●オープニング本文
前回のリプレイを見る スペイン北部の都市、レオン。イベリア半島の全域から撤収してきた部隊でごった返すこの地で、ややイレギュラーな作戦が実行に移されようとしていた。
「よく来てくれた。早速だが、任務の説明に入らせてもらおうか」
会議室の前を占めていた中年の軍人が重々しくそう告げる。階級は大佐。撤退前まではマドリードに駐留していた部隊の指揮官だ。撤退戦で傷を受けたらしく、真新しい三角巾で片腕を吊っている。だが、彼を見知った傭兵がその姿に違和感を感じたとすれば、むしろ無精髭が綺麗さっぱりなくなっていた点だろう。
「空軍によるグラナダ強襲作戦の概略は、手元資料の通りだ。目を通して欲しい」
言われて目を通した資料はところどころに誤変換の混じるワープロ書類だった。ウエトール山地にて確認されたアリ型ワームの洗脳・催眠効果の大元に当たるであろう特殊音波発生源の破壊。それを目的としたKVによる強襲作戦の概要がそこに記されていた。目論見どおりの効果をあげたとすれば、おそらくは要塞で作業に従事している人々の間にも多大な影響が出るはずだ。
「お前達に依頼したいのは、他でもない。現地一般人の混乱を押し留めて欲しいという事だ。被害もな。現地にいるイレギュラー‥‥、いや、これも何か良い呼び名が欲しい所だが、彼らの協力も可能なら仰ぐといい」
混乱、と一括りにしているが、正直なところどのような影響が起きるかは予想できない。洗脳から解かれた一般人は、前回の報告によれば数時間の心神喪失状態に陥ると推定されるが、その時のアリ型ワームの取る行動も、それに混乱の収拾に乗り出すであろうバグアの反応も未知だった。
「奇襲作戦に合わせて、陸上部隊も反抗作戦を取る。正確には、その振りをする。お前達はその間にうまく現地まで移動して欲しい」
いくらなんでも、そんなに簡単に敵地を縦走できるものだろうか。その疑問を誰かが口にすると、大佐は口をへの字に曲げた。
「正直なところ、俺もそう思う。が、不可能を可能にするような偵察用機があるらしいんだ。エレ‥‥、シュミッツ少尉が現在貸し出しを交渉中だ」
光学迷彩による隠蔽が可能なKV、サンドリヨン。たまたまマドリードにあった当該機種を用いて敵地を抜けることを想定しているという。
「今回の任務の特殊性を考慮して、機体には可能な限りの静粛性を求めるつもりだ」
その代わり、武器装備は1つに制限される、と大佐は告げた。
「まぁ、元々交戦のための出撃ではないのだから、大した物は必要ないだろうがな」
そう言ってから、大佐はゆっくりと前面スクリーンの前に立つ。会議室の隅のほうに座っていたエレンが慣れた様子で操作すると、スクリーンはイベリア半島の戦域地図を映し出した。
「‥‥陸軍主体の反抗作戦は2日に渡って行なわれる。空軍の強襲作戦がちょうど2日目の中ごろになるはずだ。つまり、我々は1日半の間だけ華々しく進撃を続け、残る半日で戦線を収拾する」
サンドリヨンの隠密性も万能ではない。行程のほとんどでは常時移動するのではなく、機を伺っての移動になるはずだ。現地までは半日、退却にも半日かかると見るべきだと大佐は言う。
「現地でやらねばならんことも多いだろう。優先順位と段取り、それに分担をしっかりするようにな」
言わずもがなか、と大佐は苦笑する。だが、時間は無限ではない。
「丸一日あっちで作業に当たれるか、と言うとそう簡単でもない。偽装攻撃の序盤ではまだ敵にも余裕があるだろう。その時点で潜入を開始すれば、気付かれる可能性は増えるからな」
安全策をとるならば、偽装攻撃作戦の開始後半日以降に動き出すべきだ、と大佐は告げた。
「もっとも、お前達のことだ。何か工夫していいようにするのかもしれんが、な」
