タイトル:マンティコアの襲来マスター:樟葉

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/12 21:28

●オープニング本文


 その遺跡内の坂道の頂上には、大きな丸い岩が鎮座していた。
 目の前にある岩盤の謎解きに失敗すれば、それは容赦なく襲ってくるだろう。
 その男‥‥エンディは緊張した面持ちで、古びた遺跡の謎を解いていく。
「よし。これで‥‥チェックメイト、だ」
 そう呟いて、エンディはニヤリと笑った。

 そして‥。

 ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥。ドン、ドン、ドン。
 失敗したらしく、巨大な丸い岩が頂上から転がってきた。
「うぉぉぉぉぉー! お約束ー!」
 エンディが叫びながら全力疾走で坂道を駆け下る。
 ドドドドドドドド‥‥。
 素早いスピードで、エンディと巨大岩石との追いかけっこが、幕を上げた。



 インド某地。
「ふー、無事生還だ。今回の冒険もハードだったな‥‥」
 エンディは遠い目をしながらも、どこか満足そうな表情を浮かべていた。

 灰色のシャツに革ジャケット革ズボン。そして茶色のカウボーイハット。
 どこかの冒険ヒーローを思い出すが、もちろん意識しまくりである。

「お疲れ様です。エンディさん。今回もダメでしたか?」
「ああ‥‥。最後の仕掛けが難しい。だが、もうすぐ解いて見せるさ」
 そう言って、エンディがニヒルに笑う。
「はぁ‥‥頑張ってください。施設の管理者としても遊んでくださる方が居ると‥‥」
「おっとストップ」
 エンディが住民の言葉を遮る。
「俺の熱い冒険魂に水をかけるような言葉はお断りだ」
「しかしアレは元々トロッコ式の乗り物で移動する場所ですから、生身では危険かと‥‥」
 住民‥その遊戯施設の管理人が心配げに言った。
「大丈夫だ。俺はタフだからな」
 エンディの歯が光る。
「まぁ‥‥そうですね」
 この男に色々と言う事を諦め、管理人は苦笑いだけを残した。
 確かに坂道を転がってくる丸い岩も、中心に重石が入った発泡スチロール製なので、当たっても少し痛いくらいだろう。巻き込まれると危険だが。

 もちろん、そこは本物の遺跡ではない。
 その施設は町の郊外の森林の中に作られた娯楽遊戯施設で、危機的状況となった今は仮閉園されていた。
 しかし、そんな危機的状況でも足繁く通っている者がいる。
 その名はエンディ・ジョーダンズ。

 仮閉園の施設で無理を通して入場させてもらっている、この町ではある意味有名な人物だった。
 もちろん料金も払っている。

「ふう。次に来れるのは仕事明けの再来週になるな‥‥それまで待っていろよ俺の遺跡」
 そう言いながら、エンディは娯楽施設を立ち去ろうとした。



「エ、エンディさん! 大変なんだ! 町が! 町が‥マンティコアに襲われたんだ!!」
 突然、その娯楽施設のある町の男が血相を変えて走りこんできた。
「ん?」
「なんだって!?」
 先ほどまで気楽に喋っていた施設管理人も血相を変える。その様子にエンディが尋ねた。
「マンティコアというと伝説の人食い獣だが‥‥それはキメラの名か?」
「そ、そうです。虎の姿で皮膚が赤く、尾はサソリのような姿でしたからっ。伝説の獣を模したキメラだと思われます!」
 必死に呼吸を整えながら男が言う。
「キメラとなると俺の仕事だが、1人では少々分が悪いな。本部に連絡して人を寄越してもらおう」
 エンディは先ほどまでのアホな態度とは打って変わって、退治仕事に対する能力者の顔になった。
「じゅ、住民達は‥‥」
「俺が無線放送で住民が外に出ないように連絡を流して安全を確保する。外に出ている者が居れば俺が誘導していこう。キメラを確実に退治するのは、他の能力者達が集まってからだな」
 そう言って、エンディが自動小銃「スコーピオン」を装着した。

