タイトル:【海】凪との決別マスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/10/15 22:31

●オープニング本文


●海上に浮かぶ人工バグア基地
「ジーンとメリーが――それでいて奴らを1人も落せなかった、と」
「ごめんなさい、凪姉様‥‥」
 金髪の可愛らしい少女、リリーの報告を受け、純白のパピルサグの前で腕組みをして見上げていた生嶋 凪(gz0497)は、楽しそうに口をゆがめる。
「それだけ奴らも強くなったと言う事‥‥多少なりとも我とやりおうただけ有る、それだけの事じゃわいの」
「あいつらにここの座標は伝えたけど――全員出るの?」
「そんな詰まらん事はせん。出るのは‥‥我だけじゃ」
「え?」
 くるりと、凪はリリーを正面から見据える。
「ここは放棄する――ぬしらはソラに戻れ。撤収せよ、そういうお達しじゃ」
 人類に確実に押されつつあるバグア。もはや撤収という言葉すらも自然と出るほど、追い込まれているのだ。
「ぬしらは我と違い、もとは海以外を得意としていたであろう傭兵ばかりじゃ。その知識があれば十分他でも戦っていけるじゃろう――じゃが、我は違う。海以外で戦う事を覚えようとしなかった」
 格納庫の扉を開き、広大な海を眺める凪。
「‥‥海こそ我が領土。我が王国。じゃがこれほど海に恵まれた星は、もうそうそうめぐり合わせる事も無かろう。
 だから我は、ここで散るまで楽しむだけじゃ」
 爽やかに微笑んだ凪は、リリーの頭をなでる。
「‥‥私――僕達は凪姉様の強さに強烈に惹かれて、人類をやめたんだ。他のみんなもそう――それなのに凪姉様を置いてなんて行けないよ」
「‥‥ならば言い方を変えようかの。我の楽しみの邪魔をするな。大人しく撤退せよ」
 圧倒的威圧感。これでほとんどの部下に有無を言わせず、ソラへと返した。
 だが、リリーは怯まなかった。
「僕も、半身が死んだ以上は引き下がれない。これだけは譲れないよ」
「‥‥かかっ、ならば勝手にするがいい。じゃが今度の戦いだけは手を出すな――プロトン砲はついておらぬが、我のゴーレムをぬしにやろう」
(もう使う事もないじゃろうし――あれでは上空の敵に対して無力じゃろうしな)
 ジョンが落された時の話を聞き、上空に対する意識が高まった凪。その点、パピルサグだと申し分がない。
「ありがとうございます、凪姉様」
 ゆっくりとパピルサグに歩み寄っていく凪の後ろで、リリーは自分の長い髪を切り落とし、ジャケットを脱ぎ捨てる。 そして『少年』は純白のゴーレムへと向かうのであった――。

●屋久島・ULT出張所
「生きていた上に、バグアより先に発見までされて、あんたどんだけ悪運強いんだかね」
 蒼 琉(gz0496)の傷の縫合を済ませ、メイ・ニールセン(gz0477)が片足で立ち上がり、琉を小――いや、どつく。
「とりあえずこれで多少動いても傷口は開かないから、海ちゃんくらいは誤魔化せると思うけど――心配するのは海ちゃんだけじゃないんだから、もっと気をつけなさいよ」
 鋏と櫛で、長さがまばらになった琉の髪を整えていく。
「‥‥すまんな」
「それを言うのはあたしにだけじゃないからね――今の一撃以上くらい、覚悟しときなさいよ。
 さて‥‥自分の髪を切るのはともかく、人の髪切るのは初めてだからそこまで上手くないけど、こんなもんかな」
 すっかり髪が短くなってしまった琉を前に、まくっていた腕を戻すメイ。
「短くしたのは結婚式以来か‥‥」
「結婚式?」
「――ああ。もう隠しはせんが実は‥‥」

「ふーん‥‥記憶は戻ってたのね。で、なんでいまさら、とぼけるのをやめたの」
「もう皆に隠すのはやめておこうと思ってね――教えたうえで、頼みたい事もあるのでな」
 あんな事があってもいまだに時を刻み続ける腕時計を手に取り、ズボンのポケットに捻じりこむ。
「記憶があったからこそ、凪の誘いも断れた――俺の知る凪は目の前で死に、あそこにいるのはバグアだと思える事が出来た」
 立ち上がり、メイの買ってきた服に袖を通す。
「そして、決別せんとならん」
「ああ、頼みたい事って‥‥お嬢と言いあんたと言い、馬鹿みたいねぇ‥‥自分の責任は自分でというのは大事だけど、命も大事にしなさいよ」
 オーストラリアの一連を思い浮かべ、いつもより苦いコーヒーをすする。
「海ちゃんが帰りを待ってるんだからね。とりあえずLHに緊急の用事があった、と言う事にしておいたけど、長くは誤魔化せないんだから今度はちゃんと自分の足で帰ってきなさいよ」
「大丈夫、迷惑はかけるだろうが仲間がいるだろうからな――」

