タイトル:屹立!? 巨大松茸マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/18 09:56

●オープニング本文


 高知県を訪れた観光客の多くが足を伸ばす「桂浜」は、高知市の南、土佐湾の海岸線にある。
 カンパネラ学園1年生 三好 沙菜の実家は、そんな景勝地のはずれにある、年季の入った小さな民家だった。
「お兄ちゃん、久しぶり! カンパネラ学園の依頼ボードでお兄ちゃんからの案件があったもんだから、びっくりしちゃった! 裏山に変なキメラが大量発生したんだって?」
「元気そうで安心したよ沙菜。‥‥しかしお前ひとりかい?」
 能力者が依頼遂行のために使う高速艇で「実家」に帰省した能力者の少女は、畳に足を伸ばしてころころと笑った。公私混同ではない。れっきとした「依頼」のためだ。
 とはいえ打ち合わせが実家では、リラックスモードにはいるのも無理ないこと。
「おにいちゃん、このお煎餅食べていい?」
「ああ、遠慮することはない」
 「依頼主」である兄の好意に甘え、ちゃぶ台の上に乗っかったせんべいをばりばりと咀嚼し、リモコンでテレビの電源を入れる。ローカル情報番組でチャンネルを固定したが、真剣に見るつもりもないようだ。
「で、シゴトの話だけど。どんなキメラ? あの山、松茸狩りができるから早く倒さないと、秋の味覚が楽しめなくなっちゃうね」
「ああ、そうだな‥‥松茸狩りな‥‥」
 少女の向かい側に腰を下ろす兄は、深くため息をついた。
 年の頃は20代後半。エミタ適性こそなかったが、正義感は能力者である妹のそれに勝るとも劣らない。キメラ被害から故郷を守るため、地域の若者を束ねた「自警団」を率いる程に。
「‥‥とにかくこの写真をみてくれ。青年団のひとりが、偶然撮ったものだ」
 そんな兄の差し出した写真を見て、少女は息を呑んだ。
「ひっ‥‥!」
 ややピンボケだが、松茸型キメラの姿が3体、しっかりと映っている。
 周囲の風景と照らし合わせて考えるに、体長は1メートル50センチ前後か。
 黒光りする体躯に目鼻と腕は見あたらなかった。笠の先端に歯の生えた口がついており、丸いタイヤのような脚が根本にふたつ生えている。
「ちょ、これはまずくない? 色んな意味で!」
「ああ、まずい。しかもこれが、森にうようよ沸いてるんだ。とりあえず立ち入り禁止にして、パトロールを続けているが、街に下りてきたら大変なことになる。色々な意味で」
「なんてこと‥‥! すぐ退治しなくちゃだわ!」
 故郷の危機を感じ取った少女は、Bカップの胸を大きく反らした。
「まかせてよお兄ちゃん、あたしこう見えてもすごく強いんだから!」
 だが兄は、首を横に振る。
「いや、沙菜はやはり駄目だ。おまえは女の子だ。‥‥カンパネラ学園やラスト・ホープには強い人が大勢いるだろう? その人たちに頼んでくれないか」
 嗚呼、兄心。

 と、いうわけで数日後。
 カンパネラ学園生徒会事務部雑用係の笠原 陸人(gz0290)は、後輩に依頼を丸投げされていた。
「笠原先輩、男でしょ? なんとかしてくださいあたしの故郷!」
「あ、うん、がんばってみるけど‥‥何かこんなにでっかいと自信なくなるね‥‥」
 しっかりしろ青少年。

●参加者一覧

相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
セリス(ga7290
18歳・♀・ST
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
トリストラム(gb0815
27歳・♂・ER
プリセラ・ヴァステル(gb3835
12歳・♀・HD
美空・桃2(gb9509
11歳・♀・ER
姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC

