タイトル:【LP】バグアの伏兵だ!マスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/29 20:30

●オープニング本文


 太原武宿国際空港を出発したトラックの列は、道に沿って進んでいく。
 荷台には最前線で戦い続ける戦士達に向けた補給物資。この物資が到着すれば、戦士達は更なる激戦でも耐えきる事ができる。それは北京解放へと繋がり、延いては人類の生命線と成り得るかもしれない。
 そこまで大げさな展開になるかは不明だが、多くの夢と期待をも乗せた物資は、確実に最前線に向かって歩みを進めている。
「‥‥旅はまだまだ長い、か」
 ラリー・デントン(gz0383)はトラックの荷台から空を見上げた。
 物資輸送は部隊運用においても重要な任務である。言い換えれば、敵も物資が前線へ届かないよう物資輸送を妨害してくる可能性もある。そこで、UPC軍は物資輸送トラックの護衛役として傭兵を選んだという訳だ。
 もっとも、ラリーにとってはそれが如何なる任務であれ、日銭を稼げればそれでよかった訳だが‥‥。
「これで出番が無くて寝て終わりだったら最高なんだけどなぁ」
 ラリーは出発前に買っておいたビールの栓を開けた。
 昼飯をケチって買ったビールだ。大切に飲もうと思っていたが、アルコールが抜けた途端、我慢できなくなっていた。
 酒を飲んで荷台で揺られているだけの仕事。これ程楽な仕事はない。
 不精者なラリーらしい判断であった。
 だが、ラリーの淡い希望はあっさりと潰える事になる。

 ――ジャーン! ジャーン! ジャーン!
 突如鳴り響く銅鑼の音。トラックのエンジン音よりも強く高く周囲に響き、トラックの列に異変を知らせる。
「なんだ!?」
 慌てて荷台から顔を出すラリー。
 そこにはビルの影から現れる異様な一団。赤い馬型キメラに騎乗したバグア兵が三国時代の甲冑を身に纏い、馬型キメラに騎乗している。手には槍が握られ、『馬』と書かれた派手な旗を翻している。どうやら、この一団を率いる部隊長のようだ。
 その背後には3頭程の人馬型キメラが付き従っている。上半身が人、下半身が馬という姿のキメラの手にはバグア兵と同じように槍や弓があった。
「げぇーっ! バグア!」
 トラックに居たUPC軍人の誰かが叫んだ。
 その声に反応して動き出すバグア兵達。
 馬型キメラを駆って、トラックの車列へと突撃を敢行する。
「やばい、牽制しろ!」
 慌ててライフルを構える軍人たち。
 しかし、一瞬早く到達したバグアの槍が手近に居た軍人に向かって振り降ろされる。
「ぎゃっ!」
 ラリーの耳にUPC軍人の悲鳴が聞こえてきた。
 何故、バグアがあのような姿なのか。
 さっぱり理解できない状況のラリーだが、はっきりしている事はラリーの平穏な時間はたった今終わりを告げたという事だ。
「なんで、こんなのが相手なんだよ。まったく‥‥ツイてねぇなぁ」

●参加者一覧

夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
鴇神 純一(gb0849
28歳・♂・EP
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
水無月 湧輝(gb4056
23歳・♂・HA
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
レベッカ・マーエン(gb4204
15歳・♀・ER
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN

●リプレイ本文

●襲撃
 北京解放作戦。
 UPC軍が中国奪還を賭けて大勝負に出た作戦であり、多くの者が今回作戦に少なからず関与している。
 前線に物資が送られなければ疲弊し、撤退を余儀なくされる可能性もある。バグアの襲撃に備え、UPC軍は傭兵へ物資輸送トラックの護衛任務要請した訳だが‥‥。
「やれやれ、仕事の時間か」
 ラリー・デントン(gz0383)はトラックの荷台から飛び降りる。
 本来であれば前線までトラックで揺られ、買い込んだビールを暢気にちびりちびりと楽しむだけの仕事だった。よりにもよってラリーが護衛しているトラックをバグアが襲撃したのは、『死神の玩具』と呼ばれるが所以かもしれない。
「さぁて、敵さんがおいでなすったなぁ」
「甲冑に旗‥‥さらに銅鑼まで。少々変わった敵です、ね」
 ラリーと同じトラックから降り立ったのは、御鑑 藍(gc1485)と水無月 湧輝(gb4056)。
 三国時代の甲冑に馬型キメラ、さらに半人半馬のキメラを3体連れて現れた敵集団。今回の相手に少々困惑気味のようだ。
「侮るな。馬型キメラの機動力を活かした進路妨害‥‥バグア馬賊と言ったところか」
 トラックの影からレベッカ・マーエン(gb4204)が顔を出す。
「ほほぅ。可愛いお嬢ちゃん方が同じ任務とは、こりゃやる気も出てくるってもんだ」
 ラリーは藍とレベッカをなめ回すように見つめている。
「今は任務中だ。浮ついた考えは止めろ」
 レベッカは言う。
 不真面目な人間が一人でも居れば、任務が失敗する恐れもある。
「敵ですか!?」
 バグアの襲撃を聞いた橘川 海(gb4179)は、ココアを乗せたお盆を片手に走る。
 慰労を兼ねて物資輸送するスタッフにエプロン姿でココアを配っていたのだが、その際にバグアからの襲撃を受けたようだ。だが、慌てていたために。
「きゃ!」
「うわっ‥‥‥‥あちぃ!!」
 走ってくる海の存在に気づかなかったラリーは、そのまま海と衝突。
 海の手にしていたココアがラリーの頭から降り注いだ。
「す、すいません! 大丈夫ですか」
 慌てて手にしていたハンカチでラリーの顔を拭く海。
 気づけばラリーの緩みきった顔が引き締まり、爽やかな笑顔を海へ向けている。
「いえ、気になさらずに。俺の不注意ですから。
 でも、お詫びの印として、この任務が終わったら俺と一緒に食事でもしませんか? 湖畔でゆっくりとできるレストランを知っているのです。ああ、お嬢ちゃんは何も心配しなくていい。俺に任せておけば大丈夫‥‥」
「『死神の玩具』ってこいつか。よっちーの言う通り、間抜け面だなぁ」
 海を口説いている最中に現れたのは、紅月・焔(gb1386)。
 さっきまで精一杯の笑顔を浮かべていたラリーだが、焔の登場でいつもの顔に戻ってしまった。
「おい、こっちは彼女と大事な約束を取り付けるところだったんだ。
 ところで、人を間抜け呼ばわりしている『よっちー』って誰だ?」
「ああ、あそこに居るよ」
 焔が指さす方向には、トラックの荷台の上からスコーピオンで迎撃射撃を加える者が居た。
「あ、てめぇは!」
「‥‥敵襲があると思っていた。必ず、な」
 『よっちー』こと、夜十字・信人(ga8235)は、ラリーを見据えながら言った。
 夜十字は過去何度かラリーと一種に任務を達成してきたが、その度に地雷を踏んで共に爆発に巻き込まれたり、タンクローリーに追い回された事がある。最早、腐れ縁という関係に近づきつつある。 
「ああ、よっちー。さっき、よっちーの事を‥‥ぶげぇ!」
 喋りかける焔の上に向かって着地する夜十字。
 焔は潰れた蛙のように地面で潰れている。
 どうやら焔に対しては夜十字は厳しく当たっているようだ。
「あ。お嬢ちゃん。不幸を呼び寄せる天然召喚師が来ましたよ」
「それはお前の事だろう」
 語気を強める夜十字。
 現にラリーが同じ任務だと知った瞬間から、常に警戒を怠っていなかったようだ。
「あの‥‥敵、倒さないと‥‥」
 おどおどした様子で話しかける藍。
 既にUPC軍人はトラック防衛を開始、傭兵でも既に行動を起こしている者もいる。ここで油を売っている時間はないのだ。
「よし、黒髪のお嬢ちゃんが言うように頑張るとするか」
 ようやく重い腰を上げたラリー。
 ここから、傭兵としての本業が開始される――。

