タイトル:おべんと屋さん 日々戦マスター:呉羽
シナリオ形態: ショート |
難易度: 易しい |
参加人数: 8 人 |
サポート人数: 0 人 |
リプレイ完成日時: 2007/11/07 16:40 |
●オープニング本文
ラストホープには、たくさんの人が住んでいる。
UPCの皆さんに、能力者である傭兵の皆さんに、彼らの家族だとか、お金持ちの人達だとか、商売やってる人達だとか。
それはそうだ。兵士が動くのには何が必要だ? 卓越した技術、選ばれし能力、積み重ねた知識、日々の訓練。それから?
「えーと‥‥そうですね。毎日訓練じゃ疲れますから‥‥たまにはぱーっと遊べるゲームとかあるといいですよね。後、映画とかも見たいなぁ」
勿論それはあるとも。君はまだ此処に来たばかりで見回っていないのだろうが、娯楽施設はいろいろある。
「あ、じゃあ‥‥そうですね。気晴らしに買い物とか。流行の服には気を使ってるんですよ〜」
そうか。だが服よりも最新鋭装備に気を回せ。
「そんなぁ‥‥。オシャレは大事なのに‥‥」
ともあれ、ショッピングモールもある。暇があったら覗くといい。
「やったぁ。じゃあ、後欲しいのは‥‥大きいベッドかな〜。睡眠は大事ですからね!」
確かに睡眠は大事だとも。優秀な兵士は、きちんと休息を取るものだ。命がけでな。
「えぇ‥‥? 休憩くらい楽させて下さいよ‥‥」
馬鹿者。何事もメリハリが大事なのだ。
「はぁ‥‥じゃあ、後は‥‥何が要るかなぁ‥‥」
忘れているだろう。とても大事な事を。睡眠の次に不可欠な物を!
「え‥‥何だろ‥‥。靴はこの前買ったし‥‥シャワーからはお湯出るし‥‥とりあえず武器の点検はしたし‥‥」
とりあえずじゃなくてちゃんとしろ! そしてわざと言っているだろう?!
「‥‥ほんとに分かりません‥‥」
何という奴だ。そんな事では密林のキャンプにも行けないぞ。
「わざわざ密林にキャンプなんて行きません」
いいか。人は生きる上で、原始的な欲求に喜びを感じなければならん。眠る事も、食べる事も、非常に大切な事なのだ。それを疎かにするような奴は、兵士としては3流以下だ。
「あ〜‥‥食べる事も好きですよ。美味しい食事が出来れば幸せです」
だが惰眠や大食を貪ってはならん。過少も過多もならん。自らの力を最大限に生かす為に、最も効率の良い所を見定めねばならん。
「はぁ‥‥難しいですね」
どんな高性能な生物でも、燃料が無くては話にならん。睡眠も食事も質を重視せねばならん。というわけで。
「‥‥はい?」
皆に、質の良い食事を提供する。これは極めて大事な事だ。だが忙しさの余り、昼食もまともに取る時間が無い。こんな経験は無いか?
