タイトル:【AS】荒野に軍艦?マスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/08 14:51

●オープニング本文


●アメリカのどこか
 土煙をあげアメリカの広い荒野を走る、一台の戦車。
 車長がペラリと報告書をめくる。

 以下、報告をそのまま掲載
 男・俺は見たんだ、荒野をでっけえもんが歩いているのを。そう歩いてるんだよ。俺が見たのは足としかいえないモンだったからな。怖くて気絶しちまって、起きたら何もいねぇんだ。
 男・遠目でハッキリしないけど、恐竜を見たんだ。夢かもしれないが、たぶん現実だ。
 女・軍艦が地上で動いていました。間違いありません。この目で見たんです。信じてください。

 などなど、おおよそ信じがたい報告が多数書かれているが、今のご時世、たちの悪い冗談と笑うわけにはいかない。
「荒野に軍艦? どう考えても、ハズレクジだよなぁ」
「そうですかー? 自分はちょっとしたドライブと思って楽しんでますよ」
 車長の呟きに、操縦手がのん気に口を挟む。
「偵察、調査だって立派な任務ですよ。がんばればちゃんと評価もらえますって」
 砲手の慰めに、車長はハアと溜息をつく。
「それだと、何かいてくれた方が評価してもらえるんだろうが‥‥何かいたら死ぬ可能性も高いよな」
「相手がキメラやワームなら、こんな武器も豆鉄砲ですしね」
 主砲を任されている砲手が、皮肉げに笑う。その笑顔に車長はさらに大きな溜息をついた。
「偵察任務だし、もしもの時は一目散に逃げるつもりで車を申請したのに、いざと言う時は戦えとか無茶言われてなぁ‥‥」
「まあまあ。それは軍なんだし、仕方ないですよ。それより、あの街ですか」
 話している間にもビル群が見え始める。
「そうだな。あれが現在通過中と思われる都市だ。すでに捨てられた都市だから、あちこち痛んでるから気をつけろよ」
「アイッサー」

●捨てられた都市
 ガラスが割れたビルや、ひびが入り、草が生えている道路などを彼らは行く。
「思ったよりはまともですね」
「そりゃあ、捨てられてそんなにたってはいないだろうからな。とはいえ、管理されていない都市は痛むのも早いもんだ」
 辺りを双眼鏡で見回す車長。
 しばらく彼らはうろうろしてはみたものの、まるっきり手ごたえを感じずにいた。
「やはりガセかなんかか‥‥」
 ビル群を直進する戦車。そして交差点に差し掛かった時――。
 ズズゥン。
 すぐ近くで地響きが起こる。
 驚いた車長が右側に視線を向けると‥‥いた。
 大きな大きな船が。砲門なども複数搭載している。まさしく軍艦である。
 だが、ただの軍艦ではない。
 前足がある。後ろ足もある。長い首には恐竜としか言いようのない頭があり、長い尻尾まである。
 そんな軍艦恐竜と言えるものが、今まさに立ち上がろうとしていた。
「操縦手、ハンワリ右へ!」
 車長の号令により、戦車は主砲を向けたまま180度急旋回し、全速後退を開始する。
「砲手、主砲発射用意!」
「発射、用意!」
「ッゥテー!」
 ズドォォォン!
 戦車の主砲が火を噴く。だが軍艦恐竜にはまるで効いた気配はない。
「やはり敵のか! 次弾、足元狙え!」
「イエッサー!」
 車長が舌打ちすると同時に、敵戦艦の砲門が一斉にこちらへと向けられる。
「もっと急いで下がれ!」
「全開です!」
 操縦手の悲痛な叫び。無常にも、敵主砲が放たれる――瞬間、車長が戦車を蹴っていた。
 ゴゴゴォォォンン!
 轟音とともに戦車は爆炎を上げ、無残な鉄くずへと化す。
 しかし最後の抵抗の一撃は軍艦恐竜の足元の道路を破壊し、ちょうど地下街だったのだろう。軍艦恐竜は地面へと沈んでいく。
 爆風に圧された車長は数メートル宙を跳び、地面に落下してゴロゴロと何度も転がって、やがてうつぶせに止まったがピクリともしなかった――。

