タイトル:開発!? 新メニューマスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/05 20:38

●オープニング本文


※この依頼は【学園生フラグ】がオンのPC様向けです。キャラクタークラスは問いません。

 カンパネラ学園。
 ラスト・ホープに付随する人工島に建設された、UPC直属の軍学校である。
 入学資格はただひとつ。「能力者であること」。

 傭兵となり、バグアとの戦いに身をやつす彼らが、必要な一般教育を受けられるように。
 死がすぐ傍にある日々の中でも、学友とのかけがえのない時間を得られるように。
 そして洗練された能力者として、より高い戦闘力を発揮できるように。

 さまざまな理由を以ってして、学園の門はすべての能力者のために、開かれているのだ。


 5月も下旬に入り、夏の気配が色濃くなりはじめた頃合い、時刻は午後4時過ぎ。
「学食の新メニューを考えるプロジェクト? なにそれティグレス先輩面白そう!!」
 人気もまばらな学生食堂の丸テーブルで、生徒会事務部雑用係の2年生、遠藤 春香(gz0342)は目を輝かせていた。
 彼女の向かいに座るのは、生徒会副会長であるティグレス・カーレッジと執行部の女子生徒。
「ああ、最近学食の利用率が下がり気味という報告が上がってきているんだ。遠藤は知らないかもしれないが、当校の食堂のレベルは極めて高い。視察に訪れるUPCの士官にも、評判がよいと聞いている」
 ティグレスと春香は昨年2月の「バレンタイン強襲戦」からの顔見知りである。
 本来なら春香のような一般生徒とは知り合う機会すらない優等生なのだが、当の本人はまったく頓着せず、堂々と‥‥というか何も考えずタメ口を叩く。
「まぁ実際美味しいですよね。‥‥何がいけないんだろ」
「何が、か。では遠藤、きみは昼食はどうしている? 毎日食堂かい?」
 コーヒーを口に運び、秀才は後輩に尋ねる。間髪入れず後輩が首を横に振った。
「まっさかぁ。せいぜい週2、多くて3回ですよぉ。飽きちゃうもんメニューマンネリで‥‥って、あ」
 利用率が低下している理由をはからずも答えてしまい、春香は目を見開く。
「そういう事だ。いいかい遠藤、きみが毎日でも食べたくなるメニューを考えて欲しい。そうだな、課外授業などに持って行けるパンやランチボックスを中心に考えてくれると、尚良いと思う」
「まかせて先輩! ボクおいしいもの大好きだから!」
 や、あの、食べるのが好きなだけじゃダメなんじゃないでしょうか。
 不安そうな執行部女子を目で制し、ティグレスが頷いた。
「それは頼もしい。きっと遠藤なら、美味しいメニューを考えてくれるものと思う。期待している」


「とはいったものの‥‥」
 ティグレス達と別れ、食堂から生徒会事務部の部室に戻った春香は、考えあぐねていた。
「宮本先生と笠原先輩は強化人間の案件で忙しいし‥‥かといってボクだけじゃちょっとなぁ‥‥そもそもこういうのは、皆で考えるから楽しいんだよねぇ‥‥」
 腕組みし、俯き、瞑目し、果たして彼女がだした答えは。

「えんどうはるかは なかまがほしそうに あなたをみている!」

●参加者一覧

百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
天空橋 雅(gc0864
20歳・♀・ER
獅月 きら(gc1055
17歳・♀・ER
エスター・ウルフスタン(gc3050
18歳・♀・HD

●リプレイ本文


 学生食堂の新メニュー開発。
 それは日曜日、人影もまばらなカンパネラ学園本校舎にある家庭科室で行われた。
 入り口の引き戸に「貸切 生徒会事務部雑用係」の張り紙が見えるだろうか?
 では内部の様子を、覗いてみよう‥‥。