「えーと‥‥無いです」
君は昼食を取るのに2時間かけるタイプだな。
「1時間は欲しいです」
というわけで、質の良い昼食を皆に配達する任務を君に与えよう。そこのビルを曲がった所に、開店し立ての『弁当屋生駒』がある。そこで配達する相手の名前を聞き、間違える事なく時間内に注文主に届けてくれ給え。弁当の名前も間違えるなよ。
「はぁ‥‥」
弁当の種類は7種類。
『緑野菜弁当』が10人、『鮭弁当』が22人、『栗弁当』が16人、『茸弁当』が8人、『焼肉弁当』が28人、『変わり種弁当』が6人、『スープ弁当』が11人。
弁当の注文主は多岐に渡る。UCP本部、宿舎、傭兵、娯楽施設の店員、高層ビルや地下で働いている人々、など。
「いいか? うちのモットーは『速い 高い んまい』だ。弁当の中身を崩さずに、いかに短い時間で美味しく召し上がっていただけるか。これに全てが凝縮されている。弁当宅配は日々戦い。君達の働きにかかっている。このラストホープに暮らす人々の邪魔にならないよう、注意も払いつつも頑張ってくれたまえ。‥‥それから、『一番多く、時間内に、しかも綺麗に、お届けした時には笑顔で』運べた人には報酬を上乗せしておくよ」
ただし、と弁当屋店長は呟く。
「競争は程々にな」
●リプレイ本文
●
周囲の家に埋もれるようにして、実に目立たない家が一軒建っていた。大通りにあるわけでもない。人通りが多い場所でもない。エカリスの端にある閑静な場所でそれを彼らが見つけたのは、神の思し召しとやらかもしれなかった。
「大変そうだし、手伝うよ」
一通り現状を聞いて、アーク・ローラン(ha0721)はその内容を簡単にメモする。
「ブリーダーとして初めてのお仕事ですねっ。がんばりますっ」
シルビア・アークライト(ha0870)は両手をぎゅっと握り、元気な声で皆に挨拶。
「皆、初めてじゃないかしら? でも何だか楽しそうだわ。和気藹々と出来るように頑張ってみますね」
片頬に手をやりながらカーラ・オレアリス(ha0058)が言うと、
「皆さんと協力して必ず良い方向に持っていきますからね」
ルナ・ローレライ(ha0477)が伸びやかな声でマゼンタに告げた。
「お店の名前の由来とか、思い入れをお聞きしたいのですが」
目をぱちくりしているマゼンタに、ティセラ・ウルドブルグ(ha0601)がそう尋ねる。
「由来かぁ‥‥。ブリーダーが店員でブリーダーの客がいっぱい入って‥‥それがウリになるような店になるといいなぁってだけで」
「ではそのように致しましょう。お客さんで一杯の店に」
ラグナス・フェルラント(ha0220)がにっこり笑って告げ、ライディン・B・コレビア(ha0461)もその背後でパンと二の腕を叩いた。
「よっしゃ。この腕が役に立つなら、いくらでも貸したろうじゃないのっ」
「ま、とりあえず始めてみよっか。店長も頑張ってね? 店長の店、でしょ?」
皆を見回してからアークはマゼンタを見つめる。それを受けて、彼女は大きく頷いた。
「本当に助かる。宜しくね、みんな」
以上7名。ブリーダーカフェの臨時店員にして救世主となりえるであろう今回のメンバーである。
●
「さて‥‥俺と店長、どっちが上手いか勝負だーっ!」
「そうですね。まずはお客さんが来ない理由を洗い出しましょう」
ライディンの意気込みに、ティセラも頷いた。
というわけで。
早速厨房にて、店長VS臨時料理人の戦いの幕が切って落とされた。
「よし。まずは既存のメニューだなっ」
ライディンが素早く鍋を火にかけ、材料を一瞬火で炙ってから中に流し込んだ。手早く掻きまぜ、この程度と見込んでおいた調味料を入れる。
「ほい、一丁あがりっ」
「は‥‥速い」
「ほら店長。余所見すると落と‥‥した」
1品目だけでも、全く話にならない勝負は早々に終了し、早速皆による味見が開始された‥‥が。
「こ、これはっ‥‥」
「お水ください」
店長が落とさなかった部分を少しだけ試食したものの、焦げが酷い上に凄まじく濃い味付けであった。
