タイトル:【初夢】氷の転校生マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/14 16:49

●オープニング本文


※このシナリオは初夢シナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。



 時は2011年。
 極寒の地グリーンランドの北部に位置するチューレ基地で、とある作戦行動がとられようとしていた。
 作戦司令官は、イェスペリ・グランフェルド。
「いいか、今回の任務の成否は、すべてお前たち二人にかかっている」
 執務室の机を挟んで、隻眼隻腕のバグアと向かい合う2つの影が見える。影にはいずれも猫耳と猫尻尾がくっついており、大きな方は銀、小さい方は黒い毛並みだ。
「我が『ハーモニウム』のライバルである『カンパネラ学園』。我々は奴らの内情を、あまりに知らずにいた。そこでだ」
「にゃ」
「‥‥」
 神妙な面持ちで説明するイェスペリに、影はそれぞれ大きく頷いた。
「分かっているだろうが、もう一度任務を説明する。今回我が軍が開発した『フォースフィールド・デナイザー』を用いて、カンパネラ学園に潜入し、内部調査を行ってくるのだ。人間どもがどのような訓練を受け、どのような設備を有しているか、残さず記録してくるように」
 執務机の上に、四角いトレイがそっと置かれる。乗っていたのはカプセル錠剤─フォースフィールド・デナイザー─が2錠に、使い捨てカメラ、そしてノートと紐でつながったボールペンが1つずつ。
 はいそこ、ベタな名前にも程があるだろうとか言わない。
「‥‥もうちょっとマシな記録用具なかったんスか‥‥」
 大きな影が使い捨てカメラを手に取り、不機嫌に尻尾をぱたんぱたんさせた。一方小さい方は早速ノートを広げ、へたくそな字で「せんにゅうちょうさ」などと書き始めている。
「Ag、ノア。お前たちはあくまでカンパネラの学生を偽装しなくてはならない。フォースフィールドはデナイザーで完全に隠せるが、携帯物のレベルは、人類に合わせねばならんからな」
「はぁ‥‥」
 いやイェスペリ先生、それ相当前の技術水準ですが。
 誰もつっこむものはいなかった故、Agはしぶしぶ納得せざるを得なかったようだ。
「とりあえず制服は用意してやった。おまえたち2人のもたらした情報が、ハーモニウムの未来に大きく繋がるのだ。有意義な情報を持ちかえるように」
「はい」
 頷くAgの袖を、ノアがちょいちょいと引っ張った。
「ねね、ユーイギなジョーホウって?」
「さあ? 学食のメニューとかじゃねえか?」

 というわけで。

「さあ2人とも制服に着替えたか? では私が、この虹色のHWでカンパネラ学園まで送ってやる」
「ねー先生、なんでノアのせーふく、スカートなの? ノア、メスじゃないー」
「オスでもないだろう。細かいことを言うな、サイズがそれしかなかったんだ‥‥」
 夢オチならではの強引展開でカンパネラ学園校門前に放り出された『ハーモニウム』2人組。
「んじゃ、行くか」
「せんにゅーちょうさー! っていうかさむいー! 足スースーするー!!」
 
 ‥‥こんなスパイで、大丈夫か?

●参加者一覧

西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
プリセラ・ヴァステル(gb3835
12歳・♀・HD
ルリム・シャイコース(gc4543
18歳・♀・GP
明河 玲実(gc6420
15歳・♂・GP

●リプレイ本文



 カンパネラ学園、午前10時。
 校門の前で、ふたつの人影が空に向かって手を降っていた。
 視線の先には、虹色のヘルメットワーム(HW)が一機。
「せんせー! がんばってチョーサしてくるねえ!」
 小さな人影──ノアの声に送られ、上昇するHW。
 瞬く間に小さくなり、青空の中に消えた。
 
