タイトル:【紅獣】3 on 3マスター:虎弥太

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 17 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/18 18:01

●オープニング本文


「ぶえっくしっ!」
 季節の悲鳴が、雨在 利奈(gz0124)の口から漏れる。
 ぶるるっと身震いしながら、熱燗を片手にこたつへと潜り込む。
「利奈、もうちょっと身体動かしたらどうなの?」
「まったくです‥‥」
 珍しく意見が合った清総水 栄流(gz0127)と残間 咲(gz0126)。どうやら二人ともスポーツセンターから帰って来た所らしい。後ろでリリス グリンニル(gz0125)と零(gz0128)もぴょこぴょこ跳ねながら汗を拭っている。
 寒い日こそ運動!
 栄流の号令によりスポーツセンターで身体を動かすことが決定したが、案の定利奈は、

「だりぃ」

 その一言で一蹴し、一人出張所(という名の家)でぬくぬくとこたつで大好きなお酒を煽っていた。なんでこんな寒い中わざわざ外に出て動かにゃならんのだ。まったく其の通りである。報告官の筆にも力が入ることは理解して頂きたい。こたつ万歳。
「咲も栄流もバスケットボール上手かったね〜、すごかった〜!」
「うん‥‥すごかった」
 零とリリスが絶賛するように、二人とも中々な動きをしていたみたいだ。リリスも珍しく興奮しているらしく、しきりに頷いている。
「ほぇ〜‥‥」
 気の抜けた利奈の一言をよそに、この後零が発した言葉が、まずかった。

「で、どっちが上手いのかな〜」

 ちっ
 利奈の舌打ちが聞こえたような気がした、うん。
「もちろん、私でしょ」
「‥‥愚問ですね、私ですよ‥」

 間。

 あ、火花が散ってる。
 この流れからして、勝負することは決まったようなもので。
 だが、零の更にめんどくさい一言によってそれはどんどん大きくエスカレートしていく。
「あ、じゃあさ〜! どうせなら皆で集まってチームでどかーんとやろうよ〜」
 チーム戦ですか、面白い。
 いいわよ、望むところよ。
 ライバル同士の合致により、そのように決定した、冬のバスケットボール対決。
「ちっ‥‥しちめんどくせぇ〜‥‥」
 悪態をつきながら、利奈はほぼ空になった徳利の最後の一滴を喉へと流し込んだ。

●参加者一覧

/ 鳴神 伊織(ga0421) / ロジー・ビィ(ga1031) / 須佐 武流(ga1461) / 聖・真琴(ga1622) / エマ・フリーデン(ga3078) / 藤村 瑠亥(ga3862) / フォビア(ga6553) / アンジェリナ・ルヴァン(ga6940) / 天城(ga8808) / ヨグ=ニグラス(gb1949) / リヴァル・クロウ(gb2337) / セシル シルメリア(gb4275) / キヨシ(gb5991) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / ピアース・空木(gb6362) / 綾河 零音(gb9784) / ソウマ(gc0505