「あ‥‥これは生き返ります」
「美味しいですわ」
一方ライディンの料理は皆が満足の行くものであり、ライディンは腕を組む。
「何か泣けてきた‥‥。とりあえず店長。少し指導するから‥‥」
ライディンに肩ぽんされ、マゼンタはこっくり頷く。自分の料理が致命的であるという自覚がある分、教えやすいだろう。
「提案なんですが‥‥」
「はい、ラグナス君」
店長の料理さえも笑顔で試食して笑顔のままそっとテーブルに戻していたラグナスが、手を挙げた。
「この店の名物を作りませんか? 店長は料理が得意ではないようですし、ミックスジュースはどうでしょう」
「それはいいですね。‥‥お店の宣伝をする為にも、お薦め料理も作っておいたほうがいいですよね」
ぽんと両手を合わせてティセラは客席を見渡す。
「それから‥‥メニュー表もあるといいと思います」
「名物なら、クッキーも作ってみませんか? エレメントごとに味が違うクッキーで、ハーブを1種類ずつ混ぜてハーブクッキーとか。勿論形は可愛いエレメント型で、お持ち帰りも可能としてみてはどうでしょう」
ルナの提案に、ライディンも頷く。
「エレメント形クッキーにミックスジュース。俺もメニューを持ち込んだから、これでやってみるか」
「ジュースには、お酒を混ぜて出せば夜のお客さんにも対応できますよ」
「ん‥‥じゃあ俺、外装用の道具買ってくるね」
アークも料理は作れるが、外装担当がのんびり料理レシピに携わる時間もないだろうと、彼は立ち上がった。
「では私はお店宣伝用のチラシを作りますね‥‥と言いたい所ですけれども」
皆が自分の仕事を開始しよう! と動き始めた時、カーラが穏やかに口を開いた。
「あそこで倒れている方がいらっしゃるんですけど」
「シルビアさん?!」
「ぅ‥‥おみず‥‥くださぃ‥‥」
ぱたり。
「シルビアさんが死んじゃいます!」
慌ててティセラが駆け寄り、店の片隅で倒れているシルビアの上半身を起こす。そこへカーラも近付いてメンタルリカバーを使い、シルビアの精神的ショックを癒したのであった。
●
「ふぅ〜‥‥食べたら痙攣するくらい不味い料理なんてあるはず無いと思ってましたけれど‥‥マゼンタさんの料理はびっくりでした」
実は最初にマゼンタの料理が食べてみたいと言ったのはシルビアである。危うく臨時店員の1人を精神的に抹殺しかけた店長の料理の腕前を正常な方向に持って行くのは、結構骨が折れる事かもしれなかった。
ともあれシルビアも回復した所で。
「ブリーダーさんも、ペットさんもくつろげる空間をご提供する喫茶店です〜。ステキな料理と紅茶、お菓子に特別メニューで皆さんをおもてなしします。いかがでしょうか〜」
『エカリスの新たな癒しの空間、ブリーダーカフェ♪』と銘打たれたチラシを持って、カーラが大通りをメイド服で歩いていた。メイド服と言っても、上品な紺色に長い丈のスカートで、しっとり落ち着いた雰囲気を醸し出している。そんなカーラの肩には彼女のエレメント、スワローの鳥子が止まっているが、少々臆病な性格の為か人が近付きすぎると逃げてしまう事もあった。
ラグナス、シルビアも外で声を掛けて回り、ついでに店員募集も付け加える。
「♪おいで おいで」
ルナはオカリナ片手に大通りから裏通りまで、歌って回った。
おいで おいで 安らぎの 宿木へ
おいで おいで こちらの カフェへ
エレメントと 共に 美味しい 料理を
ブリーダーと 共に 休まる ひと時を
貴方の心に このカフェは いつまでも
広大な草原を靡かせる風のようなメロディの歌に、時折家の窓が開く。そんな人々に届くよう、彼女は繰り返し歌声を響かせた。
「えぇと‥‥ここでいいですか〜?」
「曲がってる」
「こ‥‥こうですか〜?」
「逆に曲がりすぎ」
一方アークとティセラは、店の内装と外装の飾り付けを行っていた。
「‥‥少しは急いで仕上げるかな」
木材も工具も塗装用品も手に入れた。扉と看板には色を塗る事を店長に告げ、その色合いの相談もした。
