タイトル:【AC】LH鮪強襲?!マスター:草之 佑人

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/03 21:20

●オープニング本文


●LH近海
 北極海を低空飛行によって越えた後、大西洋を南下し、赤道付近まで下りてきたLH。
 アフリカへと徐々に近づくLHに、10m程の巨大なキメラが一匹、海上を滑る様に泳ぎ迫っていた。
 腹を横に、海の上へと投げだし、どうやって前に泳ぎ進んでいるのか謎な体勢の巨大マグロ。
 その巨大マグロの腹の上には、ぴっちりしたダイバースーツに身を包んだキメラが居る。その肢体は見事な曲線を描き、細い手足に豊満なボディ、ぴっちりとしたスーツはそのラインを見事に浮かびあがらせ、描かれる凹凸にそれを見た男性はそそられごくりと喉を鳴らすかもしれない。
 そして脚線美から、腰、はちきれんばかりの胸へとカメラの映像は移って行き――、最後に映された顔は、マグロだった。
 人にしか見えない身体に、海から飛び出てえら呼吸ができずに息を喘がせぱくぱくとしているマグロの顔。
 カメラの向こうで、おおおおおお↑↑から、おおおおおお↓↓↓と男たちのテンションが移り変わった事は誰にも責められない。たとえ、横に並ぶ家族や恋人に頬をつねられようとも、だ。
 さて、そんな奇怪なマグロは、足場となる巨大マグロと共に一度海中へと潜る様に消えると――、

「「ダッテバヨ!!」」

 奇怪な叫びと共に再度現れ、――二匹に増えた。
 大事な事なので、もう一度言わせてもらえば、奇怪なマグロ達が海中に潜り、再度姿を現した時、一匹だったマグロが二匹に増えていたのである。
 そして、さらにもう一度潜る――、

「「「ダッテバヨ!!!」」」

 海中に消え、再び海上に飛び出したマグロは三匹に増えていた。
 マグロ上の三匹、ぴったりの息を合わせて華麗に苛烈に熱烈に踊り始める。
 ダンシング♪ ダンシング♪ ダンシング♪ イェアッ!!
 ビートを刻み、リズムを弾き、メロディに合わせ、その肢体をくねらせ、舞わせ、飛び跳ねる。
 そして、ビシッと三匹がキメのポーズを終えると、なぜかカメラ目線に「「「ダッテバヨ!!!」」」と指を指し向け――、投げキッスにウインク(はーと)。

●LH島内のどこか
「なんや腹立つやっちゃらな‥‥」
 イラッとしたのは、神開兵子。中学生にしては、幾分その胸の成長が遅れ気味で、キメラにそういうとこおっきくする成分は混じってないかな、なんて気にする年頃の女の子である。今までに食べたキメラの種類は、片手を越えたが、未だその究極の食材にはたどり着けないでいる。が、それはどうでもいい。
 兵子の通う中学校はつい先日LHへと修学旅行に訪れ、未だLHから避難できずに居た。
 奇怪なマグロキメラが映っているのは、LH街頭モニターである。近海に迫るキメラの危険を知らせ、念の為に人々に海岸線に近づかない様に指示を出すと共に、傭兵に依頼が出ている事を周知する役目もある。
「なんやろなあ‥‥あの奇怪なマグロは‥‥食べれるんやろうか?」
「あれ、ゲテモノじゃない‥‥」
 答えるのは兵子の相方、東天紅。まさにその通りである。
 だが、ゲテモノというものは得てして――、
「つまり、もしかしたら、高値で売れるんやろか‥‥?」
 と、ソロバン勘定を弾く。ゲテモノが好きという好事家ならば、確かに大枚をはたいても食べてみたいと言うものかもしれない。私は嫌だ。
「キメラってだけでも十分にゲテモノじゃないかしら」
 ため息交じりに諭す天紅。綺麗な黒髪にはちらほらと白髪が混じって見える。ごくろうさまである‥‥。
「うーん、せやったら、あの下の普通っぽいマグロだけ捕獲して貰って、上の奴はバッテン追い出しということでええかなあ?」
「あれも、ちょっと変な感じがするけど‥‥どうしても食べる、というならそれでいいと思うわ」
 少し意地になりかけている兵子に諦め顔の天紅。溜め息は遠い。
「ほな、ちょっと依頼出してこよか」
 兵子は天紅と連れだって、本部に向かって歩き出す。