「う‥‥気を失っていたか――」
 車長は頭を振り、身を起こす。
 そしていまだ炎上している戦車を見て、愕然とするのだった。
「‥‥ちっくしょう。あんなもん俺達がどうにかできるわけないだろ」
 いまだに沈んだ道路から出れずにもがいている軍艦恐竜に悪態をつき、懐から無線機を取り出す。
 当然だが、それほどの遠方まで連絡が取れるはずがない。それでも彼はすがりつくように無線機の電源を入れるのだった。
「応答願う、応答願う。どうぞ」
 ――しばしの沈黙。
「頼む、誰でもいいから届いてくれ――」
 ‥‥ザ、ザザ、ザザザ、ザ‥‥
「応答願う、応答願う。どうぞ」
 ‥‥ザザ、ザ、ザザザ、ザザ‥‥
「応答願う応答願う、どうぞ!」
 ‥‥ザザザ、ザ、ザザ――
「こちら偵察中の未知生物対策組織所属の傭兵だけど、どうぞー」
 無線から、間の抜けた声が聞こえる。だがそれでも車長の目は輝く。
「こちら、第2陸軍戦車隊所属のメッドだ。大型のキメラだか生体ワームだかわからないのが、現在進行中。おそらくは前線に向かっていると思われる。至急UPCに撃退の旨を伝えてくれ」
「あーあれか、でっけーな。確かに試運転中の2機じゃ無理そ――待てよ、セイ!」
 1機のKVがあまりにも無造作に軍艦恐竜へと突撃する。
 軍艦恐竜が大量の機関砲でKVを狙い撃つが、流石にその程度は華麗に回避してみせる――が、逃げ道を限定されたKVめがけ、主砲が一斉掃射される。
 ドドォォォォン!
 直撃を受けたKVは、煙を上げて墜落していく。
「くっそう、あの手のは対空砲火はほとんど完璧だから空から近づくのは自殺行為だって、知らないのかよ‥‥」
 くやしがる車長の頭上を、1機のKVが旋回する。
「陸戦すべきって話かーまあ、あいつもコレくらいじゃ死なないだろから、回収は後にしてとっとと本部に連絡してくるぜー」
「宜しく頼む――俺は到着まで、やつの足止めをする。足元崩せば、だいぶ動きを制限できるみたいだからな」
「りょうかーい。ただ、俺らは試運転兼ねての偵察しにきてたんだが、こいつのはるか後ろにヘルメットが数機こちらへ進行中だから、無茶すんなよー」
 最後まで気の抜けた言葉を残し、KVは遥かなたへと飛び去っていく。
 1人残ったメッドは炎上している戦車に敬礼し、きびすを返して軍艦恐竜の方へと向かって走り出した。
「お前らの敵は、必ずとるからな‥‥!」

●参加者一覧

緑川 安則(ga0157
20歳・♂・JG
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
立花 零次(gc6227
20歳・♂・AA
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER

●リプレイ本文

●アメリカのどこか
 荒野を走る1機のナイトフォーゲル(以下KV)。MBTー012ゼカリア改である。
 その周囲を7機のKVが展開するように装輪走行していた。
「悪いね、諸君。私に足並みをそろえてもらって」
 緑川 安則(ga0157)が、オープン回線で詫びる。
「俺は構いませんよ‥‥」
「そうそう、構うこったぁねえって。どうせ少しの違いだ」
 通信を真っ先に返したのは、終夜・無月(ga3084)と砕牙 九郎(ga7366)の2人。
「今はチームですからね」
「それに、都市の地形情報を覚える時間が欲しかったところです」
 物腰穏やかな口調の守原有希(ga8582)と、若干お堅い受け答えをする番場論子(gb4628)。
「そうだね、地形把握は重要だよね。番場さん見習って、私も把握しておこう」
 ごそごそと資料を取り出しているフローラ・シュトリエ(gb6204)。
「地形もさることながらですが、敵についてももう少し把握したいものですね」
 立花 零次(gc6227)が資料画像を見てつぶやく。画像には軍艦恐竜が写っているものの、全体像まではない。
「それには同意です‥‥」
 BEATRICE(gc6758)もつぶやいた。
 会話しているうちに都市部が見え始めると、彼らの目は傭兵ならではの光を帯びる。
「私、ちょっと先行して軍艦恐竜の位置と周辺の状況を確認してくるわ」
 そう言い残すと、フローラ機は加速する。
「それでは私は、高空よりヘルメットワーム(以下HW)の確認に向かいます‥‥」
 BEATRICE機が飛行形態に変形し、大空へと上昇を開始した。
「気をつけてくださいシュトリエさん、ベアトリーセさん」
 女性2人を気遣う緑川。無月機も少し加速し、一行の先頭を走る形になる。
「各機、臨戦態勢を維持、警戒を開始せよ‥‥」