「皆さんよくきてくれました!」
 ステンレスの天板とコンロが一体化した生徒用の調理台が並ぶ教室内。
 今回の言い出しっぺである遠藤 春香(gz0342)は集まった能力者達にぺこりと頭を下げていた。
「椎野さんと小野塚さんは、ご自宅で試作品を作ってから合流されるので、そろそろはじめましょう」
 なるほど、調理台を囲む皆とともに、新メニューを考えるようだ。
「これから行うのは学食の命運をかけたプロジェクトですっ! 美味しいものを開発して、学食を満員御礼にしようではありませんかっ」
 ぐ、と拳を握って力説する姿に、百地・悠季(ga8270)がくすりと笑んだ。
「はいはい、学園食堂のメニュー拡充依頼ねと。‥‥単調な献立なら幾ら良くても飽きるのは明らかよ」
 優しく諭してから、お腹を軽く撫でる。その仕草は生命を宿した母のそれだった。
「こちらこそよろしく。学食のメニュー作りに参加できるとはよい機会だ。協力させていただこう」
 天空橋 雅(gc0864)も悠季の傍で涼やかに頷いた。
 ついでひょいと屈み、鞄から何冊かの料理本を取り出す。背表紙に貼られているのは、図書館のラベルだ。
「わ、天空橋さんすごいっ、借りてきてくれたの?」
「参考になるかと思ってね」
 ページを捲る雅の手元を、最上 憐(gb0002)が興味深げに覗き込む。
 料理の写真と雅、そして一同の顔を順に眺め、目を輝かせて口を開いた。
「‥‥ん。試食は。任せて。任せて」
 ま、まだ作りもしてないのに!?
「ちょ、最上さん? 皆で考えようねっ? ねっエスターさんっ」
 慌ててそばに立つエスター・ウルフスタン(gc3050)にフォローを求る春香。
「料理‥苦手なのよね‥‥てゆか、実際のとこ、ヘタクソ」
 しかし、なかまは こなかった!
「が、がんばりましょうっ。ボクだって目玉焼きぐらいしか作れないですしっ」
 だ、大丈夫かこのメンバー?
「ふふ、ここは色々な処で技量を示した料理人としての立場で腕を揮う事にするわね」
 悠季の言葉と自信ありげな微笑みは実に頼もしくはあるものの。
 まぁそんなわけで。
 一抹の不安を抱きつつ、メニュー開発は始まったのであった。



