タイトル:【JTFM】GarnetElegy3マスター:錦西

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/03 21:40

●オープニング本文


 高円寺の素性は良く分かっていない。
 刀剣の扱いに異常に詳しく、まともに人間関係を築けない割りに礼儀作法は完璧。
 趣味らしい趣味はないと言い張っているのに、やたらと日本の古典に詳しい。
 ただの家出少女と済ませてしまうには異様な能力ばかり持っている。
 一之瀬が行き場を無くした彼女を拾ったのは、鉄木とセットなら使えると判断したからだ。
 その高円寺は、今は書類を片付ける一之瀬の横で暇を持て余している。
 近くの椅子に腰掛け、ぼんやりと外を眺めていた。
 生まれから有能な戦士には違いないが、今回の調査では留守番だった。
 精神不安定な人間を密偵にするほど一之瀬もバカじゃない。
 そのため、鉄木を密偵に送る間、彼女は一之瀬の護衛を任されていた。
 調査には危険が付きまとうから妥当な配置でもあり、
 且つ必ず一之瀬の眼が届く位置に居てもらえるメリットもある。
「‥子供、欲しいなぁ」
 暇そうにしていた高円寺がぼそっと呟く。
 視線の先にはKVを物珍しそうに見つめる子供達。
 何時の時代も、武器は男の子を魅了するらしい。
 子供達が大きく手を振り、S−01がその稼動範囲の許す範囲で小さく手を振る様を、
 高円寺は優しい目で見ていた。
「鉄木に頼めば良い」
 一之瀬は小さく微笑む。
 多忙な中でも暇を見て二人で居なくなっているのは知っていた。
 だがそれを知るのはいつも終わった後で、
 同伴出勤してきているという状況証拠から類推しているに過ぎない。
 二人は決して、それ以上の情報を表に出すことはなかった。
 流石だと思う。
 それだけ自制している証拠でもあるし、
 それだけ互いの時間取れないという証拠でもある。
「‥無理なんだ、私」
 高円寺はぼそりと呟く。
 一之瀬には意味がすぐわかった。
 霞み掛かった彼女の来歴を、ほんの少しだけ見た気がする。
「‥そうか。すまないな」
「‥良いの、そういうことで言ったんじゃないから」
「?」
「他人に同情して欲しいわけじゃない。私は今、幸せだから」
 幸せは主観に過ぎない。
 好きな人に側に入れたらどんな境遇でも幸せなのか?
 どんなに虐げられていても、それは本当に幸せなのだろうか?
 子供達を見つめる目は何を見ているのだろう。
 もしかしたら、もう届かない自分の子を重ねているのかもしれない。
「大尉はどうなんですか? 子供欲しいとか‥」
「子供か? ‥‥最近は、ほとんど会えないな」
「そう‥」
 高円寺の視線が外に向けられる。
 小さな嘘には、気付かれなかったようだ。
 他人に同情して欲しいわけじゃない。
 それは一之瀬にしても同じ事だった。
 物思いに沈んで居ると、壁に設置された内線に呼び出しが掛かる。
 一之瀬はすぐさま受話器を取った。
「‥高円寺、ソフィア准尉からだ」
「ソフィアから? わかったっ」
 素早く駆け寄ると受話器をさっと受け取る高円寺。
 仕事の話とは思えないような、楽しそうな雰囲気で会話が進む。
 そういえば、高円寺がソフィアにここまで優しい理由もわからない。
 心を許している、というのもまた違う。
 心が通じ合っているかのような気安さがある。
 これに関してはソフィアに聞いても首を横に振るばかりだ。
 何故彼女がソフィアを好むのか。結局、高円寺以外に理由を知らない。
 人とはわからないな、と一之瀬は苦笑した。




