●リプレイ本文
●世紀末っぽい伝説の幕開け!
「ヒャッハー! こいつはスゲェ美人じゃねぇか!」
ギラギラした目の鋼 蒼志(
ga0165)が、フード姿の女っぽい何かを追い詰め、雄叫びを上げる。観念したのか、ハスキーな声で食べ物を持っているかと問う女に、下心丸出しで同意する蒼志。しかし、フードの下から現れたのは、負けず劣らず下心満載の煉条トヲイ(
ga0236)だった。
「お、男!?」
「女の格好をしていれば、貴様の様なウジ虫がすぐ飛びついてきやがる」
怒りに任せて振り回した棘ドリルが、トヲイのマントとその下の皮ジャンを裂いた。そこに現れた物を見て、いつの間にやら崖上にいた張央(
ga8054)が驚愕の声を上げる。
「胸に七つの傷‥‥! まさかあの男、拳皇佐渡様の弟の‥‥!」
やはりいつの間にか崖上にいた白虎(
ga9191)が、一瞬トヲイを値踏みするような鋭い視線を向けた。
「わかりました、このメイドがお助けに――!」
ずさーっと、崖を滑り降りる。だが、明らかに間に合わないタイミングだ。
「いかん、お前では勝てぬ!」
「こいつぁ俺が先に目をつけたんだ! 俺の獲物だー!」
張央の制止を聞かず、突っ込む蒼志。目にもとまらぬ速さで、トヲイの手が動いた。蒼志が声も無く倒れる。
「おお、流石ですな。私は張央という。その強さを見込んで、話があります」
崖から一瞬で飛び降り張央。しかしトヲイは彼に目もくれずに倒れた蒼志の懐を漁る。食べ物を持っていると自称した蒼志だが、出てきたのは種籾の小袋と大事に育てられた鶏だけだった。余人は知らず、この男の空腹を癒すには足りぬ。
「この先に、牙愛伝という豊かな村があるのはご存知ですか? この乱世に、水と食料を貪欲に集めているとか‥‥」
食糧という単語に、トヲイの腹が盛大に鳴った。
「聞こう」
「あのー、この人はどうするのかにゃー?」
蒼志をつんつん足で突っつきながら白虎が問う。
「砂漠にでも捨ててこい」
えー、と困った顔をする白虎の目の前で、蒼志の体がひょい、と持ち上げられた。
「白虎殿、後でメシ食わせてくれよ」
そう言って、少女はニッと笑う。
「た、助かったのにゃー、あんたは?」
「絶頂流正統継承者 佐賀 鋼鉄(
gb6897)とは、うちの事や」
剛鉄に言わせれば、困っている相手を助けると、ご飯が食べれるという巡り合わせなのだという。
――そして数刻後。
「フヒー、死ぬかと思ったぜェ! ヒャハハハッ‥‥」
砂漠の真ん中で、砂を吐き出しつつ蘇生する蒼志の姿があった。高笑いの中、不意に周囲に佇む無数の影に気づく蒼志。
「問おう、あなたが美空(
gb1906)の兄上でありますか?」
「‥‥ハ?」
月明かりに照らし出された少女達の顔は、判に押したように同じだった。
●鬼の哭く砦、牙愛伝!
貯め込まれているという噂の種籾目当てで、攻め込んだモヒカンやそれ以外が二度と出てくることが無い、恐怖の監獄と言われている牙愛伝。その伝説の主たるメアリー・エッセンバル(
ga0194)は、日の当たる東屋で暢気にお茶を飲んでいた。
「今日はいい天気ね! せっかくだし旗揚げしましょ!」
「え?」
紅茶を注いでいたリゼット・ランドルフ(
ga5171)が首を傾げるも、メアリーは「てっぺん」を取るのだと断固主張する。あまり深い考えはなさそうだが。
「Jud.メアリ殿の野望に突き進む姿を支えましょう」
鈴葉・シロウ(
ga4772)が大きく頷く。なぜかシロクマ仮面を手放さないこの男いわく、大きな夢がある事が漢闘女(ヲトメ)のポリシーなのだから仕方がないらしい。
「‥‥そんなもの、ですか」
まあ、てっぺんを取れば世界を花で満たせるし、と同意するリゼット。そうとあれば、食客たちにも働いてもらわなければ、と立ち上がる。残念ながら、牙愛伝の3人の中で、そう言った所に頭が回るのは彼女だけだった。
「荒事が起きるなら、治療担当も必要でしょう」
最初に声を掛けた依神 隼瀬(
gb2747)はそう言って頷く。薙刀を手にした巫女服の女傑だが、残念ながら拳法を収めてはいない彼女にこの先の戦いは厳しい。そんな彼女をクールに眺めるラナ・ヴェクサー(
gc1748)も、リゼットの請いに同意した。
「ずっと、待っている相手がいるんです。そろそろ会える気がします」
