タイトル:【決戦】鮪奇兵バルデスマスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/09/16 13:35

●オープニング本文


「朕も格好良く戦いたいんだにゃー!」
 毎度恒例、バグア屈指の残念強化人間タッチーナ・バルデス三世(gz0470)。
 今度は一体、何を大騒ぎしているのだろうか。
「本星が大きな戦いに向けて準備しているのに、朕には何の指令もないんだにゃー。
 ‥‥もしかしたら、朕は最終兵器として召喚されるために温存されているのかにゃ?」
 安心しろ。
 お前は戦いが終わってもずっと温存される運命だから。
「でも、朕もやっぱりティターンやソルに乗って傭兵達と熱いバトルしてぇにゃー!
 『何故、貴様はマグロの素晴らしさが分からんのだ? 地球の重力に魂を引かれて果てるがいい』とか言いたいにゃー! おまけに『戦争は良くないよ!』と甘っちょろい言葉を吐いて、腐女子の人気もゲットするにゃー!」
 どうやら、本星に戦力要請されるよりも、格好良くワームで戦いたいだけのようだ。
 そもそも、こいつはポニーですらまともに乗る事ができるのかも怪しい奴だ。正直、横で付き従うマグロ型キメラの方が上手に操縦できるような気がする‥‥。
「ぎゃー! こうなったら、朕の科学力を使って朕専用機体を産み出すしかねぇにゃー!
 朕の頭脳を駆使すれば、マッハ3億で飛ぶ上にプロトン兄弟が開発した新型砲台を搭載した重装備の‥‥」
 万年厨二病のタッチーナが、専用機など作れるとは思えないが‥‥。
 無駄なやる気が憐れみを感じさせる――失敗フラグは今回も濃厚のようだ。


 西安近郊。
 トラックの車列が太原市へ向かって北上していく。
 トラックの中には大量の物資。バグアとの戦いに向けて月面基地『崑崙』へ送る物資を搬出しているのだ。これらの物資はマスドライバーで打ち上げられた後、崑崙へ運ばれて備蓄される手筈となっている。
 物資搬送も大きな大戦の前に大切な任務なのであろう。
「‥‥ツイてねぇなぁ。物資搬送の護衛しか任務がねぇとはな。こういう依頼は面倒なんだよなぁ」
 トラックの荷台でラリー・デントン(gz0383)が、ビールを片手に独り言を呟く。
 ジョシュ・オーガスタス(gz0427)から斡旋されたこの依頼に、ラリーは不満を抱いていた。もっと派手に稼げる依頼が良かったのだが、そういう依頼は人気も高い。二日酔いで倒れていたラリーに残されていたのは物資護衛任務しかなかった、という訳だ。「働いても、働いても、貧乏は変わらずってぇ奴か。
 そういや、前にこんな依頼もあったな‥‥」
 思い返せば、物資護衛の任務は初めてではない。
 あれは確か、北京解放戦が着手された頃だ。
 物資を搬送するトラックにケンタウロス型のキメラが襲撃してきたのだ。他の傭兵と撃退したのだが、あれから随分年月も経過している。
「‥‥ちっ、縁起でもねぇ。本当にバグアが襲撃してくるみてぇじゃねぇか」
 ラリーは、再びビールに口を付ける。
 このまま荷台に乗っているだけなら、楽な依頼なのだが‥‥。
 
