タイトル:教官’sの挑戦!マスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/27 12:14

●オープニング本文


「いよう! 俺だ俺だ、教官Aだ! 今日はヒヨッコなお前たちに朗報がある。
 それはだな‥‥ウサ晴らしに、俺たちがお前らを鍛えてやる! どうだ、嬉しいだろ! 
 場所は近くの山林。紅葉に見とれて、弾に当たるなよ! そこでフラッグファイトをやる。俺たち教官ABCDEFが守るフラッグを、お前たちの誰か一人でも取ったら勝ちだ。
 あと言っておくが、場所は当日まで秘密にしておく。あらかじめ、トラップを仕掛けかねんからな!
 もちろん、制限時間などはあるから持久戦に持ち込もうなどという発想はやめておけ! つまらんしな!
 あと、安心するがいい。武器は死なないやつを用意してやる! 銃系統は自由だが、ペイント弾を使用する! 斬られたり撃たれたりしたら、痛いし!
 防具は自由だが、覚醒は禁止だから覚えておけ!
 ペイント弾なんぞ食らっても死にはしないが、食らったものは10分、ペナルティーとして全ての行動禁止だ! 10分の間にお前ら全員動けなくなったら、お前らの負けだ!
 もちろん、我々にも同じルールが適用されるから、10分で6人全員倒しても、お前らの勝ちだ! 手加減はしてやるつもりだがまあ、ありえんだろうがな!
 お前らのために多少、ヒントをくれてやる! 我々の構成は、前衛3人後衛2人指揮1人のバランス型だ! 心して来い!
 熱き挑戦、待ってるぜ! だけど、強いヤツがくるのはカンベンな! 俺ら、泣いちまうぜ!」

 モニターの依頼内容を読み終えた傭兵は、ポツリと漏らした。
「‥‥なんなんだ、これ」

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
兄・トリニティ(gc0520
24歳・♂・DF
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
三日科 優子(gc4996
17歳・♀・HG
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA

●リプレイ本文

「今日は、俺様がお前らをしっかり鍛えてやるから、覚悟しておけよ!」
 意気込んでいるフェイスマスクにAと書かれた彼の前に、すっとクールそうな黒い正装姿の男が一人が前に出る。UNKNOWN(ga4276)であった。
「このたびは、我ら駆け出しの傭兵のために催しを開いていただいて、感謝いたします。今日は精一杯、偉大なる先輩方に教えを乞う所存であります」
 いけしゃあしゃあと一礼すると、教官Aは気分よさそうにふんぞり返り「おう、ウサ晴らしついでに存分に教えてやるぞ!」と高らかに笑う。
(どっちが教える立場やろね)
 三日科 優子(gc4996)が顔色一つ変えずに、心の中でツッコミを入れた。
「‥‥ふん、教官風情が、歴戦の兵でかつ未来の勇者である俺様と戦いたいだとぉ? 笑止!」
 ドヤ顔のジリオン・L・C(gc1321)が教官に啖呵をきるが、教官Aは笑うだけで相手にしていない。
「くくっ、まさに大統領でも殴ってみせそうな勢いだな‥‥面白い]
 その態度にルーガ・バルハザード(gc8043)は腕組みをしたまま
「『ウサ晴らし』とはっきり言われてしまうと少し引っかかるものがあるが‥‥全力を尽くしてやろうじゃないか」
 と、小声でつぶやくのだった。
「さて、親切な俺様がコレを支給しておく!」
 教官Bがのろのろと箱を傭兵達の前で親切に開封して見せると、箱の中には6個の無線機に使い捨ての照明銃がみっちりと入っていた。
「お前らがやられたら、コレを一発あげろ! 俺たちは同時に二発あげる! これでやられたのが誰の目にもわかると言う寸法だ! 俺様太っ腹だから、支給してやる!」
「お前が用意しろって依頼に書き忘れたから、俺達が買いあさる事になったんだろうがったく」
 教官Bのぼやきに、教官Aの高笑いが止まる。
「太っ腹な教官センセー。俺達が勝ったら、焼肉奢ってくださ〜い」
 手を挙げてそんな要求を出したのは世史元 兄(gc0520)。カチンときたのか、教官Aは自分の胸をドンと叩いて
「焼肉でも、なんでも奢ってやる! 勝てたらなぁ! それと無線も情けだ! 用意しておけと言わなかった俺が悪かったしな!」
「そこは認めるんですね‥‥まあ、用意し忘れたからありがたいんですが‥‥」
 柔和ながらもクールな終夜・無月(ga3084)が、無線機を取り出してつぶやいていた。
「さて、飯を食い忘れて腹も減ってるし、とっとと始めて終わらせる! 俺達の準備ができ次第照明を上げるから、それからスタートだ! さらば!」
 高らかに宣言して笑いながら山に入っていく教官Aのあとを、重い足取りの教官達が追って山へと消えていった。
 しばらくすると照明が上がり、無月と優子が足早に突入し、UNKNOWN、ジリオン、ルーガがゆったりとした足取りで道を歩き始める。
 1人残った兄は、ポケットから取り出した眼帯の十字架を弄りながら
「さってと弱いもの虐めがしたいヘタレ教官でも叩きに行きますか♪」
 と、眼帯を着けてからバイクを走らせるのだった――。