『ダッテバヨ!!!!』
 モニターの向こう、着々と増えつつある謎マグロに、向けられるなんともいえない人々の視線。
 奇怪なマグロは四匹に増えていた。
 LHの人々は、あの奇怪なマグロがLHにまで辿り着かない事をただ祈るのみである。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
マグローン(gb3046
32歳・♂・BM
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
春夏冬 晶(gc3526
25歳・♂・CA
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
御剣雷蔵(gc7125
12歳・♂・CA
田中 義雄(gc7438
23歳・♂・GP

●リプレイ本文

●鮪へ飛べ
 LHに迫る鮪キメラ。その上空、クノスペのコンテナに乗る傭兵達が、コンテナから身を乗り出す。
「アレか‥‥」
 終夜・無月(ga3084)が見つめる先に見えるのは踊る鮪人間が八匹。
 その横からひょいと顔を出して、秋月 愁矢(gc1971)もまた鮪人間の姿を確認する。
 鮪型のキメラ。なんてことのない普通のキメラだと思っていたが、踊るその様子を実際に見てみれば、
「なん‥‥だと‥‥?」
 想像以上だった。
 ――うぁ‥‥キモい。
 あまりの衝撃に、口からぼそりとそんな呟きが漏れる。
 愁矢の後ろから同様にそれを覗き込んだドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)は、驚きに呆然としている。
 しばし呆然とした後に、はっ、と意識を取り戻し、溜息混じりに遠い目をして、明後日の方向を見た。
「‥‥前にもこう呆然としたのあったなあ」
 しみじみとドゥが語る。
「狐と勘違いして拾った全裸の妹とベットで目があって以来か‥‥。世界隔てても覚えてるとか僕も記憶力いいかな‥‥」
 踊る鮪人間達を見たドゥは、現実逃避に謎の思い出へと浸る。
 その間にも、クノスペは早急に降下体勢に入り、キメラ達の目前へと迫っていく。
 クノスペのパイロットだって人間で――できるだけ関わり合いにならない内にさっさとこの場から離れたかった。
「って、現実逃避してる場合じゃない!?」
 近づくキメラの姿に、遠い目で思い出に浸っていたドゥが現実に戻ってくる。
 その横をバレー部仕様のブルマ(赤)を被り、着替え(脱衣)ながら空へと飛び出していく変態紳士が一人。
「気分はイルフェボォォオオオオオン!! ディザビィエッ!!」
 叫びと共に真っ先に空中へ飛び出たその変態紳士――本名、田中 義雄(gc7438)23歳――は鮪人間に向かって真っ直ぐに落ちていく。変態紳士は自らの両足を、背中側で両手で掴み、股間から落下。そして――股間を鮪人間の頭に直撃させ巻き込みながら、びしぃっと着地のポーズを決める。哀れ、変態紳士の股間のパンツに、ぷらり、鮪人間が顔を突っ込んでいた。
 その様子を春夏冬 晶(gc3526)がコンテナから身を乗り出しつつ眺め、ふっと、悟った様な息を吐く。
「まー、あれだよ? これから一緒に肩並べて戦う仲間にこんな事言うのもよくねぇと思ってるよ?」
 うん、と自分を納得させるように一つ頷く。
「‥‥それでもな? 男にゃ黙ってちゃいけねぇ時ってのがある」
 晶の顔は決意に満ちたように凛々しい。そして、意を決して、
「言わせて貰うぜ‥‥あいつ、変た、ァァ――!?」
 ひゅるるる――ぽちゃん。
 降下中のクノスペが海からの風に煽られ、晶はコンテナから振り落とされ、海に落ちた。
 広がる小さな波紋。
 慌てて浮かび上がるも、晶は再度の波に飲まれて遠くへ流されていった。
「‥‥すね毛だの酢味噌臭いだのもう沢山だ‥‥。誰にも邪魔はさせねえ!! 今度こそ俺は美味い鮪を食う!!!」
 気合い十分にクノスペから龍深城・我斬(ga8283)が駆け出し飛び降りる――が、気合いというものが空回りするのは世の常なわけで――、