「そ、それと‥伝説によれば、サソリの毒尾の部分は、斬っても再生するようですから! 気をつけてくださいエンディさん」
 不安そうな表情で、男は注意を促した。






 UPC本部。
 インドの某町が、伝説の人食い獣を模したキメラ「マンティコア」に襲撃された。
 血の様に赤い皮膚、サソリの毒尾を持つ虎型キメラだ。

 現在、能力者のエンディという男が、町の住民の安全を確保しているようだが、逃げ遅れた住民も居るため、応援に寄越された能力者とは別行動になるかもしれないとのこと。
 無線はあるので連絡は取れるらしいが、まずは住民の安全を第一に行動しているようだ。

 確認情報によると、サソリの尾のような部分は銃で撃っても、すぐに再生したらしい。
 尾は強力な武器のようだ。

 マンティコアを殲滅してほしいとの依頼であった。

●参加者一覧

霞澄 セラフィエル(ga0495
17歳・♀・JG
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
15歳・♀・ST
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
蓮沼千影(ga4090
28歳・♂・FT
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
絢文 桜子(ga6137
18歳・♀・ST
緋沼 京夜(ga6138
33歳・♂・AA

●リプレイ本文

 無線を借り、移動艇で依頼の街に着いた一行は、マンティコアと呼ばれるキメラが闊歩する街の様子を伺った。

「街の区画によっては、見通しが悪い処も多々あるだろうー。そう言う所では警戒を厳に、また逃げ遅れた市民を素早く察知したい所だねェー」
 獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166)が地図を指差し、大まかに区切りながら言った。
「ああ。各ブロックごとに分けてその範囲を2班に分かれて索敵するのが無難だな。しかし、敵は伝説に擬えたのが相手か。バリエーションに空きが無いな」
 時任 絃也(ga0983)がおどけるように肩を竦める。
「マンティコアというと、インド原産の人食いの怪物‥でいいのかな? 毒尾が再生するって報告にあったみたいだから、気を付けなきゃならないですね」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)もその姿を想像して、気を引き締めるように言った。
「ええ。しかも体は血の様に赤いらしいですわ‥そのようなキメラの脅威に晒されている住民の皆様の事を思うと胸が痛みます。‥出来るだけ早く、開放して差し上げたいですわね」
 絢文 桜子(ga6137)もリゼットの言葉に頷き、憂いな面持ちで町の様子を眺める。
「まずはエンディさんに連絡を入れて状況を確認しましょう」
 そう提案し、霞澄 セラフィエル(ga0495)が無線からエンディに連絡を入れた。

『こちらエンディ』
 無線から男性の声が流れてきた。エンディだ。
「エンディさんですか? 退治依頼でやって来ました。街の入り口に居ます。状況はいかがですか?」
『おっ、それは助かった。今は住民を避難させつつキメラの位置を把握中だが、街の入り口なら合流可能だ。今からそちらへ向かおう』
「はい。お待ちしています」
 霞澄はそう言って、一旦無線を切った。
「エンディさんが今から合流してくれるそうです」
「そうか。エンディ・ジョーダンズ‥どうしても名にツッコミを入れたくなるが、住民保護を第一に考えているなら能力者として頼りになるだろうな」
 リュイン・カミーユ(ga3871)が腕を組みながら微笑む。
「結構そういうノリは嫌いじゃねぇかも」
 蓮沼千影(ga4090)も笑顔を見せた。

「待たせたな」
 しばらくすると周囲を用心しながら姿を見せた男‥エンディが合流した。
「早速だけど情報確認を取りたい。地図を用意してあるからマンティコアの目撃情報、住民の避難状況、未探索地域を教えてくれ」
 緋沼 京夜(ga6138)が状況把握を促す。
「ああ、マンティコアは俺が見た所3体は確実だ。他にもいる可能性は十分あるから探索する時は用心してくれ」
 そう言って、エンディはそれぞれの地図にキメラが徘徊している周辺をペンで囲った。
「最低でも3体‥か? 集団で来られると厄介だな」
 リュインも眉を顰める。その言葉に絃也も付け足した。
「敵の数がハッキリせんのは毎度だが、遮蔽物が多いと索敵に手間取るな。くまなく探すしかないが」
 どちらにしろ警戒しながらキメラの動向を把握するしかないようだ。
「あ、所でエンディさん。毒尾は再生するという話ですが、どれ位の早さで再生しましたか?」
 毒尾の再生報告を思い出し、リゼットが尋ねる。
「銃弾で撃ち付けたら徐々に回復していったな。剣では試していないが、バッサリ斬る方が効果的かもしれない。だが尻尾部分も手足と同じように凶悪に振るってくるから気をつけてくれ」
「なるほど‥分かりました」
 大剣を扱うリゼットがその言葉に頷いて、剣で斬れうる可能性も考慮に入れておいた。
「俺は引き続いて、街の様子とマンティコアの動向を探るつもりだ。隠密潜行が使えるから偵察は一人の方がやり易い。もし住民を避難させたい場合は無線で呼んでくれ。すぐに駆けつける」
「何かあったら無理せず連絡して下さいね」
 霞澄が心配げにそう言うと、エンディがカウボーイハットを人差し指で持ち上げ、ニヒルに笑った。
「ああ。お嬢さん方を悲しませるような突飛な行動は慎むつもりだ」