 本城恭香逃亡の知らせは、内偵に参加していた傭兵達にもすぐに届けられた。
 彼女が裏切った理由は不明だったが、
 彼女を追撃する部隊から良からぬ情報が届いていた。
「君達の任務もその関連の調査ということになる。
 調査してもらいたい相手はこれだ」
 諜報を担当する佐官が何枚もの写真を取り出す。
 何名かが思わず声を上げ、何名かは「やはり」という顔をする。
 その写真は今回の内偵に関わっていた軍人達、
 ソフィア、フェリックス、一之瀬、そしてそれに連なる者達を写していた。
「全員を再調査するのが君達に与える任務だが‥、
 正直な話、ソフィアとフェリックスに関しては良い。
 この二人は我々だけでも調査可能だ。問題は彼女だ」
 そう言って佐官は一枚の写真を中央に差し出す。
「一之瀬遥。階級は大尉。KV部隊の小隊長。
 彼女は南中央軍においてコルテス大佐、ソフィア准尉など意思決定者に近く、
 子飼いの部下を2名も従えている。その気になれば情報を得ることは非常に容易いだろう」
 傭兵達の戸惑いにも知らぬ顔で佐官は続ける。
「情報漏洩は既に起きている。それも上層部に連なる場所からだ。
 ソフィア准尉は立場以上の情報を閲覧できるが、情報を受け渡しする人物が居ない。
 フェリックス大尉も情報の閲覧では同等程度だが、彼も諜報に通じた人材に通じてはいない。
 その点、一之瀬大尉は軍属の能力者を中心に交友が広く、
 子飼いともいえる身元の怪しい強力な能力者を二人も抱えている。
 諜報を行う能力は十分だ。我々は、彼女を疑っている。
 特に高円寺に関しては、人格破綻の兆候が見られる。
 これまでは奇行に走ってもその傾向の一部と捉えていたが、隠れ蓑には丁度いいな。
 誰にも告げず姿を隠すことも何度となくある」
 屈指のエースさえも疑わなければならない状況。
 佐官が乱心したとは誰もいえなかった。
 それほどまでに、南中央軍の中枢は動揺している。
「動機に関しては不明だが、動機足りえる情報はある。
 診察記録を確認したが、一之瀬、高円寺両名は二人とも子供を産めない体だ。
 それに強いコンプレックスを抱いている。特に高円寺は出産の記録が無い。
 バグアの科学で治療できる可能性があれば、寝返ると思えないかな?」
 勝手な物言いだが一理はあった。
 一理しかないとも言えるが、その理屈にすら今は縋りたいのだろう。
「‥‥この仕事を君達に振る理由は一つだけだ。
 我々では本気になった能力者を追跡できない。
 ‥‥全幅の信頼でもって依頼しているのではないことは、肝に銘じておけ」
 苦々しい口調で締めくくると傭兵を見回した。

●参加者一覧

シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA
八葉 白珠(gc0899
10歳・♀・ST
シィル=リンク(gc0972
19歳・♀・EL
南 十星(gc1722
15歳・♂・JG

●リプレイ本文

 疑いとは際限が無い。
 子供のような年齢の傭兵達に怯え縋りながら、
 アリもしない威厳を保とうとする彼らに、
 何人かの傭兵達を同情の目で見ていたかもしれない。
「全幅の信頼を頂いている訳ではない事、承知しています。
 身内を疑わねばならない状況ですから‥おっしゃる事は当然です」
 黒瀬 レオ(gb9668)、同情か素直な優しさか。
 あくまで温和に協力要請。
「僕はあんた達への信頼でなく、商売のためにここに居る。安心してもらおう」
 ウラキ(gb4922)は突き放すように。
 金のためという印象付けで信頼を引き出すための演技だ。
「準備が必要ですね。施設をお借りして良いですか」
 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)は淡々と作業を進める。
 それを合図に8人中7人が立ち上がり、仕事を開始した。
 仕事とそれを受け入れる下地はそれぞれ別個に違う。
 白か黒か、疑いや信念、願いを秘めて彼らは席を立つ。
 ただ1人、橘川 海(gb4179)だけは‥。
「‥‥‥‥」
 仕事と割り切ることが出来ずに居た。
 以前に見た笑顔を信じたい。
 それが何故、自分はこんなところに居るのか。
 どうすれば良いのかわからず、すぐには前に進めなかった。



