タイトル:熊本・海のコンテストマスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/23 21:33

●オープニング本文


「村長っ!」
 熊本の海岸線沿いにある小さな村、耳茶村の村長は若い村人達に声を掛けられた。
 北九州が復興という大きな目標を掲げて動き出しているが、バグアの被害を受けたのは北九州だけではない。被害は九州全土に及び、多くの被害を出していた。
 都心部ではUPC軍の支援で徐々に復興が進んでいる。
 だが、都心部から離れた小さな村にはUPC軍の支援も届かない。
 今も壊れた漁船や家屋に呆然とするものも少なくはないのだ。
「どうした?」
「話がまとまりました。
 やはり村に活気を取り戻すべく、水着コンテストを開催する事に決まりました」
 耳茶村に何とか活気を取り戻したい。
 そう考えた村人達は、村に唯一ある資源の海を舞台に水着コンテストの開催を画策していたようだ。これで復興も安心、という訳ではないが、村に何か活気を与えたいという想いからの企画だろう。

 ――しかし。
 耳茶村の悲劇はこのコンテストから始まった。

「なにぃ!?」
 村長と若者の背後から、響き渡る低音。
 振り返れば、鉄下駄に赤い褌を身につけた親父がそこに聳え立っていた。
 腕、足、胸は剛毛に包まれ、体は筋肉で引き締まっている。顔は熊のように顔面毛だらけで、目や鼻が辛うじて発見できる程だ。
 男は、言葉を続ける。
「水着コンテストだと?」
「ええ。村興しの一環で、この浜辺に舞台を立てて水着コンテストを開催するんです。
 多くの女性や少女を集めて一番を決めれば、きっと客も‥‥」
「愚か者がぁ!」
 若者が言い切らないうちに、親父は渾身の力を込めて頬にストレートを決める。
 若者は親父の一撃で吹き飛ばされ、ガードレールに後頭部を強打した。
「ぐぇ‥‥」
「女子供を守るは男の使命。つまり、九州の復興には男は不可欠。
 しかしっ! 貴様はその復興を女子供に託そうとは‥‥。凡愚がっ、恥を知れっ!」
 見ず知らずの若者を鉄拳制裁した上に、男尊女卑思想を展開する褌親父。
 明らかに普通の人間の香りはしない。
 だが、その事を察知できない別の若者は軽い口調で口を挟む。
「ああ、分かります。男の娘って奴ですよね? 今流行の‥‥」
「馬鹿弟子がっ!」
 再び親父の鉄拳が炸裂。
 若者は親父のワンツーパンチでダウン。鼻血を垂らしながら、顔面から地面へ倒れ込んだ。
「あのー。失礼ですが、あなたは?」
 村長は恐る恐る親父へ話しかける。
「我は漢を極めし者、バラゾック。
 立ち聞きは無礼と思いながらも聞かせてもらった」
「‥‥ふむ。ちなみに、バラゾックさんはどうすればこの村に人は集まると思いますか?」
「愚問。男――否、漢は漢に惹かれる生き物。
 元来、漢が漢に惚れ込むという事は、忠誠を誓うも同然。多くの男が集えば、村の一つや二つ、どうとでもなる。
 ならば、その魂刹酔闘(こんてすと)なる催しは、史上最高の漢を決める祭典とするべしっ!」
 腕を組みながら力説するバラゾック。
 そもそも、水着姿の女子達がキャッキャウフフする方が多くの人が見物するために現れるのは間違いない。
 しかし、バラゾックの言葉には不思議な魔力が備わっていた。
「つまり、最高の男を決めれば人は集まると?」
「違う、『漢』だ。
 おそらく当日は、己が肉体を見比べた後に拳での語らい。最終的には砂浜に打ち立てたテントで漢同士が一つに‥‥」
「はて? 今、何と?」
 村長のツッコミに、バラゾックは咳払いして誤魔化した。
「ん、何でもない。
 すべては我に任せておけ。参加した男達を奮い立たせてくれる。
 立てよ――否、勃てよ漢達!」