●本部
 本部には短く『凪との決別』ただそれだけだったので、多くの傭兵は意味が分からずスルーしたが、凪という名前に反応した傭兵達(中には興味本位だけの者もいたかもしれない)は、再び屋久島へと赴くのであった。

●屋久島・ULT出張所内部
「知っている者もいるかもしれんが、生嶋 凪から挑戦を受けた――死を恐れぬなら来い、しかも座標にはご丁寧にパピルサグ1機と、単機で待っているように書かれていた。
 罠かもしれない、という気がしないでもないが、こう言ってはなんだが、凪――いや、アレはそんな小細工はしないという変な信頼だけはしてもいいように思える」
 傭兵達に説明する、依頼主の琉。
「いつまでそこに居るかわからん以上、早々に決着をつけるべきなのだろうが――俺はあいにくこのざまだ」
 腹の包帯をチラリと見せる。
「皆にはバグアの討伐を頼みたい。ただ、丸投げする気にだけはならんので――すまんが、この座標まで連れて行ってもらえないだろうか。言っておかなければならん事もあるのでね。
 ――機体はロジーナしかないので、明らかに足手まといだろうが、戦闘中俺の事は忘れてくれ。やられておいてなんだが、自分の身は自分で守る。アレの癖も掴んできたことだし、防御に専念すればそうそう落されはせん」
 ポケットの腕時計を、ズボンの上から触れる。
「‥‥無論、無茶な願いなのは承知しているので、無理だと判断したなら俺は君らに従おう」
 少しだけ天を仰ぎ、深呼吸――ゆっくり息を吐き出して、琉は傭兵達に向き直った。
「アレは恐ろしく強い。回避が尋常じゃないし、とっさの行動も実に無駄がない。一つの動きに移動、回避、攻撃が複数織り交ざっていて、生身以上に機体の全身をフル活用してくる。
 先生が1人で撃墜できたのも、当てない一撃と当てる一撃を使い分けたからこそだったのだろう――当てない一撃を撃てなくなってしまったから、負けたのかもしれん」
 魚雷はすべて当ててこそさ――先生の言葉の真意を今ならわかる。
「これまでの戦闘記録から、戦い方を学び、どんな行動でどんな回避をするかを十分に理解したうえで、どうすれば攻撃が当たるか工夫を凝らさねば、人数がいても勝つことは難しいだろう。それほどまでに今のアレは強い」
 対峙した時の事を思い返し、ギュッと拳を握る。
「俺が伝えれる事はすべて伝えよう。だから――生嶋 凪を名乗るバグアを殺してくれ」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
美虎(gb4284
10歳・♀・ST
シルヴィーナ(gc5551
12歳・♀・AA
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

