タイトル:【落日】復興の手助けマスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2012/10/02 19:48

●オープニング本文


●オーストラリア・タスマニア島北部上空
「ふーん‥‥なるほどねぇ」
 眼下に広がる広大な畑跡地を見わたし、大小さまざまなキメラを確認しミル・バーウェンが呟いた。
 インドでオーストラリアで留守を預かっていた部下のドライブから緊急連絡を受け、即オーストラリアに戻り、今はこうしてタスマニア島の上空にいる。

 事の発端はカルンバUPC本部の前であった。
 忙しいという理由で門前払いを食らわされ、それでも引き下がらなかった農民にライフルの銃尻で小突こうとしたところを、ドライブが助けたという。
 そしてドライブは飲みながらその農民の話を聞くと、こうだ。
 ――もとはタスマニアで広大な蕎麦畑を運営していたが、解放されたと聞いて喜び勇んで戻ってみると、キメラであふれかえっていた。南部の都市から軍に追い出されたキメラが、大集結していたのである。
 とてもではないが畑をおこす事が出来ないので、UPCに抗議も含め退治を依頼しに来たが‥‥強化人間やバグアもいない地域であれば解放と呼んでいい、今はそんな地域のキメラどころではないと言う事である。
 このあたりの件でミルの頬がピクピクと引きつっていた。
 今撒かなければ収穫できないといくら訴えても、軍は頑として動こうとせず、今は都市の開放が先決だと言いきったという。
 ここでミルが爆発した。
「いまさら廃墟を開放したところで生産性が向上するか、馬鹿たれ集団め! やるならまずは土地の拡大、復興の手助けをするのが今の重要課題だと言う事が何でわからんのだ! 農業あってこそ国だというのに!」
 そんなわけで同情したドライブの連絡を受け、こうして今視察しているのであった。

「あそこ一帯の広さは?」
「200ha、1km×2kmくらいですな」
 少し硬い座席に座り直し、腕と足を組むミル。
「この前のインドも広いと思ったが、さらに広いのか‥‥まあ過去のデーターから言えば、1戸あたりの農地面積は日本の1900倍はあるんだったか?」
「確かそうですな。作地面積で言えばもっと減りますが――ここは15の農家で共同運営していたようです」
「それだけの農家でこの広さか‥‥」
 農機の輸出もいけるかもと思いつつ、少し計算していたミルにドライブが肩をすくめて声をかけた。
「それにしても、オーストラリアなのに蕎麦なんですねぇ」
「おや、知らんのか? 日本とは季節が正反対だから、日本の夏に旬蕎麦が出荷できるよう作っていたんだよ」
「ほぉ‥‥で、お嬢。どうしますか?」
「もちろん退治してもらうさ。傭兵にだが――単純な同情からでもなく、出荷量からすれば貿易するだけの価値もあるしね。あと個人的に気になるのは、ホワイトワラビー、タスマニアンデビル、ハリモグラ、フェアリーペンギン、ウォンバットなどの生息も気にかかるしね」
(そして何より、今彼らが仮に住んでいる土地を買い上げたいしな。農家ならかなり広大な土地だろうし)
 ポーチから棒飴を取出し、口にくわえる。
 だが、ドライブの聞きたいのはそうではなかったようだ。
「UPCの方ですよ。抗議でもしますか?」
 ガキンと飴をかみ砕く。それが怒りを表している事を知っているドライブが、びくっと肩をすくめた。
「‥‥無駄だろうよ。彼らは目先の成果しか見えんのだろう。先を見据える目を持ってもらいたいが、いまさらだな。
 そっちに関してはいつか痛い目にあわせるプランを考えるとして、今はこっちが優先事項だ」
 ボリボリと噛み砕き飲み込むと、もう1つ取り出して口に含む。
 立ち上がって、再びタスマニアの地を見下ろすミル。
「これだけ広いとKVで砲弾攻撃させたいが、これから使う畑に穴を作るわけにもいかんし、生身だろうな。
 南から現地入りしてもらって、移動手段に乗り物はあった方が良さそうだね。それとさっき言った希少種がまだ生息しているかの調査も少ししてもらいつつ、ここら一帯のキメラを駆除してもらうとしようか――キメラの生息数や情報は任せたぞ、ドライブ」
「私ですか!」
 運転手がメインの仕事であり、この手の情報収集を得意としないドライブが悲鳴に似た声を上げると、ミルが意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「君が持ってきた事案だ。君が動くのは当然じゃないか――そういうわけでだ、あとは任せた」
 座席に座るとゲーム機を取出し、もはや話は終わりと言わんばかりに没頭している。
 すべてを任されたドライブは、悲愴な顔をして、キメラの数を確認するのであった――。

