タイトル:狼少女はウソツキか?マスター:草之 佑人

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/17 21:37

●オープニング本文


●夢の中で
 少女が生まれてからずっと住んでいた街が、炎に巻かれ燃え落ちていく。
 少女は炎の中で必死に声を上げていた。
 少女の隣で、母親が瓦礫の山に埋もれていた。
「ママッ‥‥死んじゃやだッ」
 少女は瓦礫の下から母親を助け出そうと、その腕を引っ張る。だが、少女の力では、積み上がった瓦礫の下から、母親を助け出すことなどできない。
「サァラ‥‥」
 少女の母親は、自分が助からないと悟っていた。
「ママはサァラのこと大好き。ずっと、ずっと愛してるからね‥‥」
 だから、最期の言葉を遺した。


●森で見たもの
 サァラは草原で目を覚ました。目の横が濡れている。見た夢が悲しい夢だったから。
(けど‥‥)
 夢の中とはいえ、母に会えたことは少し嬉しかった。
 サァラは口元に笑みを浮かべながらその身を起こす。そろそろ太陽が空の真上に来る頃だ。一度家に戻らないといけない。

「あーっ! 嘘つきサァラだ!」

 身を捻って後ろを見ると、村の子供たちがいた。
「なんだよ、サァラ。また特訓とか嘘ついて森でサボってんのか?」
 サァラは振り向いてしまったことを後悔する。
(面倒ね‥‥)
 無視してその場を去ろうとした。
「おい、待てよ! 逃げるなよ!」
 逃げるなと言われて、逃げないものはそうはいない。サァラは駆け出す。
 村の子供たちも走ってサァラを追いかけた。
 しかし、来る日も来る日も森の中を走り回っているサァラに村の子供たちは追いつけない。次第に疲れて脱落していき‥‥遂には最後の一人になった。
「嘘つきサァラ! お前みたいな嘘つきが能力者になれるわけないぞ!」
 そんな捨て台詞を吐いて、最後の一人も脱落した。


 村の外れにある小さな木造小屋。そこにサァラは父と一緒に住んでいる。
「ただいま。パパ」
「おかえり、サァラ」
 杖をついて片足を引き摺りながら、サァラの父はサァラを出迎える。
「ごめんね、パパ。朝は何も取れなかったわ。昼から頑張ってみる」
「そうか‥‥すまんな、サァラ。私が怪我をしなければお前がそんなことをする必要はなかったのに」
「ううん。これもいい訓練だと思ってるし。それに‥‥親孝行してあげられるのもあとちょっとの間だけだから」
 サァラの父親は目を細めて、自らの娘を優しく見つめた。
「‥‥そうか。もう約束の14歳か」
「うん‥‥次の誕生日が来たら、あたしはこの村を出て能力者の検査を受ける。もし、能力者になれなくても、そのまま軍に入隊するから‥‥ママの仇を取るために」


 家で昼食を取った後、サァラは森の中を獲物を探して歩いていた。
 午前中、普段駆け回っている範囲を探したが、兎や鳥は居なかった。そのため、普段は行かないような森の奥へと足を踏み入れていた。
「それにしても変ね‥‥いつもなら結構兎とか見かけるのに」
 獲物を求めて、サァラは森の奥へ奥へと進んでいく。
 どれだけ進んだかも分からないほど進んだとき、森のさらに奥に一羽の鳥を見つけた。
 息を潜めて、様子を伺う。
 その鳥は、昼間から寝ているようだった。森の奥深くとはいえ、あまり周りを警戒していないのだろうか? さらによく見ていると、違和感を覚えた。頭の形などからすると、おそらく、あの鳥はフクロウだ。しかし、周りとの縮尺からすると、あのフクロウは全長が2mから3mはあると思われる。大きい。
(それに‥‥なんなの?)
 違和感の原因はそれだけではないような気がする。どこかで見たような――
「――ッ」
 それに気づいたとき、サァラは思わず声をあげそうになった。

