タイトル:プロジェクト無駄遣い3マスター:香月ショウコ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/15 01:17

●オープニング本文


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「最後は何ですか?」
「『心』だ。前にも言っただろう」
「そうではなくてですね、最後にやる競技は何ですかって話ですよ」
 能力者・心技体向上プロジェクト提唱者の上司は、部下の尋ねに「聞きたいか」と偉そうに答える。まあ、役職的には上司の方が偉いのだが。
「あんまりバカバカしいのは止めてくださいよ。前の棒倒し、妙な集団が妙なことやってるって通報まであったんですから」
「見る目の無い奴のことは放っておけば良いさ。通報を受けた方は、これが重要なプロジェクトだと認めたから我々を咎めなかったんだろう?」
「僕が、能力者のレクだって言ったんですよ‥‥」
「さて、最終回だが」
「って無視!?」
 部下の叫びも併せて無視し、上司は最後の競技を発表する。
「最後の『心』、競技は階段ダッシュ!」
「またもめちゃくちゃ『体』っすよ!!」
 叫んでも無駄だと分かっていても叫んでしまう。上司の目茶目茶ぶりに、部下は肩で荒く息をする。
「ふふん。聞いて驚け。普通ならば階段ダッシュは、休憩無しで何往復出来るかとか、何分で往復出来るかとか、そういったところを競うものだ。だがこの俺考案の階段ダッシュは、そんなものは気にしない」
「タイムも回数も気にしない?」
「そうだ。ぶっちゃけ、観戦者が飽きなければ一度屋上まで到達するのに1年かかったっていい」
「既にダッシュしてないですよ、その人。じゃあ、一体何で勝敗を決めるんですか?」
「競技のテーマは『心』だと言っただろう。この階段ダッシュは、能力者達の心の力を見て勝敗を決める!」
「何のこっちゃ」
「これを見ろ。会場の見取り図だ」
 言って、上司が部下に渡すのはどこかの施設の図。8階建てで、東側の壁面に非常用の階段が設置されている。ビル内にはエレベーターも当然ある。
「そしてこっちが、競技に際して屋上に設置するものだ」
 もう一枚の図は手書き。階段を上り切り、矢印の通りに進むと南側のギリギリの所に周りよりも1mほど高くなった台。
「ここにノートを置いてある。これに自分の名前を書いてから戻ってきてもらうんだ。ちゃんと屋上まで上ったかどうかの確認用のものだ。道路を挟んでビルの南側にある6階建ての建物の屋上で我々が見ているから本当なら不要なのだが、念のためだな」
「それで、判定の基準は何ですか?」
「能力者の諸君には、地上をスタートし、階段を上って、この台の上まで来て思いのたけを叫んでもらう。そして階段を下り、地上に戻ってきたところで競技終了だ」
「未成年の主ぐへあっ?!」
「最後の文字まで言ったら高速移動艇の屋根に馬乗りさせるぞ」
「す、すいません‥‥」
「ルールは極限まで簡素にする。スタート・ゴール地点はこの8階建てビルの前。屋上に行き、叫び、戻って来る。但し屋上への飛び乗り・屋上からの飛び降りだけは禁止する。この自由なルールの中で、心の熱さを判定するのは」
「貴方ですか」
「違う。今回私はアドバイザーとなり、後進育成に当たろうと思う。判定者は、君だ」
「えええええーーーっ!!?」
「さあ、早速依頼を出してきたまえ。人数はいつも通りに頼むよ」


「ついにプロジェクトは騒音公害に‥‥そろそろ、もっと上の方から直々に却下されないかなぁ」
 オペレーターのリネーア氏のところへ向かう部下は、その呟きがお星様に聞き届けられることを切に願う。
 そして、その願いはついに届かなかったのであった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
ヒカル・スローター(ga0535
15歳・♀・JG
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
15歳・♀・ST
二階堂 審(ga2237
23歳・♂・ST
マートル・ヴァンテージ(ga3812
42歳・♀・FT
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
軽井 羽澄美(ga4848
16歳・♀・GP