●リプレイ本文

●これはひどい、を地で行きます
 秋晴れのある日。UPCワゴン車が、国道脇にひっそりと停車した。
 国道といっても、都市間を結ぶ整備されたそれを想像してはいけない。
 往復ギリギリ2車線、アスファルトはひび割れガードレールは曲がり、カーブの向こうははるか崖下といった「酷道」である。
 それはさておき。
「皆さんお疲れ様ですー、到着しましたー!」
 笠原 陸人(gz0290)はいち早くワゴン車から降りた。
 首からはプラケースに入った「松茸狩り許可証」をぶら下げている。ここに赴く前に地主から借りてきたものだ。
「キメラ退治が終わったら、松茸狩りの許可もいただいてまーす♪ さくっと倒しちゃいましょうねー!」
「そうね。さっさと倒して松茸で一杯いきたいわね」
 リンドヴルムを身に着けるドラグーンに、南 星華(gc4044)が微笑んだ。
 長躯にショートカットの、中性的な美女である。
 続いて降りてきたのは弓亜 石榴(ga0468)。ツインテールの15歳だ。反則級のバストがセーラー服の下でたゆんたゆんと揺れている。
「笠原君‥‥巨大な松茸なんてアタシ怖い‥‥でも‥‥頑張るから…守ってね」
 しおらしく目を伏せ、恥ずかしげにやる気を表明するロリ巨n、もといグラップラー。
 ぶっちゃけ相当な猫かぶりなのだが、色んな意味でお年頃の17歳が騙されても、それは仕方がないだろう。
「は、はい! 僕、頑張ります!!」
 そしてさらに煽るかのごとく
「笠原君、久しぶりやな!」
 巫女装束の相沢 仁奈(ga0099)が飛び出してきた。
 着物の前あわせからFカップの胸を大きく覗かせ、膝上30cmのミニ丈袴を揺らす、けしからん巫女である。
「に、仁奈さん! その格好は‥‥!」
「ん? 何やご立派なキメラ様が出たと聞いてな♪ これは是非たんの…もとい退治せなアカンね!」
 や、答えになってないですよ仁奈さん。
 と、そこに。
「やん♪」
 秋のきまぐれな風が吹き抜けた。ナイス大道具さん的な風量で、赤い袴を舞い上げながら。
「うち、今日穿いてないのにぃ〜」
 一瞬、袴の下の楽園が露になる。
「!!」
 健全な男子の思考回路をショートさせるには十分な絶景だ。
「あわ‥‥あわわわ‥‥」
「おや大丈夫ですか笠原君。ふむ、これは気合を入れなおす必要がありそうですね」
 カプロイアマントを翻し、石化している陸人に近づいたのはトリストラム(gb0815)。
 金髪の青年は魔術師的な手つきで小瓶を取り出した。
「さあこれを。槍使いの後輩も愛飲しているらしい『摩訶★瓶瓶』です」
 蓋を開け少年に薦め、自らも腰に手を当てて一気に傾ける。
「トリストラムさん! 僕、みなぎってきたんですけど!」
「それはよかった。いいですか笠原君、自信を持ちなさい。大きさだけで男の価値は決まらないと証明しましょう」
 待て兄さん、何を言ってるんだ。
「私は違う松茸でも全然OKよ、ふふふ」
 意気投合する2人の腰あたりを星華が見つめる。
「で、では、今回は範囲が広いので、散開して退治していきましょう!」
「うにゅ〜♪ 頑張っていくのよー♪」
 プリセラ・ヴァステル(gb3835)の元気なお返事に、なぜか狼狽える陸人。
「『イクのよ〜』ッ!?」
 駄目だこいつ、早く何とかしn(ry