 エンディが再び単独で偵察に赴いた後、各班に分かれた一行は別行動に移すことにした。
 地図で分けたAブロックA班を千影、京夜、リュイン、獄門と組み、BブロックB班をリゼット、時任、霞澄、桜子で組んだ。

「さて、マントヒ‥マントコアラ? 何だったか‥ま、探せば良いか」
 リュインが言う。
「最初の2文字しか合ってないぜ‥」
 その言葉に、千影が苦笑いした。
「マントコアラは初めて聞いたな」
 京夜も話に乗ってくる。
「マントコアラ‥実に興味深いねェー」
 リュイン内の伝説の魔物に、獄門も興味を示した。

 しばらく警戒しながら街を歩いていていく。
 街は静まり返っていた。
「嵐の前の静けさ、か」
 周囲を警戒しながらリュインが呟く。
 その時突然、窓ガラスが割れる音がした。
「た、助けてッ!」
 家の中から女性が駆けて来る。
「とうとう家の中まで押し入り始めたか‥ちんたらしてると、本気で市民が危ねえぞ」
 京夜が舌打ちしながら、駆けて来た女性を保護した。
 マンティコアは逃げた女性の血の匂いを追って、家の外へと出てくる。
 どうやら女性は足の裏をガラスの破片で怪我したようだ。
 千影が女性を抱え、全員で少し離れた場所まで一旦下がり、キメラとの距離を空けた。
 血を嗅ぎ回っているマンティコアの動向を京夜が監視し、獄門が無線でエンディを呼び寄せる。
 キメラの現在地と場所の確認をし、エンディはすぐに駆けつけると連絡を寄越した。
「少し染みるが我慢しろ」
 その間に、リュインがガラスで足の裏に怪我を負った女性に救急セットで応急処置を施す。
「今、エンディが迎えに来てくれる。すぐに安全な場所まで連れて行くから、ちょっと待っててな」
 千影が女性に微笑み、安堵感を与えた。知っている名前を聞き女性はコクリと頷く。
 しばらくするとエンディが姿を見せた。
「待たせたな」
 周囲に気を配りつつ、キメラに気づかれる事なく迅速にやって来たようだ。
「エンディ、この人を任すぜ。俺らはマンティコア退治を励ましてもらうからよ!」
「あぁ分かった。避難所には医者が居るからそこへ連れて行く。君達も気をつけろよ!」
 千影の言葉に、エンディも親指を突き返す。
 そして、応急処置をした女性を抱えてエンディがその場を離脱した。

「さて、伝説との戦闘だ。みんな用意はいいな?」
「‥伝説との戦いの裏技があればいいがな」
 千影の言葉にリュインがフッと笑う。そして覚醒した。
 家の周辺を闊歩していたキメラの目がこちらを向く。
 キメラは全身が血のように赤く、見るからに不気味な雰囲気を漂わせていた。