ちらりと向けた目線の先ではエレンが気まずそうに視線をそらす。鼻を一つ鳴らしてから、大佐は傭兵達に向き直った。
「作戦内容については以上。細かい質問はシュミッツ少尉に聞け。健闘を祈る。‥‥解散!」
●リプレイ本文
●静かなる敵中突破
「‥‥何だ、その鼻歌?」
ヘルメットのイヤホンから漏れ聞こえるUNKNOWN(
ga4276)の声に、リュウセイ(
ga8181)が問う。
「戦乙女の騎行、だよ。少し演出過剰かね?」
坂崎正悟(
ga4498)が用意していた、初回に取った行程と、その時の警戒地点などを記した地図を手に、男はハンドルを握る。苦笑を返したリュウセイの目がスッと細まった。察したUNKNOWNがサンドリヨンの速度を落とし、飛び降りたリュウセイが辺りを伺う。
「‥‥あったぜ」
前衛役のUNKNOWNは周到な準備と注意で、危うい所は迂回し、それでも存在する罠は可能な限り発見、排除する役を担っていた。やや後ろのリン=アスターナ(
ga4615)がフォロー役だ。
「夕方になる前に到着できるといいわね」
後列では、緋室 神音(
ga3576)が下がってきた気温を気にしている。後席のレールズ(
ga5293)は周囲の様子を確認していた。冷静沈着な2人の道中は、男女のタンデムの割りにやや寂しい。
「たっはー、今度は陸路でグラナダ〜ってな」
対照的に陽気な声をあげるのは吾妻 大和(
ga0175)。空からは2度のアプローチ経験がある彼だが、陸路を挑むのは初めてだ。
「うー、美海は早く着いて欲しいのですよ。意気軒昂準備万端、なのです」
ちょこんと後ろに乗る美海(
ga7630)は大和の背中で拳を握って自己主張している。
「約束は、無事に守れそうでありますな」
右翼側の稲葉 徹二(
ga0163)は、要塞に残された一般人の事を思っていた。
「‥‥行程は順調、ですね」
左翼を走るみづほ(
ga6115)が、確認するように言う。言葉になったそれは、一行の心へ実感と安堵を伴って染み入った。
●接触、再び
ほぼ一ヶ月ぶりに見る要塞地帯は、完成に近づいている様子だった。山肌を縫い、光学迷彩で身を隠したサンドリヨンは静かに進む。機体を隠せる場所を探しに出ていた神音が、程なく候補地を見つけて仲間に告げた。
「‥‥先客がいるとは思わなかったけれど」
そこに潜んでいたのは、前回も接触したイレギュラーの小集団らしい。その報を持ち帰られた一行はやや悩んだ。
「つまり、そこは安全、という訳ですね」
頷くレールズだが、内心では懸念を抱かないわけではない。彼ら一般人にとってサンドリヨンが外の世界へのパスポートに見えるとすれば、間違いが起きるやもしれないのだから。
「‥‥信じて欲しい、と言うならばこちらも信頼しないといけないわね」
彼の逡巡を見透かしたように、リンが微笑した。機体の見張りを分担していない以上、どこに置いたとしても危険はある。それに、物資を託すためにはサンドリヨンを彼らに見られるのは止むを得ないことだ。
「それじゃ、交渉は稲葉ちゃん、リンおねーさんにお任せっ」
そう言う大和に、薄く化粧を施したみづほが並ぶ。顔に現われる異様な覚醒痕が接触相手を恐れさせぬように、と言いながら馴れた様子で肌に色を乗せた彼女は、大人の女だった。
「途中までは同行しようか。行き先は同じだろう?」
正悟の言葉に頷きながらも、先を急ぎたい様子を隠そうとはしない美海に、正悟は青い作業衣を投げ渡した。
「例の服だ。着替えておくのも忘れないようにしないとな」
「サンキュ、俺も貰ってくぜ」
リュウセイも白の服装から青へと衣替えする。
「やはり、私もかね? まぁ、ポリシーも時と場合によりけり、か」