 うっすらと浮かぶ嫌な予感。
 そのラリーが抱いた予感は、見事に的中する。

 トラックは、タイヤを滑らせながら急ブレーキ。
 ラリーは飲んでいたビールを噴き出しそうになった。
「な、なんだ!?」
 ラリーが荷台から顔を覗かせ、進行方向に視線を送る。
 そこには香港でも見かけたマグロ型キメラの集団と、道の真ん中で陣取るダンボールの塊が存在していた。
「ぶわっはっは。
 朕が愛機『カスタムティターン マグロカスタム』に登場ですよ?
 さぁ、貴様らが乗せている物資を今すぐ差し出すにゃー。スタッフが後で美味しくいただいてやるにゃー」
 見れば、ダンボールを身に纏ったタッチーナらしき馬鹿が天下の往来で大騒ぎしている。
 愛機の名前も滅茶苦茶だ。『カスタム』という単語が二回出ている時点でおかしいのだが、それ以上にタッチーナの頭がおかしいのだから仕方ない。
 本人は、物資搬送部隊を襲撃したつもりなのだろうが、UPCもバグアとの決戦を前にコスプレイヤーを相手にしている暇はない。
「コスプレじゃねぇにゃー!
 そういう奴には朕が作った専用メジマーグロで‥‥」
 そう言いながら振り上げたのは、右手に握られた一匹のメジマグロ。
 長時間日光に当たっていたのだろう。周囲に生臭い臭いを振りまいている。
「ゲェー! 予定では冷凍マグロで敵の頭をかち割るはずが、手違いで解凍されているにゃー! 
 ‥‥うげぇ、朕の手が生臭いにゃー‥‥」
 登場数秒で予定外のトラブル発生。
 まあ、人生そのものがトラブルのタッチーナにとって、この程度の問題はプロローグに過ぎない。

「おい、傭兵! お前の出番だ!」
 トラックを運転していたUPC軍人が、ラリーの元へ駆け寄ってきた。
「え? 俺?」
「お前しかいないだろう。早く、あいつを何とかしてくれ」
「あんなの無視して突き進めばいいんじゃないか? あんな奴、お前らだけでも大丈夫だろう?」
「勘弁してくれ。あいつは香港辺りで有名な馬鹿の強化人間だろう? 関わり合いになりたくないんだ」
 既にタッチーナは香港市民以外にも知れ渡っており、変態で気色悪い強化人間として有名だ。日頃有名になりたがっていたタッチーナも大喜びな展開になっている。
「ちっ、またあいつの相手とはツイてねぇな‥‥」
 舌打ちするラリー。
 正直、タッチーナと関わり合いになりたくないのはラリーも一緒だ。当然、やる気なんか出るはずもない。
 嫌そうな顔を浮かべるラリーを見て、UPC軍人は妙案を思いついた。
「よし。あいつを排除してくれたら、後でパーティに連れて行ってやる」
「パーティ?」
「ああ。太原市内の店を予約して、みんなでパーティする予定だったんだ。中華料理と酒で楽しい晩餐会って奴だ。‥‥あ、コンパニオンのお姉ちゃんも呼んでもいいかなぁ」
 UPC軍人は、そう言いながらチラッとラリーの方に視線を送った。
 見え見えな餌なのだが、パーティと酒と聞いて黙っていられるはずがない。
「ちょっと待ってろ! さっさとあいつをぶっ飛ばしてパーティ会場へ直行だ!」

●参加者一覧

龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
未名月 璃々(gb9751
16歳・♀・ER
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL
御名方 理奈(gc8915
10歳・♀・SF