●参加者一覧

時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
クレミア・ストレイカー(gb7450
27歳・♀・JG
美紅・ラング(gb9880
13歳・♀・JG
クロイツ・フリューゲ(gc7343
20歳・♂・GP
ジョージ・ジェイコブズ(gc8553
33歳・♂・CA
高縄 彩(gc9017
18歳・♀・HA

●リプレイ本文

●タスマニア島
「農家に動物の心配‥‥だけで終わらないのが流石ミルさんですよね〜」
 いつも砕けたユルイ感じの敬語で話す御守 剣清(gb6210)は、ミル・バーウェン(gz0475)を称賛する。
「オージービーフを食べられると聞いて!」
 色々勘違いをしている気配のジョージ・ジェイコブズ(gc8553)が、手をあげて会話に参加する。
「‥‥まあ、後でね」
「オーストラリアでお蕎麦かー、知ってる知ってる、食べ物マンガで読んだ事あるー。お蕎麦好きなんだよねー」
 高縄 彩(gc9017)がいつものように、ミルに背後から抱きついてくる。
「そういえばー、動物の生態とか分かればいいなー」
「おお、そうです。ペンギンて、氷がないと死んじゃう生き物じゃないんですか?」
「陸地で生きるペンギンもいるのだよ。ここのフェアリーペンギンは最小のペンギンでね、原始に近いペンギンと呼ばれているのだよ。民家の軒下に住んだりと、まあなかなか逞しい奴さ」
 軒下から顔をのぞかせるペンギンの図に、少し悶えているジョージ。野生動物の資料も傭兵各位に回す。
「間違って動物の方やらないように注意ですね」
「動物の生息調査はあたしとエドに任せて――。
 ていうか、それくらいしかできないのよね。足引っ張るのはゴメンだから‥‥」
 顔色の悪いクレミア・ストレイカー(gb7450)。それ故に腐れ縁のエドワード・マイヤーズ(gc5162)に、ジーザリオの運転を頼んだのだ。
「んー、それならカメラでの撮影も頼むんだよー」
 彩が用意していたカメラセットを手渡すと、コクコクと頷くクレミア。
「でもキメラくらい軽く片付けて、余った時間でゆっくり動物でも探したい所」
 口元に手を当てて時枝・悠(ga8810)が珍しい言葉を吐き出す。
「ほう、君は動物が好きだったのかね。そのための参加だったりとか?」
「‥‥息抜き。いや、割とマジで。本星とかでドンパチするのに比べりゃ楽な分類だし」
 それを言いのけるだけの実力も彼女にはあるため、ミルは苦笑するしかなかった。
「うむ。不謹慎かもしれないが、いまさら復興のためと言えどキメラ狩りってだけじゃ、面白味も薄いのである」
 美紅・ラング(gb9880)がバッと手を掲げる。
「第1回、チキチキキメラ狩りトーナメント開催なのである」
 興味を惹かれた傭兵達は、美紅に集まる。悠は面倒くさそうと言い、ミルの用意したバギーのキャリーに腰掛け、腕を組んで目を閉じていた。
 それともう1人。クロイツ・フリューゲ(gc7343)は黙ったまま、ずっと遠巻きに観察しているだけである。
「犬1点山羊2点カンガルー3点くらいにして、合計点数を競いあう競技にするのである」
 不謹慎という意見が出る――そう思っていた美紅だが、概ね好意的な反応であった。
「いいですねーそれ。俺、FPS大好きなんですよ」
 チャキッと拳銃を構えるジョージ。
「そうと決まれば、少しバギーの試運転してきますかね! 普段は自転車くらいしか動かした事ないんだぜ!」
「俺も別に反対はしませんね‥‥そいや、罰ゲームとかご褒美とか決めます?」
 剣清がそんな提案を美紅に申し出ると、そこにミルが諸手をあげて突撃する。
「ご褒美は任せたまえ! 特上の飯を奢るよ!」
「あー‥‥反対はしないけど、あたしはパスね」
「んー私もパスなんだよー。1人だとちゃんと倒せるかも自信ないしー」
 青い顔のクレミアと日焼け止めを塗りながら彩が辞退すると、ふいと彩の言葉に悠が顔をあげる。
「自信ないなら、一緒に動く? 運転してもらって、私が戦闘に注力する感じだけど」
「おおー、それはありがたいんだよー。車の免許ならとってるから!」
 ちょっと自慢気に胸をそらす。
「お、お。お‥‥。お〜動いた動いた――おほ、おほほほ! いやー乗り回すだけで楽しいですなあ、これ!」
 試運転で楽しんでいるジョージを見て、少しだけ目を輝かせる彩。
「安全運転を心掛けるけどー、大丈夫そうならちょっとだけ飛ばしてみたいかなー。ほら、こんな所で運転する事なんてほぼないだろうしー」
「それはお好きに。ルートが他の人と被らなけりゃ大丈夫そうか」
「では参加者は美紅、ジョージ、御守であるな」
 美紅もバギーの乗り心地を確かめようとする――と、ある事に気付いた。
 シートに座ると、ペダルに足が届かない。苦笑いを浮かべる美紅に、一筋の汗が滴り落ちる。
「――誰か運転してほしいのである」