●リプレイ本文

●せっかくなので。
 歌ってもらった。

『プロジェクト無駄遣い』 作詞作曲:鯨井OKITA

心・技・体 しん・ぎ・たい 心・技・体 しん・ぎ・たい 3つ揃って 心・技・体
瀬戸内海あたりにいたかもしれない シンギ鯛
調べてみたら やっぱりいなかった

そんなぼくらは 寿司を握るよ にぎにぎ にぎっちゃうよ
鍛えに鍛えた この握力で 酢飯なんて 粉砕してしまえ

心・技・体 しん・ぎ・たい 心・技・体 しん・ぎ・たい 3つ揃って 心・技・体
いや違うよ 死にたいって言ってるんじゃないよ
しんぎたいだよ 滑舌悪くてごめんね

そんなぼくらは 棒を倒すよ どかどか 倒しちゃうよ
鍛えに鍛えた このパワーで マネキンなんて 粉砕してしまえ

心・技・体 しん・ぎ・たい 心・技・体 しん・ぎ・たい 3つ揃って 心・技・体
秦・儀戴(シン・ギタイ) 1347〜1398
歴史の裏で かなり色々やっていた人物

そんなぼくらは 屋上で叫ぶよ わあわあ 叫んじゃうよ
鍛えに鍛えた この横隔膜で 屋上なんて 粉砕してしまえ

 ・ ・ ・

 以上。
 さあ、シンガーソングライター鯨井起太(ga0984)の主題歌の後は、CM挟んで本編だよっ!!

●退場者、現る。
 酢飯とマネキンはまだ構わないが、ビルの屋上は粉砕したら犯罪だ。CM中に退場させられた起太の次の競技者、軽井 羽澄美(ga4848)はいきなりのトップバッター連行に競技の過酷さを感じる。
 開始の合図と共に、全力でダッシュ! 事前に懸念された他の競技者とのデットヒートは一人ずつ順番に上る形式だったために問題は解消されたが‥‥
「はぁ、はぁ‥‥キツいわ‥‥さすがに新入り能力者には、覚醒してるって言っても‥‥」
 頑張れ羽澄美。色々な事情で体力が足りないかもしれないが、後1階分だ。さあ足を上げて、手すりを掴んで腕の力も使って、一歩、一歩。ほら、努力と忍耐の先には、大きく開けた青い空、美しい空が待っている! 今汝の名を刻み、その心を開け!
「1番、軽井羽澄美」
 上司と部下が見つめる屋上で、羽澄美は大きく息を吸って。
「大規模作戦の人数合わせの為に安易に新キャラつくんなぁぁ〜!!」
 叫ぶ羽澄美。部下は何かのゲームの話だろうかと考え込み、上司は何やら携帯電話を取ってどこかと通話。
「しかも「反則っぽいから止めた。でも、もったいないから一人で戦え」ってなによ〜!! ‥‥って、何? あなた達何者!?」
 突如として羽澄美の後方から現れた、黒尽くめの男2人。2人は羽澄美の脇の下から腕を突っ込んでそれぞれに片腕を抱えると、そのままビル内へ連行。
「絶対! 絶対! ぜっったい!! 下克上決めてやるんだからね!!」
 何が起こったのか全く理解出来ない部下。そして上司は通話を終えると、一仕事終えたような満足げな表情を浮かべた。
 ちなみに、羽澄美が連れて行かれた場所はビル内某所。仲良く起太と競技終了まで1回休み。