●屋久島・ULT出張所内部
 蒼 琉(gz0496)から詳しい話を聞き、彼の覚悟の重さを感じ取った傭兵達は押し黙っていた――が、その重い空気の中、ぴょこんと可愛らしい手が挙がる。
「はっきり言うと、蒼さんを単騎で、しかもロジーナで連れて行くというのは反対であります」
 実にはっきりした意見の美虎(gb4284)。腕を組み、次のように続けた。
「しかし、決闘の流儀に反するので美虎の『ドッポ』に同乗するというのなら連れてくことは可能なのであります」
 自分の言葉にうなずいて、トコトコと琉の前まで歩み寄り、首をかしげるように覗き込む。
「どうでありますか? いくら決戦名目とはいえ、明らかな自殺行為をするよりはマシだと思うのであります」
 美虎の提案に琉が考え込む――もっともな話だと、思っているのだろう。そうでなければ即座に反論しているはずである。
 彼もちょと前から比べれば、随分変わったものである。
 すっともう1人、手を挙げた。これまでにも数回にわたって琉を助け、生嶋 凪(gz0497)とも因縁が深くなっているクラーク・エアハルト(ga4961)、彼であった。
「正直言えば、自分も反対かな。お気持ちは分かるんですが、今の状態では足手まといとしか言わざるをえませんので」
「まあその通りだね〜。重傷なら我輩が治す事もあったかもしれないが、その体ではろくに機体も使えないだろう〜」
 耳に入ったついでと言わんばかりに、ドクター・ウェスト(ga0241)が端末を睨みながらも、独り言のようにそう言った。能力者不信の彼だけは、みなから少し離れたところに座っている。
「死んじゃだめなのです!」
 クラークの横に座っていた彼の娘シルヴィーナ(gc5551)が、尻尾でも振っていそうな勢いで駆け寄ってきて琉の腕にしがみつく。
 彼女の父親との仲がそれなりにいいせいか、彼女も妙に懐いているようである。
「そうだね。それに、護るなら2機より1機ってね」
 眼鏡のレンズを拭きながら狭間 久志(ga9021)が美虎の提案を、さらに援護する。
「伏兵がいた時の事も考えておくと、それがいいような気がします。小細工はしないと言われても、僕自身は凪を知りませんし、上司思いの部下がいないとも限りませんしね」
「ふむ‥‥」
 膝の上で手を組み、前のめりに座って、またしばらく黙りこむ琉。
「ふむ、じゃないわよ」
 腕を組んで車椅子に座っていたメイ・ニールセン(gz0477)に背中を蹴られ、椅子ごと転倒する。重体だけあって、まともに動けていない証拠である。
「考え込む余地なんてほとんどないじゃない。そもそも水中機で挑んでズタボロのくせして、いまさら一度撃墜経験のある旧型機で出ようって――足手まとい通り越して、死の宣告って言うのよ」
 実に面白くなさそうな顔をしている。彼女自身もこの場で初めて琉がロジーナで出る事を知ったからだ。
 死に急ぎの大馬鹿野郎を、彼女は大嫌いなのだ。
「死に急ぐんなら、今この場であたしがかっちり息の根を止めてあげるけど――あんたが死んだら、海ちゃんは1人になっちゃうじゃない」
「落ち着きなよ、メイさん――立てる? 師匠」
 琉を師匠と呼んでいる刃霧零奈(gc6291)がメイをなだめつつ、琉を助け起こす――彼女にしては珍しく、随分と落ち着いていた。ついに最後と思えば思うほど、不思議と心は落ち着く一方であった。
 少し前の彼女なら――これから起こる激戦に、高揚感が抑えられなかっただろう。
 彼女も成長したのだ。目の前の男のおかげで。
「すまんな、零奈」
 よろけながらも立ち上がると、長い、ため息をついてから顔を上げる。
「確かに、死に急いでいると思われてもしかたなかったな。実際、記憶が戻る前の俺なら、死に急いでいただろうしな」
 平然と言いのけて苦笑すると、皆が一斉に琉に注目する。彼はまだ、記憶が戻った事を伝えていなかったのだ。
「蒼さん、記憶が‥‥?」
 眼鏡のずれを修正し久志が問いかけると、琉はゆっくりと頷く。
「美虎だけは違うが、あの時は君の所の統括だっただけで、このメンバーだったな。俺の記憶を戻すのに尽力してくれたのは」
 奇しくも、以前に自分の記憶を取り戻す依頼を出した時と、ほぼ同じメンバーなのである。つまりは生前の凪と自分との関係を知っているメンバーであると言える。
「わふ‥‥もう言ってしまってもよかったですか?」
 首をかしげるシルヴィーナ。彼女にだけ、記憶が戻っていた事を教えていたのだ。
「ああ。どうせいつかは気づかれる事だろうし――なにより、俺の覚悟を知ってもらいたかったのでね」
 前回こっそりと娘とのやり取りを見ていて同じく知っていたクラークが、少し寂しそうに微笑むと、娘の頭を撫でる。
「‥‥中身が違うとはいえ、かつて自分の大事だった人。それでも大丈夫ですか」
「大丈夫だ――」
 つかみ損ね、海中に引き込まれていく凪を思い出して掌を見つめ‥‥ギュッと拳作る。
「記憶が戻る前、確かに惹かれてはいた――だがそれは覚えていなくても覚えていた、ということなのだろう。
 しかし記憶が戻った今、凪は目の前で死んだ。だからあれは、別モノ――先生を殺した、バグアに他ならん」
「その先生が凪さんを殺してしまった、それでも先生と呼ぶんですね」
 一度チラリと落ち着いているが心配そうな零奈を見てから、久志は意外なほど厳しい事をつっこんでくる。彼にとってではないが、大事な事だからだ。
 一瞬意外そうな顔をした琉だったが、口元に手を当て、少ししてから口を開く。
「――流れ弾を恨んでも仕方がない。それにやはり、恩義の方が強いのでな」
「ごちゃごちゃ言うのはいいから、さっさと決めたまえ〜」
 少しイラついているのか、端末の端を指でノックする様に叩きながらウェストが口を挟む。決断を迫るように、傭兵達の視線は琉に集まる。
「‥‥わかった。よろしく頼む、美虎」
「任せるであります――ところで今日に出発でありますか?」
「いや、今日は島の南の麦生漁港にKVを運んで、しっかり休んでから早朝に出発しよう――もしかしたらギリギリの戦いになるかもしれんので、できる限り練力も温存したいだろうしな」
 琉の提案に一同、KVの移動を開始すべく出張所を後にするのであった――。