●リプレイ本文


 零(gz0128)の気まずい発言により急遽開催されることになった紅獣主催のバスケットボール対決に、続々と能力者達が集う。
「バスケットですか‥‥以前にも依頼で試合をしましたね。今回も楽しめそうな感じです」
 鳴神 伊織(ga0421)は、知人や友人がいるので興味を持ちやって来た。
「バスケ‥‥しかも3on3のトーナメントだなんて面白そうですわっ!」
「そうだね。3on3かぁ〜♪ 仲間内では良くやったけど、ゲームってのは初めてだな」
 たまにはこんな依頼も良いものですわね〜、とはしゃぐロジー・ビィ(ga1031)と「楽しみ〜♪」とワクワクしている聖・真琴(ga1622)。
「バスケなんて久しぶりだなぁ‥‥。体、鈍ってなきゃ良いけどな。ま、見てなって。今年の新人賞は、俺で決まりさ」
 声援よろしく! と零にウィンクしながら宣言する須佐 武流(ga1461)。
「バスケットボール、懐かしいな‥‥」
 LAスラム出身の朧 幸乃(ga3078)は、幼少時代、スラムにあったリングで大人に誘われ、良く賭けストリートバスケットをしていたことを思い出している。
「紅獣の皆は久しぶりね。バスケットの大会?」
 フォビア(ga6553)の質問に「そうだよー!」と零は参加を勧める。
「‥‥ここですか。賞金がない大会場は。んと、面白そうな事をしているみたいなので、ひょっこり来てしまいました。なんでも賞品も出ないとか。運動した後には甘い物を食べるべきですっ! え? 参加もできるですか?」
 プリンを手に驚くヨグ=ニグラス(gb1949)。
「このような形のバスケはあまりしないので、たまには良いだろう。それにしても、あれが紅獣か‥‥」
 メンバーのやりとりを見ながら、子供の小競り合いに見えるのは気のせいだろうかとため息をつくリヴァル・クロウ(gb2337)。
「栄流さ〜ん、お久しぶりです♪ また会えて嬉しいのですよー♪」
 清総水 栄流(gz0127)に駆け寄ったセシル シルメリア(gb4275)が握手しながらご挨拶。
「私も、あなたに会えて嬉しいわ。今日はよろしくね」
「はいですー♪」
 ある程度集まったところで、紅獣メンバーを交えたチーム編成を行うことに。


「誰か、僕とチームを組みませんかー?」
 ヨグがチームメイトを募集すると、ロジーが名乗り出た。
 あと1人どうしようかと辺りを見渡していると、ロジーに声をかけにきた幸乃に目をつけた。
「ロジーさんは、お久しぶり、かな‥‥?」
「そうね、久しぶりかも。ちょうど良かったわ。私達のチームに入らない?」
 断る理由もないので、幸乃は二つ返事でOKした。
「姉様、チア服でバスケットするですか?」
 チア服に着替えに行こうとするロジーを見て、ヨグはこの場所は女性が多い気がする、皆がチア服を着ればすごいことになりそうだと思った。

「利奈、皇、俺と組もうぜ」
「ああ。雨在殿、須佐殿、よろしく頼む」
 武流と雨在 利奈(gz0124)に主役を譲る皇 流叶(gb6275)の横では、利奈は「かったりぃ〜」とダレ気味。

 真琴は小隊仲間の天城(ga8808)、ソウマ(gc0505)とチームを組むことに。
「チーム名は『Gargoyle』ね☆」
 チーム名だが、小隊と同じ名前である。
「傭兵になってからバスケはちょっと久しぶり。あんまりスポーツは得意じゃないけど、これだけは! なかなか上手なんですよ?」
 これだけは! と主張するところを見ると、天城はバスケに自身があるのだろう。
「頑張りましょう、優勝するのは僕達ですよ」
 ソウマのバスケ経験は体育の授業程度だが、それを悟られないよう、自信満々に振る舞う。そんな彼のロッカーの中には、バスケットボールの専門書やプロ選手のDVDがあるのだがこれは内緒、ということで。
 試合前に零に話しかけ、事前にチームの情報を集めているソウマの目的はバスケを思いっきり楽しみ優勝を目指すことだがそれは表向きで、実は零と仲良くなることである。
 そういうこともあり、会話は脱線し楽しい会話に。

 リヴァル、キヨシ(gb5991)、ピアース・空木(gb6362)のチーム名『Blitz』だが、こちらも全員所属の小隊の名前である。

 フォビアはアンジェリナ(ga6940)、残間 咲(gz0126)と同じチームに。
「アンジェリナさん、咲さん、よろしく」
「こちらこそ、よろしく頼む。参加するからには優勝を目指す」
 これが生涯初のカジュアルスポーツの試合なのだが、と小声で呟く。
 咲はというと、栄流がいるセシル、綾河 零音(gb9784)のチームに勝つことを目標としている。