「Ag、行こ!」
 HWを見送ったノアは、傍らに立つ相棒、Agを見上げた。
 今日はお互い、ハーモニウムの制服ではなく、カンパネラの制服を着ている。
 ひいき目を抜きにしても、Agには似合っているとノアは思っていた。
 だが。
「あーうん‥‥ってかノアよ」
 ノアを見下ろすAgの視線は、訝しげだ。
「何でお前、スカートの下にハーモニウムの芋ジャー履いてんの?」
 なるほど彼の指摘通り。ミニスカートから伸びた脚は、雪柄のジャージで覆われている。
「すかーと、寒いんだもん」
 言い争う2人の背後で。
「こんにちは」
 校門が音を立てて開いた。
「あらあら、可愛らしいお二人さんですね。今日はよろしくね」
 現れたのはルリム・シャイコース(gc4543)。
 豊満なバストを修道服の中に押し込めた、金髪碧眼の美女だ。
「エミタ適性が発見された新入生ですか?」
 微笑むルリムに、2人もこわばった笑みを返す。
「ま、まぁそんなところだ。な」
「う、うん」
 なにしろここで、正体を見破られては困るのだ。
「そうですか、ようこそカンパネラ学園へ。おっとその前に」
 ルリムの目が鋭く光った。
「服装の乱れは心の乱れと昔から言うからね、スカートの下にジャージを履くのは美しくない」
 穏やかな、だが有無を言わせぬ物腰で、ノアの脚を指さす。
「だって寒いもん‥‥」
「ではこの『オーバーニーソックス』を履くといい」
 しぶしぶジャージを脱ぎ、差し出されたそれに脚を通すノア。
「えー、やだよAg、これヘンだよね」
 恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張り相棒に助けを求めるが
「その方が断然いい」
 彼はニーソ派だった。
「うん、その方が可愛いよ」
 ルリムも目を細め、満足げである。
「では、学内へ案内しましょう」
 と、いうわけで。
 2人は修道女に連れられて、学園の敷地内に足を踏み入れたのだった。

 カンパネラの象徴たる大鐘楼。
 手入れされた花壇。
 煉瓦を敷き詰めた中庭の道。
 空を覆うドーム越しに見える青色。
「すっごい‥‥なぁ」
「ああ‥‥想像以上だ」
 白い地平と鉛色の空しか知らないハーモニウムは、呆然と周りを見回していた。
「気に入ったかい?」
 二人を先導するルリムは笑みを絶やさない。
「さて、と」
 そんな彼女が足を停めたのは、本校舎入口の案内板の前だった。
 学園の平面図に、施設の名称が併記されている。
「一緒に見て回りたいところだけど、用事があってね。この図を見れば学園内の様子は全てわかるから、見て回るといい。‥‥ではまた、後ほど」
 ひらひらと手を振るルリムに、ノアが手を振り返す。
 一方Agは、神妙な顔で案内図を見つめていた。
「AU−KV格納庫、演習場、KVシミュレータ‥‥なぁノア、どこから調査する?」
「ノア、お腹すいた」
「じゃあ『学生食堂』だな」
 いいのかそれで。




 午前11時30分の学生食堂は、昼食を求める生徒達で、早くもごった返していた。
 そんな中、窓際のテーブルを陣取る学生が3人。
「ヨグたん、『カンパネラの友』写させてくれてありがとー!」
「んと、いくら僕が傭兵の『プ・ロ』だとしましても、学生の本分は勉学ですっ! 陸人さんも次は自分でねっ」
 学園生のヨグ=ニグラス(gb1949)、聴講生の小野塚・美鈴(ga9125)はそれぞれ飲み物を口に運んでいた。
 笠原 陸人(gz0290)だけは冬休みの宿題らしきものを片付けるのに必死だ。
「そろそろお昼だから混んで来たのだ〜。ん?」
 厨房と隣接したカウンターに目をやった美鈴が、首を傾げる。
 ランチタイムを目前に控えたそこには、空腹の学生たちが群れをなしていた。
「おばちゃん! くず鉄定食!」
「あ、僕は練力丼!」
 次々繰り出される注文と食券を、学食のおばちゃんたちが華麗に捌いている。
「はいよ!」
 一見無秩序に見えて、見事な連携。
 と、その端で。
「なんだこの人数は‥‥」
「Ag、ごはん食べるのにはショッケンっていうのがいるんだってー。で、中にいるおばちゃんに‥‥」
 明らかに勝手がわかっていないノアとAgがうろたえていた。
「ん、見慣れない人たちなのだ」
 2人を弄ぶように、人波がうねる。
「わあぁぁあ!」
 発注もしていないのに、入り口の方へ流されかけるノア。
「んと、転校生が流されてるのですっ」
 その窮状を見かねたヨグと美鈴が動いた。
「助けるのだ〜」
 それぞれ椅子を蹴り、カウンターへと走る。
「んと、こっちですよっ」
 まずヨグが、なすすべなく流されていたノアを確保。
 その間に美鈴が食器返却口から、顔なじみのおばちゃんに声をかける。
「おばちゃん、あの子たち転校生なのだ〜。この人数じゃ注文もできないのだ〜」
「オッケー、注文は?」
「んと、オススメ定食とプリンで♪」
 タイミングよくノアとAgを伴って戻ったヨグがオーダー。さらに
「Agくんの分は大盛りでお願いするのだ〜」
 美鈴の親切の、スパイス付である。