「昨日、少し遅くまで何をしていたかと思えば‥‥」
 美虎のオロチの前で呟く、琉。
 目の前のオロチは基本色ではなく、鮮やかなアクアブルー一色にカラーリングされていた。
 その色は、津崎 渚のパーソナルカラーであった。
「昨日、先生の色を聞いてきた理由がこれか」
「その通りであります――さて蒼さん」
 オロチの前に休めの姿勢で立っていた美虎が振り返り、いつになく真剣な眼差しで琉を見つめる。
「同乗にあたっての注意事項でありますが、もちろん美虎の指示には全面的に従ってもらうであります」
「ああ」
 ただしと、びしっと指を1本立てる。
「凪に関する一点のみでは、蒼さんが必要と判断する事なら美虎は蒼さんに従うであります」
「‥‥了解した」
 琉が承諾したことを受け、うんうんと頷いた美虎は手を差し出し、握手を求める。
「命預けるのです。だから蒼さんも美虎達に命預けてほしいのです」
 がっしりと握手を交わし、分かったと力強く頷くのであった。
 ふんふんと息巻き、オロチに乗り込む美虎。琉が美虎が乗り込むのを待っていると、背後から零奈が声をかけた。
「ホントに大丈夫?」
「無理はしないでくださいです!」
 わふっとシルヴィーナが駆け寄ってきたため、心配の意味合いが少し違うとも言えずに零奈は一歩下がると誰かにぶつかった。クラークである。
「それを言うならシルヴィー、君も決して無理はしない様に」
 ぽんと娘の両肩に手を置き、優しく微笑む父親。娘はえへへーと、幸せそうに笑っていた。
 そしてクラークは表情を引き締め、海を眺めながらポツリと誰かに向けて語りかけた。
「さあ‥‥決着かな」
「そうだね、決着つけに行きましょう。先に進む為にね」
 ぽんと零奈の背中を叩き、久志は自分の機体に乗り込む。何となく元気づけられた零奈も、こくりと頷きビーストソウルの元に向かっていった。
 もう出発が近い事を感じ取ったシルヴィーナは、一目散に自機のフェンリルに駆け寄ると、ぺこりと頭を下げる。
「水の中ですが、よろしくお願いいたしますですね?」
(‥‥これで‥‥終わらせてみせますです‥‥!)

「悪いね、刃霧さん。今回も牽引してもらっちゃって」
「ん、いいんだよ。別にね」
 ハヤブサでの参加である久志は、今回も刃霧に牽引してもらっていた。同じく水中機ではないフェンリルのシルヴィーナも、クラークに牽引してもらっている。
「美虎さん、支援と蒼さんと‥‥周囲警戒も頼みます」
「任せるでありますよ。昨日伝えた通り、伏兵のいそうなポイントも把握済みであります」
 昨夜のうちに海底地図を入手し、しっかりと皆に周知済みであった。もちろん戦闘中はそこまで気が回らない可能性が高いので、後方支援の美虎の出番という訳だ。
「我輩もサポートにまわるかね〜。もう少し楽な水中戦がしたいものだね〜」
 先頭を行くウェストが珍しくぼやきを入れる。トラウマの原因である機体の、リヴァイアサンで出撃しているせいだ。
 だがそれも、もう少しの辛抱である。
 今まさに決着をつけに行くのだから――。

●海上に浮かぶ人工バグア基地
「――やっと来おったか。待ちわびたぞい」
 パピルサグの中でじっとこの時を待ちわびていた凪が、レーダーの反応に心躍らせ、口元を吊り上げる。
 起動を始め、最終チェックをしながらもいまだに微動だにしない自分のゴーレムへと声をかけた。
「リリー‥‥いや、今日はメリーの日じゃったか」
「今日はメリーを演じる日だったけど、今の僕はもうリリーでもメリーでもなく、リリーでもメリーでもあるんです、凪姉様。これからは、リリメリとでも呼んで下さい」
 返事はある。やはりゴーレムの中で凪と同じように待機していたようで、結局大人しく宇宙には行かなかった事に、凪は少し表情を曇らせる。
「今日の戦いに、余計なチャチャいれるでないぞ?」
 今度は返事がない。
 凪は肩をすくめ、パピルサグの起動を済ませるとそれ以上言葉をかける事もなく、海へと潜っていく――そして遅れてゴーレムも、海へと潜るのであった――。