 対戦チームは、零が作ったあみだくじで決まった。
 第1試合
 栄流、セシル、零音チームVS咲、フォビア、アンジェリナチーム。
 第2試合
 利奈、武流、流叶チームVSチーム『Gargoyle』。
 第3試合
 ロジー、幸乃、ヨグチームVSチーム『Blitz』。

「‥‥試合‥‥始めるね‥‥」
 チームが決まったのを確認した審判のリリス グリンニル(gz0125)がホイッスルを鳴らす。
「‥‥解説の藤村だ‥‥なぜこうなったかは知らん」
 チーム戦不参加の藤村 瑠亥(ga3862)は応援に来たのだが、零に解説役として引っ張られた。
 右目が見えない瑠亥だが、紅獣メンバー全員と面識はある。というものの、経験者とはいえ勝ち負けがある試合となると不参加せざるを得ない。
(「というか、それで負けたらあいつらに巻き込まれたくない‥‥」)
 本音を心の中でボソリ。
「どのチームが勝つと思う?」
 零に訊ねられたので「そうだな‥‥」と、どこが勝つかは正直予想できないと付け加えて予想を話す。
「残間のチームは、残間の能力は高そうだな。アンジェリナ達は素人だが、どこまでチームワークが取れるか楽しみだ。清総水のチームは、全体的バランスが良さそうだ。傭兵のチームも、趣味でやってる者が多そうだし。雨在のチームは、どうなるか一番わからない。というか、雨在のやる気次第だろう」
 初戦から、開催の発端となった栄流と咲の対戦とあり結果はどうなるかわからない。

 ジャンプボールを行う栄流と咲は、何事もないようにサークルの中心に引かれているラインを挟んで火花を散らしている‥‥ように見える。
「あなたと、いきなり試合なんてね」
「‥‥それは、こっちの台詞‥‥」
 やや険悪なムードがコートに漂ったが、大好きな憧れの存在である伊織が応援に来ていることもあり、笑顔で手をブンブン振るセシルの明るさがそれをかき消した。
「伊織さーん! 私、頑張りますですー!」
 そんな彼女だが、バスケはやったことがないが「運動神経ぷっつんですけど頑張りますー!」とやる気十分である。
 練習で栄流、零音と三角パスをしている時、顔面キャッチは当たり前だったが、栄流の励ましがあったので痛みを堪えながら練習に励んだ。

 リリスが試合開始のホイッスルを鳴らし、ボールを高々と上げると栄流と咲がジャンプしボールに手を伸ばした。
 ボールを弾いたのは咲。
 コートに叩きつけられたボールは、アンジェリナが素早くキャッチし速攻! というところをバスケ経験は無いが、暗部として活動していた運動神経に自信がある零音がマークに付きブロックしようとするがフォビアが駆けつけて来るのに気づいた。
(「戦闘依頼、剣術の鍛練で培っている感覚で行けるはずだ」)
 パワープレイ、スピードプレイの切り替えができる身体能力の持ち主であるアンジェリナはチームの司令塔として敵の動きを見つつ、味方の位置の状況を確認していたので素早くパスすることができた。
 フォビアはドリブルで突破し早く、確実に得点しようとするが、栄流とセシルにマークされた。
「ここは、フェイントでいくしかないわね」
 苦し紛れにとパスと見せかけ、2人を騙し、一瞬の速度で抜くと体を傾け重心を崩し、それを脚で支えて走る。
 その際、地面を蹴るのではなく足を運ぶように、無駄な筋力の溜め時間を排除して前に進もうとする重力の作用を推進力に加速している。方向転換も筋力でブレーキをかけていては遅いので、重心移動で加減速度を調整。
 マークを抜けると、アンジェリナ、咲とパス繋ぎを繰り返しながらゴールに攻め込んだ。
 パス&ランを主軸に迅速に攻撃。これがフォビアの戦法だ。
 シュートチャンス! とアンジェリナと咲がリバウンド可能なのを確認し、フォビアはアイコンタクトでシュートを予測させ、素早く反応を促してからミドルシュート。
 残念ながら外れたが、咲がリバウンドしてシュート。
 咲チーム先取点ゲット、というところで前半終了。