●糾弾、狂気のUPC。
 開始直後に黒服に取り押さえられそうになったリュイン・カミーユ(ga3871)は、分かったからとりあえず帰れと黒服を追い返す。その後、見上げて残念そうに呟く。
「ふむ、階段奪取は無理か」
 こら。一応このビルは階段と屋上を借りているだけで他人のものなんだから、階段を引き剥がそうなんてしないよーに! って寝てんじゃねーよ!
「ぉう、つい転寝をしてしまった。しかし、階段奪取は誤変換か。紛らわしいことこの上ないな。‥‥さて、それでは上るとしようか」
 ところで、羽澄美同様競技は一斉スタートだと思っていたリュインは、とっておきのお話が不発に終わってしまった。
「『ラスト・ホープ七不思議伝説』‥‥聞く者がおらんかったからな、代わりにここで話してやろう」
 屋上の壇上で。おどろおどろしくリュインが話すは七不思議‥‥のうち、時間の都合で1つだけ。しかもダイジェスト版。
「研究所の地下には秘密の研究室がある。其処では夜な夜な怖ろしい実験が行われているという。最近開発されたという新型武器、SES搭載猫じゃらし『ショートヘア』。その効果を確かめるために使用した能力者は、不幸にも山のような猫に纏わりつかれ動けなくなってしまったのだ! 猫団子の中の男を助けようと研究員は猫団子ごと大きな土鍋の中に男を放り込んだ。これが皆もよく知るねこ鍋の始まりで‥‥」
 まあ、内容は気にするな。
「さて。与太話はこれくらいにして、叫ぶのであったな。では‥‥っと、ノートに名を忘れていた」
 肩透かしの一撃を終え準備万端整い、セーラー服で仁王立ちのリュイン。風になびくスカートの中は覗くな。
「セーラー服はナマ足がユニバーサルデザインっ! タイツなぞ言語道断。なのに、おっさんにもセーラー服を支給するUPC上層部は正気かぁ!」
 そーだそーだ、と眼下の上司も賛同。
「これは、女装趣味のおっさんばかりの上層部の陰謀に違いない。全人類女装化計画。こんな、奴らにとって都合が良く、我々にとっては気持ち悪い、そんな計画を断じて許してはならない! そんな上の暴挙を止めるのは汝だ。頑張れ下っ端!」
 親指を立てるだけ立ててさっと壇上から消えるリュイン。部下としては、暴挙を止めろと言われても止めようが無いのだが、勢いに押され反論することもままならなかった。

●空を掴むような話。
 階段を自分のペースで駆け上っていく二階堂 審(ga2237)。彼の頭の中では、2つのことが目まぐるしく駆け巡っていた。
 1つ目は、駆け上るのは良いが何を叫ぶかということ。他の皆は競技内容の発表と共に「心得た」みたいな顔をしていたが、どうやら心の冷め切った審には思いつかないらしい。いや、思いつかないから心が冷めるのか? まあそれはどちらでもいい。とにかく、叫ぶ内容を急ぎ考えなければ。
 2つ目は、家庭用のビデオカメラで撮った映像をスクリーンに投影しているような画質の粗い映像が、走馬灯のように流れること。これはアレだろうか、噂に聞く死亡フラグ。
 始めは、寿司飯だった。せっせと作ったのは良いが、危なくリンゴ酢など注ぎ込まれそうになり、さらには完成品をパクられた。代わりにマグロをかっぱらってやったが。
 次は、ライダーキックだった。あの青い髪のマネキンは棒の転倒と爆竹の大量爆裂をもってしても打ち砕けなかった。マネキン破壊が目的ではないにしろ、少し残念ではあった。
 屋上。視界一杯の青空を見ながら壇上に駆け上る。そしてすぐさま、覚醒して現れた光輪が纏われた左腕を、天空へと突き出す!
「俺は空を掴む! Catch the Sky!!」
 普段の彼からは考えられないほどの大声で叫ぶと、やるべきことはやったとばかりにささっと壇上から姿を消す審。来た時とほぼ変わらない速度で階段を駆け下りていく審は、胸の中によく分からない満足感を覚えていた。
「あ」
 満足から一転。ゴールと同時に再び階段を駆け上る。ノートへの記名を忘れていた。とりあえず今から書きに行ってもルール違反ではないが。
 全てを成し遂げて帰ってきた審は、即座に地面に転がる。きっと、最初の階段上りの際の走馬灯はこれのためだ。