●5分経過
 周囲への警戒を怠らず身を低くして、ささいな痕跡も見逃さないように神経を尖らせ、木々の間を縫うように足早に移動していた無月。
(まずは旗の探索ですね‥‥)
 ふっと、彼が足を止めた。身を沈ませ、気づきにくい足跡や草木による道しるべを丁寧に調べ始める‥‥と、突然、彼は側転して木の陰に隠れた。
 ビシシッ!
 その直後、木にはペイント弾が打ち込まれる。即座にケルベロスで応戦し、打ち込むと同時に木々をたくみに盾としながら突撃!
 だが彼の前に落下してきた教官Cが、ソードで斬りかかってくる。しかしCの存在も気づいていた無月は、冷静に銃底でソードを叩いて横に流すと、Cの腹にヒザを叩き込む。
 くの字に曲がったCだったが、すぐに左手でハンドガンを構え発砲。しかし彼の高速移動についていけず、草木をペイントしていくばかりだった。
 少し距離が開いた事で教官Dが狙撃を開始するが、まるっきり当たる気配がしない。だがその間にCは腹を押さえながら、全力でその場を逃げていく。
 無月は逃げるCは気にも留めず、Dとの距離を一気に縮める。パニックに陥ったDは、闇雲に乱射するうちに彼の姿を見失っていた。姿を探すDの後頭部にコツンと、銃口が当てられた。
「伊達に一年間努力に努力を重ね‥‥エミタを上書きし続け肉体の強化を行って来た訳ではありません‥‥」

●10分経過
 2つの照明が打ち上げられる。
「ハァーハッハッハ、さすがは俺様の勇者パーティー! もう1人倒したのか!」
 高笑いを上げ、勇者らしく堂々と道を歩く。
「早すぎて、あまり意味は無いがね。おそらくは不意の戦闘だったのだろう」
 ジリオンと違い、道の脇の林を歩くUNKNOWN。道ではない道を歩く彼だが、その姿はいつもの都会の夜を歩くが如く自然体で、それでいて緩急をつけつつも木々に身を隠すように歩いていた。
「だが、1人動けなくしたというのは、こちらとしてもやりやすい」
 ルーガもUNKNOWNと同じように、道の脇を木の陰から木の陰へと移動していた。
「ところで、2人とも。もう少し俺様の側で一緒に歩いてくれないかね? これでは俺様が怖いではないか」
 盾を2つ持ったまま、キョロキョロと見回すジリオンに、2人は何も言わず立ち止まって木陰に身を潜めた。それと同時にジリオンの前に教官AとBが道の脇から姿を現した。
「とーぅ! 未来の勇者である俺様と闘いたいというのは構わんが‥‥ふふ。腕の一つや二つ‥‥覚悟してもらうぞ!」
 ドヤ顔のジリオンに呆気に取られる、2人の教官。そこに、腹を押さえたCもやってくる。
「むむむ、まとめてかかってくるがいい! 刮目して見よ! 我が覚醒を! ハァァァァァッ!」
「いや、覚醒禁止ってルールに書いてあったろ」
 Aの言葉に、ピタリと止まり、冷や汗を垂らしながら首をかしげた。
「‥‥なんだと?」
 ――しばしの沈黙。
「う、お、お、お、おおおッ!」
 雄たけびを上げ、ジリアンはきびすを返し、ダッシュで道を引き返していく。そして脱兎を3人の教官は追っていくのだった。
 4人が去っていったあと、木陰のUNKNOWNはタバコに火をつけ、煙を吐き出す。
「私は彼の後を追うとするよ。少々教官殿にお灸をすえたいのでね」
「では私は旗の探索を続けよう。依頼文から、心当たりがあるのでな」
 そこで二人は分かれた。

