タイトル:リズっち、だいえっとマスター:楠原 日野

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/09 06:28

●オープニング本文


●オペレータールーム・休憩時間
「メイさん、3時の休憩ですよー」
「あ、ああ、そうね‥‥」
 コーヒーを受け取ったメイ・ニールセン(gz0477)だが、普段の彼女らしくない苦笑いを浮かべている。
 イスをギッシギシと鳴らし、隣の席のリズ=マッケネン(gz0466)は嬉々としてドーナツの箱を開ける。
「やはり甘いものはいいですよね。バレンタインでもチョコ貰っちゃって、甘いの取りすぎかなーとか思うんですけど、3時のドーナツは欠かせませんよね」
 そういうと、ドーナツをひとかじり。
 頬が緩み、顔がほころぶ。
「ん〜毎日食べてもおいし〜! 牛乳とコラボもたまりません!」
 ゴクゴクと、砂糖もずいぶん入っているホットミルクを勢いよく飲んでいる。
「そう‥‥よかったわね」
 メイもドーナツをひとかじり。その時にはすでにリズの手には二つ目が握られていた。
「リズっち、あのさぁ――言いにくいんだけど‥‥」
「はい?」
 リズが細くなくなった小首をかしげる。
「‥‥かなり太ってるよ?」

●ブリーフィングルーム
 メイの呼びかけに集まった傭兵達の前に、どことなくよれたメイが姿を現す。
 とてもビミョーな表情で、口を開いては閉じるを何度か繰り返し、やっと話し始める。
「ちょっと、今回集まってもらったのは――その、なんていうかねぇ‥‥」
 彼女にしては歯切れが悪い。
「まずは、事のいきさつを話すわ。オペレーターの、リズ=マッケネンは皆知ってるわよね?」
 傭兵達は頷く。
「彼女、ここ最近間食が多くて――それでちょっと、ね。太ってるよって伝えたのよ。そしたら、激怒しちゃって‥‥あの子、あれでいて結構スイッチ入ると激しいのよ」
 深々と溜息をつく。
「‥‥まあ、私も同じように食べてるのに太らないのも、逆なでたようだけど」
「メイさんは太らないんですか」
 傭兵の質問に、メイは制服のファスナーを臍までおろして見せた。
 下着が見えてる事に色めき立つ傭兵もいるが、なにより色気以上に、彼女の腹部が立派に割れていて、胸筋もずいぶん鍛えられていて、刀傷が多い事に驚かされている者が多数だった。
「見ての通り、あたしは今でも鍛えてるからネ」
 ファスナーと本題を戻す。
「で、本題に戻るけど、リズっち、だいえっとするようなのよね」
 本人が使わない言葉なせいか、ダイエットが妙なイントネーションであった。
「話を聞くと毎日1時間のジョギングみたいなんだけど、どうやら休日には『キメラ生息地域』にて走るようなのよね‥‥」
「なんでまた」
 メイが肩をすくめる。
「なんでも適度な恐怖心は生物本能によりカロリー消費が増えるとか何とか、謎の理論を展開してて。雑誌の受け売りらしいけど。で、あの子はそれを実践するつもりなのよ」
 色々な感情をこめて、頭を振る。
「ああなったらあの子は、ガンコだわ。
 そんなわけで、あたしから依頼。
 こうなったら、あの子のジョギングコースの安全を確保しつつ、本人の護衛をお願い。それでいて、あたしからの依頼とバレないように頼むわ。バレたらまた子供扱いしないでくださいとか、うるさいからさ」
「報酬、出るんだ」
「それは大丈夫。あたしの知り合いのスポンサー様が、面白いから出してくれるって言ってるから。多少の情報は資料を作っておいたけど、後は仕事の合間とかに質問して頂戴。休憩時間、もう終わっちゃうからこれにて解散! 引き受ける人、頼んだわよ!」

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
荊信(gc3542
31歳・♂・GD
明神坂 アリス(gc6119
15歳・♀・ST