●静かな決意は。
 誰にでも失敗はある。ふらりと本部にやって来て最初に目についたこの騒がしい依頼に熟考せず参加したヒカル・スローター(ga0535)はそこはかとない場違い感を肌に感じながらも、冷静に、大声で叫べる機会を楽しめば良いと気持ちを切り替える。こういう賑やかさも、たまにはいい。戦いばかりでは疲れきってしまうから。
 走ることなく早足気味の速度で階段を上りきり屋上へ到着すると、そのまま壇上へ。息を呑んで見守る上司と部下。
 しかし、壇上に立ったはいいものの、ヒカルは一言も発しない。実は、何を叫ぶか考えていなかったのだ。何も言わずに帰るのは競技のルールから外れるだろうし、全く思ってもいないことを叫ぶのも憚られる。
 そうして悩んだ末に、やはり辿り着くことは自身の本心。何も装うことの無い想い。
「我々はこの戦いに必ず勝つ、そして、この戦いに生き延びる。そして、幸せな人生を満喫するのじゃ。それこそ、わが願い、わが生き様」
 叫ぶわけではなく、淡々と述べる。眼下の審査員達に聞こえたかどうかは分からないが、何よりここでそうしたことを宣言したことに意味がある。
 言うべきことは言ったと、来た時と同様に帰っていくヒカル。声は決して大きくなかったが、きっとその言葉は皆の心に響いたことだろう。

●郎一剣、約公の滅全
「よし‥‥行くぞ!」
 白鐘剣一郎(ga0184)は、先ほど部下に渡してきた自身が定めたルールを一度頭の中で反芻してから、覚悟を決めて階段に向かう。そして。
「とうっ!」
。くいてっ上を段階と段1段1、ままのそ。ち立逆、と
。だつ4の下以、はのういとルールたし渡に下部
。要不ち立逆けだ時ぶ叫、き書を前名で上屋
。る戻でま階の前直らだん転で段階
。でま分1回1で場り踊階4は憩休
。可もてち落げ転、がだち立逆もり帰

。るす着到に事無はでま点地憩休、場り踊階4からかだ後直発出。郎一剣くいてっ上を段階と々黙
。憩休でここ、てさ
「ふう、覚醒しているとはいえ、なかなかハードだな‥‥残り4階分と帰り道か。‥‥だが、決めた以上はやり遂げてみせる! ‥‥っと危ない、時間だ」
。だ頃るくてき飽も皆ろそろそ、ばねが急。郎一剣る上とりくっゆ、を段階い長の先だまだま
。だうそ来が情苦ろそろそもに式形章文のこ、かういと
。でろことたっ思うそ。るれさ放解らかさし苦のこ、でし少とあ。たっなに段数り残とっや
「っ、しまったぁぁぁぁ!!」
 踊り場まで転げ落ちる剣一郎。だがネバーギブアップ。諦めない。全身の痛みに耐えながら、彼は立ち上がる。
。たっだのたし達到に上屋は彼かと何、てしうそ

 ノートに名前を書き、壇上に上がる剣一郎。ようやっとこの場所まで来た。随分と、上るのにも読むのにも時間がかかった。呼吸を整え、心を落ち着かせ、いざ。
「今に見ていろ侵略者バグア‥‥」

「 「 「 「 全 滅 だ っ ! ! 」 」 」 」

。たしルーゴく早は少多でげかお。回3とこるち落げ転中途。郎一剣くいてっ帰でち立逆、たまもり帰
 ゴールと同時に逆立ちを止め、地面に横たわる剣一郎。そして一言。
「さすがに疲れた‥‥」
 私も疲れた。皆も疲れたはずだ。