●15分経過
「おおう、すげぇすげぇ、楽しいなぁ♪」
 オフロードバイクを駆使し、道なき道を進む兄。オフロードを楽しむ兄を、草の陰から双眼鏡で優子は眺めていた。
「なにしてへんかなぁ。まあ、誘いにはなるっちゃなるからええけど。ま、ウチはウチの仕事をするまでや」
 じりじりと教官のしかけたであろうショボイトラップを解除しつつ、木々や草葉の陰に姿を隠して移動し、山林をマッピングしていると。
「お、お、お、お、お!」
 バイクの騒音などかき消す大音量で叫びながら、全力疾走のジリオンが目の前を通過していく。その後ろを、三人の教官、そして距離を置いて兄が追いかけていく。
「ガチやろうけど囮、ご苦労様ですわ」
 合掌し、優子は自分の仕事に戻ることにした。
 
●30分経過
「む‥‥やはり崖を背にして構えていたか」
 ルーガの前に開けた場所と、崖の手前でぽつんと立っている旗と教官F。
「だがまあ、あれくらいなら大丈夫だろう。先手必勝でソニックブームを使えば‥‥!」
 ふとルールを思い出して思いだす。
「そういえば、禁止だったな‥‥しかたない、まずは発見を知らせ――」
 バチュン!
 木にペイント弾が直撃する。
「狙撃か‥‥だが初撃を外すとはな。致命的だぞ!」
 バッと飛び出し、ペイント弾をガードで防ぎつつ、一気に距離を詰め烈火で教官Eを一撃で叩き伏せる! そして彼のライフルを拾い、ペイント弾を直撃させる。
「よし、1人縫い止めた」
 無線で連絡すると同時に、パチュンと背中に衝撃を感じた。ペイント弾である。驚いて振り返ったルーガの視界にはちらりと、教官Dの姿が見えた。
「ははは、すまんな。殺された。だが、旗を発見した。いまから三発照明があがるから、そこだ」
 無線を切ると、彼女は教官Eに声をかけた。
「すまないが、君。照明を3つあげてくれないかね?」

「でかしたで、ルーガ。後は任せてぇな」
 3つの照明の比較的近くにいた優子。無線を切り幹に傷をつける。罠を仕掛けた印だ。これ見よがしにぶら下がってるロープはただのデコイである。
 周囲に注意しながら、双眼鏡を取り出して旗の位置を確認する。
 木々のせいで見にくいが、位置を把握。そして教官D、E、Fしかいない事を十分確認する。
「これで姿を見られてへんのは、ウチとアンノウンだけやな。兄はさっき見られてる可能性が高いし」
 ポン! とラムネを開けて、一口。ほぼ完成している周辺地図に、教官の位置と、旗の位置をチェックする。
「教官、ウチが姿を見せんのは不思議やろ? 警戒せんとあかんやろ? ウチは今、姿を見せないって仕事をしとんねん」
 ラムネを飲み干して、楽しそうに笑う優子だった。

 ジリオンは窮地に立たされていた。ロープが見えたと思った瞬間おもいっきり転び、何回転かしてから止まった頃には、すでに三人の教官に囲まれていたのだ。周囲にモチロン、味方の陰はない。
「‥‥なんだと、誰も俺様についてきていないだと! 何をしていrぐわー!」
 彼が言い終わる前に、教官三人はさんざんボッコボコにする。そのうち1人が無線で連絡を取ると、ジリオンにペイントして他の教官に耳打ちし、三人とも攻撃をやめてきびすを返した。
「おのれ卑怯ものどもがー! 俺様が怖いのか! かかってこい! 俺様の未来の勇者たる隠された力を見せれば、貴様らなぞ一瞬でけりぐぅわ!」
 顔面にペイント弾の直撃を受け、ジリオンは気絶してしまう。
 気絶した彼の代わりに教官Bが照明をひとつ打ち上げ、散開して林の中へと消えていった。

●35分経過
「タイマン、楽しませてくれよ?」
 待ち伏せし、壱式を抜き放ち構えた兄に、Cが斬りかかってきた。その初撃をギリギリでかわし、次々と繰り出される攻撃も彼にはまるでカスリもしなかった。
(やはり低ランクだな。コイツじゃ俺には勝てないね)
「アンタも修羅場を何度も潜り抜けた兵なのでしょうが、それは俺も一緒なんで」
 一閃――ただの一撃で、Cは膝をつく。
「はっはっは♪ 魔王の称号は伊達じゃーないだろ♪」
 ニヤリと笑うと、Cが再び立ち上がるまで彼は待っているのであった。