●リプレイ本文

●兵舎一室
「まあ‥‥私の本職はある意味『ダイエットのサポート』ですので、任せてください」
 くるっとイスを回転させ、パサッとテーブルにカルテを置いて立ち上がる辰巳 空(ga4698)。
 雰囲気的になんとなく拍手する美具・ザム・ツバイ(gc0857)と明神坂 アリス(gc6119)。荊信(gc3542)、終夜・無月(ga3084)、須佐 武流(ga1461)は黙って聞いている。
「辰巳博士、尻が痛いのですが、どうしたらよろしいじゃろか
「それはまた後日ということで」
 ニッコリと流されてしまう美具。
「うう、尻が痛い〜」
 ガックリと肩を落とし、イスに座らずにテーブルにうなだれる。そんな美具を置いといて、話が進む。 
「では、作戦を練っていくとしましょうか」

●本部・周辺
「やっほう、リズ。なにしてんのかな」
 本部周辺を走っていたリズが足を止める。
「いえ‥‥ちょっとダイエットしようと思ってジョギングしていたんです」
「そっかぁ。面白そうだし、僕も付き合うよ。こういうのは、1人より2人ってね」
 笑顔で腕を降ると、リズは嬉しそうに笑う。
 それから2人はしばらく談笑していると、そこに美具が小さく会釈して声をかける。
「こんばんはなのじゃ。メイ殿からリズっちがダイエットしとると聞いたが、美具も一緒していいじゃろか」
「こんばんは、美具さん。でも、全然太ってはいないじゃないですか」
 さっと見えてはいないが腹を隠す。
「こんな『ぷにく』他人には見せられるのじゃ」
 美具の言葉にリズはコクコクと力強く頷く。
「大変よくわかります。一緒にがんばりましょう!」
「うむ。しかしじゃ――」
 お尻に手をあてて、言いにくそうにもじもじする。
「先の依頼にてちょっと負傷してしまっての。しばらく走るのもキツイのじゃ――しばしは激励という事で、よろしいかの。代わりといってはナンだけど、ダイエットに詳しい『博士』を明日連れてくるのじゃ」

「この方が『ダイエット博士』じゃ」
「正しくは『医学博士』なんですけどね‥‥」
 美具のざっくばらんな紹介に、頬をかいて空が苦笑いを浮かべる。
「あ、お久しぶりです辰巳さん」
「お久しぶりですね、リズさん。今回はダイエットに悩んでいるとお聞きしたので、僭越ながら私が正しいダイエット法を伝授いたしましょう」
 そういうと、メイから聞き出したリズの個人情報満載のカルテを取り出す。
「まず原因としてはストレスと間食でしょうね。間食はともかく、ストレスに心当たりはありますか?」
「ストレス――職場の先輩がやたら抱きついてくる事ですかね」
 リズの回答に3人は顔を見合わせてメイの顔を思い浮かべる。
(メ〜イ、ストレスの原因になってるよ!)
 心の中でアリスがメイに訴える――だが、前メイに抱きつかれた時、驚いたもののわりと心地よかった事を思い出し、ストレスの原因が他にある気がしてならなかった。
 それをこそっと空に伝えると、少しの間思案顔になる。
「ふむ‥‥ストレスの原因はちょっと特定しにくそうですね。では、解消する方向でやはりいきましょうか」
 公園のベンチに女性3人を座らせ(美具だけは結局座らなかったが)脂肪を燃焼させやすくするお茶の缶を開けて手渡すと、ペラっとカルテをめくる。
「まず間食や差し入れは必ずお皿に乗せ、ちゃんと個数を決めてください。そして噛む回数を増やし、量をコントロールしてください」
「ふむふむ‥‥」
 かつてないほど真剣な表情のリズ。
「次にストレスですが、ジョギングで解消するのはいいことだと思います。ただジョギングであれば極端に無理することなく、継続する事が大事です。途中の水分補給も燃焼効率や走り続ける上でも必須ですので、水分はちゃんと取ってください」
「では美具が給水係するのじゃ」
 手を上げる立候補する。ゆっくりと頷いて、空は続ける。
「継続する事‥‥そういえばリズ、お休みの日はどうするの?」
 ここぞとばかりにアリスが『例の話』を持ち出す。
「もちろん走りますよ。雑誌で読んだことがあるんですけど、適度な恐怖感は痩せやすくすると書いてあったんで、キメラが駆逐されていない地域を走ろうかなと思います」
 聞いていた事とはいえ、3人の視線が明後日の方向を向いていた。
(その雑誌の理論が正しいんなら、この前のぬいぐるみキメラの時に激痩せしてなきゃおかしいっての‥‥!)
「でも言ったらきっと物凄い勢いで反論するんだろうなあ」
 ボソリと漏らす。
「何か言いましたか?」
「いや、何にも‥‥どこ走るの? 僕も付いて行くから、教えてよ」
 アリスの言葉にリズは口を開き、指先が宙を彷徨う。
「えーっと‥‥言葉ではちょっと伝えにくいので、明日地図をお持ちいたしますね」
「明日は私は用事がありますので、アリスさん、日時とコースを後で私にお教えください」
「わかったよー」
 こうして3人は上手い事、とりつけたのである。