●庭の旗印
 ――ジャーン! ジャーン! ジャーン!
 バグアが登場した際にも鳴り響いた銅鑼が、再び戦場で木霊する。
 反射的に音の聞こえた方へ視線を送るバグア兵。
「遠からん者は音に聞け!」
「近くば寄って目にも見よ!」
 鴇神 純一(gb0849)と神撫(gb0167)はトラックの荷台で叫ぶ。
 どうやら、相手が三国志さながらの戦いを挑んできた事から対抗しようというのだろう。
「蒼天に翻るは桃色の【庭】旗、地上の護り手、ガーデンの旗なり!」
 純一はメトロニウム繊維で【庭】の一文字と各師団の花が刺繍された旗を掲げる。
 旗は風に流れて陽光の如く煌めきを放つ。
「おお、ガーデンの援軍か!」
 バグアの時同様、UPC軍人の中でガーデンの登場に頼もしさを感じる者もいるようだ。
「おい、旗はどうした?」
「‥‥うわ、旗を持ってきてねぇ!」
 本来であれば、純一と神撫が二人で旗を掲げて登場する予定だったようだ。
 だが、神撫が旗を忘れるという失態を犯したおかげで、旗は一つしか掲げる事ができない。
「‥‥もういい、さっさと潰して帰る。帰りたい‥‥」
 うつむきながら、地面へ降り立つ神撫。
 炎斧「インフェルノ」を片手に馬型キメラへ突撃を開始する。
「輸送隊に唾する魍魎たちよ! その目にしかと焼付け、冥府で恐れ慄くがいい!」
 神撫の後に続く形で純一もノコギリアックスを手に人馬型キメラへの攻撃を仕掛ける。 二人の突撃に気づいたのは、人馬型キメラ1体。
 槍を片手に純一の方へ駆け寄っていく。
「くっ!」
 人馬型キメラの突きをノコギリアックスを盾にして逃れる純一。
 相手は人と馬が合わさったキメラ。馬上でのバランスやコントロールなど不要な存在。機動力は馬となっているだけに油断ならない相手だ。
「正確な突きだ」
「やらせませんっ」
 人馬型キメラの機動力に対抗する形で、LL−011「アスタロト」を操る海。
 すれ違いざまに強烈な棍棒の一撃を人馬型キメラの後頭部へ直撃させる。
 視界が歪むキメラ。
「今だっ!」
 純一はノコギリアックスで、人馬型キメラの槍を叩き折った。
 三国時代に従って柄を木製にしていた事もあり、槍は軽い音を立てながら地面へ落ちる。
「神撫の武、ここに披露せんっ!」
 攻撃力を失った人馬型キメラにインフェルノを振り下ろす神撫。
 旗を忘れた失態を取り返すかのような一撃は、人馬型キメラの顔面を叩き割る。
 その体は地面へと倒れる他なかった。
「よし、まずは1体。残りも我らガーデンが倒す。【庭】の旗へ続け!」
 確実に仕留めた事を確認した純一は、他の敵に向かって更なる突撃を開始する。

