タイトル:月を目指してマスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/05/10 23:17

●オープニング本文


場所は、ミーチャの診療所。

パパはもともとうっかりだが、今回ばかりはひどすぎるのではないかと息子レオンは思った。ミーチャと父の会話を聞きながら。

「なあもう一度言ってみろレオポール。貯めた百万そっくりそのままどうしたって?」

「百万そっくりそのままじゃないよ。ちゃんと十万も残してるんだぜ。だから九十万」

「‥‥その九十万はたいてどうしたって?」

「だからこれに投資したって言ってるじゃん。見ろ、なんかすげえんだぜ。だけどレオンの奴全然信じないんだ。だから困っちまってさあ」

 はこはこ舌を出す犬男がミーチャに見せてきたのは、そりゃもう胡散臭いパンフレットだった。

『月面商業開発に投資しませんか! 投資者の皆様には、商業施設が完成した暁に、永年特待パスポートを贈呈しますことをお約束いたします G・Mグループ』

 内容をぱらぱら捲ってからミーチャは、何食わぬ顔で同席し茶を飲んでいる兄弟に問う。

「おい、ペーチャ‥‥この団体名聞いたことあるか」

 兄弟は似てない顔でにっこりした。

「あるならぼくの反応が違うと思わない?」

 ミーチャはうめく。

「だよな。賛同名簿が聞いたこともねえ企業名ばっかだぜ」

「大方ダミー企業なんだろうねえ。よくある話だよ。投資詐欺。人間よく分からないものに手を出すべきじゃないよね。まあ、彼は犬だけど」

 それを聞いてレオポールは、憤慨したように言った。

「違うって。マジな話なんだって」

 そこまで黙って耐えていたレオンが、初めて口を開く。

「なにを根拠にそう思うのさ‥‥」

「だってお前、これはオレの同級生が持ってきた話なんだぜ。高校卒業以来音信不通だったんだけど十年ぶりにいきなり急に電話がかかって来てさ、説明会に来ないかって誘われてさ」

 部屋中がしいんとなる。
 次の瞬間レオンは父の尻尾あたりに飛び蹴りを入れた。

「パパの馬鹿ー! 本気で馬鹿だー!」

 そして走り出す。

「おいこらレオン、どこ行くんだ、おーい! ウオーン!」

 父の遠吠えも無視して。



 もうパパなんかあてにならない。
 決め込んだレオンはパンフレットに書いてある住所へ一人で乗り込むとした。
 G・M・Pグループとの看板がかかっているのは、雑居ビルの一室。
 見るからにみすぼらしく詐欺だ。という匂いがぷんぷんする。
 ノックしてみると、男が出てきた。こ汚い白衣を着た男だ。多分2日は余裕で風呂に入ってない。

「なんだお前は」

「ボクんちのお金返せ」

 レオンがそう言い募ると、男は彼の襟首を掴み、ぽいと外に放り投げた。

「今忙しいんだ」

 とだけ言い残し、扉に鍵をかけてしまう。
 こんなことで負けてなるものかと、レオンは激しく言い募る。戸を乱打して。

「お金返せ、返せ、返せええ!」

 あんまりそれが続くので業を煮やしたか、また扉が開いた。蝿叩きがレオンの頭を直撃する。
 別に痛くもなかったけど、この際レオンは大騒ぎするとした。

「うわあああああ。変なおじさんが殴ったああ!」

 その過剰な演技に、匂いをつけてきたレオポールが、騒がしく乱入してくる。

「オレの子供を叩くなああ」


●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ジョー・マロウ(ga8570
30歳・♂・EP
最上 空(gb3976
10歳・♀・EP
イヴァン=カシアノフ(gc3197
37歳・♂・GP
フェンダー(gc6778
10歳・♀・ER
楊 雪花(gc7252
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