●リプレイ本文

「ぬわっはっは!
 カスタムティターン マグロカスタムが来たからには、貴様らの物資は朕の物っ!
 さっさと物資を朕に献上して、とっとと立ち去れ!」
 ダンボールで自作した自称カスタムティターンを身に纏うのは、馬鹿代表のタッチーナバルデス三世(gz0470)。
「ええぃ! 立ち去らないところを見ると、朕と戦いたいのかにゃ?
 よかろう! 本星の期待を一身に背負った朕の活躍、その目に焼き付けてPV作成してもいいんじゃぜ? ‥‥でも、続きはWebで」
「相変わらず馬鹿を晒しているな」
 トラックの傍らから現れたのは、ラリー・デントン(gz0383)。
 この輸送部隊の護衛任務を任されている。
「そろそろマグロキメラハンターのランクがマスター位になってて良い頃かな?」
 タッチーナの傍らに控えるマグロ型キメラを数えながら、龍深城・我斬(ga8283)は、今日の献立を考えていた。
「おおっ。出たにゃ、傭兵。
 だが、今日の朕はカスタムティターンに乗って登場にゃー」
 自作のカスタムティターンで登場したタッチーナは、どや顔で傭兵を見下す。
 ダンボール工作の出来でも褒めて欲しいのだろうか。
「あ、変なおじさんが来たー! よーし、楽しくやっつけちゃうぞ!」
 上機嫌のタッチーナを全否定するかのように、御名方 理奈(gc8915)が元気いっぱいに登場した。
「変なおじさんじゃねぇにゃー!」
「カスタムティターンですかー」
 タッチーナの言葉を遮って、未名月 璃々(gb9751)はビデオカメラでカスタムティターンの姿を撮影していた。
「このカスタムティターンには朕が開発した兵器が装備されているにゃー」
「なるほど。では、このカスタムティターンの拘りはどこでしょう?」
「そりゃ、なんといっても材質にゃー。撃たれても穴一つできないにゃー」
「そんな凄い材質なんですねー。
 ところで、ご自分はMだと思いますかー?」
「んにゃ? M?
 マジですげぇという意味のMなら、朕はMだにゃー」
「へぇ。何か凄いM男臭がすると思ったら‥‥Mに加えて馬鹿なのね」
 妖刀「天魔」を携えて現れたのは、南 星華(gc4044)。
 香港界隈でMっ毛が強化された強化人間がいるという話を聞いて、タッチーナの前に現れたようだ。
「特別に、私が調教してあげる」
「うっ、なんか怖いそうなお姉さんが出てきたにゃー。
 素晴らしいマグロの皆さん、傭兵達を倒しちゃって下さい!」
 星華に危険な香りを感じたタッチーナは、マグロ達へ攻撃命令を下した。
 銛を手に身構えるマグロ型キメラ。
「マグロが素晴らしい? 奇遇だね、僕もそう思っているよ」
 戦闘開始を察して、トゥリム(gc6022)が怪しい笑みを浮かべた。
 どうやら、何かを企んでいるようだ。
 そして、トゥリムの背後ではトラックの陰からエルレーン(gc8086)が様子を窺っている。
「あはっ‥‥今日はずいぶんおしゃれしてるんだね!
 すてきだね、すてきだよぉ‥‥あはっ、あはははっ!」


 マグロ型キメラとの戦闘‥‥否、マグロ型キメラ狩りが開始した訳だが、開始早々、我斬がラリーの肩に手をかける。
「ラリー。お前はあいつの相手をしなくていいから、マグロを取られないように見張っていてくれよ」
「は?」
 我斬の目当てはマグロ。
 このマグロを誰かに盗まれては堪らない。そのため、捕縛したマグロの番をラリーにやらせようという訳だ。
「なんで俺が‥‥」
「ヘッテタラヒドイメニアワセルヨ」
 微笑みかける我斬。だが、目は1ミリも笑っていない。
 どうやら、マグロを盗られたら、面倒な事になりそうだ。
「マグロ、僕も一匹欲しいな」
 我斬にそっと話しかけるトゥリム。
 マグロを使って何か考えがあるらしく、マグロについて相談してきたようだ。
「うーん、仕方ない。一匹だけなら‥‥」
 仕方なしに了承する我斬。
 まだ倒した訳ではないのだが、既に所有権の奪い合いが発生。
 マグロ型キメラの味と貧弱さ招いたのだろう。


