タイトル:海司る竜、其の身新たにマスター:草之 佑人

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/24 12:43

●オープニング本文


●英国王立兵器工廠・LH支社
「――ここですか?」
 ジェーン・ヤマダ(gz0405)――もといオペ子――は、地図を見ながら、LHにある英国王立兵器工廠の支社ビルに辿り着いた。
 メガコーポレーションの支社だけあって、周囲の商業ビルに比べても大きい。
 ビルの中に入ると、壮麗な額縁に入った壁の絵画や、ロビーの職人による一点物と分かるテーブルや皮張りの椅子など、格調の高そうな調度品の数々がオペ子を出迎える。入口奥の受付にいるお姉さんは、かなりの美人だ。胸の盛りあがりも服の上からはっきり確認できるくらいに大きい。
 目が合って微笑まれると、オペ子はなんだか負けた気分になった。
「いえ‥‥いいですけど、別に」
 ぶすっと膨れながら、廊下を歩いて受付まで進む。
「すみません。ULTから来ましたジェーン・ヤマダと申します。こちらに依頼の資料をいただきに来たのですが――」
 身分証明をし、アポイントメントを照会、確認してもらう。
「すぐに担当の者が参りますので、そちらにおかけになってお待ち下さい」
「はい。わかりましたよ」
 そう言ってオペ子はロビーの方でしばし待つ。
(あの受付のお姉さん、イギリスの訛りが無かったですね。どこの方なのでしょうか)
 待ち時間、暇を持て余し気味に、どうでもいいことを考える。ULTの斡旋所には様々な出身の傭兵達が訪れる為、色んな訛りを聞いてきた。もちろん、イギリスの訛りも。
 そんなどうでもいいことをぼけっと考えながら待っていると、白衣を着た担当者が現れる。
 椅子から立ち上がって、オペ子は挨拶をした。
「ああ、待たせてすまないね」
「いえ、待つのには慣れてますから」
 手垢で汚れた眼鏡に、何日か剃ってなさそうな無精髭、目の下には隈を作っていて研究者然としている男だった。
「こっちが依頼の資料だ。研究室からの提案とそれに付随する資料がまとめてある。傭兵にも回して、参考にさせてくれ」
「あ、はい。わかりましたよ」
 茶封筒が手渡され、オペ子は中に乱雑に入れられた資料を封筒の口から少しだけ取り出し確認する。
「はい、おっけーですね。わざわざすみませんでした」
「いや、いいよ。こっちも早いところ意見は取り纏めたかったしな。いずれ提出しに行こうと思ってたら今日まで遅れちまった」
 男は肩を竦めて苦笑いを浮かべる。オペ子は愛想笑いを返しながら、
「――そういえば、どうして、本社の方でバージョンアップの依頼を出さないんですか?」
 ふと、思った事を聞いた。
「ん? いや、俺は支社の人間だから、本社の事はよく知らんよ。支社の方でやっといてくれって言われたから、仕事としてやってるだけだしな」
 煙草を一本取り出し、構わんか? とジェスチャーで聞く。オペ子はへの字口をしながら頷く。
「まあ、あれだ。アフリカの方がキナ臭くて、そっちに合わせて本社は動いてんだろ。何もKVだけがうちの作る兵器じゃねえ。能力者は1000人に一人。それ以外の999人の為の兵器も時には必要だって事だ」
 紫煙を吐いて、テーブルの上の灰皿で灰を落とす。
「ましてや、熟練のエースパイロットが乗るように設計された高額高性能機のリヴァイアサンだろ。傭兵の超エースパイロットに話を聞けた方がいい。なら、わざわざ本社にご足労願うより、LHの支社でお気軽にご相談くださいって建前が働いたんだろ」
 男は自嘲気味に口の端を吊り上げたが、目は笑っていない。
 何日も寝てない雰囲気、服装の汚れや乱れ、そこから研究室に寝泊まりしている事が窺える。
 おそらく、今回の事は男にとってもチャンスなのだ。リヴァイアサンの改良という実績を手にする為の。
 チャンスを手にする為に、寝る間も惜しんで、バージョンアップの議論や研究を続けている。彼の目はそう言っていた。