 フェンダー(gc6778)はレオポール家へ、お宅訪問にやってきた。理由は手にした大量のパンフに記されている。

「レオポール殿、大規模のお知らせじゃ」

 それはUPC内に出回っている大規模作戦の案内状。月の地平の向こうに青々輝く地球の写真が、扉に掲載されている。中をめくれば多種多様な月面生息キメラやゴーレムや、バグアの基地の様子など、憶測も交えた新情報がてんこもり。
 一瞥しただけでレオポールは確実に尻尾を巻いてパスしてくるだろうから、任務受けが確定するまで中は見せないことにしよう。思って彼女は扉を開ける。

「月旅行しながらキメラを倒す簡単なお仕事じゃ。お金にもなるし箔もつくからパンダ殿にも一目置かれること間違い無しなのじゃ」

 すると、早速お出迎えがあった。レオポールではない。奥さんのメリーと、

「あらまあ、いらっしゃいフェンダーさん」

 あまり見かけぬ顔である男、ジョー・マロウ(ga8570)。

「よ、俺はジョー・マロウだ よろしくな」

 フェンダーはしたり顔をする。

「むむ。さては夫のいぬ間に人妻を誘惑なのじゃな。かようなことは主様の教えに背くのじゃぞ」

「違うって! 俺は探偵、こちらの奥さんに頼まれて来てるだけだよ。レオポール氏のことでな」

 それを聞きフェンダーは、俄然興味がわいてきた。

「レオポールがどうかしたのかのう、奥さん」

「ええ‥‥実はねえ、あの人こういうものを買ったって言ってて。私はどうも、本当かなという気がして。本人はすっかり信じてしまっているようなのだけれど」

 メリーから出されたパンフを、フェンダーがまず手にしてみる。
 ジョーはそれを上から覗き込み、すぐさま疑いの顔になった。

「月に商業施設?」

 うわ。うさん臭え。
 そんなジョーの思いを、フェンダーがさっさと言葉にする。

「むむ‥‥このパンフ、コピー本並のチープさじゃ。詐欺っぽいのじゃ。我輩の灰色のブレインがそう囁くのじゃ。奥さん、レオポールは一体どこでこれを入手してきたのじゃ?」

「ええ、実は‥‥」

「ち、ちょっと待った。調査依頼されてるのは俺だからなお嬢ちゃん――奥さん、ひとまず先に言っておきますが、調査料は10万からになりますんで。もちろん多少能力者仲間として、割り引きも致しますが」

「なら5割引じゃな。5万で手を打つとしようぞ。よろしいかの奥さん」

「まあ、お安いんですね。助かりますわ」

 勝手に決められ瞬く間の大幅プライスダウン。ジョーもがっくりする。久々の探偵仕事の幸先は、どうも悪そうだ。
 しかし不服ばかりも言っていられない。気を取り直して質問に戻る。の前に、根本的な疑問をぶつける。

「えーと、あなたの旦那さん、能力者として最低限の訓練はしてますよね?」



「‥‥というわけでな、レオンが飛び出していってレオポールが後を追ってというところだ」

 終夜・無月(ga3084)はミーチャからいきさつを聞いている。早歩きをしながら。
 内々にレオンからレオポールについて相談を受けていた彼だが、いざ待ち合わせの診療所に来てみると肝心要である2名の姿がなく、ミーチャが急いだ様子で出掛けるところだったという塩梅。
 ただ今パンフに載っている会社の住所に向かうところだ。

「お前を待ってりゃいいのにな、全く。まあレオポールもあれで能力者だから、レオンがそうそう危険になるとは思わないが」

 特に用もなさそうなのだが、ペーチャもやじ馬としてついてきている。

「でもあの人頭がサッパリだからね。逆ネジくわされて迷惑料とられてたりして。まー、ひとまずぼくなら金は入る端から、架空名義の銀行口座へ預金か、株券や債券を購入するか、正常な商取引の売上げに混入させるかするね。正体ばれる前に謝罪会見して計画倒産して、それから免税特区の――」