●捨てられた都市
 都市部に着いた一行は、先行したフローラ機の情報を元に各々散開していた。
「超弩級‥‥と表現されるのでしょうか‥‥こう言うのも」
 一足先に上空から視認したベアトリーセが、つぶやく。
「サイズ的には前弩級でしょうが、砲門から見れば超弩級でしょうね――現在わたしは、軍艦恐竜の遥か前方に待機中」
 足音や地形から移動先を予測した番場がビルの陰に待機し、そこから軍艦恐竜を確認する。
「大きさ故に鈍重な気配ですが‥‥見た目よりも対空砲火が完備なのが困りものですね」
「どこか違う所に行かれる前に潰しておかないとよねー。足止めしてるっていう人がどこにいるかも気になるけど」
 先行していたフローラ機の元に、無月機、砕牙機、守原機が到着する。
「‥‥でけー。こんだけデカいと斬り応えも凄そうだな、オイ」
「巨体が元々武器か、厄介な!」
 情報としては得ていたものの、実物を目の当たりにして思わず口に出る二人。
「だが、前方と左右に火器が集中していて、後ろは甘そうだ‥‥」
 冷静に分析した無月がつぶやく。
「‥‥これはまた、大きいですね。それに中々厄介そうなモノがゴテゴテと‥‥」
 軍艦恐竜の後方側に到着した立花も、ぼやく。
「こんなのを1人で止めていたメッドさん、応答お願いします」
 無線機で呼びかける、フローラ。その呼びかけに、メッドが応えた。
「こちらメッド、今現在全力で退避中だ。遠慮なくやってくれ!」
 さすがに無能ではないらしく、メッドは言われる前にすでに退避を開始していた。
 ホッと胸をなでおろしたフローラが、一同にその旨を伝える。
 戦車形態で軍艦恐竜の遥か後方を走行する緑川機も、ビルの隙間から実物を確認して、呆れる。
「なあ、バグアって、どうして、趣味な兵器を作るんだ? この恐竜戦艦は‥‥」
 知っているゲームに出てくる最強クラスの敵のようだ、と彼は語った。確かに、迫力は満点だ。
「後方2000、HW確認」
 ベアトリーセがそう告げる。状況確認や位置取りをしていた間に到着されたようだ。
「まあ、いい。まずは飛行戦力だ! 戦艦の護衛役をつぶす!
 弾種対空榴弾、選択! 装填! 目標補足!
 発射! 続いて徹甲散弾!命中率重視だ!」
 緑川の先制攻撃にかぶせるように、ベアトリーセも【複合式ミサイル誘導システム2】を駆使し『K−02小型ホーミングミサイル』を一射、そのうち先頭の1機に『二十四式螺旋弾頭ミサイル』で追い打ちをかける。
「ご挨拶‥‥と言ったところでしょうか‥‥」
 ズドドォォォォンン!
 2人の連携で見事HWを1機撃墜し、ベアトリーセの『K−02』の直撃を受けてから残りのHWは機械的に散開する。
「あの動き、無人機のようだ‥‥」
「それならば、我々だけで時間は稼げそうだ。恐竜班、そちらは任せた!」