「し‥‥身長が欲しいですっ‥‥」
めいいっぱい手を伸ばしてぷるぷる震えているティセラに、はい、とアークは踏み台を渡す。そして扉の彫刻に取り掛かった。看板の色は橙。扉の色は優しい緑。昼夜問わず入りやすい雰囲気を目標として、アークはこつこつと作業を進めていく。ティセラはメニュー表を作って各テーブルに置いたり掃除をしたり、と言った作業も行っていたので、基本的に飾り付けはアークの仕事だった。
当然1日や2日で終わる仕事ではない。
新装開店と呼び込みをして客が入り始めてからも、彼は自分のペースで作業を進めて行った。扉は人間サイズなので、シフール用の入り口は欲しい。だから扉にはシフールサイズの押し扉を設置。看板は置き看板で目立つように。下げ看板は鳥の絵。置き看板は犬猫馬と、共に居るブリーダーの形で作成した。営業中かどうか分からないと困るので、営業中、と準備中、と両面に書いた札も扉から下げておく。
「ねぇ、見てるついでにココで休んでいかない?」
毎日外で作業していれば、自然と目にもつく。しかも彼の傍には今がやんちゃ盛りのノーマルホース、セエレまで居るのだ。時折彼女に水や餌を与える姿に、子供達がやって来る事もあった。
「お、笑顔がいいね。店員さんとか興味ない?」
「アークさん、暑いからアリアに水浴びさせようと思っ‥‥そっ‥‥そんな趣味がっ」
「ナンパじゃないから。子供に言ったわけでもないから」
馬を連れて出て来たシルビアに5歩くらい引かれたりもしたが、彼曰く『真面目な勧誘』はそれなりに功を奏し、興味を示した人達が店内に入るようにもなっていた。
●
「へぇ〜‥‥アークさんってナンパ師だったんだ〜」
「何事も成せば成る、ですよ。ライディンさんも挑戦してみては?」
「俺は今、料理に燃えているっ!」
アークナンパ師説が地味に広まる中、ライディンは持ち込みメニューをがりがり作っていた。おすすめランチのA、Bコース。夜はコース無しで4、5品のメニュー。スイーツ3品にオススメパスタ。それからユニーク商品の‥‥。
「『大高原パスタ』ミートソース味ひとつ」
「遂に来たかっ」
「それからミックスジュースを3つですね。ラグナスさん、出番ですわ」
「はい、了解です」
ラグナスがテーブルに果物と水を持って向かった。
ミックスジュースは、3品までの果実をミックスして飲むジュースである。旬の果物を揃え、砂糖水や蜂蜜を用意。彼としてはグレナデンシロップを使ったジュースがお薦めだったのだが、時期的に柘榴が採れないのでは仕方が無い。
「当店お薦めの組み合わせは、『オレンジ、パイナップル、レモン』の3品です。爽やかで甘酸っぱい、夏に最適な逸品ですよ」
とだけ言って、それ以上お薦め商品を推したりはしない。あくまで主役はお客。楽しんでもらって『次はあのジュースにしよう』と再度来てもらう事が重要なのだ。
又、彼は夜の酒も担当した。酒好きの彼らしく、種類は幅広い。
食後の紅茶に関しては、給仕担当のカーラ、ラグナス、シルビアは練習して挑んだ。新鮮なほうがお客は喜ぶから、目の前で入れてあげるといいと思うとシルビアが発言したのである。
「あら‥‥鳥子さん、ありがとう」
優雅な仕草で紅茶を淹れていたカーラのもとに、鳥子がスプーンを咥えて飛んできた。それを受け取り皿に置いて、紅茶をお客の目の前へと移す。
「こちらは『エレメントクッキー』でございます。鳥で宜しかったですか?」
紅茶にクッキーを添え、カーラは優しく微笑んだ。その上品な仕草と笑顔に、何人かの客が彼女に『プライベートな』声を掛けたらしいが、その都度彼女はやんわりその誘いを断った。
「ハーブティは‥‥マゼンタさん。裏に園芸用の小さな庭があるとおっしゃってましたよね?」
ルナはクッキーの生地をこねこねしながら、ふと思い出してマゼンタに問う。
「私は耳で覚えましたが‥‥普通はレシピとして書き記したほうが分かりやすいですよね。裏でハーブをお作りになるなら、いろいろご協力できると思うのですが」