 その彼が急に押し黙った。一瞬のうちに汗びっしょりになって。
 前を歩いている無月から発散される圧力がそうさせたのだ。足が震えて動かない。首もとに刃物でも突き付けられた感じだ。
 無月は振り向き、穏やかに笑んだ。

「ありがとう‥‥では‥‥」

 ビルはすぐ目の前。
 一人そちらに向かい歩きだす無月の後ろ姿を見送り、ミーチャがぷーと息をはいた。彼もまたペーチャが感じたようなプレッシャーで、息を詰まらせていたのだ。

「すげえな。レオポールがあれと同じ種類の人間だっていうのが、どうも信じられねえよ。おいペーチャ、大丈夫か」

「いや‥‥真実殺されるかと思ったね‥‥危険だよ、あの人」



「ちょっと空さん、仕事中ですよ! どこに行くんです!」

「すいません、緊急事態が発生しまして! すぐ帰ってきまあす!」

 メイドカフェ『みゃんこはうす』から、バイトメイドの最上 空(gb3976)が駆け出してきた。近くにある雑居ビルからの、子供の悲鳴とけたたましい犬の鳴き声に導かれて。
 これぞサボる絶好のチャンスと踏み‥‥もとい正義の心に揺り動かされた彼女は、階段を使うなんてまどろっこしいことはしない。近くにある電信柱や屋根、ビル壁を足掛かりにし、瞬く間に現場まで駆け上がってしまう。

「穢れを知らない、清純派ネコ耳美幼女メイドの空が参上ですよ!」

 ポーズを決め、ざっとそこにいる人間を見回す。
 男の子が一人。男が数人。

「このクソ犬、噛みやがって!」

「犬じゃねえよ、オレ犬じゃねえったら!」

 男の子を庇いつつ叩かれているコリー男が一匹。
 彼女は鋭く本質を見抜き、男たちにこう言い放った。

「なるほど、悪者はあなたがたですね!」

 いきなりの決めつけが面白くなかったらしい。猫なで声の威嚇が返ってきた。

「なあお嬢ちゃん、大人のすることに口を出すもんじゃないぜ。おじさんたちは怒ったら怖いんだぞ」

 能力者にきくわけない脅しだが、相手が子供の姿なので、向こうも対応を見誤ってしまっているらしい。
 空はそんな愚か者の膝を巨大ピコピコハンマーで叩いた。
 叩かれた対象は倒れる。思い切り竹刀で殴られた程度の威力が有ったのだから、無理もない。



 道々歩きながら小型LH端末を使用するジョーに、フェンダーが張り付いている。手元の検索画面を詳しく見ようと。

「同級生とやらは、どうかの」

「待て待て。よし出た――えーと、現在エジプト在住だそうだな。ここ5年全く日本に帰ってきてないぞ」

「「G・M・Pグループ」はどうじゃな」

「実体がない。どの方面の情報を漁ってみても。ていうかそんな計画がもしあるとしたら、絶対UPC方面にも何らかの話が来てるはずだよな。月面は現在事実上UPCの管理下にあるようなもんだから。こんなの、爺さん婆さん相手の売り込みでもなけりゃ引っかからないぞ」

 エミタ施術後能力者は、身体運用訓練やKV講習、能力者としての教養育成等の講義を最低限受けてるはずなのだが‥‥こうまでころりと騙されてしまうのはどういうことなのだろう。

「レオポール氏はその、純粋なんだな〜」

 遠い目をするジョーの横で、フェンダーは大きくかぶりを振る。

「レオポール‥‥お人よし過ぎるのじゃ‥‥ここは我らが一肌脱ぐしかないようじゃな」

「まあな。これも人助けだ。とにかくここがそのグループの所在地らしいんだが」

「むー、しょぼいビルじゃのう。さすが詐欺団じゃ」

 ぼやきながら階段を行くと、なにやら騒ぎが聞こえてきた。
 急いで現場に向かうとそこには、床に転がってうんうん言っている男と、ピコピコハンマーを手にした空、レオン、レオポール。彼らを取り囲む男ども。

