タイトル:【東京】汁だく☆桃爆弾マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/09 21:56

●オープニング本文


 山梨県は甲府盆地の東を流れる笛吹川。その対岸の扇状地には一面の桃畑が広がっていた。
 毎年この季節は開花シーズンが終わり、来るべき収穫の時期に備え、農家が忙しくなる物であった。
 だが今年は、いつもと様子が違っていて‥‥

「おじさん、久しぶり〜。カンパネラ学園の依頼ボードでおじさんからの案件があったもんだから、びっくりしちゃった! もも畑の桃がキメラになっちゃったんだって?」
「おぉ〜沙菜っぺ! 大きくなったのぉ〜、まさか能力者になっとるとは!!」

 桃農家のひとつを訪れたカンパネラ学園2年生、三好沙菜は、出されたかしわ餅を頬張りながらくつろいだ笑みを見せていた。
 なにしろ今回の依頼主は、彼女の母方の叔父。リラックスムードになるのも無理はない。
「おじさん、このかしわ餅おいしいね」
「おぉ、食え食え。もうすぐ子どもの火だからの、子どもは沢山食って大きくならんと!」
「もーう、私今年で17歳なんだからねえ」
 沙菜は頬をふくらませながらも、すすめられた2個目のかしわ餅に遠慮無く手を伸ばし、膝に乗ってきた猫を撫でる。太った三毛猫は能力者の膝で気持よさそうに喉を鳴らし、そのうち眠ってしまった。
「で、シゴトの話だけど。もも畑はどうなっちゃったの? もうすぐもも狩りのシーズンだから、早く何とかしないとね」
「そうじゃった! ここは一刻も早く能力者になんとかしてもらわんといかん!」
 沙菜の向かい側に腰を下ろす叔父は、ビデオのリモコンを手にとった。DVD全盛のご時世でも、まだ現役らしい。
「とにかくこの映像を見てくれんか」
 叔父が再生したテープには、彼が所有するもも畑の様子が映っていた。奥の木々は花も散り、緑の葉が茂っているが手前の木は全く様子が異なっていた。
「あれ? もう実がなってる?」
 みずみずしい果実が、たわわに実った木の映像に沙菜が首をかしげる。いずれも大ぶりで、はちきれんばかりだ。
「‥‥アレは、普通のももじゃないんだ‥‥とりあえず収穫しようとしてわかったんだが‥‥」
 叔父の言葉とほぼ同時に、若い男性が画像に入ってきた。
 農家の人間なのだろう、慣れた手つきで桃に手を伸ばし、そっと触れる。
 その途端。
「!?」
 ぱあん、と音を立てて桃が爆発した!
 哀れ男性は、全身桃の果実と汁まみれ。だが、被害はそれだけではなく。
『うわあああああ』
 テレビ画面の中から、悲痛な声が響いた。
「ちょ、なにこれ!?」
 なんと、桃の汁が着ているつなぎをボロボロに溶かしているのだ!!
 沙菜は両手で顔を覆ったが、指の隙間からしっかり確認した。男性が縞パン一丁に剥かれて、しゃがみ込む様を。
「今実っている桃は、どうもキメラ‥‥というか「もも爆弾」化してしまったようなんじゃ‥‥幸い奥の方はまだ無事だから、なんとしても被害を食い止めんといかん。毎日少しずつ、実のなる木が増え始めておる。急いでくれ、沙菜」
「なるほど、わかったわおじさん。今なってる桃を一つ残らず落とせばいいのね! 大丈夫よおじさん、KVを出せばあっという間に終わるわ」
「いや、それがな‥‥」
 叔父は申し訳なさそうに項垂れた。もも畑の土壌は大変デリケートなので、大型の機械は持ち込めないのだと。
 そう、1こずつ手で、もぎ取って欲しいと。服を溶かす汁を浴びながらと!
 さすがに状況のまずさを悟った沙菜。顔をひきつらせつつ、問う。
「AU−KVも、ダメ? うーん簡単に説明すると、鎧みたいなやつなんだけど」
「まぁ、それならよかんべさ」
 そこまで言ってから、叔父は姪っ子の顔を見つめた。
「ワシとしては、沙菜っぺにこの仕事はやってほしくないんだがのぉ‥‥嫁入り前の若い娘っこに」