「栄流さ〜ん、お願いしますですー!」
 後半はセシルから栄流、栄流から零音と巧みなパス繋ぎで順調にゴールに向かう。
 ドリブルの最中に転んだりと足を引っ張っていたセシルだが、零音からパスを受け取るとシュート。
「え〜い!」
 それは適当、貧弱に見えるものだったが上手い具合に決まった。
「ふぎゅ‥‥ラッキーですー♪」
 セシルの頑張りで同点に追いついたが、その後のアンジェリナのパワープレイ、咲のトリックプレイ、フォビアの予想外の動きにも素早く反応するプレイに一歩及ばなかった。
「あうー、負けちゃいましたですー。ごめんなさいですー」
 自分が足を引っ張ってしまったと思い、セシルはしょんぼり涙目で謝った。


「ちょりーっす!」
 天城を先頭に、真琴、ソウマがコートイン。
「栄流のチームと対戦するの、ちょっと楽しみだったんだがな‥‥」
 がっくり肩を落とす武流は、利奈に引き摺られるようにしてやって来た。
 ソウマが、試合前のパフォーマンスで披露したいものがあると真琴を手招きする。
「マジでアレやるの?」
「やります!」
 真面目な顔をして言うので、仕方ないなぁと渋々やることに。
 事前に集めた情報を元に、ソウマは手を組み、それを踏み場にして真琴がダンクを決めた姿を見て「おおーっ!」と盛り上がる観客達。

 ジャンプボールは、栄流と正々堂々と勝負したかったと残念がる武流と真琴。
「負けないからね〜♪」
 身長差もあり、ボールを弾いたのは武流だった。
 零れ球を手にした流叶は目立たないようにと動き、武流と利奈、2人のサポートに徹することにしたので、持ち過ぎないようにと素早く接近した武流にパス。
「ナイスパス! 男は俺1人だからな、攻めも守りも真ん中で頑張りますかね」
 ボールを受け取ると、ワンパターン攻撃にならないよう積極的にガンガン攻め、ダンクと見せかけ、下をすり抜けるようにレイアップシュート。
 この調子でもう1回ゴールと意気込む武流だったが、疲れて集中というのは嫌、と、ディフェンス重視の天城にマークされた。早く抜けようと焦ったのが裏目に出たのか、ボールを真琴に奪われた。
 真琴は武流の背後にカットイン、走り込んでのレイアップを主にダブルクラッチ、レイバックを交えてのフェイクを敢えてゆっくり行い、相手の気を自分に惹きつけている。
「ちまちま守り‥‥ってのはアタシの性分じゃねぇけどな」
 しちめんどくせぇ‥‥とぼやきながらも、利奈が真琴のマークに付くが、軽快なフットワークで翻弄する個人技を活かし擦り抜けた。
 天城かソウマにパスを、と動く真琴だったが、2人の死角に割り込み、パスカットやスティールを狙う流叶がマーク。
 自分より背が高いソウマは体格差で当り負けするだろうと、体をずらし、合気道の理論でソウマの身体バランスをずらしてみようと試みたが失敗した。
 パスのチャンス! と真琴が動くが、バランスを崩し転んでしまった。
 それを武流が拾い、流叶にパス。
 低い身長を活かし、細い隙間を縫うようにドリブルするが天城とソウマにマークされたが、フェイント気味に、武流の方を見ないでアイコンタクトで騙し、ソウマの股の下を潜り抜けるかのように利奈にパス。
「‥‥股の下とか、結構盲点だったりするのだよな」
 リバウンドしようとゴールに向かう流叶に「ほらよ」と面倒くさそうに利奈がパスする。
 ダンクやリバウンドに必要なジャンプ力は結構自信はあるが、タイミングが難しいとシュートを避け、誰にパスしようか迷ったところで前半終了。

