タイトル:【PM】激闘!山羊座マスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/14 08:49

●オープニング本文


※このシナリオはパンプキンマジックシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。

 バグアと激闘を繰り広げるUPC軍。
 傭兵の活躍が勝利を導く裏で、能力者ではないUPC軍人は多数の死傷者を出している。
 UPC軍にとって、優秀な軍人の早期確保及び供給は急務である。

 そこでUPC軍は、新兵の底上げに着手した。
 優秀な教官12名に対し、新兵は傭兵と共に訓練する。訓練内容は教官に一任されており、新兵と傭兵が受ける訓練するという内容は教官が待つ部屋へ入らなければ分からない。

 そして。
 新兵の二人が『山羊座』と書かれた扉を、ゆっくりと開く。

「ハロー、ヒーロー」
 そこには中国の広州軍区司令部宣伝部隊に属するクレイトンが立っていた。
 金髪のさらさらヘアーに爽やかな笑顔。まさに好青年といった風貌だ。
 しかし、新兵達がめを奪われたのは、クレイトンの背後にある物だった。
「え? このモニターは‥」
 クレイトンの背後には、十台以上のモニターが並んでいる。
 そこには、街の至る所がうつしだされているようだ。
「どうだい? 君達を映すカメラだ。既にスタッフは街で準備万端だ」
「映すとは、どういう事でありますか?」
 状況が未だ飲み込めない新兵。
 クレイトンは軽く鼻で笑いながら、説明を始める。
「順を追って説明しよう。
 UPC軍人として君達を訓練する訳だが、UPC軍人として忘れてはいけないものがあるんだ。
 分かるかい?」
「いえ‥」
「答えは『市民を守り、その支持を得る』事だよ。誰もUPC軍を支持しなければ、何のために戦っているのか分からなくなる。目的を見失ってはいけないんだ」
 クレイトンは諭すように話す。
 我欲に溺れる組織に明日はない。
 それは歴史が証明している。
「支持を受ける、という事は、憧れの対象だ。
 偶像‥いや、ヒーローと言っても過言ではない」
「はぁ」
「そこで君達にはヒーローとしてある任務を遂行してもらう。
 今、街に掌サイズの宝石を持って逃走した強化人間がいる。君達には、この強化人間から宝石を奪還してもらうよ」
 クレイトンの話では、宝石は偽物だという。
 それでも、任務とあらば奪還しなくてはならない。
 ここで、新兵の一人が口を開いた。
「宝石の奪還は分かりました。
 しかし、カメラとどういう関係があるのでしょうか?」
 新兵の質問に対して、クレイトンはニヤリと笑みを浮かべる。
「言ったろう?
 君達はヒーローになってもらうんだ。つまり、君達の活躍は生放送で街中に放送させてもらうよ」
 クレイトンは、強化人間との捕り物を一種のショーとして生放送する気なのだ。
 バグアとの戦いに命を懸ける傭兵達には面白くない話なのかもしれないが、市民の目を気にしながら戦うというなも悪くはない。
「じゃあ、失敗すれば、街中の晒し者という事になるのでしょうか?」
「まあ、そうなるね。
 あ、それから君達には、ヒーローらしい姿になってもらうから」
「え?」
「当然だろう? 
 放送する以上、ヒーローらしい格好をして視聴者に楽しんでもらわないと‥」
 既にスタッフを街に配していたクレイトンだ。
 放送に対する意気込みは相当なものだ。
「最後に、僕の事は『プロデューサー』と呼んで欲しい。
 いいかい?」


 沿岸部に沿って造られたハイウェイに、一台の牛車が進む。
 遅すぎるスピードは、他の車両に大迷惑。
 しかし、牛車のスピードは変わらない。
「ぬわっはっは!
 今日はラッキーだにゃー。こんな大きな宝石が道端に落ちているとは‥」
 牛車の中で、タッチーナ・バルデス三世は手にした赤い宝石を磨いている、
 宝石の光を目にする度に、笑みが止まらない。
「こいつは、きっとバグア本星からのボーナスに違いない。
 ミーの光溢れる肉体が、ボーナスを引き寄せたんだにゃー」
 何処までも哀れなタッチーナ。
 宝石がただのガラス玉と知ったらショックなのだろうか。
「‥もしかしたら、この宝石を狙う奴がいるかもしれないにゃー。
 そうはいかん! マグロの皆さん!」
 タッチーナの合図を受けて、周囲のマグロが一斉に納豆を吐き出した。
 茶色に染め上げられたハイウェイは、納豆でスピンすろ車が多数。
 あっという間に玉突き事故が引き起こされていく。
「この宝石は誰にも渡さん!
 やらせはせん、やらせはせんにゃー」