「このガキャア、ただですむと思うなよ!」

 確実に揉めているようだ。
 ジョーは抜かりなく間に割って入る。

「まあまあまあ皆さん、大人気ない事止めようじゃないの。なんたってほら、相手は子供と犬だしさ」

「だからオレ犬じゃないよ!」

「まあまあ、吠えなくてもいいですって。とにかく落ち着きましょう、ね」

 彼がそうしている隙に空とフェンダーは、現場からレオンを引きはがす。
 子供と犬より大人相手にした方が得策だと踏んだのか、詐欺関係者たちは、目標をジョーに切り替えた。
 学がありそうな眼鏡をかけたのが奥から出てきて、慇懃に切り出してくる。

「なんですか、あなたがこの犬と子供たちの保護者なんですかね? 困りますねえ。こんなに騒がれて、うちはえらく迷惑しているんですよ。うちの会社をインチキだの何だのと、名誉棄損だ」

「いや、そう言われても‥‥実際営業実態がないんでしょう?」

「またどこからそんないいかげんな情報を‥‥いいですか、うちはちゃんとした会社です。このとおり各賛同企業と共同出資し、月面の権利を取得するためさるUPC筋に」

 喋らせるだけ喋らせている間、ジョーは相手の間合いに難無く入り込む。そして前置きなくアッパーを入れた。

「地球の敵でなければ傷つけることも嫌がる人もいるけど、俺は気にしないからな」

 この不意打ちで眼鏡の男は、簡単に昏倒した。

「な、何しやがるコラア!」

 騒然となる場。
 楊 雪花(gc7252)が現れたのはそのときだ。

「アイヤ、待つヨロシ! ここが年貢の納め時ヨ、悪徳業者!」

 彼女はスーツに身を固め、似たような人間を引き連れ、実に真面目な様子。
 あまりに普段と違うのでレオポールは目を丸くし、思わず訊いてしまう。

「‥‥どしたの、お前」

 白い歯を光らせ、彼女は答える。

「フフフ‥‥今のワタシは社会正義に目覚めタ良い子ネ! その名モ「G・M・Pグループ」被害者団体代表交渉人。示談か訴訟が成功すれば成功報酬がもらえるお仕事ヨ。原告は多ければ多いほどワタシの取り分も増える公明正大システム。というわけでレオポールも参加しないカ? お金戻るかもヨ」

 次の瞬間彼女を含めて能力者一同が凍りついた。たとえようもなく強大な何かが、あえて言うなら殺気が近づいてくるのを感じ取ったのだ。
 反射的に顔を向けると、無月が背後で氷の微笑を浮かべていた。
 彼はほかのものに見向きもせず、尻尾を丸めているレオポールに近づき、一喝。

「愚か者! ‥‥」

 レオポールは壁に自分の形の穴をあけ、屋外へふっとばされてしまう。

「キャーン‥‥‥‥」

 悲鳴を残してはるか空の高みに飛んで行く犬男をさておき、無月は微笑みを消さないまま、業者に向き直った。

「御金‥‥返しましょうね‥‥」

 反論はない。もちろんない。能力者さえしんどくなる殺気を前に一般人が挑みかかれるわけはないのだ。真っ青になって腰が抜けるばかり。
 フェンダーは抜かりなく彼らを、ガムテープでくるくる巻いていく。
 空は父親が飛んで行った方角を半眼で眺めるレオンに、強く言い聞かせる。