 後半。
 Gargoyleはゴール前に天城とソウマ、真琴はボール保持者をプレスのマッチアップゾーン型に。
 ボールを手にした真琴は、前半同様、個人技主体で切り込んでいく。
 状況に応じて天城にパスしたり、ロングを狙わせトスかアリウープ合わせたソウマとの連携、勢いを重ね豪快で華麗なエアを。
 踊るように、流れるように身軽さとスピードを活かし、長身の武流には姿勢を低くして懐へと動く。
 そんな真琴が前に出てボールに対してプレスをかける間、ソウマと天城は、ゴール前に2枚の壁を作るようなかたちでガード。天城はゴール下はパワーもあまりないのでどうしても苦手だったが体力を温存していたこともあり、パス&ランといったスピード技、スイッチやスクリーンなどの基本的な連携で攻め込み、相手の視線が変わる瞬間を見逃さずに動き、真琴から繋いでもらったパスをミドルシュート。
「決まりました! 地味とか言わない!」
 誰もそう言っていないのだが‥‥。

 流叶、利奈との連携を交えながら攻め込む武流だったが、真琴チームの堅い守備に阻まれシュートできず。
 この試合はどうなったかというと、素早い動きで攻め込んだ真琴の活躍によりGargoyleが勝った。


 久しぶりのバスケ、エミタのせいで力加減が変わっていると思う幸乃は、しっかりアップして大人の仲間とやっていたストリートバスケの感覚を掴んでいた。
「えと、ストリートなのでしたら、相手の小股とか潜ったりしても大丈夫ですよね? そういうのが楽しいですっ♪」
 シュートが決まったり、チームメイトが決めたらハイタッチでひゃっほいしますー♪と張り切るヨグ。
「皆さん、遊びとは言えきっと本気でしょうね。私達も負けないよう、頑張りましょう」
 ロジーが言うように、対戦相手達は本気でプレイするだろう。
 ジャンプボールはロジーとピアース。
「はっはー♪ 俺様の華麗なプレーを‥‥ってぇ、抜くなぁー!?」
 ロジーにボールを弾かれたことに驚くピアース。そのボールを即座に拾ったリヴァルは、左右、どちらか人のいないところに展開しつつドリブルしゴールに一直線。ジャンプシュートは外れたが、ゴール下にいたキヨシの咄嗟のリバウンドが決まった。
「まぁ、こんなもんやな」
 Blitz、先取点ゲット。
 頭より下にボールを降ろさずパス回しをするキヨシ、リヴァルの見事な連携からボールを受け取ろうとしたピアースだったが、ゴール下でのカットも視野に入れ、パスカットを積極的に行うロジーに奪われた。
 マンツーマンでの防御を徹底し、チームメイトや相手の邪魔になるように動き、攻撃に必死になって回りが見えていないピアースをカット。
「攻撃は最大の防御‥‥有効に使っていきますわよっ。ヨグっ!」
「はいですー!」
 カットしたロジーからパスを受け取ったヨグだったが、素早く幸乃にパス。
「今なら、外からもシュート、打てそうかな‥‥」
 ストリートでやっていた、エミタで力がついたとしても技術が伴わないので、無理にプレイスタイルを変えることなく、かつて大人の仲間を擦り抜けてシュートを。
 的確な幸乃のシュートが決まり同点に。
 相手の小股潜り抜けが上手くいったヨグがドリブルを、というところで前半終了。