●参加者一覧

御影 柳樹(ga3326
27歳・♂・GD
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
マグローン(gb3046
32歳・♂・BM
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL
村雨 狼騎(gc8089
15歳・♀・DG

●リプレイ本文

「ハーイ、傭兵の諸君。
 ターゲットは現在もハイウェイを湾岸方面に逃走中だ」
 広州軍区司令部宣伝部隊のクレイトンが、マイクに向かって呼びかける。
 傭兵を交えた傭兵訓練は、『ヒーローとして強化人間を倒す事』。
 ハイウェイで逃走する強化人間をヒーローとして倒し、その様子を街中に放送する事で一般市民からの支持を取り付ける事を狙った企画だ。
「マイクの最終チェックはOKです。カメラの方は大丈夫ですか?」
 放送スタッフへ確認を促すヨグ=ニグラス(gb1949)。
 今回傭兵達には強化人間が持つ偽物の宝石を奪還する事が目的とされているが、そのピカピカ光る宝石に釣られてやってきたヨグ。今回はヒーロー役ではなく、実況役兼放送スタッフとして活躍する事になる。
「準備はOKかい?」
 クレイトンの問いに、ヨグは自信をもって答える。
「大丈夫です。あとは本番を待つばかりです」


「これで追っ手は来られないはずだにゃー」
 強化人間タッチーナ・バルデス三世は偽物の宝石を抱きしめて牛車に揺られていた。
 拾った宝石が狙われていると感じたタッチーナは、追っ手の姿も見えないのにマグロ型キメラに納豆を吐かせて逃走するという手に出た。
 おかげでハイウェイは納豆塗れ。
 後続の車は玉突き事故を起こしているようだ。
「宝石を売った資金でカンパネラにマグロホスト部を設立。イケメンマグロ達を送り込んでカンパネラを混乱に‥‥」
「待てっ!」
 突如牛車の屋根に現れる漆黒の男。
 メトロニウム合金製の黒い強化装甲服に身を包んだゲシュペンスト(ga5579)。
 飛行しながら牛車を追いかけてきたようだ。
「こ、こりゃ! ミーの牛車へ勝手に‥‥」
「最初に現れたのは『黒焔の戦士』、セイバーゴースト!
 牛車の屋根に乗って堂々と登場。今日もその身を剣として悪を絶つのでしょうか?」
 ヒーローの登場で、ヨグの実況も開始
 セイバーゴーストの登場と同時に周囲へ響き渡る実況にタッチーナも意味が分かっていないようだ。
「その宝石は盗品。返してもらおうか」
「これはミーの物‥‥」
 タッチーナが叫ぶ。
 しかし、その声を掻き消すかのように後方から猛スピードで冷凍コンテナを搭載したトラックが迫ってくる。
「来ましたっ!
 明日の食を守る白き虎、キッチンタイガー、愛用のトラックと共に牛車へ突撃です」
 ヨグの実況を受けた御影 柳樹(ga3326)は、牛車目掛けてアクセルを踏み込んだ。
「ぎにゃー!」
 猛スピードでトラックと衝突する牛車。
 木製の牛車がトラックの衝突に耐えられるはずもなく大破。中に居たタッチーナも吹き飛ばし、キッチンタイガーは早くも番組に見せ場を作る。
「食卓の騎士、おさんどんの白き虎参上!
 僕が来たからには、明日の晩飯はマグロ尽くしさぁ」
 コンテナの上に登って決めポーズを取るキッチンタイガー。
 それに対してセイバーゴーストは空中から苦情を叫ぶ。
「おい、俺が牛車の屋根に乗っていたのを承知で突っ込んできたのか?」
「セイバーゴーストさんなら飛べるから大丈夫だと思いまして‥‥」