「あっ――」
 巨大鮪を飛び越え――海へ。

 武者鎧まで着こんだフル装備。
 水飛沫は巨大で、空にキレイな虹が架かる。
 暗い海の底がおいでおいでと手招きするように我斬を引き摺り込んで行く。
(‥‥ぐぼ! がばごぼげべぐばごぽgp・!?〜!!!)
 溺れ沈んで行く中、必死に泳ぎ上がり、餌を求める鯉の如く海面でばたばたと暴れる。
 マグローン(gb3046)はそれらのやり取りに目を向けず、踊る鮪人間達の足場となっている巨大な鮪キメラ――鮪BIG、略して鮪Bと呼ぶ事にする――をクノスペからじっと見下ろしていた。
「‥‥マグロを名乗るならば‥‥マグロの形をしているのならば‥‥」
 俯き、ぶつぶつと呟くマグローンの顔色は見えない。だが、どこか、激しい怒りのオーラが透けて見えた。
 そして、すっくと立ち上がると――かっと目を見開き、
「何故その高速遊泳に向く体型を活かさず、ヒラメやカレイの様な体勢で泳ぐのですか!」
 温厚に見えるマグローンが吠えた。
 余程に許せない事であるらしく、その瞳は怒るマグロのように燃えている。
 マグローンは武器をその手にひっつかむと、マグロみたいなキレイなフォームで海へと飛び込んで行った。
 潜るその姿がクノスペからまるっきり確認できなくなった頃、海上にはぷかりとマグローンの履いていた水着が浮かんできた。
「‥‥げぼっごほっ」
 溺れる我斬が必死でソレを掴みながら、助けを待っていた。

●マグロオドル
 海中ではマグローンが覚醒で姿を変え、早速、口に水中剣を咥え鮪Bに向かっていく。
(その無茶な大きさも、のうのうと食べるだけ食べてきちんと泳がなかった代償でしょうかね?)
 憐れみすら覚える程に、マグローンには鮪Bの泳ぐ姿が許せない。大きくマグロな溜め息を一つ。
(情けない‥‥精々戦闘の足場になるがいいでしょう)
 泳ぎ近づいていくマグローン。ふと、その視界の中、鮪Bの海中側の腹に何か、踊っている物体が一つ見えた。
 ――海上側にもいた鮪人間だ。
 どうやって振り落とされないのか、その原理はちょっとよく分からなかったが、とにかく海中で踊っていた。
 マグローンと目が合うと、鮪ンッ!? と驚いた眼を向ける。
(‥‥邪魔ですね)
 マグローンが敵視するのは、鮪Bである。マグローンの姿を見て、仲間と勘違いしたのか、陽気に踊り続ける鮪人間をマグローンは、海上に叩き上げた。
(後は、このマグロモドキですね)
 腹から頭の方へ泳ぎ、攻撃を開始する。