 後半はBlitzの攻め込みで始まった。
 ゴール下からのシュートが通じないと判断したキヨシは、撹乱作戦に移行。
 リヴァル、ピアースの後から攻め込み、スクリーンを利用してのレイアップを決めようとしたが、ロジーがブロックについたのでフェイントを交えて、チームメイト2人が動いている間に3ポイントラインまで下がるとリヴァル、ピアースにボールを繋げ、再度パスを受け取ったところにロジーと幸乃が張り付いた。
「ラフプレーは、無いようですね‥‥」
 体格がネックなのでリバウンドは厳しいと自覚しているためラフプレーに徹することにした幸乃だったが、進んですることになることはないと思いつつキヨシをマーク。
「これならどや?」
 マークを避けるため、キヨシは後ろに飛び退きながら3ポイントシュート。
 あかんか、と諦めかけていたが、見事に決まった。
「やっぱ、こういう勝負事は相手を騙す、おちょくる、コケにするやな!」
 シュートすると見せかけてパス、パスとみせてシュート、とキヨシ曰く、相手をコケにする戦法により3点ゲット。
 ピアースは余りシュートを打たずにドリブル、パスワークを重視しているが、ここぞと言う時には速度を活かし、一気にドライブイン。
 フロントチェンジ等で挑発し、ロジー達がボールに食い付いた瞬間にレッグスルーを‥‥というところでバランスを崩し転倒。
 汚名返上! とその後も頑張るが、キヨシと玉砕して抜けられたり、リヴァルに突っ込まれたりと散々な目に遭ったがボケまくった。
 試合はロジーチームが有利かと思われたが、長身を活かした戦法を駆使しBlitzが勝った。

 試合終了後、ピアースは少しだが他人様にご迷惑をかけたことでリヴァルに呼び出され、裏で指導された。


 休憩時。
 試合には参加せず見学している伊織は、声を上げての声援はせず、これまでの試合を穏やかに見守っていた。
 試合を見ている最中も落ち着いているため、驚くことや極端な反応、年相応の反応を見せる事はなかった。
「伊織、きみも来ていたのか」
 伊織を見かけたリヴァルは、急だったので声をかけられず申し訳ないと謝罪。
「ピアースからの提案で、部隊の訓練にも丁度良いだろうと判断したので参加したのだが、きみは試合に参加しなかったのだな」
「ええ。でも、こうやって他の方の一生懸命な姿を見るのも良いものですね‥‥」
 そんな2人に割り込むように、真琴はリヴァルにタオルと飲み物を差し入れた。
「く〜ちゃん、お疲れ。カッコ良かったぞぉ♪ 同じチームだったら、もっと良かったけどね♪」
「きみとは、以前のレクリエーション以来か。次はきみのチームと試合だったな。今回は勝たせてもらう」

「楽しいプレイの後には、楽しい息抜きをですわ」
 メイド服姿のロジーは、ドリンク等の給仕を。
「今後も、応援の方も一緒になって楽しめる時間や、お話の時間が作れると良いですわね!」

 その近くのベンチでは、どかっと腰掛けた利奈が酒をかっくらい、武流は零とリリスに「どうだった、俺のプレイは?」と感想を聞いていた。
「いやー、なかなか‥‥久しぶりに面白かった!なかなかのモンだったろう?俺、なかなかカッコ良かっただろう!」
「‥‥まぁ‥‥カッコ良かったよ‥‥」
「そうだね」
 それを聞いた武流は安心し、利奈を労いに。
「利奈はお疲れだ。こき使って悪かったな?」
「別に。アタシはかったるい試合が終わってホッとしてる」
 お疲れ様、とスポーツドリンク入りの水筒とチョコレートを2人に手渡す流叶。

「藤村さん、少し、お相手してくれませんか‥‥」
 試合後に空いている場所を見つけたので、幸乃は瑠亥に相手になってもらえないかと声をかけた。
 休憩が入った時に零とリリスを誘って遊ぼうとしたが断られたので、幸乃の誘いはありがたかった。
「一人でやるのもな、暇なら手伝ってくれ。シュート中心で良ければな」
 元はスピードプレー中心だったが、片眼が見えないためシュート中心に幸乃と遊んだ。
「皆ー、そろそろ次の試合始めるよー」
 零の合図で、咲、フォビア、アンジェリナとGargoyleの面々がコートに。

「どっちも頑張ってくださいですわ〜!」
 愛用のぴこぴこハンマーを使い、両チームを一生懸命応援するロジー。
 ヨグはステージ衣装も着替え、金網付近でプリンを作っている。
「このどこでもプリン製造機さえあれば‥‥いつでもプリンが!」
 プリンを作る手を休めては、ぴこぴこハンマーを叩いて応援。 