 ヒーロー同士の会話を割り込むように、タッチーナは体をゆっくりと引き起こす。
 どうやら懐の宝石も無事のようだ。
「マグロの皆さんが撒いた納豆を無視して何故ここへ‥‥」
「それはこいつのおかげさぁ」
 キッチンタイガーが持参したコンテナの一つ。
 そこから伸び出たホースが放水。その水がタッチーナの顔面を目標に降り注ぐ。
「ごぼぼっ‥‥これ‥‥塩水‥‥」
「そうさ。この塩水で納豆を洗い流したんだ」
 キッチンタイガーは道路に撒かれた納豆を塩水で洗い流したのだ。
 食べ物を粗末にする敵を許さないキッチンタイガーにとって少々勿体ない気もするが、納豆を食べられないので心も傷まないのだ。
「くっ、こいつぁやばい事に‥‥ぐべぇ!」
 タッチーナが言い掛けた瞬間、後頭部に強い衝撃が走る。
 そこにはビキニ型の青い鎧、両手首に銀の腕輪、すらっとした脚をブーツで飾るエルレーン(gc8086)の姿があった。
「このアイシィストームが、あなたの悪事も完全フリーズなの!」
「大鎌『プルート』と共に登場は、美の守護者アイシィストームです!
 今日も視聴者の目が画面に釘付けでしょう」
 ヨグの力強い実況が、視聴者を引き込んでいく。
「後ろから鎌で叩くとは‥‥卑劣な」
「周囲の車から一般人を救出したの。あとは、その宝石を奪還するだけなの」
 ビシっと指差すアイシィストーム。
 キッチンタイガーが塩水で道を作り、アイシィストームが一般人を救出するという流れは多くの視聴者から好印象に映っただろう。
「グロの皆さんっ!」
 タッチーナの呼びかけに、マグロ型キメラがぞろぞろと現れる。
 マグロの体におっさんの手足を生やしたキメラ。その姿から気持ち悪いこの上なく、早々に対処しなければ視聴率がた落ち間違いなしだ。
「抵抗するなら、容赦はしない!」
 セイバーゴーストは、マグロに長銃『ファントム・ライフル』を構える。
「マグロを倒すなら、なるべく身を傷つけないで欲しいんだけど‥‥」
 小声で囁くキッチンタイガー。
 明日のおかずにマグロを考えているキッチンタイガーにとって、マグロの体を派手に傷つけられると旨い部分が損なわれてしまう。
 キッチンタイガーとしても心配するのは当然と言える。
「その約束は無理だが、努力はしよう」
「さすがセイバーゴースト、頼りになる。
 じゃあ、こちらもマグロ解体ショーを始めますかぁ」
 マグロ解体用の包丁を仕込んだフトリエルを抜き放つキッチンタイガー。
 既に脳裏には、マグロ用レシピが複数浮かんでいる。
「いくぞっ!」
 空中からマグロを強襲するセイバーゴースト。
 空中で姿勢を変えながら射程距離まで迫る。
 ――そして。
「唸れ、ファントム・ライフル」
 長銃ファントム・ライフルが火を噴いた。
 離れた弾丸はマグロの頭を直撃、額部分に風穴を開ける。
 地面に倒れ込むキメラだったが、何故かキッチンタイガーが悲鳴に似た叫びを上げる。
「ああ! そこは脳天といって貴重な部位‥‥」
「じゃあ、どうしろというのだ?」
「手足を切り落として普通のマグロにするのさぁ。‥‥こうやってっ!」
 フトリエルを日本刀のように振り回し、マグロの手足を切り落としていくキッチンタイガー。
 食材を無駄にしない事を心情とするキッチンタイガーにとって、マグロの部位は余す所無く使いたいのだろう。
「ったく、面倒な‥‥」
 キッチンタイガーの願いにより、格闘戦へ持ち込むセイバーゴースト。
 頼まれると嫌と言えないのがヒーローの辛いところ。