「お退きっ!」
 マグロ型キメラにズブロフを飲ませ、妖刀「天魔」でマグロの手足を切り落とす星華。
 他の依頼ではバグア相手に苦戦する事もあるが、目の前に居るマグロは倒してくれと言わんばかりの弱さだ。
 何故、バグアはこんな貧弱なキメラを産み出しているのか。
「まったく、これじゃ不完全燃焼ね」
 ため息をつく星華。
 だが、星華が狙う本命はマグロではない。
 あのダンボールで遊んでるドMをどうしてくれようか‥‥。
 思案を巡らせ、星華の顔が自然と綻んでいく。

「いっただきまーす!」
 理奈は、マグロにウォッカを飲ませて酔わせた後、マチェットで表皮を剥ぎ取って一気に齧り付いた。
 直接醤油をぶっかけて、一気に齧り付く様はまさにワイルド。
 塩分高めで高血圧など気にする素振りもない。
「‥‥美味し−!
 やっぱ活き造りは、新鮮でないとね!」
「それ、活き造りとは違うんですよー」
 戦闘を撮影していた未名月は、理奈のワイルドさに気圧されながら訂正する。
 どうやら、理奈は皮を剥がしてそのまま食べる行為を活き造りだと考えていたようだ。
 ――だが。
「細けぇ事はいいんだよ!」
 ワイルドな理奈の前には、調理法など細かい事。
 胃の腑に入れば皆同じ。
 ならば、早い者勝ちという訳だ。
「あっ! もう食べてるのか!」
 我斬が悲鳴にも似た声を上げる。
 まさか、戦闘中にマグロを食そうとする奴がいるとは思わなかったからだ。
 しかし、我斬の悲鳴も理奈には届かない。
「グォォォォォ!」
 マグロに食らい付く理奈の中に眠っていた野生の本能が目覚める。
 血に狂うまま、付近のマグロへ攻撃を仕掛ける理奈。
「あ、おい! あんまり傷つけるなよ!」
 慌てて理奈を止めようとする我斬。
 その先を、一匹のマグロを抱えて走り去っていくトゥリム。
「じゃあ、いただいていく」
 瞬天速で一目散に消え去るトゥリム。
 一体、何を考えているのだろうか。


