タイトル:アグレッサーマスター:熊五郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/23 23:07

●オープニング本文


 第88戦闘教導航空団司令、ハルトマン大佐はブランデーを注いだグラスを傾けた。
「まさか、君が軍に戻っているとは」
 対面に座る男は煙草を吹かして苦笑いを一つした。ハルトマンはその男、ハンク・ネルソンを値踏みするように睨んだ。事務職に就いたと言っていたが、ハンクの体に衰えは見られない。厚く着込んでいても、その所作で肉体がどうあるかは大抵わかる。ハンクのそれは戦士のそれだ。自分の体は、空を飛ばなくなってから見る見るうちに萎んでいったというのに。ハンクも、既にそういう歳だ。努めて保たなければ、肉体の衰えは恐るべき速度でやってくる。
 次いで、ハルトマンの視線はハンクの左目に注がれた。縫い合わされた上下の瞼。醜く変色したその下には、あるべき目玉も無いのだろう。それが、傭兵をやめ、特殊部隊で作戦士官なぞやっている理由かと察した。
「それで、アグレッサーの司令ともあろう方が一介の傭兵を酒に誘うとはどういうことです?」
 そう、目的は傭兵であるハンクに、ある依頼をすることだった。
「うちにいるのはな、皆が皆変人だ。我々はバグアになりきらなければならない。でなければ、訓練にはならんからな」
 第88戦闘教導航空団、通称アグレッサー部隊は、その名の通りパイロット養成のために敵役として訓練に参加する部隊だ。隊員はいずれも音に聞こえたエースパイロットで、全員が黒く染めたS−01改を愛機としている。
「当然秘密の多い部隊だ。お前のところの、なんと言ったか、SRPだったか? それと似たようなものだな」
 ハンクは黙って聞いている。数いる傭兵の知り合いの中からこの男を選んだのは、彼が信用に値する男だからだ。口は硬く、頭も切れる。墜落した隊員を救出させたとき、最もハルトマンの目にとまったのが、このハンク・ネルソンという男だった。
「アグレッサーにも訓練は必要だ。バグアと戦う度に、こちらにも被害が出る。その度に新人を引き込むが、徐々に質が落ちている」
 新人、と言っても各隊で類い希な戦果を挙げた者だ。素質も腕も最初から持っている。しかし何かが足りない。敵を演じるのではなく、なりきることができない。
「一度、同等の相手とぶつけたいと思ってな。それも、訓練ではなく。実戦で」
 ハンクの眉が片方だけ跳ねた。どうやら興味を持ったらしいが、さてどうするか。
「酷いことを考える。その部隊に奇襲を掛けろと? ああ、なるほど。それで俺に、能力者仲間を集めさせようと、そういう話だったわけですか」
 ハルトマンは静かに頷いた。
「そうだ。一切口外しない、という約束で能力者を集めて欲しかった。そして、いつも通りの任務、すなわち非能力者の部隊との訓練だと伝えたうちの者達を、襲撃してもらう。生憎、傭兵の知り合いが少なくてな。君に頼みたいんだが、軍に戻っているということでは難しいか」
 ハンクはしばらく考える素振りを見せる。
「元々、俺はKVには乗らないんですよ。AIがどうにかしてくれるとは言え、苦手なものでね。ところで、武装はどうなるんです」
「無論殺傷能力のないものを使う。金は掛かるが、それで優秀なパイロットを育成できるなら安いものでな。能力者にも同じものを積んでもらうつもりだった。一定以上のダメージ判定で、仕掛けた装置がフライバイワイヤに介入、機体を強制的に帰投させる。着陸はできないが、燃料のことを考えれば、パイロットは降りざるを得ない、というわけだ」
 ハンクがにやりと笑った。
「なるほど。面白そうだ。言った通り俺はKVには乗らない。ですが、有能な傭兵を集めろ、という話なら別だし、貴方には恩がある。引き受けましょう」
 意外な返答だったが、恩とはこの男らしいと笑って、ハルトマンは手を差し出す。ハンクはしっかりとそれを掴むと、席を立った。
「では、早速取りかかりましょう。集められて八名ですが、なんとかしてみますよ」