 かくして、秋の猥せ‥‥キメラ退治の幕は切られたのだった。
 いいですかみなさん、キメラ退治ですからね。



●チとかザとか
 山の中腹は、西村・千佳(ga4714)と姫川桜乃(gc1374)、それに陸人が受け持った。
「桜乃さん‥‥できれば僕の後ろを歩いてもらえますか‥‥その‥‥目のやり場が」
 リンドヴルムの中で、消え入りそうな声で懇願する陸人。彼の前行く桜乃の姿は、潔くエプロン一丁。なるほど、そりゃ困る。
「にゅ、笠原くん。戦闘に集中しなきゃダメにゃ♪」
 アリスコスチュームの千佳が、にやりと笑いながら突っ込みを入れる。
「わかってますよぉ。‥‥って、ちかさん、あれ!」
 何か発見したのか、陸人は足を止め前方を指差した。草木の陰に、複数の松茸が屹立している。
「見て下さい千佳さん。あいつをどう思います?」
「あれはキメラにゃ。‥‥すごく‥‥大きいにゃ‥‥」
 桜乃も顔を赤らめ、口ごもる。
「どう見てもアレ‥‥アレよね。形といいタイヤの位置といいチn」
「それ以上言ったらダメです! LHに帰られなくなります!!」
 その間隙に
「にゅ、突撃にゃー!」
「OK! 意味もなく特攻! これぞノーガード戦法よ!」
「あ、待って!」
 巨大なモノに竦みあがる青少年を置いて、2人の少女が地面を蹴った!
「魔法少女★アターック!」
 ねこねこなっくる&注射器の初撃が一体目をざっくり!
「うに、思ったより柔らかいにゃね♪」
 しなしなと萎び、松茸キメラは地面に転がる。
 しかし黙って蹂躙されるほど、残りは大人しくなかった。
「にゃ!」
「きゃあ♪」
 白く濁った粘液が、2人の四肢を絡め取った!
「こ、これってザ‥‥」
「桜乃さん言っちゃだめ!」
「うー、何か白くてネバネバして気持ち悪いにゃ!」
 尻餅をついた2人めがけて、松茸どもの反撃がはじまる。
「ちょ、脚の間に入らないでぇ!」
「このっ、服が溶けるにゃ! 擦り擦りするんじゃないにゃ‥‥っ!」
 目の前で繰り広げられる痴態、もとい大ピンチに、気弱な青少年も動かざるを得ない。
「こらあああ!!」
 これまたリンドヴルムで無策に突っ込み、狼藉者を掴み引き剥がす。
「‥‥ウッ!」
 短い断末魔とともに、キメラは残骸と成り果てた。
「大丈夫でしたか‥‥ってか身体っ! からだっ!」
「にゅ、僕の身体がどうしたにゃ?‥‥に、みゃーー!? エッチにゃー!!」
 折角助けたのに、感謝のハグどころかナックルと注射器で撃退される青少年。
 理不尽である。



●何か色々凄い人たち
 さてこちらは、千佳たちとは反対方向に走った3人。
 先頭の石榴が仕込み傘「カルディナレ」で、下草を薙いでゆく。真ん中は仁奈、最後尾はトリストラムだ。
「悪い松茸はいねがー」
 石榴のエセ秋田弁が、山中に木霊する。
 と、呼応するように
「ハアハアハア!!」
 突っ込みどころ満載の鳴き声をあげながら、松茸どもが現れた。
 その数5体。これは乱こ、もとい乱戦が予想されるぞ!
「あないなモノ見せられたらもう辛抱たまらんッ!」
 先陣を切ったのは仁奈。瞬天速を発動させ、5体の真ん中に単騎駆け!
 腕を伸ばし手近な1体を掴むと、そのまま胸元に引き寄せた。
「うちが相手やでっ!」
 Fカップが弾み、キメラの身体を挟み込んだ。巫女装束ははだけているが、キメラも仁奈も気にしていない。
「くぅ‥‥キメラの癖に逞しいやんっ‥‥粘液でうち、べちょべちょやでぇ‥‥」
 粘液の中にナニか含まれているのか。仁奈はうっとりとキメラの首部分に口付け、両手で頭部分を弄り回す。
 脚の間にもう1体が潜り込もうと蠢くのにも、顔の傍に別の一体がスタンバイしているのにも、全く頓着しない。
「何かすごいことになってるねえ!」
 残りを担当するのは石榴とトリストラムだ。仕込み傘で戦う石榴を、トリストラムがサポートするスタイルである。
 もっとも
「何度倒れようとも起ち上がる、それが漢というものです。頑張って下さい!」
「トリストラムさん、今松茸治癒しようとしてた!」
「おや失敬、あまりにも硬度が足りなさそうだったもので‥‥憐憫とやらですかね、これも」
 仁奈同様、何気に楽しそうである。
 仕込み傘で2体の仲間を失った1体が、石榴に向って粘液放出の準備をし始めた。
 一切の攻撃をやめ、身体を膨らませる。わかりやすい「溜める」モードだ。
「危ない!」
 傘では避けきれない。悟ったグラップラーは、トリストラムの背後に回りこむ。
 その瞬間!
「くッ!?」
 濃縮された白粘液が、金髪の青年にぶちまけられた。みるみる溶けるカプロイアマント、魔術師の衣装。
 だが。
「怯みませんよ! かつて敬愛する伯爵も、ビキニパンツ姿を衆目に晒したものです。ならば、何を恥ずかしがる事がありましょうか!」
 慌てず騒がず恥ずかしがらず。男は凛と勃‥‥立ち続けた。
 何故か溶けない赤パン1丁で、溶け残りのマントを翻して。
「ハァハァ‥‥!?」
 文字通り精も根も尽き果てた松茸に、なす術はない。
「そろそろ潮時です、こんがりと焼き払いましょう!」
「そやねー。ごめんなー、退治するのがお仕事やねん」
 トリストラムの提案に、仁奈も合意。マジシャンズロッドとグラップラーの拳が、残りの松茸を屠る。
「無事に終わってよかった♪ 間違えてトリストラムさんの松茸を狩ったらタイヘンだもんね♪」
 いだいいだい。