ラナは、バグア拳皇軍に身を寄せているというかつての戦友の顔を思い浮かべていた。おそらく牙愛伝が立てば、バグア拳皇軍とは争う事になる。その時こそが決着の時になるのかもしれない。――そして、最後にシロウが用心棒として連れてきた男は。
「水をくれ‥‥」
なんかよれよれになったトヲイだった。隼瀬が駆け寄って様子を見るが。
「だ‥‥だめです。この様子じゃ人を助ける目はない‥‥」
張央達と別れてから、何の備えも無く砂漠を横断した為、脱水症状を起こしていたらしい。ため息を吐きつつ、リゼットが日陰へ運んで行った。
そして、旗揚げの知らせは外部へも波及していた。ノビル・ラグ(
ga3704)が率いるエミタの軍は、牙愛伝がバグア拳皇軍へ対抗する為の同盟者として為るか否か、見極めに訪れる。
「ここが牙愛伝。ここにはバグア拳皇軍に対抗する戦士がいる筈だ‥‥」
ノビルは、門を見上げて唾を飲んだ。巨大な門は開かれたまま、門番の姿も無い。
「‥‥行くぞ」
誰にともなくそう告げ、駆け出したノビル。門を抜け、人の気配がない裏道へと踏み込む。と、その足元が二つに割れた。
「わ、罠か!」
驚きの声とともに、落ちていくノビルの頭上で、床が再び閉まる。受け身を取って立ち上がった彼の耳に、どこからともなく水の落ちる音と人の声が聞こえてきた。
「はあ‥‥これで、1865万と765回」
「違うようルーガ、767回だよぅ」
奥の暗がりから、そんな会話が聞こえてくる。暗がりに慣れ始めてきたノビルが視線を彷徨わせるも、声の主は見えない。
「ほう、そうか? ふふ、少し眠ってしまっていたらしい!」
地下牢と言う場所に似合わぬ活きの良い声は、彼の斜め下辺りから聞こえた。
「あーあ‥‥こんなことになるなら、すぐに死んぢゃうかよわい女の子に生まれたかったの」
返答も、少し横の同じ角度だ。目を凝らしてみると、
「な、生首!?」
首まで埋められている二人がいた。
●集う宿命達!
「我はしっと五車星が1人! 天を握るはバグア拳皇にあらず! 天を平定するはわれらがしっとの将!」
「そんなやわな拳では、拳皇様はおろかこの体に傷ひとつつけることはできません!」
張央が有象無象を瞬殺しつつ、拳皇軍は牙愛伝の砦へと向かっていた。
「‥‥しっと現れる所乱あり、ですか。しかし、奴らしっと団は何故我らの行く手を遮るのでしょうね」
(このボクの為に‥‥! お前たちのしっと心は忘れないのだ)
首を傾げる張央の背を見つつ、白虎は歯噛みしていた。真のしっと団総帥たる彼が、女装してバグア拳皇軍にいる理由は、決して趣味だけではない。信用され、中枢に上り、いつしか拳皇その人を倒すべく今は雌伏しているのだ。
旗揚げした牙愛伝の砦へは、バグア拳皇軍以外にも招かれざる客人たちが姿を現し始めていた。中には本当にお呼びでない奴もいる。さっと二つに割れた群衆の中、ディエア・ブライトンと共に佐渡川 歩(
gb4026)が進みでた。
「あ、あれは先代拳皇様‥‥! 京太郎に伝承者を譲って死んだのではなかったのか」
「バグア聖拳の創始者のみ使えると言われる、利印可亜寧死肆で蘇ってもらいました」
バグア聖拳の一派、頼伝はあらゆる知識を統べるといい、中にはそのような邪拳の類もある。得意げに眼鏡を輝かせる歩の横で、ブライトンがあたりを睥睨した。老いて衰えたとはいえ、その眼光にはいまだ最強の風格がある。周囲の拳法家たちがその威に身動きが取れなくなる中――。
「ちょっと、そこのあなた! こんなご老人を格闘技観戦に連れてくるなんて何を考えているの!」
「え。あ? あの?」
つかつかと歩み寄った隼瀬はブライトンの腕を取り、そのまま優しく連れ去ろうとする。
「ショックで心臓が止まったりしたらどうするんです。ああ、大丈夫です。こちらに医務室がありますから」
老人が有無を言わさず連れ去られてから、寸秒の間があり。歩はくいっと眼鏡を上げた。
「‥‥解説席はどこです?」
彼の真価が発揮されるステージは、そこしかない。
幸か不幸か、先代が姿を消した直後に、バグア拳皇軍侵攻隊はようやく登場した。翻る『拳』の旗の下には張央、白虎の他にも、拳皇軍に組み込まれたり事情で同行している拳法家の姿が幾人も見える。
「フフフ、来たわね無謀な挑戦者が! 恐怖を知らぬ者に恐怖を教えてあげるのも私の楽しみ‥‥! とか、かっこよくない?」
メアリーはご満悦に微笑み、左右に控えるリゼットとシロウは油断なく敵を睨んだ。
「‥‥潜入させた筈の、あの男はどこです?」