「少しは会話に混じったらどうかね、クロイツ」
 依頼で一緒になるのは初めてだが、顔の広いミルは彼の事を少し知っていた。
「また‥‥人を信じてみてよいものでしょうか」
 常時仮面のように薄く笑みを浮かべているクロイツがそんな事を呟く。
「私が信頼する者達だ。私が保証する」
「‥‥ミルさんの信じる人達なら、信じてみてもいいのかもしれません――美紅さん、私が運転しましょう」
 小さく手をあげ自ら名乗り出る、ゆっくりと人の輪に向かい――クルリと振り返る。
「ミルさん最前線に出てくるような危ないマネはしないでくださいね、か弱いのですから。でも敵の位置は教えて下さると助かります」
「むしろ解説実況を頼むのである。そして――」
 美紅がミルを少し離れた所に連れて行くと、ぼしょぼしょとなにやら話したかと思えば、がっちりと握手を交わす。
「よーし! 色々決まったので諸君、がんばりたまえ!」

「あまりこちらへ近づかないでくださいね」
 バギーに接近しようとする犬型を、ブラッディーローズで牽制するクロイツ。
 足が止まった所を、片足をぶらぶらさせたままキャリーに座り、もう片方の足の膝を立て、そこに肘を固定してスナイパーライフルを構えた美紅が発砲。的確に脳天を貫く。ボルトを引き、排出させて次弾を装填。
 そして銃を固定したまま足ごと向かせ、淡々と犬を狙い続ける美紅。キメラ如きに不要と言わんばかりに、今回は貫通弾を使わずに通常弾だけで排除していた。
 荷台が思ったより広くなかったためそんなポーズでの射撃だが、案外しっかり安定していた。
 勝つ事を念頭に淡々としているようにみえる美紅であったが『視聴者』の溜飲が下がるようないい絵になるよう、工夫はしている。
「‥‥と、少しだけ空けます」
「援護は必要であるか?」
「いえ、ご遠慮なくどうぞ。自分の身は守れますから、こちらは気にせずに」
 バギーを止めることなく、クロイツは飛び降り一瞬にしてカンガルー型に詰め寄ると口にブラッディーローズを押しこみ、トリガーを引く。
 カンガルーの頭が弾け飛び、血と肉をまき散らす――その様を確認するよりも早く、惰性で走っているバギーに追いつき、ヒラリと飛び乗って運転を続けた。
「血薔薇というよりミンチですね。キメラでも土地の栄養になるんですかね」
「知らんのである。だが今のはきっといい絵が撮れたのである」