 忘れもしない――そのフクロウは、サァラの生まれた街を襲ったキメラの中の一体だった。

●参加者一覧

植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN
秦本 新(gc3832
21歳・♂・HD
不破 炬烏介(gc4206
18歳・♂・AA
アーニャ・ブライトマン(gc4704
20歳・♀・FC
安原 小鳥(gc4826
21歳・♀・ER
カズキ・S・玖珂(gc5095
23歳・♂・EL

●リプレイ本文

●山道の途上
 片側が崖になっている山道を二台の車と一台のAUKVが走る。山の標高はそれほど高くないが、片側が崖の為に窓の外に広がる光景は絶景だった。だが、その光景をのんびりと眺める余裕を車やAUKVに乗る者達は持たない。
「すごく‥‥揺れます‥‥」
 安原 小鳥(gc4826)がぼんやりと感想を述べた。直後、大きめの石をタイヤが噛んで、車に縦の衝撃が走る。身体が一瞬宙に浮く。オンロード仕様のランドクラウンを未舗装の山道で乗り回すものだから、車内の揺れはかなり激しい。
「ちょっと! オンボロなんだからもうちょっと安全運転しなさいよ!?」
 座席の背に必死にしがみつきながらアーニャ・ブライトマン(gc4704)が抗議する。が、その声も空しく、車は激しい揺れに見舞われる。
「街にクルマ乗ってきてたってだけでも感謝するッスよ!?」
 植松・カルマ(ga8288)がアーニャの高慢な物言いに抗議し返した。
 その様子は無線機を通じて、AUKVやジーザリオの搭乗者にも流れている。
「やれやれ、任務の帰りでAUKVを持っていて良かったです。あの中に居たらと思うとぞっとしませんね」
 秦本 新(gc3832)が流れてくる無線の騒音に嘆息する。一方のジーザリオでも、運転をしている流叶・デュノフガリオ(gb6275)が同じように嘆息していた。
「なあ、きみら。少し静かに出来ないか?」
「――すいません。それで、その、開けた場所があれば教えてほしのですが――きゃっ」
 流叶の言葉に、無線の向こうで御鑑 藍(gc1485)が断続的な揺れに舌を噛みそうになりながら答えた。一通り説明を終え、新に貰ったスポーツドリンクと板チョコを食べていたサァラは、少し心配そうに無線を見た。向こうの車は大丈夫なのだろうか?
「あの‥‥」
 助手席に同乗していた不破 炬烏介(gc4206)は、心配するサァラに頷く。
「気、ニ‥‥すルな」
 僅かに戸惑いながら、サァラは今度はバックミラー越しに流叶を見た。
「この程度の事には皆慣れているのさ」
 流叶は笑みを浮かべる。
「それより、開けた場所についてだけでなく何でも良い、まだ話せることがあれば教えてくれるかい?」
 サァラはまだ些か戸惑ってはいたが、そういうことなら、と話し始めた。
 開けた場所が村の北東にあること。木々の枝が折れているのは森全体に見られたこと。また、森の地図は特に必要とするものがいないために作られていないことなどもサァラは話す。
 サァラの話をあらかた聞き終えて、傭兵達は作戦を立てはじめた。
 そして、作戦の最終調整を済ませた頃には、山道の先に村が見えてくる。
「そろそろ着くか」
 揺れる車内にもかかわらず、平静にカズキ・S・玖珂(gc5095)が呟いた。