張央はきょろきょろと周囲を見回すが、潜入させたはずのトヲイの姿はない。脱水症状で寝込んだままらしく、同様に医務室送りになったブライトンと茶でも飲んでいるのかもしれない。
――一方。
「あの女性は。フフフ、運命とは面白い物です」
バグア拳皇軍本隊の中に佐賀 剛鉄(
gb6897)の姿を見つけたシロウは軽い高揚を覚えた。かつて張央と共に彼を倒し、その奥義をもって尻に七つの傷を刻んでシロウを罪人とした女。脇にいたラナの表情は、宿命の相手と出会ったシロウとは対照的に静かだ。
「やはり、いましたね」
噂通りにラナが追う相手も、バグア拳皇軍にいた。かつて共に戦った加賀・忍(
gb7519)は、獲物を見るような冷たい目をラナへ返す。いや、獲物ではない。対等の敵を見る、情けも侮りもない虚心の目。
「‥‥そうですか」
彼女の覚悟を知り、ラナもまたこの戦いが避けえぬ事を知った。闘気立ち込める集団の中から、張央が一歩前へ踏み出る。
「クックック、お久し振りです我愛伝の皆さん」
ばさあ、とマントを翻しつつ、イイ声で言い放った張央だったが、帰ってきたのは静けさだった。3秒、過ぎてからおずおずと口を開く。
「‥‥覚えてない? あ、お呼びでない、お呼びでない‥‥」
何やら無責任なフレーズが出そうになる所で、壇上のメアリーが耳に手を当て言い放った。
「ん? 聞こえないわねぇ」
どうやら聞こえていたらしい。多分、ちょっと苛めたかったのだろう。気を取り直した張央が咳払いを一つ。
「‥‥我が名はバグア拳皇軍侵攻隊の張央。皆さんもバグア拳皇様に会えば世界が変わって見えますよ」
ニヤッと笑って手招きするのは、自分に降伏しろと言う意味だろうか。メアリーもあくまで上から目線を崩しはしない。
「ふぅん、牙愛伝を捨てて得たのがどんなものか、暇潰しに見てあげようじゃない」
メアリーが動きかけた所へ、横合いから声が飛んだ。
「牙愛伝が馬脚を表したのならば、我等『妄葬機関』が相対するのが筋と言う物! 男性は下がっていて貰いましょうか」
ざざ、と歩み出たのは尼僧服の集団だった。ハンナ・ルーベンス(
ga5138)が一歩前に出る。
「私はあらゆる百合の手段を研究し尽くし、身に着けています。あなたも知っているでしょう。世界最強のバグア南聖夢御拳を」
それにまっさきに反応したのは、観客席の歩だった。
「バグア108派の1つ、南聖夢御拳。極めた妄想により相手の動きを見切るという‥‥。あの」
知っているのか、などという相槌が周囲から上がったり上がらなかったり。
「妄想ではありません。超能力です」
大事な事なのでそう言い切るハンナ。
●愛ゆえに!
一触即発の空気を、今度は柔らかい声が遮った。
「さあ、皆で気持ち良くなって戦いなんてやめちゃいましょう♪」
薄物一枚だけを纏った雁久良 霧依(
gc7839)の登場に、歩が目を丸くする。
「あれはエミタ裸神拳の伝承者‥‥! 体内で練り上げた気を光と無し、相手に無常の快楽を与えるという有情拳。そこだけ聞くと是非お手合わせ願いたいが、その後の事を考えると悩まざるを得ない‥‥!」
霧衣の背後に控える集団が、歩の言う「その後」の姿だ。骨抜きになり虚ろな目で歩く生きた死人達。
「エミタ裸神拳は快楽のみで相手を無力化できるのよ♪ まさに最強。私に従うコは既に沢山いるもの」
それを聞いた剛鉄が、ニィ‥‥、と笑った。最強と言う単語に闘志を刺激されたのか、あるいはその拳法を知っていたのか。
「悪ィね、白熊のおっちゃん」
「いえいえ、三つ巴というのも悪くはありません」
あくまでジェントルに頭を下げ、一歩を引くシロウ。
「妙なのが色々出てきたにゃー?」
「フフフ、問題はありません。この張央が出れば片が付きます」
余裕の表情を崩さぬ張央に、白虎はそれ以上は言わず引き下がった。今後を考えれば、No2の張央が自ら戦いに出て傷の一つでも負ってくれるなら悪くない。
「あの佐賀 剛鉄は絶頂流の正統継承者とのことだが、この佐渡川をもってしてもその全貌を知り得ぬ‥‥」
「珍しいね。知らない事があるって言うの」
ブライトンを搬送した後、解説席に戻ってきた隼瀬が首を傾げると、歩は血の涙を流した。
「なぜならこの佐渡川、生来女子と付き合ったことなどあらぬ! 絶頂とか未知の事過ぎて‥‥」
「‥‥あ、そう」
気まずい空気が解説席に流れる中、戦いの幕が上がった。
●激闘、天を穿つ!