「さぁ♪毎度の如く引っ掻き回すぞぉ?」
 うけけ、と笑い、リヴァルにやたら挑発する真琴。
「さっきも言ったが、今回は勝たせてもらう」

 ジャンプボールでボールを弾いたのはリヴァル。
 ボールを手にしたピアースは、鎖に通して首に下げているスカルリングを気にしながらドリブルしている。
(「激しいプレスとかしたら、壊れちまいそぉだよな‥‥」)
 スカルリングは、好意を寄せているセシルの兵舎で買ったものだ。対戦チームが決まった時、セシルがいる栄流チームでなくてほっとしたものだった。
 フロントチェンジ等で挑発し、ソウマがボールに食い付いた瞬間にレッグスルーし、反対方向へショートドリブルで姿勢を低くして一気に抜け、ボールをソウマの上から回しキヨシにパス。
 後ろから攻め込み、スクリーンを利用してのレイアップシュートが決まったことでBlitz、先取点ゲット。
「まだ前半、冷静に〜!」
 これ以上ゴールさせまいと、天城とソウマはゴール前で壁を作るようにディフェンス。
 真琴が自分サイドにドリブルしてきたので、天城はディフェンスについているピアースにスクリーンをかけ、ディフェンスを外した。
「いっただき〜♪」
 速攻で確実な真琴のレッグスルーでGargoyleに得点が。
 更に得点を狙う真琴は、レッグスルーからのバックロールターン&ビハインドチェンジ、ノールックのビハインドパスも併用し、仲間と共に攻め込んだがピアース、キヨシを前に出した逆三角形のゾーンディフェンスに阻まれ思うように行かず。
 前半は、両チーム同点で終わった。

 後半開始時、ソウマはこれしか勝つ方法がないと天城に「アレをやろう」と持ちかけた。
「アレって、前の試合で真琴さんと見せたアレ?本当にやるの?」
 ソウマの説得に根負けした天城は、後半残り2分を切ってからすることに。それまでは前の試合同様、マッチアップゾーン型で守りに徹することに。
 前半同様、真琴が切り込むが、ゾーンディフェンスで外からのシュートは完全に捨てる
 キヨシとリヴァルがゴール下で漢数字の八の字になるようにピアースを交えディフェンスに。
「ほれほれ、抜けるもんなら抜いてみぃって、アラ?」
 キヨシはわざと真琴に抜かれるように守り、抜かれる方向をゴール側面に誘導している。側面は遠近感がとりにくいためだ。
 翻弄プレイを得意とする真琴だったが、堅いマークを抜け出すのに苦労している。
 抜け出せないと諦めた真琴は、天城が接近してきたのを見逃さなかったのでパスしようとしたが、その位置に気を配っていたキヨシがすかさずカット。
「はい、残念でした」
 ニヤリとしながら、ピアースにパス。
 パスを受けたピアースは、キヨシとピックアンドロールを繰り出す。2人で1人と言ってもいい呼吸のあったプレイにより追加点を。
 残り2分を切り、真琴がシュートチャンスを用意してくれたこともありソウマと天城は積極的に切り込み、相手がヤマをかけたのでダッシュとストップの連続で揺さぶりをかけ、バックターンで抜き、ソウマを足場にスーパー回転ダンクを。
 上手くいくかと不安な2人だったが見事に決まった時点で試合終了。かろうじてGargoyleが勝った。


 トーナメントは、チームワーク抜群の咲、フォビア、アンジェリナチームと真琴主体のGargoyleの試合を残すのみとなった。
「どちらが勝っても、おかしくはないな。どうなるか楽しみだ」
 左目を細め、瑠亥は楽しみに観戦する。