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
榊原 紫峰(ga7665
27歳・♂・EL
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
ラウラ・ブレイク(gb1395
20歳・♀・DF
ルーシー・クリムゾン(gb1439
18歳・♀・SN
ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522
23歳・♂・SN
束祭 智重(gb4014
21歳・♂・SN

●リプレイ本文

●疑問
 デルタ編隊を組んだ八機のS−01改の小隊。コールサインはアシール。じき訓練空域、というところでレーダーが機影を捉えた。IFFには応答有り。友軍機。だが妙だった。まず一つ、その全てがKVであること。彼らが相手にするのは基本的には軍の戦闘機だ。KVとの訓練というのは隊内で行う程度で、あまりやらない。二つ、
『HWとの戦闘で派手にやらかしたから、あなた達が上がってきたところに降りさせてもらうわ』
 という向こうからの連絡。少なくとも管制からの連絡は無い。八機のKVが苦戦するような戦闘があれば、周辺の基地ではアラート待機態勢が取られ、不意の襲撃に備える。当然それは空域を飛行中の航空機には一番に知らせられる。
 アシール各機は、管制に確認を取っているリーダー機を一度睨み、心の準備をした。戦闘の気配が嫌というほどに漂ってくる。
『着陸要請は受けている。高度、進路はお互いにそのままだ』
 管制からの返答はそれだけだった。この管制官も、この作戦の概要を知っている。能力者がそういう設定で来るのなら、と口裏を合わせているのだろう。だが、今の一言で僚機には確実に不審の波が広がった。その変化を敏感に感じ取ったアシール1は、口元を歪めた。
「了解した。そちらの所属は確認している。進路、高度共にそのままだ。ぶつかりたくはない」
『了解』
 友軍機との交信を終えたアシール1は、さて、と前置きしてから僚機に向けてこう言った。
「各機、距離を取れ。不審に思われない程度にだ」
 小さくまとまっていた三角形の編隊が巨大に広がる。一網打尽にされないための、よくある手だった。
「バグアじゃねえだろうな」
 アシール2の軽口は、いつも惜しい。


●ばれた?
「バレている様子ですか?」
 水上・未早(ga0049)は交信を受けてそう言った。アグレッサー――アシール隊からの応答はあまりにも素直で、額面通りには受け取れない。
「十分な言い訳とはいえないから、少なくとも疑われているでしょうね」
「そうですね。あまり、喜ばしい事態ではなさそうです」
 とラウラ・ブレイク(gb1395)、榊原 紫峰(ga7665)。
「怖いな。いくら打ち合わせはしていると言っても、向こうは毎日組んで飛んでいるだろう。しかもエースだ」
「怖いなんて言ってる割には、嬉しそうじゃないの」
 レティ・クリムゾン(ga8679)にツッコみを入れるのは束祭 智重(gb4014)。
 八人は三機、五機に別れ、アシールよりも高度を取って巡航速度で飛行している。ぶつかり合うまでに、一分と時間は掛からないだろう。危険は無いとわかっている八人だが、スティックを握る手にはじんわりと汗が滲んでいた。KV同士の戦闘、というのはそれほどに珍しく、今回は相手の実力も高い。HWとぶつかり合うのとは違う、妙な緊張感があった。
 緊張は、重傷の体を引きずっての参戦となったハイン・ヴィーグリーズ(gb3522)に顕著だった。視界は霞み、指が震え、恐らくまともな戦闘は行えない。被撃墜はほぼ確定したようなものだったが、それはそれでやりようはある。何せ撃墜とはいっても何やら小難しそうな機械が判定を行うだけのこと。実際に墜ちるわけではない。となれば多少の無茶も可能であり、元諜報員の頭は、如何にしてこの苦境を勝機に変えるかを思案し続けていた。
『こちらアシール1。被害があるのか? どういう状況だ』
 低い声。年の頃は三十をいくつか過ぎたところ、といった感じだ。
「機体に損傷はありませんが、電気系統に異常があるようです」
 ハインは敢えて己の状態を告げた。
『了解』
 やや間を置いたその返答が、ハインに己の失策を気付かせた。アシールにこちらの嘘を信じ込ませ、あわよくば不調を餌に慢心を誘うつもりだったが、どうやらそういったものとは無縁の連中らしい。
「失敗、したかもしれません」
「油断するどころか、集中的に狙ってくるぞこれは」
 苦笑したのはヒューイ・焔(ga8434)だった。
 アシール1は作戦を知っているため、決して自発的には動かない算段になっている。となれば、彼は僚機に請われて尋ねてきたということだ。
「とにかく、やりましょう」
「うん。出来る限り多く墜とそう」
 ルーシー・クリムゾン(gb1439)の言葉を受け、どこか嬉しそうな声で、レティはHUDカメラを起動しながら応えた。