「いたね〜、本当に1機だけで〜」
 琉の言葉に半信半疑だったウェストが、少し呆れていた。憎いバグアではあるが、その強さへの自信には清々しさを感じてしまう。
「本当に1機かはまだわからないであります」
 ソナーブイを投擲し、情報収集を開始する。ここはもはや戦場なのだ。
 腕組みをしているパピルサグの前に、6機が並び、対峙する。
 沈黙が続く中、口を開いたのは周囲に艦船がいないか索敵、完了したばかりのクラークであった。
「‥‥言葉は、不要‥‥かな? 後は雌雄を決するのみ――。
 と言いたいところですが‥‥双子の生き残りはどうしました?」
 止めをさしきれずに逃がしたゴーレムがどうしても頭の片隅から離れなかったので、聞かずにはいられなかった。
 返事は来ないかと思っていたが、案外あっさりと凪は通信を開く。
「邪魔せんかと気がかりのようじゃな――リリメリ、こっそり見とらんで出てくるのじゃ」
 凪の言葉に、海の底から純白のゴーレムがゆっくりと浮かび上がってくる。
「これ以外の部下はすでに宇宙に送ったからの。もはやこの海域には我らのみじゃ」
 その言葉を裏付けるように、ソナーの反応も8機分しかない。深度からしても、これで少なくともこの周囲は凪の言葉通りであった。
「そして勘違いするでないぞ。これには一切手出しはさせん。また、万が一にも我が負けた後、弱ったヌシらを襲わせもせん――よいな、リリメリ。我のこの言葉を違えたら、我の誇りを汚すものと思え」
「凪姉様が負けるはずない!」
「それはこちらとて同じだ。俺達が負けるはずもない」
 琉が通信を入れると、通信の向こう側で息を飲むのがはっきりと感じ取れた。
 少しの沈黙。
「生きていたのですね、亮一さん」
 そして再び沈黙。
 凪と琉の通信に固唾を飲んでただ聞き入る事しかできない零奈は、唇をかみしめ、操縦桿を強く握りしめていた。
「‥‥生嶋 亮一は死んだよ。ここにいるのは蒼 琉だ」
 琉の決意を現した言葉に久志がへぇと感嘆の声を漏らし、眼鏡のずれを直して零奈機に視線を向ける。
 同じく、決意を感じ取った零奈――操縦桿を握る手から余計な力が抜け、ここへ来てさらに落ち着く事が出来た。
「記憶を取り戻した今も‥‥貴様は奴を消す事を望むのだな?」
 いつもと違う口調のシルヴィーナからの通信。琉はこくりと頷く。
「俺にとってアレはすでに――ただの敵だからな」
「ひどいですね、亮一さ――」
「貴様の御託はどうでもいいのだ。早く始めようか、バグアよ」
 明るく無邪気な犬のようななりは影を潜め、黒い狼の幻影を横に携えたシルヴィーナが冷たく言い放つ。ウェストがセリフを取られたと言わんばかりに口を開けて固まっていたが、すぐに気を取り戻し、計器に目を配る。
「くっ、支援機ではないから、色々と難しいね〜」
 この時間すらも有効に活用しようと、海流のデーターをその場で記憶していたのだった。
 メイド服を勧められ少し困った表情の凪をちょっとだけ思いだし、クラークが大きく息を吸い込み、吐き出す――。
「さて、凪さん‥‥始めますか? ‥‥お互いの信念の為に。こちらも、覚悟を決めましたからね」
「――そう、ですね。エアハルトさん」
 ゆっくりとした動作で、パピルサグは太刀を抜き放つ。
 戦闘開始の気配が高まる中、琉の直感が働く。
「美虎、煙幕展開全速後退、くるぞ!」
 凪に関しては従う――その言葉通りに美虎は琉の忠告に反応し、反転、スパートインクで煙幕を垂れ流しながら全速で後退を開始する。
 それと同時に、パピルサグは加速して琉の読み通りに美虎機めがけ、煙幕を避けるようやや弓なりな軌道で向かっていった。
 迎え撃とうと零奈、クラーク、シルヴィーナが前に出て3機ともレーザークローを振るい足を止めようとしたが、2本の太刀と鋏で上手くいなされ、凪は何事もなかったようにわずかな隙間を強引に縫って通り過ぎ去る。
「行かせるものか〜」
 珍しく焦っているウェストが立ち塞がり、太刀をアクティブアーマーで受け止め、横を通り過ぎようとしたところをレーザークローで払って一瞬足を止めさせた。
 すると突如目標をウェストに切り替え、鋏を突き出してくる。
 焦って命中個所など気にしていられないウェストは、その鋏にバニシングナックルを突っ込んで射出!
「バ〜ニシング、ナッコォー!」
 ロマンを求めたその一撃は、パピルサグの鋏を1つ破壊させたのであった。
「かっ、やるのう、本当に!」
 がら空きになった頭部を尻尾で殴りつけられ、モニターをぶらされてパピルサグをほんの一瞬見失ったウェスト。
 その一瞬で死角にまわりこみ、胴体を太刀で刺し貫こうとし――途中で蹴り上げ、反動も利用して下方向へと加速をかける。
 凪の脚に、久志のガウスガンが掠めた。
「なるほど、回避能力は伊達じゃないか」
 下に潜りつつ、方向をこちらに変えてきた凪に小型魚雷ポッドで魚雷をばら撒き、少し後退する。この間に上に流されたウェストは体勢を立て直し、着弾のタイミングを合わせるように同じく小型魚雷ポッドで魚雷をばら撒く。
 正面と上からの同時魚雷弾幕――回避行動が制限されるこの状況に、回避するであろう先にガウスガンで狙いを定めていた久志。
 だが。
 凪は横にかわすでもなく、魚雷群などお構いなしに久志へまっすぐ向かってくる。
 時間差で流れてくる魚雷群の先頭に、ブラストシザースのレーザー砲を直撃。爆発させ、次々に誘爆させた中に飛び込んでいく。
 気泡の中に紛れる凪にガウスガンで当てずっぽうで撃ち続ける久志の前に、両腕を交差させた凪が躍り出る。
(敵は大型KV。対するこちらは小型KV最軽量――機体の特性で言えば小回りの機動力勝負なら光明もある! 空では何Gもの負荷に耐えながら反射速度と一瞬の発想で勝負をしてきた。僕には僕の戦い方がある。相手のペースに飲まれるな)
 迫りくる凪を前に必至に冷静になろうとする久志。ブーストで後退しながら小型魚雷ポッドを射出、凪の動きに合わせてさらにブーストをかけようと思っていた。
 が、凪は追撃をやめ、前方の下方向に魚雷群を射出、急速浮上で背後の斜め上からやってきた魚雷群をやり過ごす。
 浮上しながらも半身を逸らし、ウェストのアサルトライフルをも当てさせない。
「さすがに隙がないね〜」
 気を取られているうちにと思ったのに、それでも当てさせない凪の隙のなさに冷や汗がたらりと流れる。
 そして凪の撃った魚雷を視界にとらえ、記録した海流で軌道計算をすると叫んだ。
「ミトラ君、そっちに行くぞ! 迎撃したまえ!」
「了解であります!」