 公園のベンチにて地図を広げている女性3人。
「お休みが明日なので、明日、ここの町から町をつなぐ道を走ろうと思うんです」
 リズが地図を指し示す。
「この森を突っ切るだけかの?」
「そうですね」
 美具の問に短く答え、アリスが口を開く。
「キメラはどんなのいるの?」
「生息するキメラは袋と尻尾を持たないカンガルーのようなキメラで、接近すると危ないようですが、移動速度はあまり早くないので走って逃げ切れるんです」
 単純明快なコースを見ながら、美具が顎に手をあてて思案する。
「ここの森の十字路から曲がって舗装道路に出て、少し遠回りしてはどうじゃろか。この道真っ直ぐなだけなら、距離的には少し短すぎる気もするの」
 さりげなくキメラが身を潜めにくい開けた道路へ誘導する。
 そんな目論見も知らずにリズはそーですねなど、あっさりと承諾する。
「よう、リズの嬢ちゃんじゃねえか。 久しぶりだな。何だ、運動か?」
 服装から推測したように尋ねると、袋から肉まんを取り出し、かぶりつく荊信。
「こんばんは、荊信さん」
 挨拶もそこそこに、じっと肉まんを凝視しているリズ。
「なんだ、腹減ってんのか。飯でも奢るぞ?」
「‥‥いえ、今はダイエット中なので遠慮しておきます」
「聞いてよ、荊信。明日お休みだから痩せるため、危険度の少ないキメラが出る危険だけど安全な地域を走るって言うんだよ」
 少し白々しくもあるが、アリスの訴えに荊信は眉根を寄せる。
「ま、そういう考えもアリだろ。で、リズの嬢ちゃん‥‥かつてと同じ事を聞くが、ソイツはお前さんが危険を背負う程のモンなのか?」
「‥‥止めないでください。女の子の体重問題は、命を懸けるものなんです」
 軽快なリズにしては珍しく、苦々しく言葉を搾り出す。
 最後の肉まんをほおばり、歩きながら袋を潰してゴミ箱に捨てる。
「なあに、手前で決めて手前で選んだんだろ。なら止める気はねぇさ。だが――」
 タバコに火をつける。
「その程度に拘る様じゃ、まだまだガキだな。ま、リズの嬢ちゃんにはいい女ってのはまだ早いか。早くても十年はかかるかね、この様子じゃぁ‥‥メイを見習ったらどうだ?」
「メイさんは関係ないです! 私だって明日のジョギングでドーンと痩せて、バーンっと化けて見せますぅ!」
 普段のイメージとはかけ離れて憤る、リズ。メイとの事はだいぶ拘っている様に見えた。
 もちろん、そんな程度の憤りではゆるがない荊信。
「ハハハッ‥‥そんな甘い考えで痩せられるわきゃぁねぇな。何なら賭けてもいいぜ。途中で諦める方に張ってやるよ」
「ぷらちなムカつきました! 絶対走りきって痩せてみせます!」
 ここまで感情的なリズを初めて目の当たりにしたアリスが、目を丸くして成り行きを見守っている。
「それなら確認の為に同行させてもらうぜ。面倒になってやらなかったのに、やりましたなんて言われちゃ困るからな。きっちり諦める所を見届けさせて貰うぜ」