●会敵必殺
 遙か彼方に、豆粒のような機影を確認すると、蛇が鎌首をもたげるときのように、八機のうち三機が不意に高度を上げた。瞬間、アシールが二手に分かれた。奇襲ならず。とっくに備えていたというわけだ。
「墜とす気満々じゃないかあれ」
 やる気全開の機動を前に、ヒューイがこぼす。
「交戦許可、出てるのかしら?」
 ラウラは苦笑混じりに言う。
「ジャミング、開始します」
 ルーシーの涼やかな声を聞いて、レティがシーカーに集中する。豆粒大だった敵は、既にその形まではっきりと分かるほど接近していた。噂通り、真っ黒なS−01改。感じる威圧感は伊達ではない。
 アシールは四機ずつで散った。できれば隊長機を最初に墜としておきたいところだが、果たしてどれだろうか。
「私達は右を。左は任せる」
「了解よーん。やってやるわ」
 左右に視線を巡らせたレティは、分からないと結論付けて向かって右の編隊に機首を向けた。狙われた四機は、更に上下に散ってブースト点火。上に向かった一機はほとんど垂直に上昇している。真下を抜けるコースの三機を追っても間に合わない。どちらへ対応するか悩む一瞬の隙に、最適の角度で逃げおおせていた。舌打ちを一つ、上昇する一機に追従するように、レティとヒューイが続く。
「捉えた」
 オーラルトーン。同時にレッドアラート。下方に逃げたアシールが下から狙ってきている。一機は単身降下した未早が追い散らしたが、もう二機が背につく。
 捉えられたのは一機のみ。四機は狙いたかったところだが、奇襲が察知されていては仕方がない。けたたましいビープが逃げろと叫ぶ中、レティは落ち着いてトリガー。K−01小型ホーミングミサイルが放たれる。ヒューイの放ったロケット弾もまた、噴射煙を引き裂きながら飛ぶ。
 全弾を避けるのは不可能に近い。総数502発の飛翔体は、面で一機に向かっていく。フレアを射出しようと、どんな機動を取ろうと最早回避はならない。殺到するミサイルの雨から逃れる術は一つしかなかった。アシールのキャノピーが吹き飛び、座席ごとパイロットが射出される。
「ベイルアウト!? 訓練だぞこれ」
 ヒューイが唖然とする。敵機にある程度近付いたところで効果を失ったK−01ミサイル及びロケット弾をぽかんと見つめたアグレッサー隊員は、レティ機、ヒューイ機を指差し、銃を撃つマネをした。バン、と。
「二人とも回避を!」
 一機を抑えている未早に言われ、二人は背後に迫る脅威に対応すべくラダーを蹴り、スティックを引く。噴水の水が頂点に達したかのような機動で真横に抜けた二機のうち、狙われたのはレティだった。
「く‥‥っ」
 やけに正確なバルカンの偏差射撃を、機体を捻って回避するも、矢継ぎ早に放たれる火線は徐々にレティを追い詰めていく。
「距離が離れすぎてる」
 ヒューイがすぐに反転して追いすがろうとするが、離れた距離は既にキロ単位だ。
 未早は歯噛みする。予定では、K−01を起点として奇襲を終えたら、三機は一気に離脱。すぐに五機と合流する手はずだった。だが目論見は外れ、五機の方も苦戦している様子で、掩護は望めない。未早からレティまでは距離も短いが、そちらに向かえば恐らく今抑えている一機に撃墜されるだろう。
「かといって、この状況で動かないわけにもいきませんよね」
 溜息を一つ、ブーストを発動し空を切り裂くように飛んだ未早機は、想定外の動きに一瞬出遅れたアシールを引き離すと、レティを狙う一機目掛けて高分子レーザーを放った。レーザーの着弾を確認するより早くブレイクするが、隙だらけとなった未早目掛けて尾を引くミサイルが、今にも着弾するところだった。
「届け!」
 ヒューイがバルカンを掃射したのは、未早を狙うアシールに向けて。ミサイルには届かなかった。
 降下していくのは三機。未早が墜としたものと、今ヒューイが墜としたもの。そして未早機だった。
「やられてしまいました。あとはお願いしますね」
 レティが、悔しげに拳を握った。