 ウェストの警告通り凪の魚雷が久志の下を潜り抜けたかと思えば、海流の影響で上へと軌道が変化し美虎に迫りくるが七十式多連装大型魚雷で迎撃してみせた。
「流石だな」
「来ると分かっていれば、迎撃はたやすいのです――蒼さんには凪機の動きの解析をお願いするであります」
 撮影演算システムを展開し、凪の動きを観察し解析を琉に任せる美虎。自身は凪の動向に注意し、攻撃に常に備えていた。
「いい加減、こっちの相手もしてもらいたいねぇ!」
 上下左右に動きながらホールディングミサイルで牽制する零奈。そこに常時アクチュエータを発動させたクラークも、ホールディングミサイルを混ぜ込む。
「小賢しいわい!」
 回避するでもなく、零奈に向かって前進してクラークのミサイルをやり過ごし、太刀で正面からくる2本のミサイルを斬り落としては、前進したまま一瞬反転し、背後から飛んできたシルヴィーナの放ったミサイルをレーザーで迎撃、反転し直して零奈と正面から向かい合う。
「接近は望むところだよ!」
 レーザークローを構える零奈。2機が肉薄する――かとおもいきや、凪は急下降、久志の水波をやり過ごし、反転と共に太刀を振るってシルヴィーナのミサイルをまた斬り払い、今度は急上昇、ウェストの小型魚雷ポッドをバルカンで誘爆させると、反転して零奈に一太刀。
 咄嗟にホールディングミサイルを発射。反動に合わせてブーストを使い、後方へと離脱してみせる。
 零奈のミサイルを上昇して回避すると、一旦距離を置く凪であった。
「あのタイミングでかわすとか、厄介だね」
「むかつくね〜。あの機動力」
「ダメージを受けない事は最優先事項だが――そうも言えん相手のようだな」
 お互いにまだそれほどのダメージはないが、ここまで攻撃が当てられないとなると、腹をくくらざるを得ないとシルヴィーナは判断したようである。
「シルヴィー、無茶はしないようにって言ったでしょう? そういうのは――」
 ミサイル系は切り払われると判断し、ガウスガンで牽制しつつ距離を詰めていくクラーク。それを援護する形で、久志とウェストもガウスガンとアサルトライフルで牽制を繰り返す。
 そして再び零奈も動きだし、シルヴィーナは常に後ろに後ろにと、ブーストを駆使し凪の背後にまわりながら移動。
「おとーさんの役目なんですよ!」
 真正面から凪に挑み、ハイヴリスで一突き――当然それは太刀によって流され、お返しに掴みかかってきた鋏をレーザークローで払いのける。おまけみたいなバルカンは、鋏を払いのけた際の反動にブーストを合わせ、斜め方向に回避してみせた。
「見事なもんじゃの、エアハルトさん!」
「『おとーさん』はね、娘の前では負けられないのですよ!」
(ただの1人の父親として、娘を守り妻のもとに帰るのですから‥‥!)
 クラークが一瞬視界を塞いだ隙をつき、陰から零奈がややゆっくり目にレーザークローを振りかぶる。
「遅いわい!」
 零奈の胴体を掴もうと鋏を突き出す凪――だが。
「その一瞬を待っていた!」
 鋏の関節を逆に両腕の鋏で掴みかかる零奈。そしてガトリングを関節に押し当てて発射。シザースで捻じり、関節部分を破壊して鋏を潰すと、鋏にミサイルを射出。
 爆風と反動、それにブーストを合わせて離脱を試みる。
 凪が零奈を狙って振り上げていた右腕に、離脱したと見せかけたクラークがレーザークローを突き立て、それを軸に体を入れ替え尻尾の根元にハイヴリスの一突き。尻尾を斬り落し、ガウスガンを撃ちながら後退、離脱する。
 2人とも、最初から部位破壊が目的だったのだ。
 近距離のガウスガンを太刀で弾き、下降しつつ上体を逸らして掠めながらも下方向から狙ったシルヴィーナの水波をかわしてみせるが、さすがの凪もそれほど余裕があるようには見えなかった。
「美虎、下からには下に、上からは上にかわす癖があるのかもしれん」
「つまり、こういう事でありますね!」
 少し距離を詰めながらも潜行し、七十式多連装大型魚雷を凪に向けて発射する美虎。それと同時に、その下へ隠密性の高い三十六式大型魚雷を発射する。
「そんな攻撃など!」
 10発の大型魚雷を急下降でかわした凪――狙い通り、もう一発の魚雷には気づかずに、ものの見事に直撃した。計算外は直撃する寸前に魚雷を発射し、美虎もそれに気付けず、直撃した事であった。
 揺れる機体――がっくんがっくんと頭を揺らしながらも、美虎は可愛らしい顔で不敵に笑う。
「このくらい、軽微であります!」
(今なら!)
 凪に近い位置にいた久志が前に出る。近い敵から狙うのはもうわかっている。だから得意の近距離で、カウンターを狙うつもりだった。
(踏み込み速度では負けないが――でも、そこは読まれているだろうな。どうする‥‥)
 久志の動きに気付いた凪が、距離を詰め、左の太刀を振りかぶる。
 そんな凪に水波で迎撃――すると見せかけ、射撃の反動に合わせ翼面超伝導流体摩擦装置で急制動をかける――そういう算段だったが、水中で装置が働かず、止まりきれずに太刀で斬られてしまった。
「狭間さん!」
「まだ終わりじゃない!」
 それなりの深手にはなってしまったが、動けないほどではない久志がブースト全開で懐に踏み込むと、最速最短の動作で凪の左肩に蛍雪を突き立て、このチャンスを逃さまいともうふた振り。肩ごと腕を斬り落としてみせた。
「‥‥時代遅れで欠陥含みの試作兵器だが、威力だけは折り紙つきだ!」
 ダメージを受けた衝撃で自身も怪我を負いながら、叫ぶ――問題は、練力がもうほとんど残っていない事であった。
 残った右腕で太刀を振りかざす凪。
 しかしその太刀に撃てるだけのアサルトライフルを当て、振るわせないウェスト。
「我輩の存在を忘れているわけではあるまいね〜?」
 その間に零奈が久志を抱え、ガトリングとミサイルで脚だけを狙い撃ち、離脱。
 凪の足元で爆発。気泡が凪を覆い隠す。
「ここか!」
 自身の練力も考えると、ここが決め時と一気に詰め寄るクラークがハイヴリスで凪の右肩を狙う――しかしハイヴリスと凪の太刀が交差し、太刀を外に払われ腕を斬り落される。
 だがそれは囮――いや、自身が囮なのだ。
 伸びきった右腕の関節にレーザークロー深々と突き刺し、腕を絡めて右腕を封じ込めた。
 両腕も、鋏も、尻尾も使えない。絶対的なチャンスであった。
「シルヴィー!」
 父が囮になりそれが成功すると直感的に分かっていたシルヴィーナが、ブーストで距離を詰めていた。
「失せろ」
 バルカンで弾幕を張ってくるが、父が作ったチャンス。
 被弾など気にせず頭部へと食らいつき、牙を立てレーザークローを――コックピットに突き立てたのであった――。