●地方都市・郊外
「逃げずに来ましたね、荊信さん」
「こっちのセリフだぜ?」
 いつもより軽装の荊信、アリス、バイクにまたがった美具が集う。空は下見という事ですでに出発していた。
「む‥‥あんたらどうしたんだ。こんなところで」
 姿を現したのは、対照的な装備の武流と無月であった。
 武流はまさしくキメラ退治に行く重装備に、エアタンクまで装備している。
 逆に無月はこれ以上ないほど軽装備で、素肌にトレーニングジャケット、しかもファスナーがほとんど全開で、覚醒中のために豊満な胸と引き締った身体がほとんどあらわである。
「ええと‥‥須佐さんや終夜さんはどうしたんですか?」
「俺は修練だ。エミタ能力者といえど、鍛えなきゃ衰える。傭兵には力も精神も必要だ」
「俺も‥‥修練です‥‥。ここはちょうどいい‥‥キメラもいるもので‥‥」
 もちろん、事前にアリスからコースを聞いていたための偶然だが。
「ここはオペレータが走るには危険だ。走るつもりなら、付いていってやるが、どうだ?」
 現場にいる人間に危険といわれ、多少尻込みしたものの、リズは力強く頷く。
「ではお願いします」

「ほう、こんなところでダイエットか」
「はい――ところで須佐さんは依頼でもあったんですか? かなりの重装備ですよね」
「戦闘訓練だ。戦闘時のフル装備でやらねば、意味などあるまい――それに何時キメラが出ても対処できるしな」
 もっともなことを言われつつも、リズの視線は森の中には微妙に不自然なエアタンクに釘付けである。
「こいつは‥‥負荷だ。こうやって慣れておけば、背負っていない時には余裕ができるわけだからな」
「なるほど‥‥傭兵ってやっぱり大変なんですね」
 思いのほか感銘を受けたのか、しみじみとリズがつぶやく。
「傭兵ですから‥‥何時如何なる時でも備える習慣が身に染み付いているんです‥‥」
「体重管理もお手の物、なんでしょうね‥‥」
 引き締まった無月のラインに、溜息をつく。
「わりと死活問題だからね」
「リズの嬢ちゃんの死活問題とは違うけどな」
 アリスの言葉に荊信が便乗し、豪快に笑う。リズは不機嫌そうにむくれるが、黙って走り続けた。
「ドリンクを途中途中に置いてくるから、先行するのじゃ。それでもがんばるのじゃ、リズっち」
 アクセルを吹かし、美具は先へ先へと進んでいく。
「‥‥感じますか、須佐さん‥‥」
 探査の眼を常時使っていた無月が、口を開いた。
「――なるほど。くるな」
 2人のやり取りに、口を開きかけたリズ。だがザッとその前に大きめの何かが現れて手を振り下ろされる――が、それはリズの前に差し出された荊信の腕に刺さって、止まった。
 何が起きたのかわからないリズだったが、目の前の腕から血が滴るのを見て、悲鳴をあげそうになる。
「ぼさっとすんな!」
 荊信の怒号。ハッとする。
「リズ、こっちへ!」
 アリスがグロウを取り出し、荊信に練成強化を打ち込みつつ、リズに手を伸ばす。
 襲ってきたカンガルーのようなキメラは、荊信がガッチリと腕を掴んでいた。
「やれやれ‥‥軽い運動のつもりなんで武器なんざロクにねぇぞ。ま、しかたねぇか。そっちはリズの嬢ちゃん頼むぜ」
「任せて!」
 アリスがリズを引き寄せると、そこにもう1匹キメラが現れた――が、その前に無月が躍り出る。
 鋭い爪と足蹴りによる怒涛の連続攻撃。並の人間ならば目視すら出来ずにあの世逝きのその攻撃を、無月は真正面から手でいなし、身体を捌き、時には拳や蹴りでキメラの腕や足を弾く。
「‥‥豪力発現‥‥!」
 フゥーッと息を吐き出し、爪や足を打撃で大きく弾き飛ばすと、強く一歩踏み込み、掌底を腹部に叩き込む。
 フィールドで護られているはずのキメラが、身体をくの字にして呻いた。
 さらにもう一歩。
 ズドン!
 体全体で突き飛ばすような攻撃に、キメラが吹き飛ぶ。
「須佐さん‥‥任せました‥‥」
「ああ、任された!」
 キメラの吹き飛んだ先に、拳にミスティックTの電磁波をまとわせ、腰だめに構えている武流がいた。
 ドドン!
 背骨に真燕貫突正拳突きを叩き込み、1匹を沈める。
「すごいです‥‥」
 傭兵の壮絶な戦いに、リズは感嘆の声を漏らしていた。
「いいから、行け。まだ来る」
 荊信ともみあっているキメラの背にスコルで蹴りつけ、吹き飛ばす。
「行こ、リズ」
「‥‥わかりました」
 アリスに手を引かれ、チラチラと後ろを何度も振り返りながらも後にするリズ。
 リズ達の後を追おうとするキメアの前に立ちはだかり、正拳突きで下がらせる。
「えらそうなこと言ってる分、女1人守れなくて何が強さか!」