●墜としたり墜ちたり
 奇襲が失敗に終わると、予想通りハインが集中的に狙われた。不調機がどれかと言ったつもりはなかったが、一目でバレた。ろくに回避も行えないハイン機は、囮に専念することになった。それを、ルーシーはECMで、紫峰、智重は後方からガトリングやミサイルで掩護する。
「‥‥く、う」
 ラウラは非能力者なら気絶では済まないGの中、捻り込みの要領で敵機の背後を取ろうと試みるが、どうしてもできないでいた。いくらアグレッサーとはいえ、HWのような慣性制御なんてインチキは無い。一機の背につこうとすると別の一機が逆に回り込んでいる。そうしていながら、ハインへの圧力を忘れないのだから、HWよりも余程性質が悪い。
 五対四の乱戦。その様子は、第二次大戦期の航空戦に酷似していた。超至近での背後の取り合いは熾烈を極め、バディを確認する余裕もない。もし相手が同じ傭兵で、バラバラの機体に乗っていたとしたら、最早どれが敵機でどれが味方なのかもわからないだろう。それがかつての航空戦と違うところと言えば速度だ。音速以上で飛び、しかしその挙動はエアレースのようにコンパクトだ。
「やはり、この状態では厳しいですね」
 ハインが荒く息を吐きながら呻く。背後に一機。その後ろではラウラ、紫峰が敵機二機とドッグファイトを繰り広げ、更に後ろではルーシー、智重が残る一機を牽制している。
 紫峰は余裕があれば一言二言憎まれ口でも叩いてやるつもりだったが、そんな暇はなかった。激しい機動の繰り返しで血液が下半身に溜まらないよう、耐G呼吸法を断続的に続けるのが精々。次々と旋回、ロールを繰り返していると、上下の感覚すらあっという間になくなっていく。
「なんだか、楽しくなってきた‥‥っと、逃が‥‥さないわよ」
 不意に無線機から聞こえてきたのは、苦しげなラウラの声だった。一機とシザーズの状態にもつれ込んだラウラ機は、急減速後旋回した敵機をハイ・ヨーヨーから撃墜しに掛かるが、鋭い切り返しによってかわされていた。
 わからないでもない、と紫峰は思った。撃墜されないという安心感とかではなく、負けたくない、墜としたいと強く思うのだ。血が足りなくてハイになっているのかもしれないが、構わない、と思った。
「くうぅっ! 伊達にアグレッサーやってるわけじゃあないわけね。やってくれるわ‥‥!」
 智重が被弾して漏らす。機体は安定している。まだ撃墜ではないらしい。咄嗟に放たれたルーシーのマシンガンがアシールを散らす。
「ありがとう。じゃ、本気出そうかしら!」
 ルーシーによって誘導された一機が智重の正面に現れると、智重は超伝導アクチュレータを起動してミサイルを放った。吸い込まれるようにしてアシールの一機に命中したミサイルは爆発――はせず、例のシステムによって撃墜判定が下された。S−01改はエアブレーキを使って急減速、ゆっくりと降下していった。
「ばっはは〜い♪」
 とアシールを見送った智重機に、バルカンが矢継ぎ早に突き刺さる。同じようにがくっと速度を落とすと、智重機も高度を下げていった。
「え、何よ! 終わり!?」
 見れば、ハイン機も同じように降下しているところだった。
「なんかこれ、寂しいわね」
「残念です」
 二機は撃墜したS−01改と共に、最寄りの基地までのオートパイロットを余儀なくされた。