●銃を撃つ事
「よっちー‥‥いや、夜十字。一角を倒したら他の仲間の支援だ」
  黒鎧「ベリアル」にガスマスク姿の焔は夜十字とラリーに向かって言い放った。
 顔は凛々しく、引き締まった表情だ。
「おい、まともな奴じゃないか。お前の知り合いにしては」
「‥‥‥‥」
 ラリーの言葉を無視しながら、夜十字は疑いの目を焔へ向ける。
「失礼な! 俺は酔ってない、酔ってないニョロボン!
 車なんかに酔ってねぇし、廻ってもいねぇし」
 疑惑の目を向けられた焔は、千鳥足のまま叫んだ。
 どうやら、酔っ払っていた事による一時的なシリアス化だったようだ。
「よっちー、人馬一体が彼奴らだけじゃない事を教えてやれ!」
 焔は突然四つん這いとなり、夜十字に背中へ乗るよう促した。
 馬として戦場を駆り、互角に渡り合うつもりのようだ。
「さぁ、どうした! 俺の背中に乗れ! 
 いつも乗っている三角の木馬でなければ駄目‥‥‥‥ぎにゃー!」
 危険な言葉を口にした途端、夜十字は焔の尻を蹴り上げた。
 それもつま先を尻にねじ込む形で放たれたトーキック。
 蹴りは尻の割れ目にジャストフィットする形で炸裂、焔を地面で悶絶している。
「あ、前言撤回だ。やはりこいつはお前の知り合いだ」
 ラリーに呆れられる焔と夜十字。
 戦場に居る事を忘れさせてくれる事を除けば、微笑ましい場面なのだが‥‥。
 緊張感を取り返すかのように、夜十字は大剣クルシフィクスを構える。
「毎度毎度芸がないが‥‥」
「おい、待て!」
 ラリーが止めるのを無視して夜十字は鋭い眼光をバグア達に向ける。
 それを受けて動き出すのは、人馬型キメラ2体。
 馬の機動力を活かして真っ直ぐ夜十字に向かって突撃を敢行する。
「お前、いつもそれで失敗してるだろう!
 この後、どうする‥‥ぶっ!」
 次の言葉を言い掛けたラリーに、突然後頭部に衝撃が走る。
 見れば、グラファイトソードを手にしていた焔の姿があった。
「あ、ラリーたん。ごめーーん」
「いきなり何するんだ。キメラがこっちに来ているんだぞ!」
「わざとじゃないヨ! ほら、鞘からまだ抜いてねぇっスよ!!」
 鞘に入ったグラファイトソードを見せる焔。
 この時点で明らかにわざとなのだが、キメラが迫る中で行って良い仕業ではない。
「二人とも、来るぞ!」
 構えを崩す事無くラリーと焔に叫ぶ夜十字。
 一人は死神の玩具、一人は足手まとい。
 人馬型キメラの攻撃をトラックから護るためには、夜十字がこの場で踏ん張らなければならない。
 クルシフィクスの柄を握る手に力が込められる。
(「二方向同時攻撃――受けきれるか‥‥」)
「アスタロト、私に応えてっ!」
 戦場をアスタロトで駆る海。
 夜十字の窮地を救うべく、騎龍突撃で人馬型キメラへ突撃。
 衝撃にキメラの体は吹き飛ばされ、地面に激しく打ち付けられる。
「チャンス!」
 海の攻撃で人馬型キメラが瀕死になったと分かった瞬間、迅速に動く焔。
 今度はちゃんと鞘から抜いてます。
「へへ、手柄を立てればこっちのものよ」
 グラファイトソードを突き立てる焔。
 瀕死だった人馬型キメラにしっかりと止めを刺す事に成功した。
「おい、夜十字。こっちもさっさと終わらせろ!」
 人馬型キメラの剣撃をガードで受けるラリー。
 メイスで応戦しているが守るだけでは決め手に欠けてしまう。
「頭が高い‥‥」
 馬の足にクルシフィクスの斬撃を加え、返す刀で人馬型キメラを転倒させる。
 ラリーへ集中していたため、人馬型キメラの体は簡単に横転した。
「控えおろぉ‥‥」
 夜十字は起き上がろうとする人馬型キメラにフォルトゥナ・マヨールーの銃口を押しつける。
 発射。
 刹那、キメラの体液が夜十字の頬に付着。雫となって頬を伝う頃には、人馬型キメラは絶命していた。
「やはり、腕は確かだな」
 近寄るラリーに対して、夜十字はスコーピオンを差し出した。
「これは?」
「ミスターハードラック。銃を持っていないのだろう。ほら、やるよ」
 グリップを向けてラリーに向けられるスコーピオン。
 スコーピンに向かってゆっくり手を伸ばすラリー。
 その手は僅かだが震えている事に気づいた。
「ミスターハードラック?」
「‥‥い、いや。俺にはこのメイスがあるからな。バグア兵の野郎、頭かち割ってやるぜ!」
 慌てるようにバグア兵に向かって走り出すラリー。
 その走っていく姿を見ながら、夜十字は呟いた。
「もしかして‥‥銃が撃てないのか?」