●女3人茸狩り
 同じ頃。美空・桃2(gb9509)、セリス(ga7290)、星華の3人は頂上付近を捜索していた。
「たくさん退治してお土産にするのであります」
 美海はハイキングルックにリュックサックの物見遊山スタイル、
「私はマイペースで‥‥慌てず騒がす処分していく‥‥わ」
 一方セリスは冷めた風情だ。しかしセーラー服にニーソックス、足には砂錐の爪を装備。
 田舎町の平和を乱す松茸どもを、美しい脚でお仕置きする気概は十分伝わってくる。
「見てほら、たくさんいるわ」
 ついと星華が指で示した。
「姿かたちがナニを彷彿とさせるわね」
 なるほど彼女の言うとおり。木々の隙間から何体ものナニもとい、松茸が見えた。
 こちらにはまだ気がついていないようだ。
「くぅ〜、臭いが辛抱たまらないのであります!」
 潤んだ目で松茸を見つめる美海。傍らでセリスは木の間にロープを張りはじめる。
「数が多いから‥‥こちらにおびき寄せて‥‥転がして倒しましょう」
 淡々と説明し、警戒しつつ松茸たちを「釣り」に出た。
「そそり立っているのです‥‥! 固くて、大きくて、口に入りきらないのであります!」
 今度は生唾を飲み込みながら、美海が熱っぽく成り行きを見守る。手にはエネルギーガン。
 視覚を持たないキメラたちに、セリスが近づく。
 音が聞こえるまで、匂いが届くまで。
 だしぬけに、臨界は突破した。
 奇怪な鳴き声を発し、松茸どもがセリスを振り返ったのだ!
「いきます‥‥!」
 引き離さず、追いつかれず。速度を調整しながらセリスは仲間の方へと走った。
 ロープを飛び越え、悠然と待つ。
 何を? ナニを?
「かかった!」
 そう、松茸どもがロープに足をとられるのを。
「さあ、お仕置きよ!」
 星華が妖刀「天魔」を手に、松茸に挑んだ。根元から先端にかけて一気に切り裂き、屠る。
「アアアア!!」
 断末魔と共に噴出する粘液を浴びても、容赦はしない。
「厭ね。私には白い液をかけられる趣味は無いのよ」
 言いつつも、どこか嬉しそうだ。
 作戦の立役者、セリスは足技成敗の真っ最中である。
「こんなモノは足で十分‥‥ほら、早く果ててしまいなさい‥‥」
 無様な松茸どもを踵で踏みつけ、爪先で抉り、
「ちょっと足でしただけなのに‥‥こんなに出す‥‥なんてね。靴が汚れちゃった‥‥じゃないの」
 優しく囁いてから、踏み抜いて止めをさした。マニアックであるが、松茸どもは一遍の悔いなしだろう。
 「女王様」は吐き出された粘液を手で拭い、指先で弄んでから口に含んで下さったのだから。