●村に入り
 村に着いた傭兵達は、サァラの案内の下、村長の家へと向かった。森の探索許可を貰いたいのであれば村長に頼むといいとサァラから教えてもらったためだ。
 道中、村人からは、なぜという疑問の眼差し、そして、何かに怯えるような目を向けられる。歓迎するような雰囲気ではないのは、不破の見た目が怖いせいだけではないように思われた。彼らの目は、傭兵達の後ろに何かを重ねて見ている。
 村長の家につくと、すぐに村長に会い事情を説明した。
「キメラのことは息子からも伺っております。サァラがそのような話をしていた、と」
「おや、既に知っておられたなら話は早いですね。すぐにでも探索の許可はいただけますか?」
 新が丁寧な物腰で村長に言う。
「ええ、勿論ですとも。サァラがその報告をしに来た時は、息子が代わりに聞いてくれたようなのですが、どうも喧嘩をして追い返してしまったようで‥‥すまないね、サァラ」
 村長がサァラの方を見て弁解する。
「私としましては、サァラが急いで貴方がたを呼びに行ってくれたことには本当に感謝しています」
「そうか。なら、一ついいか? キメラを退治してほしいとこの娘は言ったが、これは村からの依頼だと思っていいか?」
 カズキがサァラの頭に手を置きながら、そう尋ねた。
「‥‥そう、ですね。ですが、我が村からお願いしたいのは、村を守ることです。キメラを退治する際に村に被害が出るようであれば、依頼報酬はお支払いしかねます」
「――十分だ」
 カズキは村長の返答を受けて、さっさと部屋を出ていく。もうここに用はない。
 他の探索班メンバーもまだ聞きたいことはあるようだったが、カズキの後を追って探索班は村長の家を後にする。なにぶん時間がない。そろそろ、日が西へと沈み始めているのだ。
 探索班メンバーの最後の一人、小鳥が部屋を出る前に、ほんの少しだけ振り返る。
「あの‥‥危険なので‥‥ちゃんと逃げて下さい‥‥ね」
 小鳥はそう言ってお辞儀をすると、部屋を出て足早に皆を追いかけた。

●村人の避難
 探索班が森へ向かった後、村長の家には、村での対応を行う予定の流叶と不破、そして村長への仲介についてきていたサァラの三人が残った。
「さて、では不破殿はすぐに村人の避難に、サァラは父上を迎えに行くといい。私はしばらくここで村長殿と探索班の中継をしていよう。森にキメラが居ることを村長も確認しておいた方がいいだろうからね」
「ワ、かった」「はい」
 流叶の説明に不破とサァラがそれぞれに答え、部屋を出ていく。二人を見送って流叶は村長へと向き直る。
「サァラはいい子だな。村長殿」
「ええ、本当に。今回のことといい、しっかりした子です」
「ああ。だが‥‥今回、サァラから聞いた話によれば、キメラのことを村の誰にも信じて貰えなかったとか?」
「それは‥‥」
 村長は押し黙る。しばしの無言の後、村長が申し開きをするように口を開いた。
「実は、今この村には、サァラの家のような戦火を逃れて移り住んできた人々が大勢いるのです。おそらくは、そういった人々に相談してしまったのだと思います。彼らは、未だにキメラの恐怖に怯えているものですから‥‥」
 村長の言葉に流叶は道中の村人の表情を思い出す。
「では、村長殿の息子がサァラと喧嘩をしたというのは‥‥?」
「その‥‥彼らはほんの少し前まで仲が良かったのですが、なにやら最近、息子が村の子供達と一緒にサァラを嘘つきだと言い回っているようでして、その関係だろうかと」
 流叶の疑問に村長はそんな風に話した。

「――というわけで、不破殿。村人を避難させる合間にでも、今言った特徴の少年を探して話を聞きだしておいてくれないか」
「あア‥‥イま‥‥ソラが、教え。テ‥‥くれた」
 流叶からの無線を不破が受け取り答える。不破の目の前には子供達の一団が歩いていた。
 不破がその異形で子供たちに近づくと、子供達がそれに気づき怯えた。だが、怯えず皆の前に進み出る子供がいた。――村長の息子だ。
「お前らは先に帰ってろ」
 すっかり怯えきった後ろの子供たちを、彼は逃がしてやる。
「なぜ‥‥オマエ、はサァラを‥‥? 業、か‥‥?」
 不破が村長の息子に語りかける。
「何の話だよ?」
「オ、マエ‥‥サァラを、嘘ツきだ‥‥と言ッた。ナぜ‥‥?」
 不破が質問を重ねた。そこで、彼は合点がいったように笑った。
「あんたまさか、サァラが呼びに行ったUPCの人か? いや、それとも傭兵か?」
「質問、に。答えろ‥‥」
 嘲笑う村長の息子を不破が睨む。それでも彼は臆した様子がなかった。
「嘘つきは嘘つき、だよ。だから、能力者になんかなれねえで、泣いてこの村に帰ってくるのが関の山さ」
「ソラは言う‥‥嘘で。嘘ヲ塗り、固めレバ‥‥身動キ、が取れ。ナクなる‥‥」
「てめぇ、ナニ言ってやがる!?」
 村長の息子が不破に掴みかかった。が、
「俺は、英雄じゃない‥‥やるなら‥‥撃つぞ‥‥鬼の一撃‥‥」
 不破が拳を構える。そこに込められた力、気迫、殺気に気圧され、彼は一歩退いた。
 村長の息子は額から冷や汗を吹き出し、生唾を飲み込んだ。そして、睨み返す。
「――サァラのやつはな、俺たちずっと友だちだって言ってたのに、あいつ、村を出ていくから友だちをやめるって言ったんだよ! だから――だから、嘘つきだって言ってやったんだよ! 悪いかよッ」