 バラゾックが浜辺近くで力説する頃。
 傍で怪しい影が暗躍する。
「‥‥くぅ。何が漢だにゃー」
 歯軋りしながら、見つめるのはタッチーナ・バルデス三世。
 人類が奪還したとされる九州にこっそり現れていたようだ。
「漢よりも素晴らしい物が何か教えてやるにゃー。
 ‥‥みんな、準備はいいかにゃ?」
 タッチーナが振り返ると、おっさんの手足を生やしたマグロ型キメラが木材を組み合わせて何かを一生懸命製作しているようだ。
「見ておれ、漢とやら。
 こいつが完成した暁には、魂刹酔闘とかいう催しに乱入しておしおきしてやるにゃー」

●参加者一覧

ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
サウル・リズメリア(gc1031
21歳・♂・AA
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
ビリティス・カニンガム(gc6900
10歳・♀・AA
フール・エイプリル(gc6965
27歳・♀・EL
田中 義雄(gc7438
23歳・♂・GP
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA

●リプレイ本文

「‥‥え?
 女の子が水着でコンテストをやるんじゃなかったのか?」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は、長老と呼ばれる老人に問いかけた。
 熊本の海岸で、コンテストがあると聞きつけたユーリ。
 浴衣に下駄、邪魔にならないように髪はアップで纏めた風貌で駆けつけていた。かき氷でも振る舞おうと準備を進めていたのだが、真実を聞いて愕然としている。
「うむ、ある方から助言をいただいてな」
 老人は、海岸へ向かってゆっくりと振り返る。
 九州春日基地が解放され、人々は活気づいた。この村でも村興しを狙って水着コンテストを開催しようとしたのだが、ある男の登場で男祭りへと変更。このため、砂場は灼熱の砂漠よりも暑い不快空間へと様変わりだ。
「一体、誰がそんな事を‥‥」
「我であるっ!」
 その男は、突然現れた。
 熊のような毛だらけ全身、足には下駄、腰には褌を装備。明らかに危ない香のする人物に、ユーリは思わず顔をしかめる。
「あんたは?」
「我はバラゾック。漢を極めし者である」
 突然怒鳴り始めるバラゾック。
 おそらく、ロクでもない事を言い始めると予想するユーリだったが、その予想は見事に的中する。
「女性優位という愚かな風潮を跳ね返し、漢が漢らしく生きる。祭りの熱気に誘われて、一糸纏わぬ男達の堂々とした姿は素晴らしい。
 あとは漢達が同じ布団で一夜を共に‥‥」
 涙を流しながら感動にむせぶバラゾック。
 聞いているだけで頭痛のするユーリだが、早くもこの浜辺を訪れた事を後悔し始めていた。
「女子供を守るは男の使命。実に良い言葉だぜ、女子供守り愛しむのが紳士だ」
 気品を溢れさせる佇まいで現れたのはサウル・リズメリア(gc1031)。
 この亜熱帯のような暑苦しい砂浜で、一人タキシード姿で登場だ。
「女子供は庇護を求める生物。漢は強くあらねばならん」
 バラゾックもサウルに同意している。
 もっとも、サウルはフェミニストであるため、バラゾックの考え方と明らかな相違があるのだが‥‥。
「しかし、漢が褌だけだと勘違いされては困るな」
「むぅ、確かに褌だけではないのは事実だが‥‥」
「本番で、その事実を証明してやるよ」
 自信満々のサウル。
 どうやら、漢という存在に新たなる秘策を用いるつもりのようだ。バラゾックへの好感も悪くはなく、口から涎がこぼれ落ちている。一体、何を想像しているのかは考えたくもない。
「おい、変態親父!」
 バラゾックの背後から怒鳴りつける村雨 紫狼(gc7632)。
 バラゾックに一言文句があるようだ。
「変態ではない。漢の中の漢、ラストサムライと呼んでも構わんぞ」
「ふざけるな、変態親父! 俺はこの天下一漢闘会に誇りを掛けて参加する!
 てめぇの自分勝手なやり方を俺が否定してみせる!」
 いきり立つ村雨。
 この天下一漢闘会参加前に、バラゾックへの宣戦布告。自分の尺度だけで誰かを計り、己の思想を他人へと押しつけるやり方を、村雨は許せないのだ。
「良く見ておけ! チンケな器量で漢を名乗るんじゃ‥‥」
「変態ハリケーンアタック!」
 叫び続けていた村雨の顔面に、何かがクリーンヒット。
 生暖かいながらも相当な堅さを感じながら、村雨は海の中まで吹き飛ばされる。
「ぶわっ‥‥だ、誰だ!」
「この世の悪を仕置きする。
 性技のテクが仕置きする。
 変態ドラフト会議第一回選択希望選手、変態紳士――推参!」
 顔面にブルマを被った田中 義雄(gc7438)が、サイドチェストで筋肉を誇示している。
 変態には変態を呼び寄せるのであろうか、変態紳士はバラゾックの肩を持つつもりのようだ。
「村興しの手を貸そうという気持ちは本物。
 ならば、その考えを否定するばかりではなく、村興しに手を貸してやるのもの良いだろう」
「うるせぇ! 人の事を鈍器で殴り付けただろう?」
「鈍器? 私は武器など持っていないが?」
 ワセリンで煌めく体でアドミナブル・アンド・サイのポーズを取る変態紳士。
 確かに武器を持っているようには見受けられない。
 では、一体何が顔面に当たったのだろうか。
「ま、まさか俺の頬を、股間で‥‥」
「私のバールのような物は、時に私の意志を無視して硬度が上がる時がある。興奮して硬度がダイヤモンドパワーに匹敵していたかもしれん」
 続々と集まる変態達の登場に、バラゾックは満足そうな笑みを浮かべている。
「よしっ! 天下一漢闘会、開催であるっ!」