●友情パワーでがんばるの
 さて今回唯一の2人組も、松茸に挑もうとしていた。
 前衛は背より大きな戦斧を携える小野塚・美鈴(ga9125)。
 後衛は野兎色のアスタロトに合わせてウサミミカチューシャも茶色にしたプリセラである。
 射程距離に入った松茸どもの小群に、2人は顔を見合わせた。
「数が多いから纏めて行くのだ〜」
「うにゅ、がんばるの!」
 深い友情で結ばれた間柄、多くの言葉はいらない。アイコンタクトから3秒後。
「バッサリ行くのだ〜!」
 美鈴、紅蓮衝撃を発動! 小柄な身体を躍らせて松茸どもを斬る! 斬る!
「美鈴ちゃん、すごいの〜!」
 一方プリセラの周囲にも、松茸は群がってきていた。
 既にキャノンの射程内ではあったが、トリガーは引かない。
「うにゅ‥‥無闇にぶっ放すと土地が痛んでしまうの‥‥それに松茸もきれいなままがいいの‥‥」
 前者は地主への、後者は料理好きな美鈴を想う優しさ。だがその優しさが仇になった。
「うにゅううう!?」
 距離を詰めた松茸が3体、プリセラにダイブしてきたのだ!
 仰向けにひっくり返った少女の「規格外」の胸の上にのしかかる松茸。
「うにゅう!?」
 キメラは捕食本能のまま、勢いよく粘液を放出する。
 もはやエネルギーキャノンを放つ暇も無く。
「うにゅ‥‥ベトベト‥‥うにゅうんっ」
 プリセラの赤い髪に、野兎色のアスタロトに、白い粘液がたっぷり散った。
 もっとも狼藉はそこまで。
「こらー! プリセラちゃんに何するのだー!」
 持分を片付けた美鈴が、デルフィニウムを振りかざして走ってきたのだから。
「プリセラちゃん、大丈夫? 今レジストをかけるのだ」
「美鈴ちゃんありがとうなの〜‥‥さすがに3本は、きつかったのぉ〜」



●味覚、堪能!
 秋の陽射しが西に傾く14時頃。
「お待たせなのだ〜」
 今回の依頼人、三好家の裏庭に、松茸の香りが漂った。
 駆除後採取した松茸を、美鈴、仁奈、プリセラが手際よく調理したのだ。
「松茸ご飯に、松茸の天ぷら、焼き松茸、松茸のお吸い物なのだ〜」
「うにゅ! 松茸の茶わん蒸しにも挑戦してみたの!」
 さっぱりと着替えた少女たちの手料理に、トリストラムが感慨深げに頷く。
「義弟や後輩たちにも、食べさせてやりたいですね」
 勿論彼も着替え済みだ。赤パン1枚は社会的にまずい。
 一方千佳は陸人の横に座り、松茸の丸焼きを食べさせようとしていた。
「笠原くん、これ焼けたにゃよ♪ はい、あーん♪」
「いや、僕が丸のまま食べても誰得っていうか‥‥」
 そこに横から仁奈と石榴が乱入。
「ええ具合に焼けとるなぁ♪ キメラを思い出して舐めしゃぶってしまいそうや♪」
「これは白い液を出さないからパクっとイっちゃえ!」
「ほな石榴ちゃん、いっしょにイこか?」
 えっと、あくまで秋の味覚を堪能しているだけですからね。ね。
「あらあら、この松茸とあなた達と、どちらが大きいかしら」
 日本酒を嗜んでいた星華が、トリストラムと陸人に目配せを送る。
 口ごもる青少年と裏腹に、カプロイアフリークが胸を張った。
「大きければ強い。そうではなかったでしょう、レディ?」
 兄さん、答えになってない!


 そんなこんなで松茸キメラは駆除され、山に平和が戻ったのだった。
 この報告書のあちこちが、墨塗りになっていないことを切に願う。