げる。そこへ、スケルトンが忍び寄る。
が、エスターが『ボディガード』を使い、ガイツを庇う。
「す、すまん!」
「ったくしょーがないわねぇ‥‥護ってあげるっての。雇い主なんだからね!」
そのままガイツから敵を離すように距離を取る。が、そこは敵と味方が入り乱れる密集地帯。そこでエスターは『シールドスラム』で敵を弾き、他の敵を攻撃。さらに復帰してきた別の敵に対応した。
「あぁもう、次から次へと。うちをなめてんの?喧嘩売ってんのね?!いいわ、買ったげるわよ!!」
その乱戦にセレスタも加わる。銃での攻撃は味方を巻き込み危険と判断した彼女はコンバットナイフに武器を持ち替え『流し斬り』『急所突き』を使ってスケルトンを撃破する。
「近距離戦は、余りやりたくないんだがなぁ‥‥」
飲兵衛も同じく機械剣に持ち替えて応戦する。
乱戦の結果、スケルトンを全て撃破した。遺跡には骨の残骸がばら撒かれたように散らばっている。
「あれ?セラ何してたんだろ?」
先ほどまで凶悪にスケルトンと戦っていたセラであったが、覚醒を解いた瞬間にマタ人形のようにかわいらしい少女に戻ったようだ。
「怪我人が居たら自己申告でお願いな。ばっちり治すよ」
レティアは超機械を構えて皆に言う。
「お願い‥‥します」
覚醒が解けてまた大人しくなった克が言う。
「こっちもお願い〜」
夕菜も同様にレティアに頼む。レティアは『拡張練成治療』で皆を一斉に癒した。
「ねぇ。あれ、何よ」
治療が終えたところでエスターがガイツに告げる。
「ん?」
エスターの指差した方向を見ると、遺跡の奥に祭壇のような場所があった。
●展望記事
「うわ〜すごい!」
夕菜が思わず声をあげる。そこは遺跡の街を一望できる祭壇であった。古代の街が眼下に広がっている。迷路のような街の壁も、実は模様のように並んでいることがわかった。
「これは‥‥すごいな」
ガイツもそう呟いたあと、少し悩んだ表情を浮かべた。
「俺はこの感動をちゃんと記事に出来るのかな。なぁ、どう書いたらいいと思う?」
ガイツの問いに克が答える。
「俺は‥‥門外漢だから‥‥素人意見だけど‥‥臨場感とか‥‥熱意が伝わるように‥‥文章を書くように‥‥心がければ‥‥いいんじゃないかな」
「他人に見せる為に整えた文章ではなく、貴方自身が気に入る文章を書けば良いのではないですか?」
セレスタのアドバイスにセラも頷きながら言う。
「セラはむずかしいことわからないけど、きっと絵日記といっしょじゃないかな?あったことを書くんじゃなくて わくわくしたことを書くの。ガイツさんは世界中を旅したんだよね?きっとわくわくしてなかったらできないとおもうの。だから絵日記といっしょ♪わくわくしながら書くの♪」
ガイツは素直にアドバイスに耳を傾ける。
「記事、記事ねぇ‥‥今回見た事そのままだと、SF小説の一説になりそうだが」
飲兵衛は少し笑いながら続ける。
「まぁ、見た事感じた事を、思いのまま書き綴れば良い‥‥って言うのかね。物書きじゃないから巧く言いづらいが‥‥変に悩まず、やりたいようにやれば良いんじゃないか?」
「う〜ん。まぁ私も記事とかは書いたこと無いから想像でしか言えないけど‥‥まず誰に記事を見て貰いたいかを考えて次にその人がどんな事を知りたいかを考える、後はその人に話すように記事を書く。とかどうかなぁ?」
夕菜は風景を見ながらメモを取りつつ、こうアドバイスする。
「それに‥‥これは‥‥文章に限ったことじゃ‥‥ないけど‥‥。回数をこなせば‥‥必ず上達すると‥‥思う‥‥。だから今後も‥‥たくさん書いてほしい‥‥な‥‥。俺も‥‥読みたいし‥‥」
克がそういうと、飲兵衛も同意した。
「うんうん。記事が出来上がったら読ませてくれよ?楽しみにしてるから、さ」
「俺もどんな記事になるか楽しみにしてるぜ」
京助も笑って言う。
「みんな‥‥ありがとう。俺、なんとか書いてみるよ」
ガイツはこの光景を忘れないように眼に焼き付けた。
その後、傭兵たちの元に一冊の雑誌が届いた。ペラペラとページをめくると、そこにはガイツの書いた今回の遺跡を紹介する記事があった。
文章としてはやや稚拙ではあったが、それでもガイツのありのままの言葉でその記事は描かれていた。
遺跡の近くにある古ぼけた街並み。
迷路のように複雑な道。
襲い掛かるスケルトンと、それを倒す傭兵たちの活躍。
祭壇から見た古代の風景。
そして最後に‥‥
「この記事を書くに当たり協力してくれた傭兵たちに心から感謝を述べる」
記事はそう締めくくられていた。