 と、いうわけで数日後。
「えっ笠原先輩はグリーンランド? じゃあ春香、セッティング頼むわ! あんたドラグーンでしょ、私転職しちゃったから無理なのよぉ」
 カンパネラ学園生徒会事務部雑用係の遠藤 春香(gz0342)は、同級生に依頼を丸投げされていた。
 春香はやれやれ、といった調子で肩をすくめ
「松茸の次は桃かぁ‥‥なんていうかさ、沙菜ちゃんが事務部雑用係に持ってくる仕事って、こんなのばっかりだよね」
 沙菜をチラ見して一言呟いた。

●参加者一覧

相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
諌山美雲(gb5758
21歳・♀・ER
獅堂 梓(gc2346
18歳・♀・PN
ララ・フォン・ランケ(gc4166
15歳・♀・HD
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG
セラ・ヘイムダル(gc6766
17歳・♀・HA
アルフェル(gc6791
16歳・♀・HA

●リプレイ本文

 触れると炸裂し、衣類を溶かす汁を撒き散らすおそるべき「もも爆弾」
 生物兵器と化した果実を撤去するため、八人の乙女が甲府盆地に降り立っていた。
 作戦は、扇状地に広がる桃畑を四分割しての人界戦術。
 ではエリアごとの、乙女たちの闘いを見ていくとしよう‥‥。
(カメラOK! あんなトコやこんなトコまで激写したるぜええ!!!)



★相沢 仁奈(ga0099)&西村・千佳(ga4714)&遠藤 春香(gz0342)の闘い
 服を溶かす敵が相手なら、最初から着なければ良い。作戦の趣旨故か、それとも別の何かか。
「ハジケる桃で汁だく‥‥な、何やむっちゃエロい響きやねんけど♪」
 目を潤ませた仁奈は、ランニングにドット柄インナーのみという大胆な出で立ちで闘いに挑もうとしていた。
「また変なキメラがいるものにゃね。仁奈お姉ちゃん、春香ちゃん気をつけていこうにゃ♪」
 マジシャンズ・ロッドをかかげポーズを決める千佳も、同じくランニングにくまさんインナーのみ。
「てかボク、AU−KV着てきたほうがいいんじゃないですか?」
 学園体操服とブルマ姿でもじもじするのは、依頼の仲介者、春香。ドラグーンとして当然の提案をするも
「あかんあかん! 気合いや!」
「春香ちゃん笠原くんに比べてカゲ薄いんだからがんばるにゃ!」
 先輩傭兵二人に、あっさり却下された。
「よし、いこか! 何はともあれ桃の実はきっちり摘み取らなあかん」
 まず動いたのは仁奈。つかつかとももの木に近づき、二人を振り返る。
「片っ端から取ってくで! 服が溶けたり素肌が見えてまうんはこの際気にせん方向で!」
 宣言通りノープランで、腕を伸ばすFカップのグラップラー。果実を掌でつかんだ瞬間!
「やあんっ♪」
 うれしげな悲鳴が、炸裂音に被さった。
 白っぽく濁った果汁と果肉が、甘い香りとともに盛大にぶっかけ‥‥撒き散らされる。
 服を溶かす成分のそれは、仁奈のランニングとインナーを侵食し始めた。純白と水玉模様の布が、ボロとなって地面に落ちる。
「いやあん♪」
 僅かに残った布を手で押さえ、仁奈は身をくねらせた。
 しかし彼女のお楽しみ‥‥もとい受難は、始まったばかりで。
「ちょ、虫っ!?」
 匂いに誘われた虫キメラが、一斉に飛んできたのだ!
 大きな蛾キメラが二匹Fカップの先端で羽を広げ、クワガタキメラが腰骨のあたりにぴたりと止まり、ちぎれかけた水玉の布をキープする。紐パンの紐がクワガタになったと思っていただければ幸い。
「ふふん、これは両手があいてエエわ‥‥ちょっとジクジクするけどなぁ♪」
 蛾キメラを胸の先に留めたまま、仁奈は2個目の果実へと狙いを定める。
 もぎ取ったとたん、再び爆ぜるもも爆弾。
 頬を伝う果汁に、笑みを浮かべる仁奈だった。