「‥‥まあ、訊いてみただけなんで、よく分かりませんが。それより‥‥」
 オペ子は小首を傾げながら、鼻をつまむ。
「傭兵の方が来られる時には、ちゃんと一度シャワーを浴びてからの方がいいですよ。ちょっと匂います」
「おっと、すまねえ」
 研究者の男は、短くなった煙草の火を消しながら、苦笑いを浮かべた。
「そうだな。そうするよ。忠告ありがとうなオペレーターの嬢ちゃん」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
ハンニバル・フィーベル(gb7683
59歳・♂・ER
サクリファイス(gc0015
28歳・♂・HG
ソウマ(gc0505
14歳・♂・DG
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA
一ヶ瀬 蒼子(gc4104
20歳・♀・GD
黒木 敬介(gc5024
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

●会議の始まり
 会議室の扉を開け、集められた傭兵達の前に一人の男が姿を現す。
「遅れてすまねぇ。リヴァイアサンのVUを担当させてもらうシイナだ。よろしくな」
 シイナは挨拶もそこそこに席へ着き、じゃ、始めっぞ、と会議の開始を宣言した。

●特殊能力について
「‥‥リヴァイアサンは、かなり高性能で優秀な機体ですね」
 まずはソウマ(gc0505)が資料を捲りつつ、口火を切る。。
「ただ、機体特殊能力に不満があります。――特に『システム・インヴィディア』に」
 資料の中、インヴィディアについて纏められたページを皆に示す。
「これは機体・武装の能力が高くないと効率が非常に悪いですね。1000あっても追加されるのは150。他のKVだと同じ150追加するとしても、もっと練力の効率が良いですよ?」
 更に続け、
「VUでこの能力を強化したいですね。デメリットは色々あると思いますが、VU前を汎用とするならVU後は短期と区別してみるのも良いかもしれません」
「ふむ?」
 シイナが案に少しだけ興味を示す。そこからのソウマの主張を纏めればこうだ。。
 インヴィディアの効果時間を一瞬に限定した上で、消費練力を増大、能力上昇値の大幅上昇――現在のスペック上で15%を30%まで引き上げる――を狙う。
「‥‥より使い手を選ぶ機体になるかもしれませんが、対敵エース用とかね」
 真摯な瞳を皆に向け、力強く言い切る。
「そうね。最近は水中にも空や陸でも強敵扱いのワームが出るようになったものね。私もインヴィディアの改良には賛成だわ。けど‥‥」
 一ヶ瀬 蒼子(gc4104)はソウマの意見に賛成し、しかし、言を返す。
 火力の向上といってもその方向性は、純粋な一撃の威力を高めるだけではないと蒼子は言う。
「威力を高めて切り札的に運用するのもいいけど‥‥消費練力を低下させて使用回数を増やす方が強敵相手にも連発できて良いんじゃないかしら?」
「――インヴィディアの消費練力低下を狙うのはアリだが、複数回使用可能な値を望むのは無理じゃねえか?」
 蒼子の意見を聞きながら、ハンニバル・フィーベル(gb7683)は目を通していた資料から顔を上げる。
「高い能力ばかりで目移りするが、こいつの肝は機動力だな。ガーッと移動して、敵を有効射程内に入れたらドカドカぶっぱなす。格闘武器以外でも威力を増幅できるスキルがある分、ビーストソウルより攻撃に自由度があるな」
 その巨体が動く度、座った椅子が軋む。
「ブーストで接近&回頭、エンヴィーは随時使って、インヴィディアは大物用のとっておき‥‥てなとこだろう」
 そこで一息をつき、
「確かに燃費は悪い。だが機体の地力を上げてインヴィディアの使用機会を絞り、練力節減を狙うってのはどうだ」
 特殊能力のそのものの向上を捨てて、基本的な能力の底上げを希望する。