 窓際の丸テーブルで、ヨグ、美鈴、陸人は定食を美味そうに食する2人と向かいあっていた。
 メニューは定番、AU−KV定食。バターライスに魚肉ソーセージカレーに冷凍りんごの大盤振る舞いだ。
 ノアは普通盛り、Agはバターライス大盛り。オプションにプリンもついている。
「助かった、ニンゲン‥‥いや、先輩方」
「んと、慣れていない感じですぐに転校生とわかったのです。美味しい?」
 ヨグが選んだランチは、ロコモコ丼にプリン。
「Agくんとノアくんは、どこから来たのだ〜?」
 2人に柔らかい笑みを向ける美鈴は、サンドイッチと紅茶の昼食である。
「ん、まぁ、北のほうだ」
 バターライスを掬いつつ、Agは曖昧に答えた。何しろ潜入調査中の身だ、正体を知られるわけにはいかない。
 もっともノアは、任務など忘れてしまったようで
「Ag、おいしいねっ。ハーモニウムのキメランチもおいしいけど!」
 身バレ発言をしつつ、魚肉ソーセージを頬張っていた。
「ハーモニウム?」
 Agが慌てて相棒の口を手で塞ぐ。
「気にするな、俺達はハーモニウムとは無関係だ。量産型スノーストームなど操縦できないし、チューレも知らない」
 あーあ言っちゃったよ。
「んと、了解です」
「わかったのだ〜」
 噴き出すのをこらえつつ、ヨグと美鈴が顔を見合わせる。
 そこに昼休みの終わりを告げる鐘が聞こえてきた。
「んと、食べ終わったら学内を案内するのですっ」




 学生達とAgとノアが、食堂を出たのと同じ頃。
「ん‥‥今日は午後から授業はないし‥‥予定通り学園内を見て回ろうかな」
 昨年末に入学したばかりの明河 玲実(gc6420)が中庭を散策していた。
 華奢な身体に桃色の着物がよく似合う少女だ。冬の陽射しを受けた銀髪はきらきらと輝いている。
 レミちゃんかわいいよレミちゃん‥‥ん?
「自分は男だっ! 名前も『レミ』じゃなくて『レイジ』だ!」
 た、大変失礼いたしました。しかし将来有望な男の娘である。
 さてその玲実の視線の先。
「うにゅ〜、今日位は羽根を伸ばしてのんびりするの♪」
 カンパネラの制服に規格外な胸を押し込んだプリセラ・ヴァステル(gb3835)が、楽しげに中庭を歩いていた
 頭につけたウサミミリボンとポニーテールが揺れ、なんとも愛らしい。
「午後からは休講だし、美鈴ちゃんと会うのも久しぶりなの〜」
 どうやら彼女は、聴講生の友人と遊ぶ約束をしているようだ。
「にゅ?」
 と、赤い瞳が玲実を補足。
 男の娘と目があった瞬間、兎娘は満面の笑みを浮かべた。
「うにゅにゅ〜♪ 新しいお友達、なの? 遠慮しなくて良いのーこっちに来るの〜♪」
 持ち前の人なつっこさで、玲実の手を取るプリセラ。
「い‥‥いや! 別に私は一緒に見て回りたいわけじゃないぞ!?」
 引っ張られつつも、玲実もまんざらではなさそうだ。
 何しろ彼は無類の可愛いモノ好き、犬猫がド真ん中だが兎だって守備範囲内である。
 もっともプリセラは、玲実の葛藤には全く頓着しておらず。
「さ、美鈴ちゃんのところへいくの〜♪ って、あ、美鈴ちゃん〜!」
 タイミングよく食堂の方から来た美鈴達を見つけ、玲実の手を掴んだまま駆けたのだった。