 開けた道まで辿り着いた2人。
 息も切れ切れに走ってきた2人を見つけ、空と美具が駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「キメラから逃がしてもら――!」
 説明をするリズだが、空の様子を見て絶句してしまう。
 傷こそはないものの、ところどころ泥やほこりが付いているのを見て、察したのである。
 そこに武流、無月、荊信の3人が追いついてきた。
「どうやらそちらも結構いたみたいですね」
「ああ。キリがないので残りは放置してきたがな」
「ここは‥‥言うほど安全な地域でもないですね‥‥。少なくとも‥‥一般人には脅威と呼んでいいレベルでしょう‥‥」
 素手でキメラと戦闘という無茶をしたワリに無傷な無月の言葉に、リズは黙りこくってしまう。
 そんなリズの前に荊信が向かい合い、わざわざ傷をつけた腕を見えるように掲げる。
「さて、改めて聞くぜ。コイツはお前や『他人を』危険に晒してまでやるモンか?」
「そ、それは‥‥」
 言いよどむリズを助けるようにアリスが割って入る。
「まあまあ、リズだって意固地になって引っ込みがつかなくなっただけだよ」
(啖呵切って引っ込みがつかなくなって、すぐに結果を出してやろうって意気込んでたんだろーけど‥‥あー、なんとなく情景が目に浮かぶなぁ)
 自分で言いながらも、思わず溜息をつく。
「実際、体重問題は乙女にとって重要なんじゃ」
 美具も間に入る。
「ストレスの問題もありましたしね」
 空も助け舟を出す。
「なんだよ、俺が悪モンかい」
 腕組みをして聞いていた武流が、バンッとリズの肩に手を置く。
「ダイエットのためにジョギングするのは大いに結構。だがキメラのいるところに飛び込むというのは、いただけないな!」
「はい‥‥」
 ションボリとしているリズ。
「しかし、本気でやる気があるのなら‥‥俺が付き合ってやらん事も無い。なに、俺と同じように荷物を背負って山道と自然の障害物をクリアして走るだけだ」
「それはダイエットではなく、トレーニングですけどね‥‥」
 空が苦笑いを浮かべてつっこむが、目を輝かせているリズには通じない。
「ただし‥‥泣き言は一切聞かんぞ? 俺は他の連中と違って‥‥厳しいぞ?」
「先生! がんばります!」
 ヘンな方向に話が進みつつある中、無月は1人、少し離れた所から森を眺めていた。
「いい修練に‥‥なったな‥‥」

『リズっち、だいえっと 終』