 それは、インヴィディアの使用用途として蒼子の回数を増やすという案に対して、逆に使用回数を減らすというものだ。
 消費練力そのものを直接減らすのではなく、間接的な低下をハンニバルは狙う。
「ボクが思うにさ。リヴァイアサンを持ってる傭兵って、いわゆる富裕層なんだよね」
 ハンニバルのそれに対して、意見を述べたのは鯨井起太(ga0984)だ。
 起太が言うに、兵装や機体強化を十分に行える層が乗り手で、今回のVUで機体能力値の上昇を望む意義は薄いとの事だった。
「‥‥だからさ、ボクたちではどうすることもできない特殊能力の梃入れを最優先に考えたいんだよね。それにソウマや蒼子の意見を補足すればさ、元よりリヴァイアサンは、水中における敵精鋭に対抗する為に作られた機体だよね?」
 彼の妹はリヴァイアサンのコンセプト立ち上げに関わっている。これは妹から聞いた事でもあるのだろう。
 並のビーストソウルやアルバトロスでは対抗できないバグアのエース機体と戦う力。それこそがリヴァイアサンに求められる役割ではないか、と彼は言う。その上で、
「ボクが求めるのは、システム・インヴィディアの更なる強化。それによる最大瞬間火力の上昇。コレ一点だよ。一撃必殺の海神の矛こそが、今、リヴァイアサンに必要なんだ」
 起太は言い終えると、続けてシイナに質問した。
「あと、現状だと、攻撃と知覚の両方が上がるところに、無駄が生じているように見えるよね。これを切り替え式にすることで、片方の威力しか上がらないが、上昇率アップ、のようにできないかな?」
「‥‥それはあまり意味がないな。インヴィディアに関して切替式への変更による上昇率向上は見込めない。SESを最大稼働させているだけで、兵装の種類に合わせて調整できるものじゃないからな」
 起太の質問にシイナが答えた後、新居・やすかず(ga1891)が口を開いた。
「兵装の威力不足を特殊能力で補っているため、僕の希望もシステム・インヴィディアの強化になりますね。ただ‥‥」
 やすかずの意見は、起太のそれとは異なる。蒼子の意見に近いものだ。
 %上昇率をUPさせる火力向上はしてもいい。ただし、その場合の消費練力は据え置きでという事だった。
「無理なら消費練力低下を希望します。火力向上は魅力的ですが、消費練力が増えると使いづらくなるので、それは好ましくありません」
 やすかずが言葉を区切った所で、今度はサクリファイス(gc0015)が、
「<ロイヤル・ネイビー>ならば、尤も誉れ高いのは駆逐艦ですね」
 そう言ってリヴァイアサンを駆逐艦に喩える。駆逐艦の特徴は汎用性にある。
 リヴァイアサンの消費練力を全体的に下げる事で汎用性を高め、駆逐艦の様に運用できればとの事だった。
「このパーセンテージのまま、消費練力が下がれば駆逐艦としてお役にたてるかと」
 彼の『役に立つ』とは、彼自身の『主』を守護するという点で役に立つとの意味も含んだものではあったが、詰まる所、やすかずや蒼子と同じく消費練力の低下によってインヴィディアの使い勝手を良くすべきだという意見だ。
「‥‥あー、それだがな」
 消費練力の低下について多くの意見が出る中、シイナが口を開く。
「この手の技術の消費練力としては、インヴィディアは現状でかなり効率の良い方なんだ。たとえ、余剰練力の放出現象があったとしてもな。それに、リヴァイアサンという機体を前提として改良で手をつけられる範囲だと、これ以上インヴィディアの消費練力を抑える事は無理だ」
 シイナが言い終えるのを聞き、周防 誠(ga7131)がそこに意見を返した。
「では、水中戦闘の消費練力の低下を図りながら、システム・インヴィディアの改良を行うというのはどうでしょう?」
 誠の意見は、少しでもいいから消費練力上昇を少なくしたいというところから出たものだ。その上で、誠はインヴィディアの改良に火力の向上を望む。