 玲実とプリセラが加わった一行は、午後からのプランをのんびりと考え始めていた
「んと、何か見たいものはりますかっ」
「そうだな、学園の軍事や装備にかんする事柄を‥‥いや、スパイとかじゃなく興味で。本当だぞ!」
 ‥‥これでもAg自身は、完璧な隠蔽を行っているつもりらしい。
「ノアくんはどうなのだ〜?」
「ん、お昼寝したい、かな」
 答えを裏付けるように欠伸をするノア。玲実が蕩けた顔で、その頭を撫でる。
 まったりとした時間。
 だがそれは、制服に身を包んだ西村・千佳(ga4714)が、陸人の背中に飛びついてきたことで終焉した。
「笠原くん、捕獲にゃ〜♪」
「はわわわ!」
 心の準備なく美少女に抱きつかれた17歳男子が狼狽しても、それは無理らしからぬことだ。
「こ、このつるぺた具合は‥‥千佳さんっ?」
「相変わらず失礼なのにゃ☆」
 ゴキャッとマジカルロッドが唸り、陸人は口を噤んだ。首がかくーりと垂れているのは気のせいだと思う。
「美鈴ちゃんとプリセラちゃんも一緒だったのにゃ♪ 何をしてたかにゃ?」
「うにゅ、ノア君とAg君と玲実ちゃんを案内していたところなの〜」
「これからどこへ行こうかと考えていたところなのだー」
 友人2人の答えを受け、千佳は胸を反らした。
「にゃふ、それなら学園が誇る『カンパネラの湯』へ行くのにゃ☆」
 若干強引な展開だが、お風呂は浪漫である。よってこのまま突入だ!




 カンパネラの湯、または鐘の湯。
 AU−KV演習場の設備から噴き出たお湯を再利用している大浴場は、学園生に人気の穴場である。
 入口にはもちろん「殿」「姫」の暖簾。
「また会ったねお2人さん、皆さんもよろしく」
 その前で偶然ルリムと合流した一行だが、何やら揉めているようだ‥‥?
 
「んと、僕と陸人さんとAgさんはこっちですねっ」
「ノアくんとレミちゃんはこっちにゃよ?」
「自分はレイジで、男だって言ったじゃないか!」
「ノアだってメスじゃないっ、Agといっしょがいいー!」
「玲実はともかく、ノアはメスの格好なんだから諦めろ」
「うにゃあああー‥‥!」