 レティ、ヒューイが空域に飛び込んでくる。二人は一機を追っていた。ここまで傭兵チームは被撃墜3。アシールは被撃墜4。傭兵チームが一歩リードしているのは、ルーシーのECMが効果をあげているためだった。支援に徹するルーシーは、混戦の中でも上手く僚機の影に隠れ、戦況を把握し皆に伝えている。当然アシールの狙いは彼女に集中するのだが、ラウラ、紫峰が許しはしなかった。
 三機を加え、戦場は更に混沌とする。
「焔さん、右だ」
「了解了解! 見えてるぜっと」
 レティに促され、スティックを引いた瞬間バルカンが機体を掠める。交差するように飛び込んできたレティがスラスターライフルを放つと、アシールは泡を食ったように回避。すかさず迸ったラウラの高分子レーザーによって撃墜される。
「ん、まずいです‥‥」
 ルーシーの小さな声が聞こえた次の瞬間、アシール二機の集中砲火がウーフーに命中する。
「撃墜されたようです」
 冷静に言うルーシーだが、どこか残念そうな響きだった。
「ちょこまかちょこまか!」
 アシールもそう思っているであろうセリフを吐く紫峰機に、一機が上空から襲いかかる。背後にレティがついているが、先ほどの未早と同じように、撃墜覚悟の行動らしかった。
「まず‥‥」
 有りっ丈の弾薬を降り注がせ紫峰を墜としたアシールは、直後レティのレーザーに穿たれる。残り二機。このままいけば勝てるかもしれない。残る三人がそう思ったとき、無線機がびりびりと鳴った。
『アシール1より傭兵部隊。先ほどベイルアウトした隊員を回収するため、訓練は中止だそうだ』
 思いがけない言葉に、三人はぴたりと止まる。
『燃料も心許ないだろう。派手にやったからな』
 見れば、燃料計がずいぶん寂しい残量を示していた。
「そうか‥‥できればゆっくり話でもしたいところだが」
 ほう、と息を吐いて、レティが言う。
『こちらも聞きたいことは山ほどあるが、このあとも任務があってな。すまないが、またの機会に頼む』
「驚かせてごめんなさい、とでも伝えて貰えないかな。ベイルアウトした彼に」
 ヒューイはばつが悪そうに言う。
『ヤツの早とちりだ。気にしなくて良い。それに良い経験になった。またどこかで、お願いしたいものだ。以上だ』
『ああ、ちょっと待ってくれ。そこのアンジェリカ、気に入った。俺についてくるなんて凄いよ。次は絶対墜とす‥‥絶対』
 女の声だった。ラウラと尻の取り合いを続けていた機体だ。ラウラはきょとんとした後、
「次は味方だといいわね。頼もしいから」
 と余裕の笑みで返した。


 帰路、何故か空中給油機に同乗していたハンクが、こんなことを言った。
「被撃墜五か。墜とされた者も気にする必要は無い。むしろ上出来だ。知ってるか? 予定じゃ傭兵は全機墜とされるはずだったらしい。狸親父だな、あの大佐も」
 KV一機を失ったハルトマン大佐が頭を抱えたのは、言うまでもない。