 傭兵達はシンとシィル=リンク(gc0972)をバックアップに、
 それぞれが疑いのある各人物に張り付く形で調査にはいった。
 八葉  白雪(gb2228)と八葉 白珠(gc0899)の姉妹は
 ソフィア准尉とコルテス大佐を疑い、白珠は直接コルテス大佐の側についた。
 ウラキは内偵に際しての情報源を得るため、
 無実の人可能性が高いと判断するトニ・バルベラ(gz0283) 曹長と面会した。
 疑いのある高円寺少尉には橘川、鉄木中尉には南十星(gc1722)が同行。
 他、黒瀬は各種資料の検索を開始。

 誰もが嫌な顔ひとつせずに部外者の参画を拒まなかった。
 橘川がわかりやすかったこともあって気付いたものも居るが、
 気付いたところで無下にすれば疑惑を固めることになる。
 ‥とはいえ、そんなことに無頓着というか顔に出てしまう人間は居た。
 高円寺は想像のとおりであり、またトニも隠すほどの余裕はなかった。
「不服かい?」
「‥気分が良いわけないじゃないですか」
 あまりにも子供らしい反応にウラキはくすりと笑った。
 大人顔負けの戦果をあげながらも、まだまだ子供だった。
「‥なんですか?」
「別に。‥僕は君を疑っちゃいない。君を信頼して、聞きたいことがある」
 ウラキはそういって、自分の考えを切り出した。
「他言無用で頼む。僕に君の知る真実を全て教えてくれ」
 それを聞いてトニはようやく軍人の顔に戻った。



 ソフィアが出払って他の副官も不在気味、
 ということでネコの手も借りたい忙しさになった大佐の秘書達には
 白珠は快く受け入れられた。
「ここの資料、背中に番号が書いてあるからあの棚に順番揃えて片付けてくれる?」
「はいっ」
「この紙の山は全部シュレッダーに」
「はいっ」
 白珠は言われたとおりに部屋を走り回る。
 秘書達の雑用はコロンビアの戦後処理も重なって多忙を極めており、
 慮った大佐が自分で珈琲を入れているような状態だった。
 本来なら機密書類もあるのだが、そこは秘書達が間違って触らないように配慮してくれた。
 白珠もこのタイミングで覗き見するような気は更々無かったが、
「しかし、悪いね。こんなことまで手伝わせてしまって」
 申し訳無さそうにコルテス大佐が言う。
 未だ衰えを見せない戦士と言った見かけの人物だが、彼も少しやつれている。
 本来なら前線で戦いたいという気迫もあるのだが、
 この基地には彼にしか決済できない書類が多い。
 仕方なく判子を押す作業に戻っているが、
 判子を押すのに自慢の筋肉は役に立たないのだった。
「いえ、こちらで迷惑を掛けるわけにはいきませんから。これぐらいはしないと」
 白珠は可愛く微笑んで答える。
 そして心の中で小さく謝った。
 彼女はここに避難しているわけではない。
 大佐本人を調査するために送り込まれたのだ。
 警戒していない秘書達の笑顔に、ちくりと罪悪感が刺激される。
「必要なこと」と言った姉の顔を思い出す。
 白珠は夜を待って行動を開始した。