 緑川の先制に、恐竜班も動いた。
 まずは砕牙が『スモーク・ディスチャージャー』で煙幕を発生させつつ、ブーストで使ってビル陰から飛び出す。
「こっちを見やがれ、デカブツ!」
 砕牙の誘いに、恐竜の視線と砲門が向けられる――そこへ。
 ドドォンドドォン!
 恐竜の足元に番場の『スナイパーライフル』が直撃し、その足場を崩していく。
 ふいに足場が崩れた恐竜はあらぬ方向を砲撃し、砕牙には当たる事がなかった。その隙にビル陰へと身を潜ませた砕牙。
 そのビルに恐竜が機関砲を撃ち続ける間に、フローラ機、守原機、無月機がビルからビルへとすべる様に移動して距離を縮めていく。
 立花機は盾を構え、弾幕を防ぎつつ暴れる尻尾の間合いの外から、右後ろ足の膝関節部分を狙って『ピアッシングキャノン』を発射する!
 ゴゴゴゴォォン!
「命中精度は低くても、アレだけ的が大きいと当てるのも容易ですね」
「足元が留守ではなかけど対空重視ですね」
 軍艦恐竜の様子を見ていた守原が皆に伝える。
「‥‥なんだって?」
 守原に、砕牙が聞き返す。
「ああ、すいません。どうやら足元はまるで無防備ではないにしても、対空重視で、ほとんど対地能力はないようなものですね。
 先ほどから観察していましたが、足は移動用、頭は視認用、尻尾は反撃しているように見えますが、ただ動いてるだけのお飾りみたいです」
「つまり、やはり後続のHWは対地目的のわけですね――っと、お邪魔虫の到着ですか。邪魔はさせません」
 緑川とベアトリーセの攻撃をかいくぐった一匹に、立花は『ピアッシングキャノン』を打ち込む――が、不意に高度を下げられ命中させる事が出来なかった。
「ふむ‥‥何とか空に上がらないと厳しいですか?」
 苦い顔をする立花の眼前で、無月機がブーストを使用し、瞬間的に高度を下げたHWの真正面に踊り立つ!
 ズドン!
 真っ直ぐに『ロンゴミニアト』で一突き、そして離脱。
 ゴゴゴァァンンン!
 液体火薬により内部爆破されたHWは墜落していく。
 ビルを足場に、跳ね回る無月機は地上に着地すると、再びブーストを使い、立花の横を一瞬で通り抜ける。
「邪魔、だな‥‥」
 ヴォン!
 その一言で、『雪村』が立花に当たる寸前だった尻尾をいとも簡単に切り捨てた。
「おらよ!」
 ゾゾン!
 尻尾がなくなったことで後方からの接近が容易になり、砕牙が一気に距離を詰めて『グレートザンバー』で右後ろ足の膝関節を叩きつける。
「これで!」
 ズゥオン!
 砕牙の『ザンバー』でできた切れ目に、間髪いれずに守原が『フィロソフィー』を叩き込む。
「一つ一つ確実に潰していけば、ね」
 砕牙が距離をとった瞬間、【EBシステム】を発動させたフローラが『龍哮』を膝関節にぶっ放した!
 ォォォォォンンンン!
 荷電粒子が大気を揺らし、軍艦恐竜の後ろ右足の間接部分を完膚なまでに破壊しつくす。
 軍艦恐竜は長い首で後方を振り返り、攻撃のために遮蔽物から姿を現した一行を睨みつけ、機関砲と2連砲が彼らに向けられる――が。
 ガゴゴゴゴゴゴォォォンン!
「わたしを忘れてもらっては困ります」
 後ろに注意が向いているうちに、距離を詰めていた番場の『ツングースカ』が機関砲と2連砲を破壊する。
「一気に勝負をつける‥‥」
 ゾゾンゾン!
 無月機がビルを足場に跳躍し、軍艦恐竜の背に飛び乗ると『雪村』と【内蔵用『雪村』】の二刀流で主砲を根元から斬りつけ、破壊した。
「こいつでもくらっとけ!」
 ドドドガンドドガンドドドドォォン!
 砕牙機による2本のグレネードランチャー一斉射撃により、広範囲にわたって多数の機関砲と2連砲を破壊。
「暴戻の権化に光浴びる理非ず、この新月にて全て奪い返す!」
 ブォォン!
 守原の『新月』が長い首をなぎ払い、切断にはいたらなかったもののその機能のほとんどを破壊する。
「こいはおまけさ!」
 グレネードを残っている機関砲に向けて放ち、離脱。
「頭部破壊、シュート!」
 ォォォォォンン!
 再びフローラの『龍哮』が火を吹き、頭部に直撃。完全破壊には至らなかったものの、すでに頭部は原形をとどめていない。
 状況を見ていた立花機が変形し【垂直離着陸】を発動させ、空へと駆け上がる。
「みなさん、ここは任せます。俺は残っているHWの排除に向かいますので」
「オーライ」
 砕牙が任せろと言わんばかりに親指を立てると、立花はニコリと笑みを残し、後方へと向かった――。