 虫とギャラリーの注目を一心に集める仁奈を横目に、千佳と春香も行動を開始。
「僕らも負けずに片付けるにゃ」
 さすがにノープランはまずいと悟ったのか、千佳はロッドで果実を爆発させた瞬間、【瞬速縮地】での離脱作戦に出た。ロッドでの接触でうまく果実は爆発、離脱も成功。
 だがここで上手く行っては面白く‥‥敵もぬるくはない。
「うに、春香ちゃん!?」
「ちょ、千佳さん来たらだめえ」
 走るハーモナーの先には、春香が果実を爆発させて虫にたかられていたのだ!
 既に体操服は溶け落ち、カナブンキメラが推定Bカップの先端を覆い隠している。
「うにゃああああ!」
 避けきれなかった千佳は汁まみれの春香に激突し、はずみで桃の木にもぶつかった。
 衝撃で2人の頭上から、これでもかと果実が落ちてくる!
「うに、みゃー、虫きらいにゃああ!」
 汁もしたたる黒猫と化した千佳、服はまたたくまに溶け落ちてゆく。
 片手で胸を抑え、片手で這いずってくる虫をちぎっては投げするが、なにぶん数が多い。
 腿を背中を這い回られ、息が上がる。ピンチだ!(蔵倫的に)
と、そこに。
「千佳ちゃん、ほら、虫とったるさかいに」
 キメラビキニの仁奈が、颯爽と窮地を救いに来た。
 千佳にくっついた虫を素早く片付ける‥‥だけならよかったのだが
「ちょ、仁奈お姉ちゃんそこ違うにゃ!? みゃう!?」
 ついでに首筋や脇の下を撫で上げていくのだから、タチが悪い。
 きょぬーとネコミミの絡み? にギャラリーがおお、とどよめいた。
「あは、農家のお兄さん達もウチらのコト応援しとるみたいやね‥‥ほら、千佳ちゃんももっと頑張ってや♪」
 何を頑張るんだ、ナニを。
「そこ、見てないで向こう向くにゃー!」



★諌山美雲(gb5758)&セラ・ヘイムダル(gc6766)の戦い
「私はセラさんとですね? 宜しくお願いします」
 白地にピンクの水玉が散った水着が眩しい美雲と、
「爆弾桃と虫の駆除ですネ♪ 農家の皆さんの為に頑張りましょ♪」
 ラフな服装の下にさらしを巻き、さわやかに笑うセラ。
 美少女傭兵二人組に、周囲の農家の皆さんの鼻の下は伸びっぱなしである。セラが前もって張っておいた接近防止用のビニールテープに身を乗り出して手を振る者さえ出る始末。どこのライブ会場の最前列だ、ここは。
 まぁそれはさておき。
「破裂の規模がどの程度か、試しに一個いってみるのです♪」
「よし、じゃあここは私がっ」
 乙女桜を構えた美雲が、手近なももの木に近づき、熟れた果実に狙いをつけた。得物の長さは背丈ほど。十分距離を取ってアプローチできる。
 筈だったが。
「きゃあっ!?」
 絶妙のタイミングで、美雲のドジっ娘スキルが発動! つまずく要素など何もないところで足をひっかけてつんのめり、勢い余って桃の木に突っ込んだ。
 思わず上げた両手に触れた果実は、待ってましたと言わんばかりに爆発した。
「ぅわっぷ!!」
 頭から降り注ぐ甘い果汁が、美雲の水着を濡らす。
 薄手の布地が肌に張り付き透けていたのもつかの間、ぼろぼろに溶けて落ちてしまった。
「や〜ん、ベタベタする〜」
 しかし当の本人は、顔にかかったの果汁を拭うのに必死で、自分がポロリ寸前なのには気づいていない。
「あ、でも味は普通の桃なんですね? 美味しい♪」
 口元に飛び散った飛沫を指で救い、うっとり舐める。
 と、そんな美雲が相棒のピンチに気がついた。
「セラさん! 危ないっっ!」
 殺到する虫から遠ざけようとしたのだろうが、何故か虫が向かってくる方にセラを突き飛ばす。しかも果汁のふんだんについた手で。
 しかしセラも、只者ではなく
「きゃあっ♪」
 可愛い悲鳴を上げ、伸ばされた手をぐっと掴んだ。
 足元の潰れた果実にバランスを崩しながらも巧妙に体勢を変え、美雲を押し倒す格好で地面に伏せる。
「大丈夫ですかっ、しっかり♪ やだ、虫がっ」
 大部分が溶け落ちた水着の上を、さらに手足を果汁まみれの手でさわさわするセラ。名目は「虫をとるため」だが、指がわきわき動いていたのをカメラは捉えているぞ、GJだ!
「あ、ありがとうセラさん‥‥って、いっ?」
 されるがままになっていた美雲、セラの服はおろかサラシの大半が溶けていることにようやく気がついた。自分のいでたちを確かめ、顔を朱に染める。
「きゃーっ! いつの間にぃいっっ!!」
「あ、虫さんがビキニの中にっ」
「いやーっ! 虫の感触が気持ち悪いぃ!!」
「取ってあげますよぉ、ほらっ♪」
「ちょ、セラさん、手つきがあああ」
 どう見ても半裸美少女のくんずほつれつです。本当にありがとうございました。
「見ないでっ! あっち行ってくださいっっ!」
 身を乗り出すギャラリーに向けて、美雲が叫ぶ。
「何、写真撮ってるんですかっっ!!」
 どこからともなく閃光手榴弾を取り出し、投擲。
 それは数十秒後に爆発し、周囲を白く塗りつぶした。