「絶頂流の奥義を、其の身に刻んでやるでぇ」
「できるかしら、お嬢ちゃん? 気持ち良くなって戦いなんてやめちゃいましょう♪」
ゆるゆると放たれた蹴りを、紙一重で回避した剛鉄の頬から、すっと血が流れた。
「成程‥‥ね」
不敵に笑う剛鉄を前に、霧依は纏っていた薄布を放り投げる。
「うほぉ!」
解説席では歩が鼻血を吹いた。エミタ裸神拳は素肌より放たれる光が理、故に脱げば脱ぐほど強くなる。だが、最後の薄布に手が回ったところで、シロウの叫びが割り込んだ。
「いかぬ、いかぬのだ! ポロリやハラリをしてはならない!」
それは、まさに魂の叫びだった。声と同時にシロウはシャツを投げかけ、きわどい部分の露出をギリギリで防ぐ。
「邪魔をしないで。一緒に楽しくなれるんだから♪」
ふわり、と身をひるがえしてシャツを脱ぎ捨てた霧依の表情が、初めて強張った。
「あ、あれは。牙愛伝流、愛・風畏倶阿拳。奥義が一つ、絶対領域‥‥!」
歩がうめき声をあげる。見えそうで見えないを相手に強要するその技は、一部のマニアの敵だった。布切れで見せられない場所を的確に隠す精密な動きは、廃墟から希に出土する、前時代のロストテクノロジーの研究成果らしい。
「どないした? 気が乱れとるで」
見に回る事にした剛鉄が声を掛ける。
「‥‥くっ」
言葉に気を取られた一瞬、破り捨てた布に足を取られた。その隙に、シロウは一歩踏み込む。
「しまっ‥‥!」
「フフフ、素晴らしい。髪の流れがダイナミックに広がり、しかし毛先に至るまでのこの繊細さよ」
攻撃を加えるでもなく、霧依の黒髪をじっくりと観察するシロウ。霧依にとって、触れずのシロウは分の悪い相手のようだ。
「参ります」
と、声を後におくような速度でラナは一気に間合いを詰めた。イオフィエルの4本の爪先が輝く筋を刻むが、忍はそれに合わせるように刃を突き出していた。切っ先が浅く入ったラナの手と、爪に薄く裂かれた忍の上腕から赤い血が滴る。
「強いわね」
一言発した忍の目元が、冷たい笑みを浮かべていた。ラナの挫折も迷いも、忍は知っている。強さを得るために全てを捨てた【加賀抜刀流剣術】の自分と似た匂い、違う気配。そしてこの強さは、自分が今、刈り取るにふさわしい。
「なぜ、とは問いません。まさか貴女と戦うことに‥‥なりますとは、ね」
かつての戦友との命を懸けた仕合に、戸惑いは無い。忍の目に浮かぶ狂気に、彼女を止める事が友たる自分の役目だと見極めたのだろう。弧を描くような足運びで左へ、左へと自分の死角に回り込む忍。
「くっ」
突きをかわしざま、右に抜けたラナ。だが、俊足で忍はぴたりと追い、距離を離さない。
「ハッ」
ラナの足払いを飛び退って回避し、呼気と共に忍はすらりと伸びた脚めがけて刃を振るう。しかし、足払いは本命ではなかった。
「迅雷弾!」
回避先を見越していたタイミングで気の籠った雷撃が放たれる。受けに回った忍へ、ラナが飛び込んだ。
「む、あの構えは。エミタ千烈拳!」
主に鼻からの出血多量で瀕死になり、霧依とシロウの戦いから視線を外していた歩が叫ぶ。
「‥‥貴女はここで、死んでいく‥‥」
空を裂く勢いで無数の拳、蹴りが繰り出された。それを目にしつつも、忍は一歩前へ。刀にて初撃を切り返し、怪鳥のように曲げた爪をラナの顔へ伸ばした。しかし、届かない。撃ち込まれる拳、蹴りが彼女の前進を阻んでいた。連撃の速度が更に上がる。打ち返した剣が受けに回り、盾の如く縦に、遂には守りをこじ開けられる。
「‥‥か、はっ」
胸元に叩き込まれる衝撃は体中を巡り、口からこぼれた。よろめいた所へ、手を伸ばし抱きとめる。見返した忍の目に、既に殺気は無く、死の影が濃い色を落とし始めていた。
「言い残す事はありますか」
「その‥‥生き生きさが、羨ましかったわ‥‥」
ぼそ、と囁いた忍の身体から力が抜ける。ラナは友であり強敵であった女性の目をそっと閉じた。
●欲深きゆえに墜つ!