「では皆さん、キタンなきゴイケンをお願いしますっ」
 休日の家庭科室に、春香の声が響く。
 議事進行を担うのはいいが、言葉の意味は理解してなさそうなのには突っ込まないであげて下さい。
「はいっ」
 そんな中、ヨグ=ニグラス(gb1949)がしゅたっと手を挙げた。ちなみに今回の参加者中唯一の男子である。
「んと、まずは方向性を決めるですっ」
「うんうん。毎日食堂に行きたくなる。その動機作りが必要かな」
 ヨグの隣で手帳を取り出し、赤いフレームの眼鏡をすっと着けたのは獅月 きら(gc1055)。
「食べたいものってその日の気分だと思うから、極力幅広くそれに応えられるように、新メニューは今までのラインナップの幅を広げる、バラエティに富ませたものがいいかも」
「わぁ、ぶれいんすとーみんぐって感じですね! メモしなきゃ」
 知性が伺える仕草に触発されたのか、慌てて春香も手帳を開き、新しいページに「新メニュー開発」と書き付ける。眼鏡もマネしたかったようだが、あいにく持っていなかった。
 次に口を開いたのは雅。
「学食利用者の大半は若い育ち盛りの男女、そして傭兵でもあるから体作りは不可欠。‥‥ふむ、食べごたえがあって、栄養バランスもいいメニューが求められると思う」
「なるほど、雅さんの視点は、学食とはどうあるべきかって部分にも関わってきますよね‥‥これもめもめも‥‥」
 そしてその後を、お腹を撫でながら悠季がひきとり
「時間が勝負の学生にとって、口元に持っていき易く、食べやすいものはどうかしらね」
「あ、悠季さんわかってるぅ! 昼休みって意外に慌ただしいんですよねえ」
 料理本の写真を眺めていた憐が、最後に意見を述べた。
「‥‥ん。値段が。安価で。量。沢山が。学生には。嬉しいと。思う。私も。嬉しい」
「わかる。 お財布に優しいのは重要だよね」
 春香はこくこくと首を振るエスターを横目に、意見を次々に書き留めてゆく。
 その手が止まるのを待っていたヨグがすっくと立ち上がった。
「んと、皆さんと相談しまして、やはりここは新メニューはプリンにしようと意見が一致っ。一致しましたっ!」
 まて そのりくつは おかしい。
 だが意外にも、他の参加者から異はあがらない。それどころか
「あ、プリンいいな。甘いものには夢が一杯詰まってるのです♪」
「ん。プリン。味見するよ。食べるよ」
 きらと憐はにっこり微笑んで、ヨグに小さな拍手を送っている。
「えっと‥‥じゃあ皆さん、プリンOKでしょうか?」
 春香の問いに、悠季が頷いた。
「悪くないと思うのね。ヨグ君、プリンは卵とミルクがまろやかなカスタードかしら。これからの季節は、ゼラチンでつるりと固めた冷製もいいわよね」
「やや、悠季さん。カスタードが王道なのですっ」
 そして雅も、賛成のようだ。
「ふむ。卵と牛乳を使うプリンは栄養バランスもよい。外食やジャンクフードで不足しがちな野菜をうまく取れる弁当と、組み合わせるのに最適だ」
 かくして満場一致。ヨグは嬉しそうに雅と悠季の顔を見つめた。
「まま、サイドメニュー的な物も必要でしょうから? そこら辺は雅さんや悠季さんにお願いでね」
「お、お弁当がサイドメニューなんですか」
 春香はちょっと腑に落ちないようだが、細けえことはいいんだよ、である。
「とりあえず、上手く纏めてみないとね」
「うむ、頑張ろう」



 悠季&雅&ヨグによる「栄養バランス弁当&プリン」の試作が始まったのを横目に、きら、憐、エスターも本格的に活動を開始した。
「さあ皆さん、ボクたちも頑張るのです! 悠季さんと雅さんとヨグ君はお弁当&プリンだから、パンなんてどうかなあ?」
 春香の思いつきに、まず食いついてくれたのはエスター。
「パンかぁ、焼きそばパンとかカレーパンとかハムカツサンドとか? コロッケやメンチカツやハンバーグを挟んだバーガーもいいよね」
「ん。それ。全部サンド。・メンチ・コロッケ・ハンバーグ・ハムカツ・焼きそば・カレーパン。仮名だけど。夢のパン。完成」
 その一言を、憐が斜め上に昇華させた。
「‥‥ん。単純に。私が。食べたい物を。詰め込んで。試食したいだけと。言うのは。内緒」
 や、内緒というか。わかりやすい動機が丸見えな気もしなくはない。
「美味しそうだなあ♪ コスト含め食堂のおばちゃんと要協議ですね。めもめも」
 イラスト付きで憐のアイデアをメモる春香に、きらが別の案を示した。
「サンドイッチは良い案だなぁと思います。最近ご当地バーガーって流行ってるから、やってみたら面白いかも」
「ご当地‥‥カンパネラの?」
「ん。グリーンランド。魚介。あざらし。海の、幸?」
「最上さん、ナイスです」
 二つめもとんとん拍子で、方向性が決定。春香もこちらに関してはコストの心配ははないと判断したようだ。
「あざらしはともかく、シーフードはよさそうですね、めも‥‥と」
「じゃあ、カンパネラバーガーでいこう!」
 エスターが決定、とばかりに皆の顔を見回す。
 さあ、上手にできるかな?