★獅堂 梓(gc2346)&秋姫・フローズン(gc5849)の闘い
「秋姫さん、よろしくね〜」
「梓様‥‥よろしく‥‥お願いします‥‥」
 狐耳と九尾の幻影を纏う梓と、さらさらの銀髪に恥らいの表情を浮かべる秋姫。
 どこか幻想的なコンビが、鈴なりの悪魔の果実に凛と闘いを挑む。
 梓が構えるのはハルバード、秋姫が掲げるのはバトルハリセン。
「秋姫さん、いこう!」
「はっ、はい‥‥」
 背中合わせの姿勢から、二人はそれぞれの方向に駆けた。
「それっ!」
 まずは梓がハルバードの槍先で果実をつつく。勿論音を立てて爆ぜたが
「瞬天速!」
 グラップラーのスキルがあれば、飛沫を浴びずに逃げることはさほど難儀ではない。
 ‥‥はずが。
「わあああ!」
 地球上には慣性の法則というものがあり、動いている物体はすぐには止まれないのだ。
 そう、ハリセンで果実を落とそうと頑張る秋姫がそこにいたとしても。
 「‥‥きゃあ!」
 梓の猛ダッシュを背中で受けた秋姫の身体が、桃の木に向かってつんのめる。
 いかに能力者と云えども、とっさのことで受身も取れず、二人は木の幹に体当たりを食らわす格好となってしまった。ちなみにスキル使用による事故は今回二件目だ。
「うわわ?! ぁぅ‥‥大丈夫?」
 頭上からコントのように降り注ぐ果実──というか、爆ぜた果肉と果汁──をしとどに浴びながらも、秋姫を気遣う梓。
「痛い‥‥です‥‥べたべた‥‥します‥‥あうう‥‥」
 衝撃で、ギャラリーの間近まで飛ばされた秋姫は、絡みつく視線とその理由に気が付き叫び声を上げた。
「い‥‥いやあああ!」
 全身に満遍なく汁を浴びた秋姫の衣類は、原型をとどめることなく溶けてしまっていた。かろうじて残った下着も、純白でレース付きというシロモノだ。
 果汁で濡れそぼったそれがぴったりと張り付いた箇所に、ギャラリーの視線が集中したとしても、それは仕方がないことかもしれない。
 さらに追い打ちをかけるように、虫キメラが下着の中に頭をつっこみはじめたもんだから。
「み‥‥見ないで下さい‥‥ひっ?!」
 銀髪の乙女は、虫がもたらす掻痒感とも戦わねばならなかった。
「そんなに‥‥動かないで‥‥気持ち悪い‥‥」
 涙声で身震いする姿に、不埒なギャラリーがごくりと生唾を飲み込む。
 と、そこに。
「こ、こらー! 秋姫さんを撮るなぁ! あっちむいてろぉ!」
 胸を片手で押さえた梓が、ハルバードを片手に走りより、恐怖と恥ずかしさで硬直する秋姫をかばうように立った。
 途端、新たな被写体を歓迎するようにシャッター音が連続して響く。
「ぼ、僕を撮るのもダメ! い、今撮った奴! モデル代請求するからねっ!」
 モデル代いくらですか? という声の主を睨みつけつつ、秋姫を木陰に誘導しながら梓は気づいた。己の覚醒時に、現れる幻影について。
「あれ? 覚醒状態なら九尾の尻尾で隠せるじゃない?!」
 にたり、と笑って尻尾を身体に巻き付ける。自由になった手でハルバードを握りなおし、すっくと立ち上がった。
「どんどんいっくよー!」
 唸る、ハルバード!
 ギャラリーの目も果実の爆発も気にせずに済むのなら、桃狩りなど至極簡単な仕事だ。
「ちょろいちょろい♪」
 ただ、彼女は気がついていなかった。尻尾の幻影は半透明、いうなればスケスケであることを。
 梓の活躍の最中、数人のギャラリーが鼻血を噴いて昏倒したことを付け加えておく。