「馬鹿な、私の力が通じない。こんな屈辱‥‥」
悲痛な声と共に、膝をつく霧依。気を消耗しつくした彼女には、もはや体を覆う異物を弾き飛ばす事もできない。
「フフフ、ビュリフォー。それは廃墟の遺物を元に再現した『けーぶいしょうじょ』という服装でしてね」
一方、勝者のシロウはつやつやとした表情でご満悦だった。白熊のお面で良く見えないが、たぶんつやつやしている。披露した霧依が膝を折り、崩れた。
「けーぶいしょうじょ、か。けったいな甲冑やな」
「フフフ、自分はそういう強くて美しいものが好きなんですよ」
剛鉄の声に、シロウは笑みを浮かべて続ける。
「いい時代になったものです。強者は心置きなく好きな物を自分の物に出来ますから」
「‥‥ほな、やろか」
しゅた、と立つ剛鉄に対し、シロウはゆるりと構えを取った。だらりと垂らしていた腕をゆっくりと上げ、気合の声を上げる。
「ナイフ! ヘラ!」
シロウの腕先が視界から消え、剛鉄は咄嗟に下がった。目にもとまらぬ速度で切られた前髪がハラリと落ち、あまつさえ大リボン付のカチューシャで留められているのに気づいた剛鉄が、目を細めてニィ、と笑う。
「随分腕を上げたやないか。怖いなぁ‥‥、でも、まだ絶頂流は見せちゃいない、で?」
気合と共にその体が黄金の輝きに包まれ、髪の毛がふわりと逆立った。
「おお、あれは絶頂流継承者が本気になった時だけ現れるという背の入れ墨‥‥!」
歩が眼鏡をかけなおしつつ、その姿に見入る。現われたのは昇竜ではなく、絶頂の二字。
「何をしても無駄です。あなたには一生、自分の技を見切ることは出来ません。次は眼鏡をつけて差し上げ‥‥ぬ!?」
シロウの白熊の面に、ヒビが入る。乾いた音を立てて仮面が割れ、地に落ちた。驚愕に目を開いたシロウの人間体、もとい素顔が晒される。
「そんな面、付けてたら見落とすで? これが奥義、悶絶昇天百烈脚や」
金の輝きの中、そんな声が聞こえた。衝撃が砦をズシンと揺らし、張央がほう、と笑みを浮かべる。周囲の有象無象が巻き込まれて吹き飛ぶ中、拳士達は戦いの手を止めて一つの決着を見守った。力の抜けたシロウの身体が前のめりに倒れる。
「いやあ、いい汗かいたわ。張央はん、メシ」
満面の笑顔で振り返った剛鉄の脚どりが、僅かに乱れた。彼女にとっても全霊を尽くした奥義だったのだろう。
衝撃に巻き込まれ、飛ばされた霧依の身体を受け止めたのは、リヴァル・クロウ(
gb2337)だった。ただ受け止めるのではない。その右手は豊満な胸に、左手はふくよかな臀部へと添えられ、燐光を失った彼女のいろいろな場所をガードしている。
「リヴァル・クロウの羅氣甦卦(らきすけ)拳、またの名を 裸喜素卦(らき☆すけ)!! なんと恐ろし‥‥いや、羨ましい拳よ」
解説の歩が息を荒げつつ唾を飲み込んだ。
「あなたが‥‥! 聖乳母リリア様を倒した男」
その名を聞いたハンナの目が憎しみに染まる。
「‥‥そうだ。あれは悲しい戦いだった」
自分の両手に目を落とし、囁くように言うリヴァル。バグアの聖女王として、その魅力的な肢体による惹いて媚びて蔵倫を省みない戦いを旨としたリリアを、彼は倒した。目を閉じれば、あの激しい戦いが脳裏によぎる。
●愛ゆえに!