●40分経過
「うわーあぶない、たすけてー」
 余裕でかわしつつも、緊張感ない言葉でUNKNOWNは教官Aをからかっていた。
 すでに5分以上は一方的に攻めさせているため、Aはフラフラである――とAが蹴り上げた土がたまたま彼のズボンの裾を汚した。その瞬間
 プシップシップシップシップシッ!
 サプレッサー付のバラキエルを、的確にAの顔面に全弾叩き込む。すぐさまリロードし、再び全弾叩き込み、Aが転げまわろうが何をしようが的確に頭部のみを狙い続けた。
 動かなくなったところで蔓で木に縛り、煙草に火をつける。
「――最近は死体にも取りつくらしい」
 冷たい目で酒瓶を取り出し中身(実は水だが)を振りかけ、煙草をかざす。
 あたりには教官Aの悲鳴がこだまするだけであった‥‥。

●45分経過
「とーぅ! 俺様復活! うおお! 覚えてろよ! 腐れ教官どもぉぉ!」
 復活したジリオンは林へ猛ダッシュする――が、すぐに足を取られ、豪快に転んでは復活、それの繰り返しであった‥‥。

 合流していたルーガと優子は、残り15分になった事を確認すると顔をあわせてうなずいた。
「では任せたぞ、優子」
「任せといてや」
 まず優子が姿を現し、Bの足元に打ち込む。優子に気づいたBは突撃してくるが、すぐさま優子は林に身を潜める。
 すると、ザッとルーガが一直線に旗めがけて突進する!
 間をおいて優子も飛び出すが、ルーガがペイント弾の直撃を受けたの見て、飛び出した優子はつんのめるようにして止まり、慌ててきびすを返して林へと逃げ込んだ。
 その後を数で絶対的有利を確信したB、D、Eは何の躊躇もなく追いかける。
 優子は自分のトラップに気をつけ逃げ惑うと、まずBが、次にDが派手に転ぶ。そこをすかさずクルメタルで撃ち、ペイント。
 残されたEはさすがにトラップを回避しつつ、優子を追いかけてくる。
 トラップが効かないと判断した優子は距離をとり、盾と上着を木に引っ掛け、少し離れたところ茂みに隠れた。
 教官が上着の近くまで来たら、わざと足元の枝を折りEを惑わせる。
 上着の足元に置いておいたラムネの空き瓶。それに結んであった紐を引っ張り、音を立てながら木々の間を移動させる。さらに戸惑うE。
(さて、どっちが当たりやろうね?)
 空き瓶を追いかけようとしたE。
(正解は全部外れや)
 その背中めがけて、クルメタルを撃つのだった――。

●50分経過
「オッケー、勝利目前なわけね」
 兄の目の前には、肩で息をしているフラフラのCがまだ立っていた。
「さってと楽しい授業も終わりですねー? きり〜〜つ」
 壱式をふりかぶり「礼!」と同時に重い一撃をCに叩きつけ、昏倒させる。
「お疲れ様でした〜〜♪」
 もはや聞こえていないCだが、それでも兄は近づいて耳打ちする。
「さって教官♪ 負けたんで約束通り焼肉奢れ」

 旗の近くでFが下手な射撃で無駄な抵抗をするが、盾を両手に構えている無月は余裕でそれを防ぎつつ、距離を詰めてFのハンドガンを蹴り飛ばした。
 無月がケルベロスを取り出し、撃つななど色々喚いているFの額に銃口を当てる。
「新人苛め様とした罰です…」
 冷たく言い放ち、発砲。そして、ルーガが旗を掲げる。傭兵達の完全勝利の瞬間であった――。

「ふう‥‥」
 わざとではなかった背中のペイント弾をチラット見て、溜息。
「精進あるのみ、だな」
 短い模擬線とはいえ様々な自分の弱点を知らされ、そうつぶやいたルーガ。

「そうか、我々の完全勝利か! ふはは! 俺様の勇者パーティー! の布石に見事に釣られてしまったようだな!ハアーッハッハ!俺様の無敵勇者街道は、まだまだ続く……また立ちはだかるがよいぞ! と、教官殿に伝えておいてくれ!」
 誰もいないところでポージングを決める、ジリオン。

「教官全滅に旗も取った? そうか‥‥我々の完全勝利というわけだね」
 無線で連絡を受けたUNKNOWNは、トラウマを抱え、怯えたままのAの蔓を解いて手を差し伸べる。
「さあ、戦いは終了した。治療してあげるから、山を降りようか」
 優しい言葉にあの傲慢だった教官Aは見る影もなく号泣し、UNKNOWNにすがりつくのであった――。

『教官’sの挑戦!  終』