 浜辺に築き上げられた特設ステージ。
 ここが天下一漢闘会の舞台となる訳だが、バラゾックは納得がいかないという表情だ。
「何故だ!」
 バラゾックは不満をぶち上げる。
 バラゾックにとっては、この舞台は神聖なる場。教会や神社といった霊験厳かな場であった。だが、そこへ女性が現れたものだから、怒りは収まらない。
「だまれ、バラ公!
 この美具様が仕切ってやんだから、きりきり審査しやがれなのじゃ!」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)がバラゾックへ怒鳴り返す。
 生来の仕切り屋である美具にとって、このような場を黙ってみている事ができない。気付けば周囲の制止を振り切ってこの場で司会役として買って出ていた。
「貴様のような存在に、荒ぶる漢達が止められると申すか!」
「てめぇ如きがこの場が仕切れると思ってんのか!
 拭ってやるって言ってんいるのじゃ! その汚ねぇ汚ねぇ尻っケツを、なのじゃ!」
 美具もまったく退く気はない。
 祭りという雰囲気が美具の体を押し、バラゾックと前面対決姿勢だ。
「バラゾック。す、済まないが、先に進めて、くれないか‥‥」
 息も絶え絶えで、滝のような汗を流す秋月 愁矢(gc1971)。
 秋月は鎧美を見せようと、燦々と照りつける太陽の中でギラギラに輝く鎧と重装甲を身につけていた。
 太陽、祭りの熱気、漢。
 暖まる要素が秋月を取り囲み、天然サウナのような状態になっている。
 鎧姿は素晴らしいが、秋月の限界も近づきつつあった。
「むぅ、仕方ない」
「最初の登場は‥‥サウルじゃ!」
 美具の呼び込みで登場したのはサウル。
 ピタッと皮膚に密着した三角のビキニパンツ。
 股間部の膨らみが男性を意識せざるを得ない。
「どうだ、バラゾック!
 褌だけではなく、ビキニパンツも漢に似合うとは思わねぇか!」
 サウルの秘策、それは異常に小さいビキニパンツでった。
 股間が強調され、褌とはまた違った雰囲気が流れる。
「うむ、確かにビキニパンツも良い」
「どうだ分かったか!」
 得意満面のサウル。
 そこへ司会の美具が近づいてくる。
「審査員の評価も高いようじゃ」
 ぐっと近づく美具。
 自然と美具の胸が強調される。
「‥‥うっ!」
 突然振り返り、鼻と股間を押さえるサウル。
「な、何が起こったのじゃ!?」
「だ、大丈夫。気にするな‥‥」
 気にするなというサウルであったが、完全に鼻声。何故か鼻の周りは真っ赤に染まっている。
「素晴らしい! 実に良い!
 恥じらうその姿、血に染まるビキニパンツが妄想を掻き立てる」
 サウルの鼻血を目撃して、一人大興奮のバラゾック。
 何が良いのかはさっぱり分からないが、評価は良さそうだ。
「えーと、次の登場はビリティス・カニンガムとフール・エイプリルの二人じゃ」
 美具に名前を呼ばれたビリティス・カニンガム(gc6900) とフール・エイプリル(gc6965)が舞台に登場する。
 途端、浜辺の男達が色めきだつ。
 何せフールは女性ながら六尺褌で登場、ビリティスはガウンを羽織って現れたのだ。
 これにはバラゾックも怒り心頭で立ち上がる。
「貴様ら! 神聖な舞台を愚弄する気か!」
「漢かどうかは、性別や筋肉なんて表面的なもんじゃ決まらねぇ。
 ‥‥漢ってぇのは、魂のあり方で決まるんだぜ!
 あたしは女でガキだが、漢っぷりじゃ誰にも負けねぇぜ」
 バラゾックへの反論とばかりに、ガウンを脱いだビリティス。
 そこには上半身は胸にサラシを巻いただけ、下半身には股間に天狗の面を付けただけの姿があった。
「見な! 漢のイデアが形となった漢そのものの姿だぜ!」
 股間に装着された天狗の面が、余計に卑猥な物を感じさせる。
 浜辺の観客の中には、股間を押さえて余所余所しい物も登場。ビリティスがバルディッシュを構えて雄叫びを上げてみるが、会場は奇妙な沈黙で包まれる。
「見よ! やはり、女子供では漢の真似事に過ぎぬ!
 奥の女も同じであろう?」
 バラゾックはフールにも目を向ける。
 標準的な胸ではあるが、割れた腹筋と引き締まった太股。鍛え上げられた二の腕は、無駄な脂肪が存在せず、戦闘の為だけに生まれた存在だと感じさせる。
「私は女闘士としてアピールする為に来ました。
 戦いは真剣に行うのが相手に対する礼儀というもの‥‥」
「それは、一人前の漢の台詞だ。
 もう貴様らなどと話す舌は持たん! 漢の意味さえ介せぬ女に!」
 怒り爆発したバラゾックはフールに向かって走り寄った。
 どうやら、力づくで舞台から降ろすつもりのようだ。
 ――だが。
「ふんっ!」
 フールの右ストレートが、バラゾックの鼻下辺りにヒット。
 大きな巨体は舞台袖へと吹き飛ばされていった。
「どうしました? 漢を決めるのでしょう。ならば、この程度ではないはずです」
 フールはバラゾックへ歩み寄り、脇腹に数発の蹴りを入れる。
 蹴りが炸裂する度に、小さく呻くバラゾック。
「‥‥‥‥」
「え? 何かおっしゃいました?」
 バラゾックの言葉を聞きとろうと、問いかけるフール。
「き、き‥‥気持ちいいいいぃぃぃぃ!」
 フールの攻撃で快感に悶えるバラゾック。
 気色悪さ全開だが、フールの攻撃は留まる事を知らない。
「ま、まずいのじゃ。早く止めないと‥‥」
 慌てる美具。
 その瞬間、美具の背後で大きな金属音が響き渡る。
「‥‥あ」
 ついに限界に達した秋月が、舞台の上へと倒れ込んだ。