「出来れば基礎上昇率はドロームのアンジェリカに積んであるSESエンハンサーと同程度まで行くといいんですが‥‥」
 やすかずの消費練力を据え置きでの火力の向上を少し変えた形である。
「あのレベルなら、何とかなるかもしれないが‥‥」
 しかし、水中戦闘の消費練力減少では焼け石に水かもしれないと言うのが正直な所だ。
「じゃあ、僕の番だね♪」
 オルカ・スパイホップ(gc1882)が元気よく言う。
「僕からは、システム・インヴィディアとエンヴィークロックの制御システムを統合して一つにできないかな、って提案させてもらうよ♪」
 エンヴィークロックはエンジンの出力増大を、インヴィディアはエンジンの大出力を利用してSESの最大稼働を行うもの。であれば、両方ともに、エンジン出力上昇に由来するものだ。つまり、エンジンの制御系を調整する事で、同時発動を常とする機能にできないかという。
 またエネルギー効率を改善してインヴィディア発動時に放出される余剰練力を活用し、これを統合された制御システムの別モードとして搭載できないかということも案には盛り込んである。
 狙いは、余剰練力の活用による同時発動時の総合的な消費練力低下と相乗効果による機能上昇だ。
 思いの丈を熱く語るオルカに、シイナはちょっと待ってくれと口を挟む。
「それは無理だ。統合するのも困難だが、余剰部分のエネルギーの流れ込みを制御するには、それこそ新システムの搭載や設計、統合する前から合わせて都合3つ分のシステムを代替するものが必要になってく――」
「――実績が欲しいんでしょ! コレぐらいやってもらわなきゃ!」
「ぐっ‥‥」
 そう言われれば、シイナとしては黙るしかないが、理想と現実は違う。
「まぁ、リヴァイアサンに搭載するのは難しくても、一つ検討してみていただけたらと」
 オルカとほぼ同様に両スキルを連動させれないかと考えていた誠が、今回は無理でも‥‥と後押しする。
「さてと、それじゃ俺も言わせてもらおうかな」
 時期を見計らって黒木 敬介(gc5024)が話し始めた。
「俺は、システム・インヴィディアの改良は、練力消費が倍になってもいいので出力向上を図るべきだと考えるな」
 敬介が言うには、こうだ。
 KV戦闘はその性質上、勝負は一瞬で着くものである。まして、これが対エース戦になれば長くて数十秒、早ければ十秒に満たず自身が撃破される可能性もある。
 そして、インヴィディアの様な能力上昇機能が最大限に発揮されるのは、この対エース戦であり、雑魚を掃討する場合での使用を意識する必要は少ない。
「――つまりだ、対エース戦を想定した場合、練力は自分が撃破されるまでに使い切ってしまうのが望ましいんだ」
 更に敬介は続ける。
 リヴァイアサンの練力は現状でも高い。フル稼働したとしても、十秒で練力切れで動けなくなる心配は無い。という事は、対エース戦の戦闘時間を前提とすれば、消費練力の上昇は特に問題がない事になる。
 ならば、その分だけ火力の向上を高める強化を施したい。
「それに元値が高いほど機体スキル強化の補正幅は大きくなって恩恵は増えるしな」
 そう言って敬介は締めくくる。
「なるほど。現場での運用はそうなっているのか‥‥」
 データとしては知っているが、生の声として聞くと、それは別種の重みがあった。
「あと、意見を述べてないのは‥‥」
「やはり紅茶はいいね〜」
 と、シイナは紅茶を味わうドクター・ウェスト(ga0241)に視線を送る。
 視線に気づいて、ウェストが顔を向ける。
「う〜ん、我輩はリヴァイアサンのスキルや性能で特に困ったことはなかったがね〜」
 ウェストは工廠の方からの提案に自らの望むモノはなかったと目で語っていた。
「今のところ困ったことは技術の差かね〜」
 ウェストによれば、人類とバグアの技術に差があり過ぎる、と言う。
 以前にリヴァイアサンで潜行できる最大深度の水深200m以上へと敵キメラに潜行され、逃げられた経験があった。その苦い経験をもとに提案する。