 動きを止めたパピルサグからクラークとシルヴィーナは離れ、全員が警戒しながらも動きを見せるまで待機していた。 しかし、一向に動く気配を感じさせない。
「‥‥終わったのかな?」
「嘘だ、凪姉様!」
 リリメリのゴーレムが動きだし、そちらに警戒を注ぐ傭兵達――が。
「‥‥来るでないぞ、リリメリ」
 弱々しいが、凪の声がリリメリを制止する。凪が死んでいない事で、傭兵達に緊張が走った。
「警戒せずとも、もうよい――生きてはいるが‥‥生きているだけじゃ。もはや動けん‥‥いや、動かせないんです」
 凪の言葉は、そのままその通りであった。コックピットを貫かれ、五体満足のはずがない。
「リリメリよ、今すぐこの場を去れ――私の死ぬ様を、見せたくないんです」
 意識が混濁して、口調が統一されていない――それは、本当にもう終わった事を理解させるには十分である。
 ――長い沈黙。純白のゴーレムは何も言わず、どこかへと去っていくのであった。
「ああ、悔しいなぁ――負けちゃった‥‥でも楽しかったなぁ‥‥」
 独白を垂れ流す凪。聞いている琉の表情は意外にも穏やかなもので、ポケットから腕時計を取り出し握りしめていた。
「‥‥最後にお願いです――きっちり、私を殺してください‥‥けじめを――」
 最期のけじめ――それには敵であっても、傭兵達は理解を示していた。動ける者は皆、狙いを定める。
「最後に‥‥あの服、本当に似合ってましたよ」
 クラークが寂しそうに微笑み呟くと、ミサイルを発射――皆もそれに続いて魚雷やミサイルを撃ちこむ。
「ちょっとだけ、好きでしたよ。クラークさん――」
 多数の魚雷とミサイルが直撃、パピルサグは爆風に飲み込まれ散っていくのであった。
「さようなら、凪さん」
 沈みゆくパピルサグの破片に目を落し、コックピットの中でクラークは1人、そう呟いていた――。