 ニ班のメニュー試作が佳境に入った頃、家庭科室の引き戸が音を立てて開いた。
「こんにちわーよっこいしょっと。今日はよろしくね!」
「春香先輩、おひさ〜」
  入ってきたのは小野塚・美鈴(ga9125)と椎野 のぞみ(ga8736)。
 美鈴は小脇にバスケットを抱え、のぞみはパンパンに膨らんだ大きなリュックサックを背負っている。
「わー、ふたりとも! って椎野さんその荷物は‥‥」
「ふふふ、見てのお楽しみ♪ まず小野寺さんの、行ってみよう!」 
 のぞみに促され、美鈴がバスケットを覆っていたクロスを取った。
「えへへ、『カンパネラパン』の試作品つくってきたよー」
 甘い香りを漂わせながら、色よく焼けたパンが作業の手を休めた一同の前に現れる。
「わ、鐘の形?」
「うん、カンパネラのシンボルである大鐘楼の形につくったのだ。カンパネラのイニシャルは型を作って、パンに軽く押し付けて、溝を作ってそこにチョコを流し込む感じにしてみたのだ。中身はクリームとチョコ、ジャムで作ってきたよ」
 おおー、と皆がどよめく中、 手近な一つめをもぐもぐしはじめたのは憐。
「おいしい?」
「‥‥ん。味わう前に。飲み込んで。しまったので。味が。分からなかった。おかわり」
 口の端についたチョコをぺろりと舐めながら、手を出してニつめを要求する。
 とはいえパンは人数分しかなく
「じゃあ私の分も食べるのだ〜」
 美鈴が自分のパンを、憐に手渡すことに相成った。
「で、椎野さんそのリュックは?」
 ジャム入りカンパネラパンを美味しくいただいた春香が、再びのぞみのリュックに目をやる。
「良くぞ聞いてくれました! ボクの提案は『からあげ弁当』です!」
「じゃじゃーん♪」と口で効果音をつけながら、のぞみはリュックから小ぶりの弁当箱を一つ取り出し台の上に置いた。
「ん、わりに普通? ‥‥て、え?」
 一つ。また一つ。さらにもう一つ。
 次々に弁当箱が取り出され、並べられてゆく。
「ボクもただ単に普通のからあげ弁当を提案はしないよっ。実はここに三十一種類のから揚げ弁当があります。そう、ボクの提案は一ヶ月スパンの『日替わりからあげ弁当』ですっ!」
 きぱっと言い切り、のぞみはささやかな胸を得意げに反らした。
 台の上には確かに、ああ確かに三十一個の弁当箱。
「月によっては三十一日がない月があるので、三十一日に出るメニューはニヶ月に一度のプレミアから揚げ! として出せば人気でるかもですっ! もちろんから揚げ粉は共通ですし、味付けはレシピ化すれば手間はかからないはず!」
 いや待って。どうするんだこの大量のからあげ弁当。美味そうだが。だが。
 しかし春香の懸念は、あっけなく杞憂に終わった。
「ん。しょうゆダレ、塩コショウダレ。美味。竜田揚げも。さくさくで。好み。次は‥‥」
 つい先ほどパンを2個食べた憐が、端から順に片付けていたのだ。既に半分近い弁当箱が空になっている。
「ちょ、最上さん、皆の試食の分残しといて下さいねっ」