 片手で運転しながら拳銃の引き金を引く、ジョージ。試し撃ちではそれなりに上手くいったので、バギーを止めることなく移動しながら撃ち続ける。
「動きを先読みして撃つ。その応用かな――いや、実に楽しいですな!」
 自身が上に下にと起伏によって照準が合わせにくいが、ゲーム感覚で当てていく。いつもよりも少し運がいいのも、当たる理由かもしれない。
 1匹に1発、ではなくしっかりと2発当て、足りないと感じたら時には3発撃ちこみ、隙を見てはリロードしていく。
 そんなジョージの前に山羊角ライオン型が姿を現し、拳銃をホルスターにしまい両手でしっかりとシエルクラインを構え、発砲。20発の弾丸が、山羊角を肉塊に変える。
 反動で少し危なかったが、すぐにハンドルを握り直した彼は意気高揚としていた。
「うーん! やっぱり銃はフルオートに限る」
 だが高揚しすぎて、起伏で車体が斜めに跳ね上がり――そのまま横へとこける。
「どんがらがっしゃーん! ‥‥あら?」
 余裕を持って気楽に笑っていたが、複数のキメラが彼を取り囲んでいたのであった。

 起伏を体重移動とアクセルワークで安定させながらも、S‐01で犬の脚を撃ちぬき、ほんの少しの距離であれば刀を振りぬいて衝撃波でなぎ倒す剣清。
 競争に参加してはいるものの、彼自身あまり数を倒す事を重要視しておらず、倒しやすいようにと気を配っていた。
 そしてジョージが転倒し囲まれているのを真っ先に発見した彼は、バイクを加速させ急行する。
 起伏に乗り上げ、空高く舞い上がり――正面からカンガルーが跳躍して進路を塞ぐ。
 バイクの勢いに乗せ、勢い任せの一刀両断。
「こういうのは、刀にゃあんま良くないんだが‥‥四の五も言えませんからね」
 全身をほのかに光らせた剣清がバイクを蹴るように乗り捨てると、一瞬にしてジョージの元へたどり着き、瞬く間にキメラを排除してみせる。
「大丈夫ですか?」
「うーん、ありがとうだ!」
 助け起こすとジョージは陽気に笑って礼を言い、再びバギーに乗って行ってしまった。
 剣清はというと乱暴な扱いをしてしまった愛車を起こして、その頑丈さに感謝しつつ再び走り出すのであった。

 キメラの群れを発見し、止まるために減速を始めた彩。
「いいよ、止まらなくて。面倒だから」
 ゴーグルを身に着けている悠が、これだけの悪路で揺れるにもかかわらずキャリーに立ったまま、オルタナティブMで無造作に発砲。射程に入った端から適当に撃っているのだが、実に的確に、かつ確実に仕留めていた。
 ただ、当てやすい距離だと貫通した弾が地面をえぐり取ってしまう。
「ふむ‥‥強すぎるか」
 指輪を全て外す悠。エミタの力がやや弱まり、何とか貫通せずに止まる。
「本当に穴が開いたんだよー」
「ま、さっきのは許容範囲って事で‥‥」
 苦笑して誤魔化す――全然誤魔化しきれない事だが。
 前を重点的に排除していた彼女達の横を、並走する山羊角。体長の割に意外と足が速く、バギーの後ろにもぴったりとくっついてきていた。やや近すぎる。
「止まらず、走ってて。多分追いつける」
 ヒョイッとキャリーから飛び降りる悠。その瞬間を待っていたかのように、山羊角達は一斉に悠に跳びかかる。
 慣性で地面を滑りながらも、皮肉なのかカプリコーンで3匹とも高く蹴り上げ、オルタナティブを天に向けて放つ。
 そして踵を返して全速力でバギーを追いかけ、何事もなかったかのように飛び乗る。
 運転を彩にまかせっきりのため、彼女は存分にその力を振るい、その後もカンガルーや犬、山羊角をいくらか退治したところで、ポツリと悠が洩らす。
「あとどれくらいいるんだろうか」
「んー、ミルさんに聞いてみんだよー」