 一方。
「宝石泥棒さんにも天罰、下してあげるの」
 アイシィストームはカメラを意識したのか、色気を出しつつタッチーナを挑発する。
 しかし、当のタッチーナは何処か醒めた目だ。
「ふふ、弱点を見つけたにゃー」
「な、なんですの?」
「その胸、偽物だにゃー。小脇から白い詰め物が顔を出しているにゃー」
 アイシィストームの胸から見え隠れする白い詰め物をタッチーナは見逃さなかった。
 アイシィストームは残念な胸を補うべく、詰め物をして補強していたのだ。
 だが、残念過ぎる胸を『若干』補う予定が、少々予定をオーバー。動きによっては詰め物が見えてしまう惨状となっていた。
「きゃっ! なんてところを見ているなの!」
 手で胸を隠すアイシィストーム。
 ちなみに、この瞬間コアな層の視聴率だけが急上昇。それをヨグが発見するのは放送後の話だ。
「アイシィストーム、ピンチ! だが、他のヒーローもマグロ退治に苦戦中。
 アイシィストームはこの窮地をどうやって切り抜けるのでしょうか」
 ヨグの実況と同時にカメラはアイシィストームを再びズーム。
 危機感を煽る音楽が挿入され、臨場感をアップさせる。
「ぬわっはっは。弱点さえ分かればこっちのものにゃー。
 まずはその詰め物を‥‥」
「タッチーナ! ボクの正義の電流は爆発寸前だよ!」
 タッチーナとアイシィストームの間に滑り込んでくる一台のバイク。
 セーラー服に身を包んだ村雨 狼騎(gc8089)。
 バイクのフロント部分には、ロボットの顔が付けられている。
 よく見れば、村雨の体を赤色の電流がスパークしている。
「アイシィストームを救うべく現れたのは、『電迅ガローガー』こと村雨 狼騎です!」
 ヨグの合図と共に、事前収録していたクレイトンのナレーションが挿入される。

『説明しよう! 村雨 狼騎に内蔵されたエミタから発生する高エネルギー、通称【怒りの電流】が覚醒時に発動。一瞬だが、全身を紅の電流が包み込むのだ!』

「滾る紅い稲妻は、燃える怒りの紅い色!
 このボクと正義の戦士、電迅ガローガーが許さないぞっ!!
 立ち上がれ、紅の鉄人!
 チェーンジっ、マシンガローガー! ゴォォーーーッ!!」
 村雨の体が真紅の雷に包まれる。
 次の瞬間、バイクと合体。電迅ガローガーが姿を現す。
「受けてみろ! 人機一体、ボクとガローガーの必殺技!」
 ガローガーは空中高く飛び上がる。
 空中で体を捻ったガローガーの体は、重力に引かれて落下。その先にはタッチーナが絶っていた。
「飛龍ゥゥっ! 三ッ段ッ! 蹴りィ−!」
 叫びと同時に炸裂した蹴りは、タッチーナの顔面にヒット。
 顔面のパーツが中央へ集まるかのような衝撃は、タッチーナを昏倒させ懐の宝石が遠くへ弾き飛ばされた。