『あなたの羅氣甦卦(らきすけ)拳は私の体には効きません。私の体は生まれついての女王の体。誰も私を押し倒す事は叶わないのです』
ゆらり、ゆらりと羽の如く舞うリリアに、相手の気に沿うのが極意のリヴァルの拳は触れそうで触れない。
「ぬう、あれはバグア踊子拳。追加料金を払わぬ限り、手を触れる事一切叶わぬ秘拳よ‥‥!」
回想の中にまで解説を入れる歩。しかし、両者の戦いは熾烈を極めた。物陰で見ていたハンナが、嫉妬に歯噛みする程に。
『私はいまだ愛というものを知りません。貴方という好敵手を失って初めて知ることができるかもしれませんね』
そのリリアの言葉を聞いたリヴァルは、ゆっくりと拳を下げた。カサカサと足を進めるその動きを見て、リリアが目を見開く。
『こ‥‥この動きは! メタ!』
かつて倒した強敵の記憶をリヴァルは背負っていた。そして、その激闘の後に周囲から言われの無い誹謗を受けた事も。だが、それが羅氣甦卦拳の宿命。
「おお‥‥あれこそは悲壮転生。背後の陰謀により貶められた悲しき境遇の中に生きるキャラクターのみが放てる奥義!」
リヴァルの拳は徐々にリリアの動きを捉え始めていた。かすりさえしなかった攻撃が服を裂き‥‥。
「‥‥はっ! いけません。これ以上回想しては危ない所でした」
鼻を押さえながら、ハンナが荒い息を吐く。
「メアリー姉様、今は決着をお預けします」
「あ、うん。行ってらっしゃい?」
よく判らない風情で手を振るメアリーに背を向け、ハンナはリヴァルの前へと一歩踏み出した。
「私は貴方がどう動くのか、それすら前もって判ります。‥‥断っておきますが、妄想ではありません。これは超能力です」
手にした巨大十字架を突き付け、引き金を引くと杭が打ち出された。
「不敗の奥義、悲壮転生を開眼したリヴァルに、そのような攻撃が届く筈が――」
歩が驚きのあまり言葉を途切れさせる。ハンナの一撃はリヴァルの左肩を抉っていた。。
「あの女も悲壮転生を。――その瞳にどれだけの悲しみを見た」
トヲイの声にこたえるかのように、ハンナは口元を歪める。愛するリリア他、小野塚、メタ以下多数の姉妹を毒牙に掛けられた(と思っている)彼女の悲哀は深い。深すぎて覗きこんだら帰って来れない程に。
「この拳は最後の戦い、貴方との戦いまでは使わぬと誓っていたのです! 天を御覧なさい! 見える筈です、あの死兆‥‥隙あり!」
思わず上を見上げたリヴァルの胸に、二連目のパイルバンカーが炸裂した。
「き、汚ぇ‥‥」
牙を持たぬ者は生きてゆかれぬ暴力の街を苦いコーヒーをすすりながら生き抜いてきたハンナにとって、このような悪辣は児戯に等しい。
「神は私達を選んだのです!」
悪びれずに勝ち名乗りを上げるハンナの前で、音も無く崩れたリヴァルを隼瀬が回収していく。
●漢闘女達の戦い!
「そろそろ私の出番かな? 創始者の戦いをその目に焼き付けるがいい! とか言ってみたい」
わくわくしながらそう言ったメアリーに、リゼットがにっこり笑顔を向けた。いつの間にか、天井から下がった紐のような物を掴んでいる。
「え、何それ? ねぇ、何それ!?」」
「総長は危険なので、奥に引っ込んでいてくださいね。ここで戦われると、居城がなくなりますので」
にこやかに笑ったまま、紐を引くリゼット。メアリーの玉座の下が2つに割れる。
「ちょっとぉー!?」
どぼーん、という水音が聞こえた所を見ると地下牢とは別の所に落ちたらしい。牙愛伝砦の地下には、諸般の事情で地下洞窟が多数あるのだ。間違えたかな? という顔を一瞬するリゼットだったが、まあその程度でどうこうなるような総長ではない。たぶん。
「お待たせしました。牙愛伝第二の漢闘女、リゼット・ランドルフがお相手します」
「‥‥可憐な。メアリーはこのような姉妹を得て、この砦で何を‥‥?」
構えを取ったまま、ハンナの視線が遠くなる。
「つまり牙愛伝とは私達『妄葬機関』と同じ愛の園‥‥。いずれ我々と同じ正しい教えに辿り着く‥‥。そう、その時こそ二つの組織は姉妹となり、愛を育むのです」
「あの‥‥?」
遠くを見たまま、北斗七星の脇に輝く蒼い星を見た事があるかと問うハンナ。よく判らない表情で首を振るリゼットに頷き。
「やはり、まだ私たちは戦う時ではないという事ですね」
何やら自分で納得し、ハンナは十字架を引いた。
「‥‥まあ、いいです。次は誰ですか!」
侵攻隊へと啖呵を切るリゼットだが、すぐに応じる物はいない。ならば、と立ち上がりかけた白虎を大きな手が制した。
「‥‥やれやれ、たったひとりの女にビクビクしおって、情けないやつらですね」
「おお、張央様!」
ざわ、と侵攻隊の面々が揺れる。異様なオーラを発する張央に、リゼットがわずかに下がった。
「たぁー!」
「ぬぅん!」