「ここからは実況を担当させていただく秋月です。解説にはユーリをお呼びしました」
 鎧を脱ぎ捨てて身軽となった秋月は、ユーリを連れて実況役となっていた。
「ユーリ、この争いをどう思う?」
「どうと言われても‥‥」
 ユーリは舞台から顔を背けた。
 舞台では村雨とバラゾックが激しく口論を繰り返していた。
「貴様、その姿が漢だというのか!」
「てめぇには分からねぇのか!
 俺は男として女性に敬意を払って外見からしぐさまで完璧に女装した!
 スネ毛を剃り化粧も完璧! 適当な女言葉は使わない!
 女の体は金と努力で出来てんだ!」
 名言とも思える言葉を吐いた村雨。
 何故、村雨は女装してこの舞台に立ったのか。
「情報が入ってきました。
 『説明しよう! 村雨紫狼は訓練された変態紳士である。浪漫ニストである彼の美的意識は、彼を魅惑的な美女へと変身させるのだっ』
 ‥‥という事です」
 持ち寄られた資料を読み上げる秋月。
「確かに、無駄毛処理も完璧。下半身もパレオを装着。
 『紫江留 濃霧(しえる のーむ)』という名前で呼んで欲しいという事なんですが‥‥これ、漢なんでしょうか?」
 ユーリは疑問を呈した。
 タイのニューハーフコンテストならば上位に食い込む事間違いないが、今回は漢を決める戦い。上がる舞台に少々間違いがあったようだ。
「さて、続いては今大会の本命が登場のようじゃ。変態‥‥」
「美具、待つんだ。何かが、こちらへ来る」
 真紅のビキニパンツを装着したサウル。
 サウルが指差す先には、一つの御輿があった。
 だが、その御輿の担ぎ手は、手足を生やしたマグロ。臑毛がたっぷりと生えた奇妙な生物――キメラである事には間違いないようだ。
 そして。
「待てーーーい!
 漢が最強だと誰が決めたのかにゃー?」
 御輿の上で座るのは、タッチーナ・バルデス三世。
「誰だ、貴様は」
「朕はタッチーナ・バルデス三世。紳士の中の紳士。
 今日は漢以上の存在がある事を教えに来たにゃー」
「なんだと!?」
 バラゾックの眉が上がる。
 漢を極めたと言い切るバラゾックにとって、その言葉は聞き捨てならない。
「地球最強の生物。それは、マグロ。漢達を遙かに凌駕する存在だにゃー」
 御輿を担いできたマグロ達を指差すタッチーナ。
「この会場に居る漢達にマグロの恐ろしさを教えてやって‥‥」
「無粋の輩め! これで貴様らの貞操を散らしてくれるわ!」
 出番待ちしていた変態紳士は、いち早くマグロへと近づいて空高く舞上げる。
 そして、自らも飛び上がり空中でキャッチ。
 同時に股間部からロングホーンを登場させた。
「チェストォォォォ!」
 股間のロングホーンがマグロの尻へと突き刺さる。
 太陽の影に隠れてはいるが、地面に移るシルエットは明らかに一体化している。
「変態十字架落としっ!」
 マグロと繋がったまま、首下を掴む変態紳士。
 そのまま地面へと激突。尻から解き放たれたロングホーンは、マグロを遠くへ弾き飛ばす。
「おおぅ! 何と羨ましい技っ!」
 涎を拭きながら叫ぶバラゾック。
 この叫びを切っ掛けに、傭兵達はキメラ退治へと動き出した。
「‥‥いきますっ!」
 ピクシスアックスを握りしめてマグロへと向かうフール。
 たった8体のマグロでは、漢達を止める事は不可能。
 まさに蹂躙ともいうべき状況となっていた。