●森を進め
「残念。もう居ないみたいね」
 さほど残念そうでもなく言いつつ、アーニャは目撃地点の木に印を刻む。迷わないようにここまでの道にも刻んできた印だ。
「じゃあ、クルマでの打ち合わせ通りにここで分かれるッスよ」
 カルマの言葉で、予め決めていたAチームとBチームに分かれる。
 日も暮れて、森の中は暗くなってきている。月は出ていたが、木々に遮られて足元がはっきりと見えるほどのものではない。傭兵達は各自で用意した夜間用の装備で足元を確認しつつキメラの探索に乗り出した。

 目撃地点からは東西南北すべてに向かって、大きなものが通って折れたような枝があった。Bチームは藍の提案で北東の開けた場所へ向かう痕跡を辿っていく。
 辺りを警戒しながら進んでいると、アーニャは落ち葉の上に大きな鳥の羽根を見つけた。
(当たりはこっちかも知れないわね)
 アーニャが他の二人に目配せし、それとなく意図を伝える。二人はより慎重に、音を立てないように周りの様子を探る。
 新が上空を見上げたとき、黒い影が飛んでいくのが見えた。影が飛んでいった方向は――
(あちらは――村ですか!?)
 咄嗟にAUKVの照明をシグナルミラーで反射させる。目を光に照らされ、空の影が悲鳴を上げた。
「こっちです!」
 新が声を上げると、黒い影は急旋回して、新に目掛けて急降下してくる。
 近づくその影は巨大なフクロウ。その特徴から、サァラが話していたキメラだと予測がついた。

 一方、Aチームも周囲を警戒しながら、Bチームとは別の方向に進んでいた。
 カズキが落ち葉を踏まない様に気をつけていたため、運よく地面に落ちた大きな鳥の羽根を見つける。
(これはキメラの羽根、か。その上に、落ち葉が落ちているのか?)
 落ち葉が羽根の上に重なっている、それが指す事実は一つ。羽根が落ちてから時間が経っているということだ。
 ハズレかもしれない。そう思ったところで、無線から藍の声が聞こえてきた。
「こちらBチームです。キメラを発見しました。例の開けた場所に案内しますので、合流願います」
 無線の声を聞いて、Aチームが顔を突きあわせる。
「開けた場所‥‥北東ですね」
「場所が分かっているなら、先回りして奇襲をかけるぞ」
「なら、急ぐッスよ」
 小鳥、カズキ、カルマの三人は、キメラに気づかれないように全速力で駆け出した。