「副砲30ミリ重機関銃、選択! 目標HW!」
 ブワァァァァァァァァァァァァァン!
 緑川が『重機関銃』でHWを狙うものの、空を飛ぶHWにはなかなか当たらない。
「くそ! 対空砲が欲しいな! 通常の機銃じゃ当たらん!」
 そんな緑川をなめるように、HWが正面に躍り出る。
「‥‥こい! ラッキーヒットでもいいから落としてやる」
 多少の反撃はあるものの、硬さが売りの緑川機にはたいした損傷ではない。そしてHWが正面の射線上に重なった時『420mm大口径滑腔砲』が火を噴いた。
 ズドォォンンン!
 戦艦の主砲以上の大火力の直撃に、HWはあっけなく沈んでいく。
「これ以上行かせませんよ‥‥」
 軍艦恐竜のピンチを察したのか、2人を無視し軍艦恐竜の元へと向かう2機のHWの後方めがけ、【誘導システム】使用の『K−02』と『二十四式』で牽制する。
 そこに【PRMシステム・改】を使用した立花機が到着し『ガトリング』で牽制しながら突撃し、接近と同時に『ミサイルポッド』でミサイルをばら撒き、ブーストで一気に離脱。
 ゴガンゴガンゴガンゴゴガンゴガガンッ!
 多量のミサイルの直撃を受けた1機が、大破、墜落していく。
 ダメージだけで残った1機はどことなくふらふらと、真っ直ぐに軍艦恐竜の元へと飛んでいく――が。
 ズドォォンンン!
 緑川の『420mm』がHWを貫き、見事に撃墜した。これで5機のHWを全て撃墜できたのである。
「いよっし! 敵飛行戦力を撃破確認。これより戦艦砲撃に向かう」

「希望を有らしめろ! 壱式、叶星乃太刀が壱、昴!」
 守原の気合一閃。
 切れかけていた首を完全に切断する。
「これより爆撃を行う‥‥」
 ベアトリーセの通信に、背にいた一同は離脱――そこに【誘導システム】を使い『共工』が着弾する。
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンンッ!
 この一撃で、残っていたほぼ全ての砲門が軒並み破壊された。
 そして緑川機の到着。
「420ミリ砲、戦艦主砲に使われていた主砲と同じ物を味わえ。弾種、対FF徹甲弾、残弾ぶち込む!」
 ドドンドンドドドンズドォォン!
 ありったけの砲弾を射出し、軍艦恐竜の胴体に大きく穴をあける。
「主砲弾、残弾ゼロ。機銃による攻撃に切り替える。とにかく壊す!」
 前進しながら『重機関銃』を放つ緑川機。
「その穴、広げさせていただきます」
 番場が胴体へと肉薄し『リコポリス』を振り回し、穴を広げる。
「おっしゃあ! みんなどっけぇぇぇぇぇ!」
 砕牙が『グレートザンバー』を構えたまま、全速突進!
 胴体の穴の下にブッ刺すと、手首を返してブースト発動!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンンンンン!
 砕牙の全てを賭けた一撃で、軍艦恐竜の胴体は完全に真っ二つに分かれたのであった――。

「やれやれ、なんとも…」
 立花がシートにもたれかかり、息を吐き出す。
「目標、沈黙確認しました‥‥」
 無月は普段と変わらぬ口調である。
「やっぱ斬り応え、あったぜ」
 砕牙が少し楽しそうにつぶやく。
「こうしてみると、欠点だらけの敵でしたね」
「そうだな‥‥HWがいなければ、もっと早く終わっていた‥‥」
 守原の言葉に、ベアトリーセがうなずく。
 フローラと番場がKVから降りると、どこからか犬を連れたメッドが現れた。
「あら、かわいい」
「無事だったんですね‥‥そちらの犬は?」
「傭兵諸君、ご苦労様。こいつはまあ、ここで見つけた癒し、とでも言うかな‥‥」
 犬の頭をなでるメッド。だいぶ懐いているようだった。
「作戦は終了したが‥‥出来れば賞金が欲しいな。多めで」
 そんなジョークを口にしながら、緑川は武装と機体の状況を確認しておく。
 その言葉が理解できたのか、メッドが苦笑し、廃墟を指差す。
「あっちにドラム缶があったが、押してくるか?」
 メッドのジョークに、緑川が噴出して笑う。
 二人の会話についていけない一同は、首を傾げるばかりだった。
 軍艦恐竜の残骸を見上げるメッド――そして、つぶやく。
「敵、とったからな‥‥」

『【AS】荒野に軍艦? 終』