●討ち取ったりぃ〜
「てやっ!」
 藍は素早く馬型キメラの下へ潜り込み、回転しながら翠閃の一撃を加える。
 腹を切り裂かれた馬型キメラ。
 バランスを崩してバグア兵を背中から振り落とす。
「矢のお代わりはいかがです?」
 バグア兵が着地する瞬間を狙い、湧輝は和弓「月ノ宮」で矢を連続して発射する。
 槍を操り、飛んでくる矢をはたき落とすバグア兵。
 だが、数が多く裁ききる事ができなかったため、数本の矢が足へと突き刺さる。
「まだまだなのダー!」
 レベッカはエネルギーガンの引き金を引く。
 練成弱体によって防御力が低下されているだけあり、バグア兵の動きは鈍い。
 それでも飛び退く形でエネルギーガンの射線から逃れる。
 次の瞬間、腰に手を当ててエネルギーガンを取り出そうとするバグア兵。
「させません!」
 エネルギーガンが握られる前に、藍は翠閃で斬りつけた。
 バグア兵は慌てて槍で応戦する。
 藍、湧輝、レベッカの三人が連携。
 バグア兵を確実に追い詰めていく。だが、バグア兵もキメラと比べものにならない程の反応を見せ、辛うじて三人の攻撃を交わす。三国時代の鎧も既に傷だらけとなり、湧輝が何本も突き刺さっていた。
 緊迫する戦場。
 その緊迫を打ち破ったのは、まったく意外な人物であった。
「御首、もらい受ける!」
 【庭】の旗を掲げた純一がバグア兵に向かってノコギリアックスを振り下ろした。
 人馬型キメラを倒した純一と神撫は、武将格であるバグア兵を倒すべくやってきたという訳だ。
 突然の乱入者に気を取られたバグア兵。
 ノコギリアックスを槍で受け止める。
「ほら、隙だらけだぜ!」
 神撫はインフェルノを薙いだ。
 バグア兵の腹を鎧ごと引き裂き、腹部に大きな傷を負わせる。
 肩で息をしながらも、手にはしっかりと槍を握り続けている。
「手にされている槍、邪魔ですね」
 湧輝は再び矢を番う。
 飛ばされた矢は放物線を描きながら、バグアの手に当たる。
 突き刺さる弓はバグア兵の手から弓を落とさせる。
「今なのダー」
 レベッカは藍に練成強化を施す。
 バグアに向かって走り寄る藍。
 一瞬の交差。
 翠閃の刀身からこぼれ落ちるバグアの血。
 鎧の隙間から差し込まれた翠閃。
 心臓へと到達したであろう刃。引き抜かれる頃には、血の海へと倒れ込んだバグア兵であった。


「あっちー!」
 戦闘後、ラリーは叫び声を上げた。
 海のココアをゆっくりと楽しもうとしていたが、死神は再びココアの雨をラリーの頭上から浴びせかける。
 トレイをひっくり返した海が慌ててラリーへ駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「ふふ、お嬢ちゃん。余程俺にお詫びをしたいみたいだな。俺の予定はいつでも空けておく。二人で素敵なディナーを楽しもうじゃないか」
 海の手を握りながら囁くラリー。
「ふぅ。ココアを浴びながら口説くとは。お前についている死神が呆れているぞ」
 紫煙をくゆらせながら、夜十字はラリーを見つめる。
「ふん‥‥」
「あのー、よろしいでしょうか」
 ラリーとの会話に入ってきたのはUPC軍人。
 傍らには焔の姿があった。
「こちらの方が補給物資の甘味を食べてしまいまして。聞けばあなたの指示だったというのですが、本当ですか?」
「そうです。すべての黒幕は夜十字信人、キミだ!」
 口の周りにチョコを付けながら、びしっと指を差す焔。
「‥‥そして俺には疫病神が憑いているな」
 焔を見ながら夜十字はそう呟いた。