「さすがは歴戦の傭兵、やる事なす事無茶苦茶である」
「‥‥お嬢、さっきからのその解説、意味あるんですかな?」
 遠巻きにカメラで撮影しているドライブが、録音機に向かって解説しているミルにツッコミをいれていた。
「うむ。ちょっとおいしい提案が‥‥おや、通信が――おー、ふれんど。敵の残り? 退治したのは犬が46匹、山羊角8匹、カンガルー5匹のはずだから、合計でも6匹しかいないはず‥‥?」
 返答しながらも眉根を寄せて訝しんだミル。すでに5匹退治したはずのカンガルーがまだ3匹もいる。
「‥‥ドライブ、数え間違えたね――すまない、こちらの数え間違いのようだ。まだカンガルー3、山羊角2、犬6匹残っている――と、どうやらそいつらの狙いはクレミアのようなので、全員クレミアの元に向かいたまえ」

「あれかしら?」
 大きな穴からチラチラ顔を見せる動物を、双眼鏡で確認しているクレミア。ジーザリオの助手席で、周辺の野生動物を確認していた。
「どう思‥‥あー、なんかキメラに狙われてるっぽいわねぇ」
 無線機から流れてきたミルの言葉を裏付けるように、キメラの群れがこちらにめがけてきていた。
「ゴメン、みんな。ホントに狙われてるっぽいんで、援軍よろしく」
 それに真っ先に駆け付けたのが、剣清だった。バイクではなく、脚を輝かせた彼が自らの足でジーザリオに並ぶ。
「どうも、クレミアさん――すぐ終わらせますんで」
 3匹のカンガルー型に向かっていく剣清――空中に跳ばせる前に間を詰めて刀での接近戦を挑んでいた。
 少し遅れてきたジョージが犬を追い掛け回し、バギーを止めた美紅がそれを次々に撃ちぬいていく。
 そして残った山羊角は悠による一撃と、クロイツの一撃で無事、全てを駆除するのであった。
「今のはボーナスチャンスですか?」
 数が多かった事への皮肉だろう。クロイツがそんな事を漏らす。
「‥‥後で罰としてドライブにたかろう」
「あははー、ご飯くらいで勘弁してあげるんだよー」
「ビーフですね!」
 ドライブのチョンボについて相談している3人の横で、苦笑いを浮かべている剣清。
 美紅はなにやら無線でミルとロイヤリティがどうとかで、もめていた。
「おや、戦いの音に脅えて飛び出したのでしょうか――ミルさん、固有種がいました」
 チョロチョロとウォンバットが穴へと逃げ帰っていくのを目撃したクロイツが、無線で報告する。
「海岸付近にも、ペンギン確認――あとは野生動物捜索かしらね」
 残った時間でのんびり、観光気分で動物達を捜すのであった――。

「お疲れ様です。今日の所は一杯飲んで、また明日からの無茶振りに備えましょ」
 剣清とドライブがカウンター席でグラスを傾ける――剣清が飲みに誘ったのだ。
「ほーう‥‥私が無茶振りしていると」
 いつの間にかミルが後ろに立っていて、ぶっと剣清が吹き出す。
「総合優勝の美紅チームに飯を奢りつつ、皆と親睦をと思っていい店に来てみれば、ちょうどいい。ドライブ、君が彼女達に奢りたまえ。数え間違えたチョンボだ」
 くいっくいと、美紅、悠、彩、クレミア、クロイツの座るテーブルを指さすミル。
 ジョージは別の席でひたすら、肉を食していた。
 思いの他、彼は笑顔でテーブルへと向かう。基本的に女好きなのだから、展開としては美味しいのだ――1人男なのに気付いているかはわからないが。
 剣清の横にミルが座る。
「ふふーん、農家に何やらキメラの残骸について相談していたそうだね。食ってみるかという提案はさすがに引いたようだが、君に感謝していたよ」
「普通の事ですよ‥‥ところで軍についてはどうするんですか?」
「ま、色々とね――視野が広がればいいのだが‥‥」
「視野の広すぎる軍隊なんて、それはそれで逆に機能しなくなるもので。目先の餌の他に手を出す余裕が無いから、傭兵が成り立つ訳だし。あんな様だからこそ、商売の入り込む余地がある。
 ‥‥何の話だって? 報酬弾んでね、とかそういうアレだ。期待してるよ?」
 ドライブのナンパに近いトークがうざかったのか、悠がミルの隣に座って真面目な顔をして言いきった。
 苦笑いを浮かべるミル――だが、今回のトーナメントをちょっと編集してテレビ局に売って小銭を稼いだ彼女は、任せたまえと笑って承諾するのであった――。

『【落日】復興の手助け 終』