 Bチームを追ってくるキメラが何度目かの急降下をして襲ってきた。藍はキメラの爪を紙一重のところで躱す。何度狙っても捉えられないのが悔しいのか、再度飛び上がったキメラが一声鳴いた。
「ぴーぴー煩いっ! 黙れ!」
 アーニャが走りながらも、頭部を狙う様に撃つ。しかし、局所を狙いすぎて逆に当たらない。
「こっちですよ!」
 アーニャの射撃の間にも、新はシグナルミラーで光を反射させ、キメラの注意を引きつづけている。
「カルマさん、そろそろ森を抜けます。『花火』の用意は大丈夫ですか?」
 藍が無線で連絡を取った。無線の向こうから、大丈夫ッスよぉという声が聞こえる。
 そして、森を抜け、何もない開けた場所へ、Bチームはキメラもまとめて飛び出ていく。
「待ちくたびれたッスよぉ」
 カルマが開けた場所の中央に立ってニヤけながら待っていた。脇にはカズキと小鳥もいる。カルマがキメラの姿を確認してニッと笑った。
「花火!」
 合図と共にカルマが閃光手榴弾を投げる。事前の作戦通りに傭兵達は合図を受けて目を瞑る。
 手榴弾が炸裂し、眩い閃光が辺りを埋め尽くす。その閃光はキメラの目を焼いた。
 無線で連絡を取り合っていたとはいえ、危うく自滅するぎりぎりのタイミングだった。だが、それゆえに絶妙のタイミングでもあった。
 キメラは閃光に視覚を奪われ、怒り狂い、でたらめに炎を吐き散らす。
 一度はカズキがその身で受け止めたが、特に狙いを定めた攻撃ではなかったために、幾度も吐かれた炎が辺りに生える草を焼く。だが、それと同時に、
「いきますよ」「下に誘導します‥‥」
 キメラが吐く炎の隙間を縫う様にして、藍と小鳥の放った衝撃波がキメラの翼を突き抜けた。
 翼を襲った突然の衝撃に、羽ばたきが止められる。ふらっ、とよろめく様にして空中を落下しかける。
「貰ったッスよ!」
 カルマの身体が薄く発光し、イアリスが唸りを上げる。輝きを帯びたイアリスをカルマは全力で振り下ろす。それは衝撃波を生み出し、空を舞うキメラを切り裂いた。
 キメラは翼を羽ばたかせる力を無くし、地に落ちる。すでに息はしていなかった。

●友だちと
「話は聞いたよ。――村長殿の息子に友達をやめたいって言ったそうだね?」
 傭兵達がキメラを倒して戻った後、流叶は村の外れにサァラを呼び出しそう訊いた。
「‥‥」
 唐突にそんなことを訊かれて、サァラは言葉に詰まる。
「――あいつから、聞いたんですか?」
 サァラが流叶に問い返す。すると、答えは森の方から返ってきた。
「不破が訊き出してくれたんスよ。ま、みんなサァラちゃんの事が心配だったってわけッス」
 カルマが木にもたれて立っていた。その後方からは、新とアーニャも出てくる。
「――ほっとけばいいのに。自業自得でしょ、こんなの」
「まあまあ、そう言うならブライトマンさんも、玖珂さんや藍さんと一緒に村長さんに報酬の交渉へ行っても良かったのでは?」
 新に指摘されて、アーニャはそっぽを向いた。二人に続いて、不破と小鳥が一人の男の子を連れて出てくる。
「連レ、テ‥‥き。たゾ」
「どうぞ‥‥ちゃんと‥‥話しあった方が、いいですよ‥‥?」
 二人が連れてきたのは村長の息子だった。
「嘘つきなんて言って悪かったよ‥‥もう、言わねえ‥‥」
 彼は下を俯いたまま、歯切れが悪そうに言った。
「別に気にしてないわよ」
 気心の知れた友だちだからか、サァラも口調が年相応の喋り方になる。それを聞いて村長の息子もほっと安堵の表情を浮かべた。
「な、なあ、どうしても友達やめなきゃならないか?」
 彼の言葉に、サァラは傭兵達を見回した。こんなことは依頼していない。要らぬお節介だ。けれど、
(‥‥けれど、お節介だからこの村を守ってくれたのかもしれない)
 サァラは笑みを浮かべた。能力者の傭兵とは、余計なものまで守ろうとするお節介な生き物なのかもしれない。
(だったら、それになりたいというあたしは‥‥)
 ふ、と息を吐く。少し気持ちが楽になった。
「そうね。やっぱり村を出てもずっと友達でいよっか。その約束、守りたいと思うの」
 手を差し出す。おずおずと彼はその手を握った。
(これがあたしの初めてのお節介。傭兵さん達に少しばかり背中を押してもらったけれど)