 決勝ということもあり、両チームの動きは目を見張るものがある。
 真琴が翻弄と素早い動きで攻め込めば、コースを先回りしたフォビアがマークに。
 予想外の動きにも素早く対応できるように動いていることもあり、真琴がどのように動いてもマークし続ける。
 天城にパスしようと真琴が動いたところに咲が接近、ボールを奪ったが、駆けつけた天城がガードする。
「‥‥隙がないわね‥‥」
 といいつつ、咲はどこかにあるはずと探る。
 真琴とソウマが迫ってきたので、独特のカンで探り、一瞬の隙を突いて抜けた。
 フォビア、アンジェリナとパスを繋ぎながらドリブルでゴールに向かいレイアップシュートしたが外れたが素早く反応し、リバウンド勝率を高めようと動いたアンジェリナのティップシュートが決まり、前半残り3分で咲チームが先取点を。
 Gargoyleも得点を狙い攻め込むが、咲チーム2点で前半終了。
 10分で1ゴールしか決められなかったのは、Gargoyleのディフェンスレベルが高いということだろう。

 後半。
 トリックプレイでゴールまで辿り着いた咲がシュートを狙うが、執念でマークする天城にカットされた。
「バスケは全員がシューター! 私も〜♪」
 Gargoyle逆転を狙い、天城はディフェンスをやめ攻め込むことに。
 カットチャンス、フォビアは天城からボールを奪い、敵を翻弄する咲の注意が真琴とソウマに向いたので、その隙を突くようにカットインからのシュートで得点を狙い、チームの攻撃に連続性を持たせるために対応を絞らせず、確実に得点できると判断したので一瞬の速度でドリブル突破、レイアップシュートで追加点。
 その後も、アイコンタクトで咲とアンジェリナにシュートを予測させ、フォビアは2人がリバウンドができるとミドルシュートしたが外れたが咲がリバウンド。
 これ以上点を入れさせない! と意気込むGargoyleだったが、咲達の連携プレイと強固なディフェンスには敵わなかった。

 前後半合わせて20分の紅獣主催バスケットボールトーナメント決勝は、咲、フォビア、アンジェリナチームが制した。


 試合終了後。
 伊織は無人のコートに1人残り、シュートをして遊んでいた。
「先程は、皆さん楽しそうでしたね‥‥見ているだけでも楽しいものでしたし」
 試合の興奮に若干あてられ、懐かしみを感じながらボールを放る。
 気分が乗ってきたので、ダンクといった大技も。戦闘用に動きやすくしている、2年以上も着物姿で様々な戦場を渡り歩いていることもあり、動きは問題ない。
 非覚醒でも身体能力は新米の能力者並みなので可能なはず。
「‥‥これは、さすがに少し派手でしたか」
 ダンクは決まったが、着物が少し乱れた。
「伊織さーん、一緒にバスケで遊びませんかー?」
 真琴を誘い、伊織とバスケをしたいセシルが声をかける。
「いいですね、セシリー。遊びましょうか」
 やったー! と喜ぶセシル。
「清楚なセシルちゃん。あんま暴れたらイメージ壊すよぉ?」

 休憩時に瑠亥の誘いを断った零とリリスだったが、試合終了後に再度声をかけると応じてくれた。
 リリスは教えなくてもそれなりにプレイできたが、零はというと‥‥。
「おまえ、本当に機械とかそういうの以外駄目だな‥‥」
 瑠亥がため息をつくほどの結果だったので、手取り足取り教えることに。
「それじゃ、教えてもらおうかなー?」
 零が望んだので、リリスを交えてバスケを教えることに。
「やっぱ、若い奴らは元気やなぁ」
 座り込み、その様子を見ながら爺臭いセリフを言いグッタリしているキヨシ。

「‥‥この勝負、私の勝ちですね‥‥」
「残念だけど、負けたわ。だからと言って、あなたのほうが上手いとは限らないわよ」
 トーナメントでは咲が勝ったが、実力では栄流も負けてはいない。
「‥‥もう一度、勝負する‥‥?」
「望むところよ」
 瑠亥の指導を受けながらその様子を見ていた零は、今度またトーナメント開催しようかなー? と思った。

 次回開催は、零の気分、栄流と咲の対抗意識次第かもしれない。

(代筆 : 竹科真史)