リュウセイと対照的な黒の装いだったUNKNOWNも、相棒に倣って袖を通していた。
「ありがとうございます」
「‥‥1人だけサイズが小さいのが複雑なのです」
そんな事を言う女性陣。幸か不幸か、かなり余裕のある作りの作業衣は上着を脱ぐだけで重ね着が出来る。残念ながら、読者サービスはなかった。
要塞へ向かう6名を見送り、残る4人はイレギュラー達へ向き直る。人数は、前よりもやや増えているが20名には届かない。
「‥‥本当に、戻ってきたんだな」
少年が、そう口を開く。その身長は以前より伸びているように思えた。
「ありがとう。大変だったでしょう」
ラウルと言う名のリーダーは柔和な笑みを向け、4人を手招きする。足を進めた先には、小さな横穴があった。そして、どこから引かれた細い水の流れ。
「何かが起きる時のために、少しづつ準備はしていたんじゃよ」
非常用の食料を集めているのだ、と弓を手にした老人が言った。
「‥‥俺達は、皆さんを助けに来たわけじゃないんです」
徹二の声に彼らはため息をつく。反応はただ、それだけだった。
「この前、私たちは必ずここに戻ってくると約束し‥‥今回、戻ってきた」
「そうですね。感謝、しています」
その言葉に、リンは一瞬唇を噛んでから、言葉を続ける。
「だから信じてくれ、というのは虫のいい話だと分かっているわ。今助けられない私たちを恨んでくれても構わない」
そう言う彼女に、ラウルは薄い笑みを返した。
「そんな言葉を聞いて騒いだりするような者はここにはいませんよ」
「生きていくだけならあそこに残る方が楽じゃしな」
老人も要塞を指差して笑う。周りの老若男女の表情に気負いは無い。
「では、聞かせて下さい。一体何の為に戻って来てくれたのか」
ラウルが先を促す。徹二が空軍の強襲計画、そしてその作戦による洗脳装置の破壊がこの要塞に起こすだろう混乱を告げる間、彼らは黙って耳を傾けていた。
「‥‥それで、私達はどうしたらいいと思いますか?」
どうしたらいいですか、ではなく。その違いを心に留めつつ、徹二は用意してきた提案を口にする。
「隠れ家としては良くできてると思いますが、今のココじゃあ、正直どうしようもありません。今の何十倍もの連中が一気に解放されるわけですから」
その後を引き取るように、レールズが軽く頭を下げて聴衆の注意を引いた。
「初めまして、能力者のレールズです。俺達は今から、皆さんが潜伏できるような場所を探すつもりです」
場当たり的ですが、と苦笑するレールズにイレギュラー達から強張ったような笑いが返る。笑えないよりはずっとましだ。
「周辺調査をするつもりなので‥‥、簡単に注意点等ありませんか?」
レールズの問いに、最初に声をあげた少年が勢いよく立つ。
「‥‥この周りだったら、俺が大体分かる」
胸を張った少年に、神音が普段よりも柔らかい笑みを向けた。
「一緒に探しましょう。今、出来る最善の事を」
狩りや採集の担当らしい幾人かの男達も、自分達の知る事を思い思いに語り出す。調査関連の聞き出しは2人に任せて、リンと徹二は年老いた者と女たちへ向き直った。
「まずは医薬品や物資と、それから介抱の手順でありますな」
作業の量は、要塞の調査に比べても決して少なくはない。
●地底の調査行
要塞への侵入は、拍子抜けするほど簡単だった。前回と違うのは地表で動く蟻や作業員の姿が減っていることか。
「前より出来上がりに近づいてるってか。そりゃそうだろうけど」
周囲を見回す大和の横で、リュウセイが携帯電話のカメラを起動させている。2人づつ3班の行動計画は異なっていたが、まずは内部の情報を知る者に接触したい、という部分で一致していた。6人の中で唯一潜入経験がある美海が、以前に男と接触した食堂まで先導する。