 一方、タッチ−ナは。
「うふふ‥‥とっても格好いいね。
 だけど、かれーまにあさんは‥‥これから、もっともっと格好良くなるよ」
 カスタムティターンの前に立つのは、エルレーン。
 焦点が合わない視線を宙に彷徨わせ、時折何か呟いている。
「これ以上、朕を格好良くしたら存在自体が罪になるにゃー。
 だが、朕の邪魔をするのであれば‥‥こうだ!」
 タッチーナは左手に握っていた懐中電灯をエルレーンに向けて光らせた。
 眩しさで一瞬、目が眩む」
「? かれーまにあさん、何?」
「あれ? このビントロプロトン砲を受ければ、傭兵達の体はドロドロに溶けて液状化する設定のはずなのに‥‥」
 どうやら、この懐中電灯は傭兵の体を溶かすというタッチーナの勝手な設定を割り振られていたようだ。懐中電灯にとってはいい迷惑である。
「はい、あーん」
 エルレーンとのやり取りへ割り込んだトゥリム。
 手には、何処からか持参したマグロステーキ。
 鉄板で焼かれて、香ばしい匂いを放っている。
「‥‥おお、気が利くにゃー。
 うん、醤油ベースと相まって‥‥なかなかうまいにゃー。
 お主、店を出す時は朕がパトロンになってやるにゃー」
「ふぅん、美味しいんだ‥‥」
 タッチーナの反応を見て、怪しい笑みを浮かべるトゥリム。
「な、なんにゃ?」
「あなたの手下、美味しいでしょ〜」
 そう、トゥリムはタッチーナに調理したマグロ型キメラを食べさせていたのだ。
 倒され、調理され、美味しくなったマグロを、トゥリムはタッチーナに喰わせる。
 すべては、タッチーナの反応を見るためだったのだ。
「ぎにゃー! エルヴィンの霊圧と書いてプレッシャーが消えたから、やべぇとは思っていたんにゃー!」
 エルヴィンとは、マグロ型キメラに付けた名前らしい。
 傍目から、マグロの見分けなんか付かないのだが、タッチーナは名前をつけて接していたのだから、ステーキを食わされた怒りは底知れない。
「ええぃ、ならば次はこのメバチフェザー砲だにゃー!」
 素早く懐中電灯を投げ捨て、新たに取り出したのはラグビーボール。
「この弾を朕が投げれば、メバチマグロのように音速を超えた速さで傭兵の体に突き刺さり‥‥」
「へぇ、それは大したものね」
 ラグビーボールにも謎設定を行っていたタッチーナの背後に、星華が近づく。
 危機を察知して振り返ろうとするタッチーナだったが、それよりも早く星華の蹴りが炸裂。
「ゲブっ!」
 タッチーナはカスタムティターンと共に転倒。
 材質がダンボールだった上に、内面は汗でしっとりしていたため、倒れた衝撃でダンボールが破れる。中からタッチーナと、肩車していたと思われるマグロ型キメラが転げ出てきた。
「ゲェー! まずい、自己修復機能発動にゃ!
 マグロさん、ガムテープをっ!」
 どうやら、自己修復機能とはガムテープで補修する行為を指しているようだ。
 おそらく、自己修復の意味すら理解していないのだろう。
「‥‥あ、そこのマグロさん。インタビューの邪魔ですので、眠っていてもらえますか?」
 ガムテープを握っていたマグロに、未名月が子守唄をかけて眠らせる。
 眠りについたマグロの傍らを、ガムテープがコロコロと転がっていく。
「げっ。カスタムティターンの動力部が‥‥」
「さて、バルデスさん。先程の続きですが、自分はMだと思いますか?」
「え? じゃから朕はマジすげぇと‥‥」
「分かっていないみたいね。なら、私が教えてあげる」
 星華は背後からタッチーナを縛り上げ、目隠しを施した。
 視界を奪われたタッチーナは喚き散らす。
「おおっ! ついにバグアの最新科学が、地球を闇で覆う事に成功したにゃ!
 では、この隙に世界最大の闇鍋大会‥‥あれ? 手足が動かないにゃ」
「何も見えなくて興奮するでしょう。そして‥‥こんなのが良いのでしょう?」
 星華は、妖刀「天魔」で少しずつ皮膚を切り裂いていく。
 視界を奪われた中で、痛覚が研ぎ澄まされる感覚。
 まさに、SM指向のMにとっては堪らないシチュエーションだ。
「‥‥痛っ‥‥な、なんにゃ? これ‥‥痛い‥‥あふっ」
 何故か頬が紅潮し始めるタッチーナ。
 そっち系のスイッチがONになってしまったのだろうか。
「さぁ、ご主人様とお呼び」