 シンと白雪は分かれてアルバールの調査に関する不審な点を洗いながら、
 シンを囮として捜査を実行していた。
 白雪が「シンさんがあと一歩で全てがわかると言ってしました」と、
 犯人が聞けば焦りを抱くような嘘を小さく小さく流し、
 シンへの襲撃を促すという作戦だった。
 だが目論みはそう上手くはいかなかった。
「‥何も動きはありませんね」
 ちょっと眠そうにシィルが言う。
 彼女は今、白雪のバックアップとして彼女の死角を監視カメラからチェックしているが、
 異変らしい異変は調査開始から一切起こっていない。
「見当をつけた中に犯人が居なかったのか‥、ばれてない自信があるのか」
 おそらく後者だろうと見当はつけた。
 シンが囮となりながらも、見当をつけた人間の動向は全てチェックしていたが、
 傭兵達が調査に入って行動半径が狭まった人間は二人だけ。
 だがその二人も理由は既に割れている。
「ますますわからなくなりましたね。
 白珠さんも特に目ぼしいものは見つけられなかったようですし‥」
「‥本城からの事情聴取も失敗したらしいしね‥」
 手詰まりだった。
 解決する手段もこれからまた見つけなければならない
「皆の情報を、もう一度見直してからだな」
 シンはそういうとディスプレイの電源をオフにした。



 橘川が嘘がつけないことが幸いして一之瀬・遥(gz0338)からはお目こぼしがあった。
「ああ、好きにしろ。お前も大変だな」
 そんな風に言って以降、周りをうろうろしても黙って見逃してくれる。
 南も簡単に鉄木への同行を認められた。
 だが高円寺はそうは行かなかった。
「護衛? 要らない。1人で十分」
 突っぱねて話を聞こうともしない。
「そういうな。彼女も仕事なんだ」と一之瀬の取り成しも合って、
 ようやくスタートできたようなものだ。
 最初期こそ邪険に扱われるばかりの橘川だったが、
 それでも時間をかけるうちにようやく打ち解けて話す機会も増えるようになってきた。
 橘川が調査とは関係なく、1人の人間として接したからだ。
 話をしている中で橘川は少しずつ高円寺の性質を掴んでいった。
 人間不信だが、中身は真面目で気遣いも出来る全うな人格者だった。
 そうして彼女を理解しながらも、理解できないことは残る。
 ソフィアの処遇の寛容さだ。 
「ソフィアさんには、優しいんですね?」
「‥そうね。悪い?」
 この件に関しては、高円寺は一切何も喋らなかった。
 不機嫌な声で今日も返事を拒む
「そうじゃないですけど、‥私とソフィアさん、どこが違うんですか‥?」
「‥私は誰も同じには扱わない。それだけよ」
 何もわからない。
 輪の中に入れない疎外感だけが残っている。
 一番大事な人になりたいとか、そんな意味では無いけど、
 友人になるのに何が足りないというのだろう
「‥‥故郷に帰れない彼女に‥同情、ですか?」
「違う! そうじゃない!」
 高円寺は更に声を荒げた。
 声にはほんの僅かに焦燥のようなものが混じっていた。
「‥そうじゃない。そうじゃないの。わかってよ!」
 理解して欲しい。
 理解してもらえると、高円寺に思ってもらえている。
 橘川はその意味を噛み締めた。
「今はいえない。けど、今は聞かないで。この事は、私は兼定さんにだって話せないの。
 だから、あと2ヶ月‥ううん、1ヶ月かもだけど‥‥‥‥‥‥」
「‥どうかしました?」
「‥‥‥‥あれ‥?」
 勢い良く喋っていた高円寺が、唐突に言葉を区切っていた。
 視線は橘川から逸れ、思考の海を泳いでいる
「おかしい」
「何がですか?」
「ごめん。また今度、ちゃんと話す」
 橘川には呼び止める間も無かった。
 高円寺は早足で歩き出したと思うとその場で覚醒、
 窓から外に飛び出ると、瞬天速を使って誰かを探すかのように走り去ってしまった。
 それ以後、高円寺は完全に連絡を絶った。
 一之瀬大尉にも居場所はわからず、知っていそうな鉄木中尉も姿を消した。
 橘川は高円寺と二度と会うことはなかった。