 アイシィストームの窮地は電迅ガローガーによって救われる。
 だが、ここで新たなる展開が始まる。
「やはり、彼は真にマグロを愛する者ではなかったようです」
 遠くへ弾き飛ばされたはずの宝石を手にしたのは、戦闘用燕尾服に男性用ビキニを着用したマグローン(gb3046)。何故かマグロが一匹入る程の大きな水槽に車輪がついたマグロ車で登場する。
「なんて事でしょう。宝石は、再びバグアの手に渡ってしまった!
 新ゾディアック13星座目『ゾディアック鮪座』が現れました!」
 ヨグの指示に従って、カメラを舐めるように下から上へゆっくりと向けられる。恐怖心を煽る音楽が効果的に使われる。
「くっ、ゾディアックじゃと!?」
 ガローガーの蹴りを食らってゆっくりと立ち上がるタッチーナ。
 だが、悪のゾディアックはタッチーナであっても容赦なし。マグロ車はタッチーナの前で止まるどころかフルスロットル。スピードを上げてタッチーナをあっさりと轢いた。
「ぶべぇ!」
「‥‥ああ、失礼。私はマグロを愛する者以外は視界に入らないのです。あなたのような偽のマグロ愛を持つ者は特に、ね」
「そういってミーの宝石を奪う気じゃな? マグロの皆さん!」
 タッチーナの呼びかけに合わせてマグロは鮪座に対して納豆を吐きかける。
 ――しかし。
 鮪座の傍らから現れた黒いマグロ型キメラは、口から水流を吐き出して納豆を空中で散らしてしまう。
「ああっ!? マグロさんの納豆が!」
「そのマグロがあなたの愛ですか?
 こちらのマグロは皆精悍。無駄毛の手入れもばっちりな黒マグロの皆さんです。口から海水をジェット水流の如く吐き出します」
 さらに水中では手足を体内へ格納可能。水中での流線型美学と陸上での汎用性を兼ね備えた完璧マグロ型キメラ。マグロ愛が行きすぎて台本を『激闘! 山羊座』から『激闘! 鮪座』へ赤ペン修正してしまった鮪座の作品だけはある。
「おにょれ! マグロの皆さんの男性ホルモンが爆発した手足まで貶めるとは!
 貴様、さては第三勢力という訳じゃにゃー?」
「第三勢力? これはおかしな事を。
 私はマグロの味方。偽のマグロを従えるあなたは敵です」
 あくまでもタッチーナとの共闘を拒む鮪座。
 この時点で、ハイウェイはヒーローVSマグロVS黒マグロという混戦必至の状況となる。
「やっぱり! あの鮪座こそ僕の獲物の大鮪! 上質赤身を今夜こそ!」
 キッチンタイガーはフトリエルで鮪座を狙う。
 フトリエルで道を切り開こうとするが、先程のマグロ達と異なり巧みな銛捌きでフトリエルの刃をいなし続ける。
 さらに、セイバーゴーストに黒マグロの水流が炸裂する。
「クッ、不意打ちの上に水攻めとは卑怯な!
 しかも、海水だと‥‥スーツが錆び付いたらどうしてくれる!?」
 事実、セイバーゴーストの黒い強化装甲服から電流が走る。一部回路に異常が発生したようだ。
「ふふ、ヒーローの皆さんと事を構えるつもりはありません。
 今日の私の目的は‥‥とぉ!」
 鮪座は水槽から飛び出すと、タッチーナに向かって走り出す。
「逃がさないっ!」
 鮪座の行く手をガローガーが阻む。
 広いハイウェイであっても、マグロやヒーローの存在が壁になっている。
 走るルートは限られる。
 そのルートを読み切れば鮪座を止める事ができる。
 しかも、ガローガーは紅き電流。電流のスピードで鮪座をキャッチするつもりだ。
 ――しかし。
「‥‥ふっ」
「早いっ! 水槽から出てもこのスピードなの!?」
 ガローガーの脇をすり抜ける鮪座。
 さすがのガローガーも意外なスピードに戸惑いを隠せない。
 紅き電流でも捉えきれないスピード。
 その正体について鮪座曰く、『マグロ愛。そして、マグロ愛』らしい。
「にゃ!?」
 突然の事で反応できないタッチーナ。
 鮪座はタッチーナの体を掴んで大きくジャンプ。空中で縦回転しながら、タッチーナの手足をがっちりとロック。
「海中で時速80キロのスピードが出るマグロ。そのスピードと衝撃をご馳走致します。
 奥義『マグロ・エクスキューショナー』!」
 そして――激突。
 タッチーナの頭部は割れ、地面に真っ赤な血の池が出来上がる。
 そして、着地の衝撃を利用してバウンドした鮪座は鮪車の水槽へ着地。
「ヒーローの諸君、マグロの縁があればまた会おう!」
 鮪車は急発進させると宝石を持ったまま走り去ってしまった。
「‥‥い、今のうちに逃げるにゃー」
 鮪座の攻撃を受けながら、こっそり這って逃げようとするタッチーナ。
 頭はぱっくり割れても生きているのだから、回復力だけは超一流。
 しかし、このまま逃げられる程甘くないのが彼の運命。
「ま、ち、な、さ、い、ですの」
「ぎゃ!」
 タッチーナの尻を踏みつけるアイシィストーム。
 超回復をするタッチーナでも、尻については精神的トラウマを抱えている。
 尻を踏みつけられただけで背筋が凍り付く。
 おまけに胸の事を散々弄られたアイシィストーム。タッチーナへ恨みを晴らす気まんまんである。
「私の蹴りはちょっぴりコールド。あなたの尻を‥‥完全ホールド、ですの!」
 怒りに任せてブースの踵で蹴りを繰り出すアイシィストーム。
 尻の痛みとトラウマによりタッチーナはその場で気絶する。


 今回、鮪座に宝石を奪われたものの、視聴率は上々。
 市民からも素晴らしいショーだと受け入れられたようだ。
 ヒーロー達が再びこの街へ現れるか――それは傭兵の活躍次第である。