「マンティコア‥人を喰う化け物‥。おまえには、一人も喰わせねぇぜ!」
 覚醒した千影が蛍火とヴィアを構える。
 キメラも狙いを定めながら、ゆっくりと歩き始めた。
「京夜!死角は任せたッ」
 千影はそう言って、まずはキメラの脚を狙い斬りかかる。キメラも千影へと毒尾の狙いを定めた。
「千影、お前さんの背中はしっかり守ってやるぜ!」
 そのキメラの隙を突き、京夜が豪破斬撃を発動させて蛍火で斬りつけた。キメラにダメージを与える。
 そして再生するという尾へと刀を振るった。
 だがキメラはその一撃を尾で受け止め薙ぎ払い、そしてその尾を京夜へと繰り出す。
 なかなかに素早い動きだった。
「さすが伝説だけのことはあるな‥今回はちとマジで行くぜ」
 その攻撃を避け、京夜も更に気を引き締める。
 マンティコアが千影達を威嚇した。
 だが千影と京夜が連携し、マンティコアがそちらに意識を集中する隙を突いて、リュインが死角を位置取りガンドルフでキメラに一撃を繰り出した。
「何処を見ている?」
 そう言ってリュインが後ろへと下がる。その一撃でキメラはバランスを崩した。
「さすがだぜ、リュイン!」
 千影がニッと笑う。そして京夜がマンティコアの気を引いている隙を突き、千影は豪力発現と急所突きを一気に使い、毒尾を切り落とした。
 弾丸とは違い、尾の根元から切り落とすと再生は完全にまでは至らなく、斬られた3分の1ほどで再生が止まった。
 だが毒尾を失ったマンティコアが狂犬のように素早く動き、千影、そしてリュインへと爪を一気に流す。
 鉤爪は思ったよりも太く、2人とも避けきれずにかすり傷を負ってしまった。
「ユウコちゃん、後で回復よろしくっ」
 再び気を引き締めた千影が、後援の獄門へと頼みを入れた。
「任せてー」
 そう言って、獄門が超機械を使って2人の傷を癒して回復させる。

 傷は癒えたが、リュインの表情が氷のように冷たくなってキメラを見据えた。
 キメラは致命傷により動きに乱れが生じている。
 そしてその隙を突き、リュインはその激烈な一撃をマンティコアに食らわせた。
「未婚女子に気安く触るな! インドの礼儀を知れ、愚か者!」
 尊大な口調でリュインが攻撃と同時に説教も食らわす。
 だが、その言葉を聞くこともなくキメラがゆっくりと倒れた。
 完全に仕留めたようだった。

「‥まずは一頭か。とりあえずB班とエンディにも連絡を入れておくぜ」
 そう言って、京夜が無線で連絡を入れた。



 一方。
 B班もマンティコアが闊歩しているという区画を探索していた。

「‥いました」
 周囲を警戒していたリゼットが、ふと立ち止まって小声で皆に知らせる。
 マンティコアは住宅付近を陣取っていた。
「戦闘態勢に入ります。ターゲットは毒を持つようですのでお気をつけ下さい」
 全身から燐光を発し、覚醒した桜子が淡々と声を放った。
 絃也達の姿に気が付き、マンティコアが素早く移動してくる。
「その程度の動きなら‥外しません」
 霞澄が動きを見計らい、急所突きを発動して洋弓でキメラの太腿に矢を命中させた。
 キメラがよろける隙を突き、絃也が接近してファングで足と体へと攻撃を繰り出す。
「尾を狙ってみます!」
 A班からの連絡で、尾を根元から切り落とせば良いという情報を聞いたリゼットも、隙を突いてバスタードソードを振るった。
 尾の部分は切り落としたが、マンティコアの爪が接近していたリゼットへと薙ぎ払われた。
「‥‥ッ」
 避けきれずにリゼットが掠り傷を負う。
「損傷を確認。回復します」
 桜子が超機械で練成回復を施すと、リゼットの傷が癒えた。
「ありがとう」
「はい。お気をつけて」
 淡々とした声音だが、しっかりと桜子が頷く。覚醒によって感情が抑えられているようだが、共に戦う仲間の健康状態には人一倍気遣っている様子が伺えた。
 リゼットも頷き返し、大剣を持つ手に力が込められる。
 霞澄が再び洋弓でキメラの脚を狙い打ち、絃也もその隙を見計らって、マンティコアへと一撃を繰り出した。
 バランスを失い、体制を整えようとする所へとリゼットが急所突きを発動させ大剣で斬りかかる。
 接近した2人に向けて、素早い動きでキメラが爪を薙ぐが、リゼットが舞うように身を翻した。
 絃也へのキメラの攻撃も多少掠り当たったが、桜子の練成回復で傷が癒える。
 連携によって致命傷を与えられたマンティコアに、霞澄が強弾撃を発動させたとどめの矢を放つ。矢は体を貫き、キメラはゆっくりと地面に倒れた。