「レオン、1人で行動するのは危険なので、次からは依頼として出してくれれば、空達がまた、駆け付けますよ!」



 メイドカフェ『みゃんこはうす』。
 毛が白くなった上に白い包帯を巻いているコリー人間が弱々しく吠えているのを無視し、空が宣言した。

「さぁさぁ、今日はレオポールの奢りなので、皆さんお好きに飲み食いして下さいね!」

 試着のうさ耳をつけたりしているフェンダーは、満足げに頷いた。

「おお、気がきくのうレオポール。いやいや、安心するがよい。戻ってきた分全額は使い果たさんでな。さて、そのためにもお金を返してもらおうかや‥‥」

 彼女が話しかけているのは、ミノムシ状態で店内に運び込まれている悪徳業者たち。雪花も一緒になって尋問している。

「ワタシも是非そうしていただきたいネ。出すもの出してサッパリするヨ」

「ふざけんなてめえら! 訴えてやるからな!」

「オー、そこは好きにするヨロシ。こっちは傷害と児童虐待を口実にするだけネ。数々の詐欺行為はどう裁かれるのか楽しみヨ。付け加えるとお宅らサン、ブタバコに入ってた方が身のためネ。ココ近辺の怖いお兄さん達、ショバを荒らされたコトにご立腹だしサ」

「くっ‥‥ハッ、金なんざ、すでにお前らの手の届かないところに‥‥」

「何、持ってない? では体で払うのじゃな。幸い我々の知り合いには腕利きの医者と腹黒商人の双子がおるでな。肝臓と腎臓と目玉とどこがいいじゃろうか」

 ペーチャがそれに加わりアドバイスを行う。メイドからジュースを受け取りながら。

「生かして使う方が割がいいですよ。見たところまだ若い方もいるじゃないですか。地下世界に奴隷としてそのまま売り飛ばしましょうよ」

「おお‥‥それはよい。主様も言っている、勤労は尊いものじゃと」

「でハあらゆる理由デ足腰立たなくなったらウチが二束三文で引き取るのコトヨ。前々から検体が欲しかったネ」

「やめろ鬼い!」

「誰が鬼じゃ、こんな可愛い我を鬼と間違うとはそんな目玉は必要ないのう? 罰として睫を抜いてやるぞよ」

 彼らが苛酷な尋問をしている間、レオポールはレオポールでまた苛酷な目にあっていた。

「いいですか。今日はみっちり覚えるまで家に帰しませんからね。まず詐欺の基本的な手口と傾向そして対策を丸暗記してもらいます。その後は家庭崩壊の実例をつぶさに読み込んでもらいましょうか」

 無月から分厚いテキストを押し付けられ、すんすん鼻を鳴らす彼は、息子に助けてもらえなかった。真剣にこう言われる始末だ。

「パパ。そのくらいは覚えて帰ろう」

「なんだよなんだよ。冷たいじゃねえかお前。オレはさ、家族が喜ぶかなと思ってさ」

「思うなら買う前に相談してよ、そしたら被害が出る前に止められるから」

 まっとうな返答に、ジョーも激しく同意する。

「そうだな。まとまった金使うときは家族に相談するくせ、つけておくべきだぜ。あんた自身が思ってるほどあんたはしっかりしてないからな」

 しょんぼりするレオポールの肩を、雪花がそっと叩く。

「元気を出すヨ、レオポール。高い勉強代を払ったと思うがいいネ。雪花軒のクーポンあげるネ」

「おお‥‥珍しくありがとうな雪花」

 尻尾をはたはたさせるレオポール。

「あ、有効期限あるから気を付けテ」

 クーポンを確認し尻尾がまた下がる。

「3日だけじゃん‥‥」

 その上から空は、大きなメイド服をかぶせた。

「さて、レオポールにワンコメイドになって、貰いますかね♪ メイド服きっと似合いますよ!」

 女装というより、単に服を着た犬という感じだ。
 犬好きな店員や客が撫でに来る。フェンダーも。彼女はもふりついでレオンに訊く。

「しかしレオン殿は賢いのじゃ‥‥将来もふもふになる予定はあるかや?」

「‥‥いや、ないと思うんだけど‥‥」

「そうかや? いや、惜しいのう。だがまあ将来のことは分からぬから、仲良くしようぞ」

「‥‥?」


 最終的にレオポールのお金は、なんとか戻ってきた。
 その後彼が通帳を手元から取り上げられたのは、言うまでもないことである。