「情報を聞いておくのは必要だろうな」
「とはいえ、探している余裕はないのですよ?」
正悟の声に、美海が囁き返す。だが、彼女の心配は杞憂だった。
「また来たのか。今度は大勢だな」
男は、向こうから接触してきたのだ。
大勢で隠れられそうな安全な場所を探している、と告げたみづほと大和を、男は案内していた。
「そんなにビビるこたないぜ、坊主」
曲がり角に来るたびに先行し、左右を確認する大和に男は軽く言う。場所は、要塞の文字通りの裏。バグアが削岩して作る要塞は、自然の洞窟を幾つも掘り当てていたのだ。何割かは外へ続く開口部があり、窒息の怖れもないのだと言う。
「‥‥生きてりゃいい、ってもんでもないよなぁ」
歩く先々には、無気力に座る人々の姿があった。洗脳は解けたものの、何をしてよいか分からず、反抗して殺されるのは恐ろしい。そんな普通の人達の成れの果てだ。大和達の足音を聞いても、顔すら上げないものもいる。
「食うのもめんどくさくなってそのまま死んでる奴もたまにいる。気付いたら放り出してるがな」
「説明は本来の担当外ではありますが‥‥」
みづほは周囲の湿っぽい空気を裂く様に手を叩いた。
「静聴。皆さんのお時間を少し頂きます」
大雑把な状況説明をはじめるみづほ。息を吹き返した群集のあげる押し殺した罵声や失望の吐息は、死んだようなさっきの姿よりは随分『人間』らしい、と大和は思っていた。
リュウセイとUNKNOWNは、仮眠を取ってから更に探索を続けていた。地図を取り、時に現在位置を確認しつつの歩みは、早くはないが確実だ。いつしか作業員の姿が消え、稼動中の施設特有の空気が漂いはじめる。彼らの辿った通路の切れ目は、唐突だった。
「‥‥ワームの格納庫、か。完成してるようだな」
リュウセイが口笛を吹く。吹き抜けの上層から見下ろす空間には、ヘルメットワームが何機も並んでいた。それでもまだ、スペースには余裕がある。
「ココが埋まる時の事は、想像したくねぇな‥‥」
リュウセイが映像を記録していく。そんな中、音1つ無く、奥の壁面がスライドするのが見えた。ワームの群れが燐光を放ち、ふわりと浮き上がる。
「出撃‥‥? 空軍の事前作戦が始まったのか」
「あれを見たまえ」
鋭い目つきで男が指した先には、ワームよりも小さな赤い機体。
「‥‥ええい、馬鹿者め。それは間違いなく陽動だ。ワームを引き上げさせろ!」
いらただしげに声を上げる黒コートの老人が眼下をよぎる。UPCの手配にあった顔だ。ゾディアック、クリス=カッシング。
「レンズが届かぬ以上、音波塔を破壊されるわけにはいかんのだ。‥‥構わん。陽動は私が排除する」
老人の言葉と同時に、赤い機体に灯がともった。主を迎えるようにキャノピーが開く。
「‥‥レンズ?」
聞き覚えのない単語にリュウセイが首を傾げる。その肩をUNKNOWNが軽く叩いた。
「潮時、のようだな」
そろそろ戻らねば、帰還に間に合わない。そんなタイミングだった。
「‥‥ひ、酷い目にあったのですよ」
半ば涙目になった美海は、覚醒によって小さくなった身体を利して狭い隙間にもぐりこみ、その横で正悟は『隠密潜行』を使って気配を消す。それを追うガサガサという音は暫くして消えた。
「蟻の次はゴキブリか。悪趣味だが、効果的な外見だな」
美海の提案で、階層を降りた2人はキメラのような何かに手荒な歓迎を受けていた。狭い通路に適した外見、家庭内害虫の姿を模したそれは、サイズが通常の数十倍はある。あまつさえ、ところどころ機械化されているようだった。それまで見つからなかったのは幸運と工夫の賜物だったが、さすがに第三層ともなると警戒が厳重のようだ。
「‥‥だが、この映像は価値がある。おそらくはな」