「終わったようだな」
 しばらくしても起き上がってこないキメラの状態を確認し、絃也が一息ついた。
「退治した旨をA班の皆様と、エンディ様に連絡を入れますわね」
 そう言って桜子が無線でA班に連絡を入れ、引き続いてエンディにも連絡を入れた。
『こちらエンディだ』
「B班でキメラを一頭退治いたしましたわ」
『お、嬉しい知らせだな。これで2頭は退治されたな。まだ潜んでいる可能性もあるから気をつけて行動して欲しい。俺が盾になってでも護りたい所だが、君達も能力者だ。任せておくよ』
「ええ。わたくし達の事でしたら心配はご無用ですわ。エンディ様の助けを待っている方がいるのですから、くれぐれも無理をせず万全を期して行動下さいませ‥‥以上です」
 エンディの言葉に微笑し、桜子は無線を切る。
 再びキメラを探索することにした。



 B班が街の奥側へと辿り着こうとした頃、その赤い体が突然飛び出してきた。

「マンティコアです!」
 霞澄が注意を呼びかける。キメラが霞澄と桜子の間に滑り込んできた。
 とっさに霞澄は桜子を庇うように立ち塞ぎ、護る体制を取る。
「お前の相手はこっちだ」
 絃也がすかさずキメラの意識を自分へと向けさせるために、急所突きでファングを繰り出した。
 マンティコアも同じように絃也へと爪を向ける。
 その攻撃を流しつつ、絃也は多少のかすり傷を負いながらも、同時にダメージを与えた。
「回復します」
 すかさず桜子が練成治療で絃也の傷を癒す。
 桜子を背後に護りながら、霞澄が迅速にマンティコアの隙を突き、強弾撃で洋弓を構えて矢を撃った。矢がキメラの脚を貫く。
 そしてリゼットが大剣で毒尾を斬ると、キメラが突然身を翻した。
「かなりの致命傷を与えたけど手負いの獣は危険だから、はやく仕留めなきゃ‥」
「そうですね。追いましょう‥‥あら?」
 リゼットの言葉に霞澄が頷き、そして足を止めた。

 ちょうどB班から逃げるように走ってきたキメラを、挟むような形でA班が歩いてきていた。
 そこは互いの合流地点だった。

「あ、B班がいるねェー‥って、走ってくるのはキメラ?」
 B班の姿を見つけて手を上げかけた獄門が、首をかしげて呟いた。
「ああ。マントコアラが走ってくるな」
 リュインが目を細めてガンドルフを構える。
「結局名前が変わってるぜ‥」
 そう呟き、千影も両剣を構えた。
「意外と可愛いかもしれないな。マントコアラ」
 京夜がかすかに微笑する。

 傷を負ったマンティコアが走りこんでくる。そして立ちはだかるリュイン、千影、京夜へと爪を向けてきた。しかし、その攻撃に覇気が無く簡単に3人が避けきる。
 獄門が練成強化で、3人の武器を強化させた。
「手負いでも、手加減は一切無しで行くぜ!」
 京夜が豪破斬撃を発動させ、蛍火で斬りかかりダメージを与えた。
 リュインもガンドルフでキメラへと攻撃を叩き込む。
 そして最後に千影が蛍火とヴィアを振るい、マンティコアに止めを刺した。

 キメラは完全に仕留められ、地面に崩れ落ちて立ち上がることは無かった。




 一通り街を巡回し、もうキメラの姿が無いことを確認して、エンディと能力者たちは任務を完了とした。

「お疲れ様でしたわ」
 桜子が避難中負傷した住民達を笑顔で励ましながら、救急セットで治療した。
「あの‥ところでエンディさんは?」
 リゼットがエンディの姿が見えなくなっていることに気が付き、住民に聞いてみた。
「ああ、次の仕事が入っているらしく慌てて街を出て行ったよ。君達にもヨロシクと言っていた」
「慌しいのですね‥。色々とお話できるかと思っていましたけれど‥」
 霞澄が残念そうに言う。
「まぁ‥同じ能力者ならいずれどこかで顔を合わすだろう」
 リュインがフッと笑った。