●スピニング冗談論法。
 重いローラー『コンダラ』卓袱台スレイヤー+2Lv7を引っ張ってはいなかったが、獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166)はそんな感じの気持ちで全力疾走。とりあえずノートにサインをして、早速叫んでもらう。
「興味深いねェーー!! 人も、空も、バグアも! 何もかもが、だーーー!!!」
 何というか、サイエンティストらしい叫びである。全てのものへの興味関心好奇心。だが、獄門の叫びはこれで終わらない。
「説明しよう!」
 誰も説明を求めていないけど。
「つまり! 好奇心は猫をも倒す、大いに結構! それこそ本望である!
 なぜならば! 人は月まで8bitで飛んだ、大いに結構! その裔たる人類は夢と科学で未来を切り拓ける!!
 すなわち! 獄門の言う「興味深いねェー」こそ、これこそが獄門・ユウコ・グナイゼナウたる能力者の身上であり、信条である!!! うむ! 完璧な3段論法だねェー」
 3段論法。AはBでありBはCである。よってAはCである。
 えーと?
 好奇心に滅ぼされるは本望=夢と科学は未来を切り拓く。
 夢と科学は未来を切り拓く=『興味深い』は獄門の信条。
 よって、好奇心に滅ぼされるは本望=『興味深い』は獄門の信条。
「わ、分かるような、分からないような‥‥」
 首を傾げる部下。上司は理解したのかしてないのか分からないが何度も頷いている。
「あ、最後にもう一つ。上司氏ーー! 好きだーー!!」
 まあ半分冗談だけれどねェー、と呟きながら壇から降りて階段へ向かう獄門。そんな言葉の聞こえていない上司は、俺には妻も子供もとか呟きつつノックダウン。戦線離脱。アドバイザーの倒れた部下は、最後の競技者の判定と順位決定を一人で行うこととなった。

●必殺、鉄人コントローラ。
「さて、あたしで最後だね。行くよ!!」
 マートル・ヴァンテージ(ga3812)が、どがどがと音を立てながら階段を駆け上っていく。屋上までの全力疾走は審査員達を待たせないための配慮だったが、しかし上司は現在机に突っ伏してグロッキー。まあ、回復を待つためにゆっくり行ったとてあの男は簡単には立ち直るまい。
 いつぞにテレビで見たことがあるようなこの競技。記憶が確かならば、やっていたのは子どもだった。そう、子どもといえば。
 屋上に到着。大きく深呼吸して、ぶっ倒れてる上司を一瞬怪訝に思いながらも、審査員の部下に向けて叫ぶ。
「あたしは、子どもが大好きである! あ、ショタ趣味があるとかそういう意味ではないのであしからず。ちなみに、このショタという言葉の語源は某鉄人アニメの主人公名から取られたという説が‥‥」
「某鉄人‥‥衣笠?」
 呟く部下。それアニメちゃう。
「それは置いといて。‥‥この世界の未来は、あたし達人類の子ども達が担っていくべきである! 断じて! 訳の分からない宇宙人共に明け渡していいものではない! あたしは戦い、生きて、生き抜いて、より多くの者達を救う! そして、この世界全ての子供たちのために、子供たちの未来のために戦う! それが小難しい理屈や現実も抜きにした、あたし自身の本心であり理想であり信念さ」
 マートルの、その堂々とした宣言。それはこの階段ダッシュ、そして心技体プロジェクトを締め括るに相応しいものとなった。
 何というか、あれですよね。ヒカルといいマートルといい、この方面に力を入れるのは無駄遣いじゃないっていうか。それだけ、強い信念があるということも言えるのだけれど。

 ・ ・ ・

 結果。部下の判断は、1位がマートル、2位が獄門、3位が白鐘となった。1位はまあ順当だろうか。2位はその人らしさが全面に出た叫びだったということで。3位は、根性でもぎ取った感じ。ちなみに、途中で強制連行された人達は残念ながら採点対象外。
「ということで、総合1位『心技体No1』は8ポイントでマートルさんです。賞品も何も無いですけど」
 控えめに部下がそう発表する隣で、上司はまだテンパっている。そこに獄門が「依頼終了祝いにスピニング寿司連れてけ」と言うと、何とも素直にOKが出る。
 これにて、プロジェクト無駄遣いは完全にその幕を閉じる。参加した無駄遣い能力者の皆様、本当にご苦労様でした。
「それでは皆さん、素晴らしき無駄遣いライフをー!」
 最後に獄門がカメラ目線で〆て。終わりっ!

 ・ ・ ・

「ねえ、あたし達はいつここから出られるの?」
「まさか、ボク達を忘れて帰ったなんてことは‥‥けしからん、実にけしからんっ!!」