「枯らさないよう頑張ってみる」
「滅多な事では枯れないんですけどね‥‥」
ハーブティとクッキー担当のルネだが、時折店に出てこの店の為に作った歌を披露したり、イリュージョン魔法を使って幻想的な風景や動物を見せたりもした。
「私が居るとき限定のイベントなんです。お客様方、得をなさいましたね」
ウインクをしてそう囁く彼女に、お客は拍手喝采を送った。
「シルビアさん、こちら持ってもらってもいいですか?」
そんな中、ティセラは巨大な敵を目の前にしていた。
「は〜いっ‥‥うわぁ‥‥」
2人の目の前に、でんと『大高原パスタ』とやらが鎮座している。大皿も大皿に盛った、さながら‥‥、
「大高原の如き雄大さと過酷さを持つ大食い専用メニューだ! 10分で食いきれば食事代は俺持ち! どうだい? お客さんっ」
「お〜また〜せ〜し〜ました〜」
厨房から出てきてアピールしていたアークの居る所へ、14歳の2人の娘がよたよたとそれを運んできた。実際のパスタは見た目ほど重くないが、とにかく皿が重いのと演出も兼ねている。
「‥‥お〜‥‥睨んでる、睨んでる‥‥」
結果は言うまでもなく、そのお客に帰り際、わざわざ厨房を覗き込まれて『このヤロウ‥‥』と言われる有様だった。
●
最初の2日ほどは客足も伸び悩んでいたが、彼らが店を出る5日目の昼食時には、満席になるほどの賑わいを見せた。口コミで広がった部分もあるし、皆が定期的にチラシを配ったり呼び込みをしたのもあるだろう。ライディンの料理が美味しかったのも、ラグナスが提供するジュースと酒が楽しかったのも、ルナの歌やイリュージョンショーが素敵で、シルビア発案の制服(これはまだ完全に出来上がってはいないが)が可愛かったのもあるだろう。或いはカーラの歳を感じさせない美貌と歳相応の上品さだったかもしれず、ティセラの書いたメニューの見易さと愛らしさだったかもしれない。
「ん。最後の1個完成」
余った木材で、アークは手の平サイズの木彫り人形を作っていた。マゼンタと、そのペットスワローのモーブ、自分も含めた、一緒にこの5日間戦ってきた仲間達。全部で9個の人形である。どれもポーズは少しずつ違い、それを1つずつ客席のテーブルに並べ、最後の1個であるマゼンタの人形はカウンターに置いた。
「ありがと。何だか‥‥深い愛を感じる」
「今日も言うけど、そういうんじゃないからね?」
5日間でマゼンタにまで『ナンパ師』印象は浸透したらしい。勿論皆、多分半分以上冗談で言っている。
「それより店長〜。料理、出来るようになった?」
「うっ」
急に胸を押さえて倒れこんだマゼンタの背後に、にょきとライディンが立つ。
「俺の特訓の成果は出てると思うけどな〜。よし、最後に食べてみようっ」
言われてマゼンタは料理を作る。初日に作ったものと同じシンプル料理。野菜と卵の焼き物を。
出来上がった料理はライディン作よりはかなり不恰好だったが、一応焦げ目も色も食べる事が出来そうである。
「‥‥」
シルビアは、皆より3歩ほど後方から様子を窺っていたが、皆が食べているのを見て恐る恐る自分も口に運んでみた。
「‥‥不味くは、ない、です」
「出来るようになったんだ。良かったね」
人並みの料理に近付いた事に、皆は素直にマゼンタを祝福する。その言葉に、マゼンタは自分も食べてみて2度瞬きした。
「ありがとう‥‥本当にみんなのおかげだね」
「よしっ。じゃ、打ち上げパーティだな!」
「賛成です」
一応、少ないながらも常雇店員は確保した。料理人も明日から来る手筈になっている。内装も外装も落ち着いた色合いと可愛い細工、動物達が入っても落ち着ける空間を作り、動物用のトイレも完備した。馬を連れたブリーダーは、厩に入れる以外に専用のスペースで一緒に食事が出来るようにもなった。
皆と一緒に楽しみながら、マゼンタは思う。これは『奇跡』。
だから、これからも大事にしていかなければならないと。