気合と共に蹴りかかった彼女を、張央は片腕で打ち返す。地に叩きつけられたリゼットは、そのまま跳ねるように起き上がった。
「ならばこれで! こぉぉぉぉ‥‥」
気を練るリゼットを、張央は薄笑いを浮かべつつ眺める。
「あれは噂の奥義『百花』! 生命の流れを制し、大地へと流すというエコロジーな拳‥‥! しかし、張央の不可侵著砂苦拳が相手では‥‥」
歩の解説が終わりきらぬうちに、リゼットは打って出た。だが、張央は奥義の前にあえてその身をさらす。
「か、完璧に捉えた筈なのに‥‥!」
リゼットの驚愕を嘲笑いながら、張央が拳を振るう。奥義を破られた直後、隙だらけのリゼットの身体が大きく宙に舞った。
「効きませんねぇ。わたしは今まであらゆる拳法をこの体で殺してきたんですよ〜!」
地に落ちたリゼットがよろよろと立ち上がる。構えを取るのを腕組みしながら待つ、張央。
「もう、勝負はついているのにゃー‥‥」
白虎が言うも、牙愛伝の旗を背負った漢闘女には、倒れる時は前のめりしかありえないようだった。
「張央様が出るまでもない!」
勝てると見たのか、ずずい、と前に出る筋肉質の巨漢。新たな敵に、ふらつきながらも向かったリゼットだったが。
「ぬぐぉぁ!?」
打撃音と共に突然、巨漢が倒れた。
「フッ‥‥たいした女だ」
すた、と立ったのは医務室から帰ってきたトヲイ。水分補給の結果、見違えるような闘気を纏っている。
「おまえらはいいリーダーをもったようだな‥‥」
「ちょっと待ったぁ! 牙愛伝のリーダーはぁ」
トヲイの声に、横合いから異議が入った。どうやら、メアリーが地の底から這いあがっていたようだ。しかし、上る途中で大声を出しては。
「わた‥‥しぃぃぃ‥‥!?」
ほら、落ちた。どぼーん、という音を背景に、何事も無かったかのように張央に向けてファイティングポーズをとるクールなトヲイ。
「裏切った、という事ですか?」
「その女は飢えて乾いた狼のような俺の喉に安らぎを与えてくれた。おれは人間に戻ることができたんだ」
砂漠で死にかけていて水を貰った事を彼的に語るとこうなるらしい。
「なぁるほど。久しぶりにイキのいい獲物ですね。殺りがいがある!!」
ばばっ、と構えを取る張央とトヲイ。二人の戦いに怯えたように、天地が鳴動する。
「‥‥天が哭いている!」
●世紀末暴走集団、動く!
――いや、そうではなかった。
「西、バイクの集団です! あれは、シスターズ!」
見張り塔の上から声が掛かり、リゼットが慌てて外を見た。地を埋め尽くすバイク集団の中、ところどころに「兄」の旗が立ち並ぶ。拳皇侵攻隊の数倍の規模を誇る大集団の先頭には、一人の男がいた。
「いいか! 兄より優れた妹はいねェー!」
「兄上、この先に行けば兄上が無数にいる兄上の国があるのだな」
すっかり騙されたらしい美空に、重々しく頷く蒼志。昔オレにみせたあの無邪気な笑顔をもう一度見せてくれ、などと言葉巧みに自分を兄だと誤解させたらしい。
天災に近い状況で、張央とトヲイは顔を見合わせた。
「これは休戦、ですかな?」
「いいだろう」
臨戦態勢を解く。
「うぬぬう、シスターズの進路にあたったとは運が悪い砦よ‥‥」
歩が呻くように言う。総勢20000とも号するバイク集団は、この世紀末において一大戦力。それが一気に押し寄せれば、大概の村やら砦やらは跡形も残らない。イナゴの群れとも、火星ゴキブリとも例えられる災害、それがシスターズ。共通の猛威を前に、対峙していた拳士たちが肩を並べる。
「ヒャハハハ! ヤンデレ妹でさえも俺は手なづけたぞ!」
意気高い蒼志と共に、バイク集団は牙愛伝砦に突入した。
「この人に触れるな!」
忍の遺体を庇ったラナが蒼志を爪先一つでダウンさせるも、すぐに蒼志は薄笑いを浮かべて立ち上がる。
「わ、あれは、ええとバグア百破阿拳‥‥! 己にギアスを貸す代償として不死の身体を手に入れる魔拳!」
「いいから早く逃げる!」
隼瀬に急かされつつ、解説席を畳む歩。無数の美空達から兄上指定を受けるのは当然ながら男性のみ、身の危険も男性が大きいのだ。
「兄上! 大丈夫でありますか!」
倒れていたリヴァルをずるずると引きずっていく美空A。一方、向こうではトヲイが蒼志を一方的に打ち倒していた。不死身とはいえ、強くなるわけではないのだから仕方がない。
「ヒャッハーの兄上!」
ボウガンを片手に駆け寄ってくる美空をちらりと見たトヲイが、蒼志をまじまじと見る。
「‥‥今のはおまえの妹か?」
ごくり、と唾を呑む蒼志。自分の保身第一のヒャッハーな彼だが、ここまでの道中で妹萌えに目覚め始めていたらしい。
「じ‥‥冗談じゃねえっ! こんなバケモノ!」
巻き添えにせぬために、ツンっと横を向いてみたが、傍から見るとバレバレだった。
「‥‥しあわせにな!」
言葉とは裏腹に、なんだか疲れたような顔でトヲイが立ち去っていく。
●伝説の終焉!