「それで鉄木中尉も居なくなったのか」
 何をどうやっているのか、彼ら二人を見つけることはできなかった。
「でも、一応は問題は無いだろう」
 ウラキは答える。
 トニの証言から一之瀬の潔白は確定しており、
 また子飼いである二人のこれまでの不審な行動についても、
 居なくなるまえの鉄木から潔白が証明された。
「危うく切られるところでしたけどね」
 南が若干青くなりながら零していた。
 知らなかったこととは言え、ぷっつんな少尉に閨の話を聞くところだった。
 これに関しては察してくれていた鉄木は詳細をややぼかしながらだから、
 南に必要な情報は全て開示してくれた。
「君の技量で尾行は危険だ。死にたくなければ止めておけ」
 とも冗談めかして言う。
 細心の注意を払っているのはお互い様。
 南では平時から修練を積んでる高円寺の眼を掻い潜れない。
「結局、高円寺さんの話って何だったんだのかしらね?」
 白雪が疲れを溜息で吐き出しながら言う。
 大よその人物の潔白されながらも、それだけが疑問だった。
「それだったら多分、ソフィアさんの妊娠のことじゃないかな」
「え? ソフィアさん、妊娠してたの?」
「うん。彼女、2月の頃に妊娠してたんだ。‥‥この前のことで流れちゃったみたいだけどね」
 黒瀬が調査した資料を全員の前に提示する。
「主治医のサビーノ先生にしか言ってなかったみたいだけど、
 高円寺さん、自分で気付いたんじゃないかな」
 そう考えれば納得行くところも多い。
 これならヤキモチ焼きの少尉でも、浮気がどうのと疑う前に彼女の身を案じるだろう。
「‥ねえ、それっておかしくない?」
「何が?」
 白雪が資料を凝視している。
「高円寺さんの言っているのは、ソフィアの妊娠のことよね?」
「多分。一ヶ月とか二ヶ月ってのはお腹が大きくなっちゃって、
 隠せなくなるって意味だと思う」
「そうよね? だとしたら、高円寺少尉の反応って、何かおかしくない?」
「そうか‥! そうだよね‥」
 黒瀬が橘川のレポートと見比べる。 
「でも、彼女が知らないままそういう風に思ってるだけかも?」
「彼女が自力で気付いたことを考えると、それは幾らなんでも鈍すぎるわ」
「あ‥!」
「橘川さん、どうしたの?」
「高円寺さんが、その話をした時、確かめに行くって‥。
 でも、そんな雰囲気じゃなかった」
 あの時の高円寺の言葉に親愛の情は無かった。
 苛烈な何かが渦巻いていた。
 橘川の心に「また今度」という言葉だけが反響していた。
「‥ソフィアさんを拘束しましょう。彼女は何かおかしいわ。
 母親になった女の人が、そんなに簡単に子供を諦めて、
 あんな風に振舞えるとは思えない」
 白雪が女性の1人として違和感に説明をつけた。
 その見解に黒瀬も頷く。
「強化人間や洗脳スパイなら検査で見抜けるってお医者さんは言ってたけど、
 ‥ヨリシロを見抜けるとは誰も言ってないんだ。
 やっぱり行方不明の何日かの間に、ソフィアさんに何かあったんだ。
 彼女がもしヨリシロだったら、皆の疑いやここまでの辻褄が合う!」
 ソフィアは戦闘能力は低いが、その地位や知識はヨリシロにする価値が十分にある。
 疑いを喚起していたの誰だったか。
 ソフィアが首謀者なら他者に疑いがかかるのは望ましいことだ。
 探偵でも何でもないソフィアが何故素早く内通者を見つけていたか。
 彼女が首謀者なら可能だ。
 彼女が調査の訓練を受けていなくても容易な話だ。
 黒瀬は自身の推論に肉付けがなされていく過程に、言いようの無い怖気を感じた。
「一之瀬さんかコルテス大佐に連絡しましょう。
 軍医の人達にも更に詳しく聞き込みをしないと‥」
 犯人発覚の際して、可能な限りの能力者を準備して包囲するように
 既にシィルがコルテス大佐に取り付けていた。
 何があったとしても、動く理由さえ明確になれば方はつく。
 間に合えば良い。
 焦燥を胸に、傭兵達は動き出した。



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