 数分後、マグロ達はあっさり全滅。
 タッチーナも捕縛されていた。
 しかし、先程までの漢を賭けた戦いは行われていなかった。
「‥‥よし、焼けたぜ」
 ビリティスのバルディッシュの上で、マグロステーキが焼き上がっていた。
 事前に情報を入手していた傭兵達は、マグロに酒を飲ませて匂い消し。そこから調理すれば、酢味噌臭も消えて美味しく食せるのだ。祭りは、8体分のマグロを村人へと振る舞って盛り上げる流れへと変わりつつあった。
「旨い。
 兄ちゃん、刺身はできるかい?」
「分かった。準備しよう」
 ユーリは包丁を研ぎながら準備を開始する。
 いつの間にやら日を落ちて、海岸に焚き火が行われる。
 料理をするためにも火は不可欠。まさに祭りのハイライトに打って付けだ。
「ふむ、確かに旨い‥‥ん? バラゾック、何処へ行く?」
 秋月がマグロを食している横で、立ち去ろうとするバラゾック。
 背中には捕らえられたタッチーナの姿があった。
「祭りは、終いだ。
 報酬として我は、こいつをもらい受ける」
「こいつって、タッチーナをか?」
 秋月の問いに軽く頬を染めるバラゾック。
 タッチーナも自らの運命に気付いているらしく、肩の上で必死で暴れる。
「ぎゃおーーん! 朕の果実がピンチだにゃー!
 食べたって美味しくないですよ? 口の中でパチパチ弾けるだけですにゃー」
「ほう、それだけ刺激的って事か。そいつは楽しみだ」
「ぎゃおーーん!」


 数日後。
 タッチーナは、意識と記憶が混乱した状態で発見される。
 尻に穴が空いた紙おむつをそのままに、体育座りで体を震わせていた。
「太いのが‥‥朕の‥‥‥‥に。
 痛い! 止めて、お兄ちゃん。そこは‥‥朕の‥‥」