★ララ・フォン・ランケ(gc4166) &アルフェル(gc6791)の闘い
 桃畑の一角に、可愛らしい三角屋根がぴょこりと顔を出している。
 それは服を溶かす果実との対峙に備えて、ララが用意した避難&お着替え用のテントだった。
「備えあればうれしいなー、ってね♪ ほら、アルフェルさんもココに荷物おいてっ」
「は、はい‥‥よ、宜しく‥‥お願いします‥‥」
 ララに促され、アルフェルも花柄インナーとチュニックをテントに避難させる。
「こ、今回は‥‥私が、頑張らない‥‥と、です‥‥よね。い、依頼と‥‥しては、‥‥簡単、な‥‥筈、ですし‥‥」
 ヘスペリデスをぐっと握りしめ、準備も万端だ。
「服が溶ける桃かぁ。お祭りなんかで投げ合ったら面白そうだね〜♪」
 ミカエルを身に纏ったララは余裕しゃくしゃくで、手近な果実に手を伸ばす。
 服が溶けることを気にしなくて済むのは、乙女にとっては大きなアドバンテージだ。
「きゃっ」
 指先が触れた途端、果実は音を立てて爆ぜた。ミカエルのボディに果汁と果肉がぶちまけられるがさすがメトロニウム合金、溶けたりはしない。
「うわあ、虫がきたよっ」
 様々な種類の虫キメラが、汁だくのドラグーンめがけて群がりにかかる。
「こ、来ないで下さい‥‥!」
 ララの背中に付き従っていたアルフェルが、ヘスペリデスをかざした。
「よ、よぉし‥‥『ほしくずの唄』!」
 敵を惑わすハーモナーの呪歌が、辺りに響き渡る‥‥!
 その途端。
「ちょ、何!?」
 余裕たっぷりのララが、叫んだ。
「ララ様っ!?」
「む、虫が‥‥!」
 果実にしか興味を示さないはずの虫ミメラが、ララのAU−KVの中に潜り込もうとしはじめたないか!
 そう、「ほしくずの唄」がキメラの本能を混乱させてしまったのである。
「ちょ、やだ、くすぐったいって!」
 予期せぬ侵入者に、思わずミカエルをパージしてしまうララ。もちろんそれは逆効果で、さまざまな虫が『中身』めがけて殺到してしまった。
「い、今取ります‥‥から‥‥!」
 アルフェルが慌ててヘスペリデスの出力を調整し、虫を追い払いにかかる。しかし己めがけて飛んでくる虫の群れを前に、冷静でいることはできなかった。
「ひっ‥‥い、いやぁあぁぁっ!」
 思わず後ずさり、思い切り桃の木にぶつかってしまうハーモナー。お約束のように頭上から降ってくる果実が髪の上で胸元ではじけ、果汁と果肉がどろりと溢れた。
「アルフェルさあん! 虫とってえええ!!」
 しつこくワンピースの中に入り込もうとする虫に追い回され、涙目のララ。しかし
「いやですぅ‥‥こんな格好ぅ‥‥見ないでください‥‥」
 文字通り頭から足まで果汁まみれになったアルフェルに、動けと言うのは(蔵倫的に)無理な注文だった。
 だって装備品、「果汁」のみに近いんですもの。



★というわけで
 乙女達が純潔を挺して死闘を繰り広げた結果、忌まわしき生物兵器は無事に撤去されたのだった。しかし彼女たちの最後の敵は、まだ残っており‥‥。

「ちょっとあんた達! 僕たちのこと撮ってたでしょ! 映像消しなさい!」
「にゃー! その映像全て消してにゃ! いや、消すにゃ!」
 梓と千佳が顔を真っ赤にして、ギャラリーの男達に詰め寄る。
「や、撮ってないよ? 大丈夫大丈夫」
 だが男達はカメラを大事そうに抱えたまま、決して首を縦にはふらない。今手放したら二度と手に入らぬお宝、はいそうですかと渡せるものか。
「心配しなくたって、大事に使うから、ね♪」
 おいまてナニに使う気だ。
 その様子を眺めていたセラは、やれやれといった調子で肩をすくめ
「ん〜、これは『うっかり』を装って壊しちゃおうカナ?」
 可愛らしく黒い笑みを浮かべたのだった。