「設計からの見直しとなるから無理だと思うが水深200m以降の深海への潜行戦闘能力、または敵の内部に気体を送り込み浮力を増すことで深海に逃走できなくする兵装はどうかね〜。一考してみてくれたまえ〜」
 ウェストは笑顔を浮かべ、
「雷電に水中用キットをつけていた頃に比べたら、何も文句はないがね〜」
 僅かに肩を竦めた。
 シイナはその提案のどちらにも頷く事は出来ず、やや弱った顔をした。
 どちらもリヴァイアサンのVUに活かせる提案ではない。
「‥‥何にせよ、改良するならインヴィディアか。消費練力の低下は困難だから、火力の向上を第一に、出来る限り練力消費を抑える方向だな。その上で、更なるインヴィディアの消費練力低下は傭兵達自身の手で改造して実現してもらうことになるだろう。最悪、人によっては消費練力を優先してVUしないで運用してもらう事になるかもしれんが‥‥そんなところだな」

●向上させる能力値について
「さて、機体の能力値についても意見を聞かせて貰おうか」
 シイナが言うと、すぐに反応したのはやすかずだ。
「基本性能を上昇させるとすれば、攻撃一点強化を行いたいところです」
 兵装の火力不足を徹底的に機体で補う考えのようだとシイナは感じた。
 だが、攻撃の一点強化はともかくとして、攻撃の強化には、能力値向上について意見を持つ者のほとんどが思案の中に入れている様だった。
「なるほどな。インヴィディアによって最終的に上昇する攻撃力の数値も上がるし、多少ではあるが消費練力の効率UPにも繋がっている。攻撃力の上昇は必須だな」
 シイナが深く頷く。攻撃力の上昇に重きを置いて、その他にも上げるべき能力はあるかと意見を募ろうとした時、
「おっと待ってくれ」
 敬介からそれに待ったがかかった。
「システム・インヴィディアの強化を行うなら、それを当てる為の命中を最優先にしたい。攻撃は命中機能を向上させた後、その余剰くらいが望ましいんじゃないかな」
 敬介が言うと、サクリファイスもそれに追随する。
「僕も黒木様と同意見です。当たらなければ、意味がありませんし。駆逐艦としての印象を強く持ちましたので」
 二人の意見を聞き、シイナは、また、ふむ、と頷く。
「それもそうか。確か、敬介もそうだが、リヴァイアサンは強敵を相手にするというのが、ほぼ全員に共通した認識だったな。それも、強敵相手のとっておきであるインヴィディアの火力向上をするなら‥‥必然、強敵に当てれる命中力が必要になってくるってわけか」
 そこまで、自らの考えを整理する様に言って、シイナは頭を掻いた。
「どっちか片方だけあればいいって問題でもないな。こりゃ‥‥。どっちも必要だとするなら、ぎりぎりのラインを探ってみるしかねえか」

●その他
「あ、僕からまだあるんだけど!」
 まだまだ語り足りないと言わんばかりにオルカは、アクティブアーマーをアッシェンプッツェルの技術を応用してVUできないかと訊いた。
「難しいな‥‥アクティブアーマーは機体の一部と言ってもいい。そこに、別の技術を取り入れるなら、まったく新しいコンセプトの機体になってしまうだろうな」
「私の方からはVUとは違う話なんだけど‥‥」
 そう断りを入れてから、蒼子が話しだす。
「水中用の知覚兵器、特に射撃武器の充実を図れないかしら?」
 非物理攻撃に弱い敵に対する水中兵装が手に入りにくい状況にある、と蒼子は説明する。ハンニバルは知覚射撃武器の充実と言う点でこれに頷き、やすかずは知覚ではなく攻撃力100以上という注文をつけた。
「あー‥‥なんだ。それは俺じゃ答えにくいな。俺の方から本社やULTに伝えるだけは伝えてやってもいいが、結果が出せるかはわからんぞ?」
 シイナは少し困った顔で答える。
「‥‥さて、そんなところか? 今日は集まってくれてありがとうな。まあ、やれるだけやってみるさ」
「ふふ、期待しているよ。頑張ってくれたまえ」
 礼を言うシイナに対して、起太が最後に発破をかけた。