 鮪Bの上、なんとか降り立ったマグローンを除く傭兵七人。そのうち、海に落ちた二名はずぶ濡れで張り付く服のごわごわ感に顔を歪ませ、たまに飲んだ海水を吐き出すようにむせる。
 と、海中から一匹鮪人間が「ダッテバヨォゥ!?」と叩き上げられてきた。
 多少驚く皆の中から、それを意にも介さず無月が一歩、前に歩み出る。
「貴様等‥‥生きて希望の島の土を踏めると思うな‥‥」
 剣を鞘から抜き払い更に一歩。
「但し死せる後の食材としての入島は許そう‥‥」
 ――どうやら無月は鮪人間を食べる気らしい。さすがだ。
「御剣雷蔵、行かせてもらうぜ」
 鮪人間に対峙し、偉そうにふんぞり返って名乗るのは御剣雷蔵(gc7125)だ。
 自身障壁で体を堅く変化させながら、ノコギリアックスを肩に担ぎ上げる。
「鮪人間が我慢なら無い‥‥くらいにキモイ。魚の顔に豊満なボディとか‥‥」
 キモイと言いつつ、愁矢の視線は、その豊満なボディに吸い寄せられる。が、頭をぶんぶんと振る。
「チクショウ、非モテの俺の感情を逆手に取ろうとかそうはいかん崎‥‥やっぱり普通の人間の方がいいに決まってるだろう!」
 種族の垣根を越えた愛について、否定する訳ではないが、ダメだったらしい。‥‥しかし、豊満なボディと普通の人間を言葉の綾でも比べた辺り、相当な巨乳好きですね。
 と、交友関係で女神と仰ぐ女性陣が巨乳の愁矢は放っておいて、鮪人間達は、どこからか取り出したボール数個でジャグリングを始める。
 ボールでのジャグリングを交えたカレイなダンスをタイやヒラメの様に舞う。
「気持ち悪い‥‥」
 よく見ても分からないくらいではあるが、嫌そうな表情を――若干ジト目気味に口をやや△に――しながら、無月が皆の先頭を切って駆け出す。
 駆け出す無月の背後で、ドゥが杖――マジ・クイットの先端を鮪人間達に向ける。
「仮にも僕は生れ世界じゃ可愛い妹に与えた力の発案者だ! シスコン? 言ってろ!」
 同行した傭兵の中には、ドゥの尊敬する先輩もいる。色んな意味で、格好の悪いところは見せられなかった。
 先端を敵に構えた杖をくるりと掌の中で回すと、手の中にあるのは小銃。持ち替える動作は目にも留まらず。即座に放った援護射撃で、駆ける無月を援護する。
 鮪人間の間近に無月が近づけば、顔面に迫るは死んだ魚のような鮪の目。しかもなんだか生臭い。
 鮪人間は「ダッテバヨォ!」と一斉に吠えながら、肌色のジャグリングボールを上空に投げ上げ、ヘイ、カマンなポーズを取る。
「煩い‥‥」
 ポーズは無視。無月は敵の集まる場所中央に飛び込み、一度に薙ぎ払うように剣を振るう。投げ上げたボールをキャッチする事も出来ずに、鮪人間は「ダッテバヨォ!?」と薙ぎ払われるがままに吹き飛ぶ。
「3枚いや5枚おろしにしてやるぞ」
 斧を担ぎ上げたまま、雷蔵は盾を身の前に掲げ、突進に鮪人間に駆けていく。
 ジャグリング中の鮪人間に盾での突進から、よろけたところへ斧を振り下ろし、その頭に叩きつけると、その鋸部分の刃を引き裂く様にして切る。
 雷蔵は飛び散る血飛沫が自らにかかるのも気にせず、口の端を吊り上げてにやりと残酷な笑みを浮かべ、何度もめった打ちに斧を振り下ろし続けた。
 皆に合わせて、晶もまた鮪人間に向かって走り込んでいく。が、
「腕を回転させながら力を集めてぶつける‥‥その名も螺旋だヘブッ!」
 すってんころりん。鮪の身体を滑り、海へ落ちていく晶。――足場の鮪Bの身体は、何度も海に潜っていた為、海水に濡れて滑りやすくなっていた。
 海へ落ちた後、なんとか海面に顔を出し、鮪Bの端っこに掴まり、顔を見せる。
「この俺が何度も海に落ちるとは‥‥手前ら、足場が悪いから気を張っていけよォォ――!!」
 ざっぱーん。‥‥叫びの後、晶は波に飲まれ、また流されていく。
「へっ、慌てんな‥‥一度目、救助されるまで波に流されても見事生還した俺の泳ぎ(テクニック)見せてやんぜ‥‥って足がつったァァァァ!!」
 死にそうな思いで海面を叩き浮かぶ晶に、上空に待機していたクノスペが慌てて回収に向かっていく。
 そうやって晶が一時戦線を離脱する間も戦闘は続く。
 愁矢は踊る様に飛びかかってくる鮪人間の攻撃を鎧の装甲で受け流し、呼気を吐いて遠心力に任せて大太刀を振るう。
 吹き飛ばす様に薙ぎ払った後、刺突で止めを刺そうと振り返れば、
「おい、なんで女性ボディからむさいおっさんの足が出てくるのかワカラナイ‥‥なんで‥‥だ」
 鮪人間の破れたダイバースーツの下からは、すね毛の多い逞しい足が伸びているのが見えていた。
 リズムに乗り攻撃を繰り出していた鮪人間は、ダンスが終わりを迎えたらしく、一度、華麗にキメ☆ポーズを取る。
「今だ! 皆纏めて一切容赦なくぶっとばーす!」
 動きの止まった瞬間に、リズムを読み予測を立てていた我斬は横薙ぎに剣閃を走らせる。
 スーツごと斬られた鮪人間が「ダッテバヨォ‥‥」と最後の呻きを残して倒れた。
 他の鮪人間は、続き別のダンスに移ろうとして、しかし――、ずんばらりん。
「ん? ‥‥今何かしようとした?」
 無月の一撃に真横に真っ二つ。キレイに斬られた白い骨に赤身の断面が見えつつ、ダッテバヨォ!? と断末魔の悲鳴を上げる。
 やるせなさそうにほろりと鮪は涙を流し、散った。
 仲間がやられる中も、ボールを取り落とした鮪人間の一匹が、ようやく目の前に二つのボールを見つけて、手に取る。が、感触が柔らかい。
「これは私のおふくろさんだぁぁぁあ!」
 変態紳士のパンツの隙間から、放送禁止のブツがうっかりはみ出ていた。
 うっかり手にとってしまった鮪人間が、ズガンッ!? と驚きの表情(だと思われる)を浮かべる。
「チェェェェェストォォォォォォォオオオオ!!!」
 変態紳士の振り回すバールのようなもので股間を下から掬いあげる様に強打!
 何か大切なモノが潰れた様な嫌な音がして、鮪人間は「ダ、ダッテバヨォ‥‥」と弱弱しく崩れ落ちた。
 そして、あっという間に、最後の一匹まで鮪人間が倒された。しかし、鮪Bは悠々とLHに向かって泳ぎ続ける。
「せっかくだから俺はこのエラを選ぶぜ」
 愁矢が鮪Bのエラ中央付近に立ち、無月がエラの端の脳近く、我斬が脳の真上付近に立つ。
「良い子にしてろよ〜、一瞬で楽にしてやるからな♪」
 我斬がにっこりと笑って、剣を振り上げる。両断剣・絶からの急所突き。光輝く剣を一息にFFを突き抜けて脳の奥まで貫き通した。
 同時に、無月がエラ側から脳を狙って豪力発現で力任せに押し込み、愁矢もエラを遠慮なく上から突き刺す。
 海面側の攻撃に、びくびくと痙攣し始める鮪B。海中のマグローンも、何度もつけた傷口から剣を突き入れ、脳天から突き刺した。
 鮪Bはその場にぷかりと浮かんで、動かなくなった‥‥。