 ノアの叫びが「姫」暖簾の向こうへ消えたのを確かめた4人は、粛々と「殿」暖簾をくぐった。
 幸い他に利用者はおらず、脱衣所は貸し切り状態である。
「このカゴに脱いだものを入れるのか」
 共同浴場は初めてであろうAgは、戸惑いつつも潔く着衣を脱ぎ始めた。
「そういえばノアって、女の子なんですか?」
 横で着替える陸人が、素朴な疑問を口にする。
「オスとメスは、イデンシを次世代につなぐシカケだろう? その機能は俺にもノアにもない。だからどちらでもないな」
「はぁ‥‥」
 しれっと答え、かごの中からカメラを掴み出すAg。
「建物の中に湯が沸いてる。凄い技術だ」
 興味は既に浴室に向いているらしく、尻尾を揺らし歩いていってしまった。
「どっちでもないけど、ご立派なんですね‥‥」
 その背中を見送った陸人が、大きな溜息をつく。
「陸人さん、元気ないですよ?」
 しょげ気味な17歳に、ヨグは不思議そうだ。
 そんな彼が手に持つのは、お風呂でも遊べる素材で作られた「オレガカンパネラダ(仮)試作機のぬいぐるみ」である。
「ヨグたん、変わったKVのぬいぐるみだね」
「これをAgさんに見せてあげるのです! こう、ぐおーんと、ぐいーんとっ。学園と一緒に変形するヒミツも教えてあげちゃいますっ♪」
「え、でもあの2人、ハーモニウムだよ。本人達は隠してるつもりっぽいだけど」
「ふふふ。ものごっつ大秘密ですけども、今日は同じ学園生徒だから大丈夫ですっ! さ、玲実くんもいきましょー」
「べ、別に自分は風呂なんて‥‥どうしてもと言うなら、付き合わないことも‥‥」

 男湯で3人と1匹が仲良くやっている頃、女湯も和やかなムードに包まれていた。
「笠原君がいないのは残念だけど‥‥お風呂気持ちいいから皆で入るにゃ♪」
 女同士(?)の気安さか、千佳はリラックスした表情でノアの背中や尻尾を洗ってやっている。
 勿論タオル等巻いちゃいないが、肝心な部分には石鹸の泡がついているので寺倫もクリアだ。
「さ、洗ってあげるからくるにゃー♪ 綺麗綺麗してあげるにゃ♪」
「みゃふ‥‥」
 魔法少女アイドルのお背中流しなど滅多に味わえるものではないのだが、ノアには価値がわからない。
 されるがままになりつつも、黒い瞳でプリセラ、美鈴、ルリムを順番に追いかける。
「‥‥? ‥‥!!」
 ついと振り返り千佳を確かめたあと、いきなり風呂椅子から立ち上がった。
「にゅ、どうしたにゃ?」
「ノア、だいじなことキロクしなくちゃ! もう出る!」
 泡をざっと流して脱衣所に戻り、かごの中からメモを取り出すハーモニウム。
「えっと、『にんげんのメスのフカフカは、こたいにより大きさがちがう。プリセラ、みすず、ルリムはメロンぐらいのフカフカ。ちかはなぜか‥‥』」
「ノア、メモ書きはそろそろやめておこうか」 
 追いかけてきたルリムが、ひょいとメモを取り上げた。自分の胸が『メロン』と称されていることと
「でも先生にチョーサしてこいって‥‥って、なんでもない」
 己の立場をうっかり口走るノアに苦笑する。
「さあ、早く着替えてコーヒー牛乳を飲もう」
「コーヒーにゅーにゅー?」
「美味しいよ。風呂上りの正しい飲み方も、教えてあげるからね」
 ‥‥これはあれだ。たぶん、腰に手を当てての一気飲みなんだ。



 楽しい時間は瞬く間に過ぎると決まっているもので。
 夕焼け空の下、能力者達は2人を校門まで見送っていた。
 彼らの頭上には、既に虹色のHWが待機している。残された時間は、もう僅かだ。
「悪くない一日だった。次逢うときも、一緒に笑えればいいと思う」
「楽しかった! ありがと!!」
 それぞれの言葉で感謝と別れを告げる2人に、美鈴が箱を差し出した。
「ノアちゃん〜。部活で作ったケーキなのだ〜。みんなで食べてね〜」
「うん!」
 ノアが箱を受け取るのを待っていたかのように、HWのハッチが開く。
 地上に向けて伸びた光が2人を包み、ゆっくり吸い上げはじめた。
「ばいばーい、じゃないの♪ またね〜なのよ、絶対絶対、なの〜♪」 
 上昇してゆく影に、手を振るプリセラ。

「またな!」
 2人の収容を完了したHWが、音もなく高度を上げる。
 虹色の機体はみるみる小さくなり、雲の中に消えた。