 エンジンが掛かってきた星華は硬鞭でタッチーナの尻を連打し始める。
 硬鞭の攻撃力の前では、紙オムツの防御力は皆無に等しい。
 早々に尻が露わとなり、真っ赤に腫れ上がっていく。
「痛いっ! ‥‥あんっ‥‥ダメにゃ‥‥。
 ‥‥ご主人さ‥‥」
「なるほどぉ‥‥ちょうきょうって、そういうふうにやるんだぁ。
 そのかぁいい紙クズみたいなもの、もうとっちゃいなよぉ!」
 最後の一言を遮るように顔を出したエルレーン。
 既にエルレーンの方にもS系のスイッチが入ってしまったのか、無残な紙オムツをタッチーナの股間から引き剥がす。
「にゃー! ダメにゃ!
 ボロは着ていても心は錦。朕のチャームポイントがぁ!」
 お前、紙オムツは『紳士の嗜み』って言ってなかったか?
 泣き叫ぶタッチーナに容赦する様子もなく、ハイヒールの踵でタッチーナの真っ赤な尻を蹴り始める。
「さぁ! お待ちかねの時間なのぉ!
 このかぁいいらぶりーぷりてぃーキュアエルレーンちゃんが、力いっぱいお尻を蹴ってあげるご褒美だよぅ!
 ほらぁ! ほらぁ! あはははは!」
 叫びと共に蹴りのスピードも上がっていく。
 先程まで定まっていなかった焦点は、タッチーナのケツにまっしぐら。
 タッチーナも超回復で修復されていくが、治る前から攻撃されては修復がおいつかない。
「あ! ポークビッツ発見! いただき‥‥え? ダメなの?」
 地面に転がるタッチーナを発見して齧り付こうとする理奈。
 そいつを食べたら、拾い食いどころじゃないので、その部分を食べるのは止めてあげて下さい。マジで。
「ちぇ。なら、こっちでいいや!」
 理奈は真っ赤に染まった尻に齧り付いた。
「ぎゃー! 朕の尻は特殊調理食材じゃねぇにゃー!」
 齧り付かれて、更なる悲鳴を上げるタッチーナ。
 だが、齧り付いた理奈も悲鳴を上げる。
「‥‥うげえええ! 何これ!
 皮脂と汗と剥離した角質細胞と誇りと雑菌が繁殖し、腐った雑巾みたいな風味に‥‥。
 あ、そうか。お酒飲まして無かったからだね。ほいっ!」
 理奈はタッチーナの尻にウォッカの瓶を突っ込んだ。
 瓶の中身が明らかに減って行くにつれ、タッチーナの顔つきが明らかに緩んでいく。
「うぃー。おろろ、まっすぐ歩けないにゃー」
 ゆっくり立ち上がるタッチーナ。
 だが、目の前には悔し涙を流す我斬の姿があった。
「くぅ! 理奈が暴れたおかげで無傷なマグロが減っちまった‥‥。
 くそ! これでも喰らえ!」
 我斬は八つ当たりのように剣劇を発動。さらに、両断剣・絶を乗せたバトルハリセンの一撃を放った。
 左側頭部を直撃した一撃は、タッチーナの体を吹き飛ばし、停車していたトラックの全面へ衝突する。気を失っているタッチーナだったが、悲劇はそこで終わらない。
「もういいだろ。先を急ぐからな」
 トラックを運転していたUPC軍人は待ちきれないとばかりにトラックを発進させる。 傭兵達も慌ててトラックへ乗り込むが、タッチーナは何台も続くトラックに轢かれ続けている。トラックが通り過ぎる頃には、道端でボロ雑巾のようになったタッチーナの姿があった。
「取材班の問いにバルデスさんは体を張ってMっぷりを見せてくれた、と」
 未名月は取材ノートにそう書き添えていた。


「良かった〜! 全部食べられて無くて!」
 パーティが始まり、我斬は歓喜の声を上げる。
 未名月が眠らせたマグロが無傷であり、酒を飲ませれて調理する事でパーティに供する事ができた。
 おかげで、極上のマグロを食べる事ができる。
「この辺じゃ、マグロはあまり食べられないらしいからな。
 牛肉の代わりに使うってところだろうな」
 ラリーはビールを片手にマグロと青菜の炒め物へ箸を伸ばす。
 醤油ベースのあんかけだが、焼いたマグロを使っており、かなり美味しい部類だ。
 何より、ビールと良く合う。
「マグロと言えば、刺身だろうね」
 マグロの中トロを手に、星華が姿を現す。
 左手には、持参した日本酒を手にしている。
「おおー、気が利くねぇ。では、早速‥‥」
「慌てないの。まずは、一杯」
 ラリーの手に御猪口を握らせ、そっと日本酒を注ぎ込む。
 星華と一緒で舞い上がるラリー。
 もっとも、この後で酔った星華にキスをせがまれ、隙を見せた隙にSTFを掛けられる事になるのだが、この時点では知る術もない。