 練力切れと怪我の酷いクラーク、久志、シルヴィーナを連れてウェストが琉に声もかけず、一足先に戻っていった。
 思うところがないわけでもないが、ウェストにとってはバグアを倒しただけの事――だが彼の心情だけは察して、かけるべき言葉がわからない彼はただ黙って帰るしかなかったのだ。
 美虎も練力切れ寸前ではあるが、琉の頼みで海上に浮上。美虎を牽引するつもりの零奈も、それに続き浮上していた。
「何をするつもりでありますか?」
「なに――ちょっと婚約破棄を、な」
 煙草の空箱を取出しその中に腕時計を詰め、海に向かって放り投げる。
 トプン。
 色々な思いの詰まったその箱は、大きな海に一瞬だけ小さな波紋を作り――それっきりである。
「さようならだ、凪。そして渚さん――」
 吹っ切れた表情の琉の横顔を、じっと見呆けていた零奈。
 見られている事に気付いた琉が笑い、声をかけた。
「さて、帰ろうか。屋久島に――」

●屋久島・夜
 今やロジーナしかない格納庫に、琉は1人、やってきた。零奈に呼び出されたのだ。
 大きい戸を開き、入口から暗闇に声をかける。
「いるのか、零奈」
「ん、やっほ師匠。来てくれてありがと」
 暗闇に佇む零奈。その顔には決意が現れていた。
 ふうと一息つき、それから切り出す。
「師匠の撃墜聞いた時にさ‥‥凄い心配だったんだよねぇ‥‥で、気がついた気持ちもある、色々とね」
 そっと自分のタトゥーに触れる。
「彼には悪いけど、別れは告げてきた」
 月夜に照らされた零奈はまっすぐに琉を見て、笑顔でその先を続けた。
「あたしは、男性として師匠が好きなんだよ」
 暗くて琉の表情はわからない――きっと嫌そうな顔をしているのだろうなと思いつつ、手を後ろに組んで大きく一歩横に。
「でも海ちゃん居るし、あたしの様な女が師匠と付き合うなんてね‥‥気持ちを言いたかっただけ、だよ♪」
 明るく言ったつもりだったが、その表情は寂しそうで今にも泣きだしそうであった。
 零奈は顔を俯かせ、脱兎の如く走り去ろうと琉の横を通り抜け――ガクンと足が止まる。琉がその手を、掴んでいた。
 あの時掴み損ねた手で、今度はがっちりと――。
「まったく、この馬鹿弟子は‥‥俺の答えも聞かずにどうするのだかな」
 苦笑する琉。零奈は掴まれた腕を振りほどこうともせず、かといってこちらに振り向く事もしない。
「‥‥凪も先生も死んでしまったから、ジンクスなのかと思って黙っていたんだがね――俺も君が大事なんだ。1人の女性として」
 引き寄せ後ろから抱きすくめる。琉の手にぽつりと、一滴。
 顔を見せず、また顔も見ずに――その背にそっと囁いた。
「好きだ、零奈」

『【海】凪との決別 終』