坂崎のカメラには、地下深くにあったキメラの製作所が写されている。工場というよりも研究所といった雰囲気のそこにはKVよりも巨大なキメラや四肢の一部を兵器に変えたキメラなどが静かに眠っていた。特注か、あるいは失敗作か、それとも試作品か。
「警戒態勢もある程度わかったのです。これは次に繋がる成果なのですよ」
胸を張るちっこい美海。下層の警戒態勢の幾分かと、予想以上に上層の警戒がザルな事もわかった。一般人の安全確保の為に、上層の監視回路を破壊しようという美海の目論見は肩透かしを食らった形だ。徐々に太くなる動力パイプの太さなどからすると、最下層には全体の動力を賄う区画があるのだろう。
「だが、これ以上潜るのは厳しいな」
少なくとも、1人や2人では難しい。それだけの障害がある事がわかっただけでも、この偵察には価値があったといえるだろう。現地に残る事のできる時間はあとわずか。2人は来た道を引き返して行く。
●帰路に着く戦士達と、残された約束と
みづほと大和の調査で安全を確認された洞窟に、一般人達は集まっていた。秩序と、為すべき事と情報を与えられた人々は、危惧していたほどの混乱を見せてはいない。
「利用させてもらうようですみませんが、ね」
稲葉達の後押しでリーダー格におさまったラウルは、こっそりと笑いながら頭を下げた。自然の洞窟は数多く、イザと言うときの逃走や潜伏経路は、サンドリヨンも用いた神音とレールズの調査で充実している。万全とはいえないが、短期間の成果としては十分なものだ。
「本当に、あいつでいいのか?」
帰路にたった一人だけを連れ帰ることが出来る、と能力者達が告げたとき、ラウル達が選んだのはグラナダにいた冴えない男だった。人道的には女子供を優先するべきだろうが、1人であれば、役に立つ知識のある者を、と彼らは言う。その言葉に迷いはない。
「人と言うのは、強い物だな‥‥」
正悟は微笑する。希望と言う名のその強さを引き出したのが自分達であるならば、彼らの思いに相応しい努力を続けねばならない、とも。この戦場で、あるいは他の戦場で。
「各自、準備はいいですね?」
ラウルの声に、人々が頷く。洗脳から解けた人々への応急手当の手順や、医薬品、それに当座に摂らせる甘い物などは能力者達の運んできた荷物の過半を占めていた。それ以外も水のろ過機はありがたかったようだ。
「これは、私達から‥‥。少ないけれど」
一同を代表するように、神音が手持ちの装備をそっと置いて行く。
「もっとけ、役に立つときがあるはずだ。何かあった時、とにかく声だけでもつたえてくれ」
同様に無線機等を出しながら、リュウセイが頷きかけた。彼らの心尽くしを受け取った人達は、大きすぎる不安を何とか押し隠しつつ、帰路に着く能力者達を見送る。
そして、その瞬間。
洗脳下の人々が雷に打たれたように立ちすくみ、それから倒れた。蟻ワームが戸惑ったように首を回す。
「――――アイテール起動。‥‥目標を排除後撤退するわよ」
神音の鋭い声と共に、レーザーがワームを貫いた。一般人を後席に乗せたみづほが、僚機が敵を潰す間に先行離脱する。
「俺達はもう一度来ます。必ず。‥‥必ず、です」
力強く言葉を残す徹二と。
「お願い。もう一度だけ、私たちを信じて待っていてほしい‥‥!」
囁いたリンと。
「アンノーンさん! バイク、燃やさないでくださいね?」
そんな様子に気付いたレールズが冗談を飛ばす。
「‥‥遅れた者のバイクは燃やすぞ」
UNKNOWNも、微笑を浮かべながらそう言い返した。
「アイル・ビー・バック!」
思う存分に銃をぶっ放したリュウセイが、後席に乗り込みながらそう言い残す。
――また、戻る。その約束を置き土産に。傭兵達は戦地を後にした。