●マグロタベル
「いやー今回も大勝利だったなー」
 何もしていない晶がはっはっはと笑いながら、いい汗かいたぜとばかりに額を拭う。
「さて、鮪の解体ショーの時間だ」
 引き上げられた鮪を前にして、雷蔵はノコギリアックスを担ぎ、5枚下ろしにすべく、まずは、鮪の頭を切り落としにかかる。
「では‥‥俺も‥‥」
 自前の鬼包丁を取り出し、無月が解体に加わり、それを手伝うように変態紳士も腰をフリフリ独特のポーズも調理に加わっていく。
「じゃあ、俺はその間に頬肉とか頂いていくぜ」
 我斬が手分けして解体する三人を邪魔しないように、骨の間の身をこそげ落としたりと調理に参加する。

 しばらくして、広場には三人の料理人と一人の変態紳士の下に幾つもの鮪料理が完成し並べられた。
「鮪料理は美味ぇぇぇ」
 雷蔵が並べられた刺身、握りに軍艦、カマ焼きなど、鮪料理を片っ端からむしゃむしゃとむさぼる。
「うん? へぇー、刺身は少し熟した方が旨いのか」
 刺身を食べながら、晶は会話に耳を傾ける。
「美味いな‥‥酒が欲しいぜ」
 愁矢が醤油につけた刺身を一切れ口に運び、更にもう一切れと運びつつ言う。
「ならば、これを飲むといい」
 すっと、変態紳士が日本酒を差し出した。ほんのり人肌に温かい。
 ――ほぼ裸のこの男。一体どこから取り出したのか‥‥。
 背筋に走る悪寒。
「‥‥気持ちだけありがたく受け取っておくぜ‥‥」
 愁矢は直感的にその危機を回避した。‥‥惜しい。
「刺身も良いけどこう、カマの部分を焼いて食うのもたまらんのよな♪」
 酢味噌臭くない鮪に我斬は舌鼓を打つ。その姿は幸せそうで、‥‥焼いたカマの部分の中に、うっかり混ざり込み焼けてチヂレたすね毛が見えた気がしたが、たぶん、気づかないままの方が彼は幸せに違いない。
 和気あいあいとしたその様子をドゥは遠目に傍観していた。
 口元に笑顔を貼り付けてはいるが、目は笑っていなくて、顔色も青い。
 目を逸らし、LHの進行先、アフリカの方へと目をやる。
(これからもこの手の敵と戦う機会があるだろう)
 伸びをして、鮪を食べている皆の所へと向かう。
 横合いからひょいと手を伸ばし、一つ、握られた大トロを食べた。
(‥‥味はそのうち誰かに語るかな。ね、ペレグジア)

 既にアフリカでこの手のキメラとの戦闘があったという。いずれまた、傭兵達に戦う機会も巡り来る事だろう――。