しかし、まだ兄上を見つけていない美空達は、圧倒的な多数だった。
「兄上!」
「ち、ちが! ボクはメイドさんで‥‥! くっ、僕が男の子であること‥‥ましてや真のしっと団総帥だとは気づかれてはならないのだ!」
自分によってきた美空を撃退する白虎だったが、その大きすぎる独り言はしっかり周囲に聞かれている訳で。
「フヒヒ‥‥君がしっと団総帥かね!?」
「く! かくなる上は、お前もリア充として抹殺するのにゃ、張央!」
「事実確認もせずに人をリア充扱いするとはいい度胸じゃないか!」
張央の叫びが少しばかり、悲しい。
「バグアしっと拳を見せてやる!」
「バカめ!! 私の技が拳法殺しといわれているのを忘れましたか!!
余裕の気配で迎え撃つ張央へ、白虎が正面からとびかかった。対リア充に特化したバグアしっと拳の効果は、残念ながら張央には無意味。つまりそれはただの何の芸もない正拳だ。
「無敵に見える張央の不可侵著砂苦拳にも弱点は存在する! それは‥‥」
背中を押されて歩きながら、ぶつぶつと呟く歩。それに合わせるように、白虎が吠える。
「無意味に拳皇軍の中をうろうろしていたのではない! お前の弱点はこれにゃー!」
そのまま拳を、張央の顔面に、叩きつけて殴りぬけるッ! これまで多数の拳士を相手に揺らぎもしなかった張央の上体が、大きく崩れる。
「ぬ‥‥」
張央は、砦のあちこちに開いている穴の1つに向かってよろめいていた。脚が笑ってしまって止まらないらしい。
「あぐあ! 足が勝手に! この先はたしか!」
「ようやく、戻ってこれ‥‥わぁ!?」
三度、響く水音。ちょうど上ってきたメアリーを巻き込んで、張央は落ちた。
「‥‥い、いい加減にしなさーい!」
メアリーの咆哮と共に、どごぉん、と地下から響く音。フラフラのリゼットと倒れたまま美空に突かれていたシロウが、ハッと目を開く。
「不落の牙愛伝伝説はこの私の伝説なのよ!」
再度もう一発。みしみしと壁面に亀裂が入り、止まっていた噴水の水が勢いよく流れはじめた。
「あ、総長が暴れだしたってことは‥‥」
「この砦も、おしまいですかねぇ」
乾いた笑みを浮かべる二人、伝説などと言うだけあり、どうやら初めての事でもないらしい。
一方。ようやく地上に出てきたノビル達も、その地鳴りを聞いていた。
「おお、見えてきた」
「ふぁ〜すごい大軍だねぇ」
内外を駆け回る美空達を見て、ルーガとエルレーンが呑気にそう言う。
「なんてこった。シスターズか。この砦も終わりだな‥‥」
ノビルがそう嘆いたが、ルーガが巨大かつ危険そうな何かを持ち出し、胸を張る。
「ふふっ‥‥これを見て驚け! G5弾頭の不発弾よ!」
「ど、どこに隠してたんだそんなもん」
冷や汗を流すノビルと対照的に、わーい、ルーガかっこいいー、などと手を叩くエルレーン。
「これでシンカンを叩いたら、あいつら全滅だねっ☆」
あいつらどころか、確実に自分達もまきこみそうだった。じゃんけんで叩く役を決めよう、と嬉しそうに言うエルレーンに、反射的に手を出すノビルだったが。
「ふっ‥‥この役には帰り道なんかないのさッ!」
どか、と鳩尾に一撃入れるルーガ。一般人のノビルは為すすべもなく崩れ落ちた。
「でも、ここに置いてったら、兄上認定されて持ってかれちゃいそうだよぅ」
「む、しかし爆発はせねばならないぞ‥‥。よし、こうしよう」
どーん、と愛弟子をノビルごと突き飛ばすルーガ。二人は今這い上がってきたばかりの奈落へと落ちていく。
「い‥‥嫌なのッ、いつだって一緒だったじゃない、ルーガーッ!」
エルレーンの絶叫が地下に響いた直後、視界を閃光が埋め尽くした。
●そして日常へ!
ここは、早朝のラストホープ。鳥の鳴き声が聞こえる中、ラナはどこか疲れた表情で身を起こした。
「‥‥なんでこんな夢、見たんでしょ‥‥」
枕の下に妙な物を入れていたとか、そんな記憶は無いのだが。夢の中で友人にしてしまった仕打ちを思いだし、はぁ、とため息をつく。
「今度ケーキでも持って会いに行こうかしら‥‥」
とりあえず、今日の所は寝なおそう、と布団に戻るラナ。ラストホープは今日も平和だった。
1万文字以上のご愛読ありがとうございました。紀藤先生(?)の次回作に御期‥‥もう出ません!