 日曜日も休まず響く大鐘楼の鐘が、お昼を告げる頃。
 一同は完成したメニューの発表及び試食に挑もうとしていた。
 まずは悠季&雅&ヨグチームから。悠季と雅が説明とともに、弁当箱の蓋を開ける。
「メインは野菜が入り、弁当としても売り出せるメニューを念頭におき、試作してみた」
「おかず+ごはんと、中華の丼を日替わりでバランスよくね。サンプルとしてニ種類作ったわよ」
 メニューはハンバーグの野菜あんかけ+バターライスと、緑が目にも鮮やかな青椒肉絲丼だ。
「これらは包み紙に、食育をテーマにした豆知識も掲載しようと思う。今日は私が即興でかいたものだが、こういうコラムの書ける人材は募集したいな」
 なるほど包装紙には綺麗な字で「大豆製品は米との相性がよく、美容にも有効である」等と記されているではないか。
「そしてデザートはヨグのプリンね」
 悠季に促され、ヨグがプリンの入れ物三つ並べた。
「んと、ベースは普通のプリンですが、トッピングで一工夫したのです」
 その言葉通り、一つめはピンク色のソース、二つめは緑色のソース。
「甘酸っぱいラズベリーの聖那☆プリン、抹茶ベースで草原をイメージしたてぃぐれすプリン、そして‥‥」
 三つめは生クリームが分厚く塗り込められ、毒々しい色のドライチェリーがトッピングされている。
「プリン・アラ・オ・リ・ム♪ えと、たくさん生クリームとか色々盛ってあげるのっ」
「オリム? って、UPC北米軍のおばちゃ‥‥」
「美鈴ちゃんだめですっ、消されてしまいますよっ」

 続いてきら&憐&エスターチーム。
 三人がまずプレゼンしたのは、見た目もボリューム満点のハンバーガーだった。
「グリーンランドの雰囲気で作ったカンパネラバーガーです。特産代わりに盛んな漁業をイメージした厚めの魚肉パティに、雪をイメージした粉チーズ、トマトやレタス等の野菜をたっぷりサンドしましたっ。バンズの表面にはカンパネラ校章の焼き印も入れてみたのです」
「わ、かわいい〜」
 唐揚げ弁当(十七日目、油淋鶏風味)を頬張りながら、のぞみが歓声を上げる。
「美鈴ちゃんのカンパネラパンとシリーズでいけそうですね。‥‥と、最上さんそれ何?」
「ん。闇パン」
「え?」
 一同の目が、怪訝そうに憐が持つ揚げパンらしき物体に注がれた。
「今日はカンパネラバーガーの。残りをリサイクル。した。具。つめて、揚げた。‥‥ん。マンネリ解消で。毎日が。ロシアンルーレット。状態。刺激的だよ?」
 食べてみて。そう言わんばかりに差し出されたパンをきらが囓る。
「美味しい!」
 きらの笑顔につられて、一口食べた悠季も同じく満面の笑みを浮かべた。
「遠藤さん、これも生徒会に報告するといいわね」
「もちろんです♪ では皆さん、お待ちかねの試食タイムといきましょう!」

 調理台の上にクロスを広げた即席のテーブルに、学生達の笑顔がぱあっと広がる。
「食材となった命と、心を込めた作り手への感謝のために。いただきます」
「カンパネラパンの中身はほかの味のほうがいいかな?」
「んと、美鈴ちゃん。パンはクリームがすきかなっ」
「きらちゃん、カンパネラバーガー美味しい」
「ありがとエスたん。 りっくんに食べてもらえたら良かったな」
 そして悠季は、みるみる片付いてゆく試作品を眺めながら
「ふふ、皆どんどん食べるから、気持ち良いわね 」
 愛おしげにお腹を撫でるのであった。



 かくして、開発&試食会は無事終了。
 皆を見送った春香は、首尾を報告するため生徒会室を訪れていた。
「ティグレス先輩、これがレシピと一口サイズの試作品です」
「うむ、どれも秀逸な出来だ」
 差し出された品々を一通り食べた副生徒会長は、感嘆の声を上げ
「さすがに全品一斉にとはいかないから、とりあえず四品を商品化しよう。広場で販売すれば、多くの学生や傭兵の目に留まるだろう」
 レシピのうち四品に生徒会の判子を押し、春香に手渡した。
「頼むぞ、遠藤。食堂との折衝は任せる」
「はーい!」

 かくして二〇一一年六月、学食新メニューのリリースが決定した。

 ★カンパネラバーガー    
 ★カンパネラパン
 ★プリン・アラ・オリム
 ★カンパネラの闇パン

 いずれも数量限定、早い者勝ち。
 ぜひその目と舌で、お確かめあれ!