タイトル:マスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/12/04 00:28

●オープニング本文




 遠くに去ったバグアは地球に置き土産をしていった。すなわち、キメラ。
 もはやどこから命令を受ける機会もない彼らは、あるいは野、あるいは砂漠、あるいは海にて生きている――そのほとんどが人類に有害である。生体兵器として作られたものばかりなのだから当然だが。
 だが中には無害‥‥と言わないまでも、危険度の極端に低いものがいる。
 それらは俗に「謎キメラ」と呼ばれている。




「うーん‥‥」

 ロシア某地。雪の降る平原には現地部隊が30人ほど集まっていた。
 彼らはぐるりと円を描きキメラを見守っている。
 誰も近寄ろうとしない。恐れているのではなくて、ワケがわからなさ過ぎて。

「‥‥尻ですな」

「‥‥尻だな」

 そう、そこにあるのはピンク色をした健康そうな尻。全長4メートルはあろうかという巨大な尻。時折ぶるるっと動いて雪を払いのけている尻。
 長い長い沈黙の後、部隊長は部下に命じてみた。

「おい、そこのお前撃ってみろ」

「えっ、いや〜変なことにならないですか? 傭兵が来るまで刺激しない方がいいのでは」

「なにを怯えている。相手は単なる尻だろう。噛み付いてくるわけもないはずだ」

「いやそれは普通の尻だった場合でしょう。これはキメラでは」

「尻は尻だ。とにかくやってみろ尻なんだから。実にいい形の尻だ」

「なんか隊長、尻にこだわり過ぎじゃないですか?」

 気が進まない様子だったが、兵士は言われたとおり尻に向け発砲してみた。
 FFが発動され弾がはじかれ、そして。

ブッフォオオ

 尻から盛大に屁が出た。
 まともに食らった兵はその威力で遠くまで吹き飛ばされる。

「うわああああ‥‥」

 ここまではなんとなく予想出来たが、続いての尻の行動は多少予想外だった。
 屁力を利用し包囲の輪を超え脱出、雪の上を転がっていく――つまり逃げていく。

「いかん、尻を追え!」

「だから言ったじゃないですか、隊長!」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
ニーオス・コルガイ(gc5043
10歳・♂・EP
エドワード・マイヤーズ(gc5162
28歳・♂・GD
雁久良 霧依(gc7839
21歳・♀・ST
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL

●リプレイ本文


 雪の舞うロシア雪原に佇むは、ニーハイブーツと短パンのショタっ子。

「冬のロシアは壮観だよねー。グリーンランドも凄かったケド」

 と見せかけ男装の少女である夢守 ルキア(gb9436)。
 彼女はしげしげ双眼鏡をのぞき込み、白一色の世界を軽快に跳ねている生物を観察する。桃色の柔らかそうなそれは、

「わあ‥‥おしり、だぁ‥‥」

(尻だ。確かにアレは尻だなー)

 エルレーン(gc8086)の言葉とニーオス・コルガイ(gc5043)の思念どおり、尻だった。どこから見ても。
 エドワード・マイヤーズ(gc5162)は額を押さえる。

「やれやれ、これまた、とんだ依頼だね」

 しかし雁久良 霧依(gc7839)は楽しそうだった。息を荒くし、熱い視線を大尻に注いでいる。

「わお‥‥本当にお尻ね‥‥」

 外套を羽織りブーツにかんじきを装着しているのはいいとして、ビニール手袋と厚い布と潤滑油のボトルを持参しているのはなんのためなのか――誰しもおぼろに見当がついたが何かと差し障りがありそうなので口にしないことにした。
 エルレーンは困ったものだというように腕組みをし、ぼやく。

「いっつも思ってたんだけど、ばぐあはちゃんとこういう変なののあとしまつとかもかんがえてるべきだったの‥‥」

「旗トカあれば可愛かったんだけどね。でもあれ、桃に見えなく――見えないか。流石に食べれないよね」

 本気とも冗談とも取れない返しをするルキアに、ドクター・ウェスト(ga0241)が冷たい視線を向ける。

「また君かね〜‥‥真剣味が足りないね〜キメラはキメラ、バグアであることには違いはないね〜たとえ見た目が間抜けで攻撃能力がなかろうとも、ノーマルを滅ぼすために作り出され、送り込まれたのだろう〜」

 だが彼女は微塵もひるまず、ウェストをからかいにかかった。今日の彼はいつも以上にそうしたくなる。防寒対策とかで、雪だるまの着ぐるみを身につけているもので。

「ゆきだるま、可愛いじゃん! 終わったら遊ぼうねー」

 どうもこの子は苦手だ。
 実感するウェストの脳裏に浮かぶは、過去に倒したおっぱい地雷キメラだ。人間の趣味思考を考えああいう形を取っているのだとしたら、あの尻油断ならない。

「見えている部分約半分で4m、通常ヒップは80cmとして約半分であれば40cm、コンナに単純ではないが約10倍の大きさかね〜。人型換算で16〜7m、全身があればKVをはるかに超える大きさだよ〜」

 ぶつぶつ計算を行う彼に、エドワードが話しかける。

「○腸で鎮圧できれば、それ程苦労しないと思うがね? どうかなドクター」

「む。浣〇かね〜確かに体内に至る開口部はあそこのみであるようだから、攻撃するならそこになるかね〜」

 そこにルキアも加わる。

「転がるんだよね? ペイント弾で目印付けて‥‥あと、何か刺すなら動きとめた方がいいね。エドワード君、頼めるかな?」

「ああ。僕が尻を引き付ける。攻撃のほうは任せたよ」

 一応皆真面目に作戦検討をしているのだが、台詞だけ聞けばキメラの存在と同じく、馬鹿馬鹿しいこと限りなし。
 一方他の3者は対象物についての感想を披露し合っていた。

「尻だ。アレは尻だ」

「むだにぷりぷりぷるぷるなの。つくったやつはへんたいにきまってるの」

「まずは生態調査をしないとね♪ 尻と聞いてやらないわけにはいかないわ♪」

「伝説の【桃尻】かもしれんぜ」

「むだにつやつやてやてやなの。つくったやつはすけべにきまってるの」

「男の子かしら女の子かしら。確認するのがた・の・し・み♪」

 制作者のバグアがいるなら今頃本星で咳き込み倒しているだろう。
 それはそれとして部隊から悲鳴に似た呼びかけが。

「おおおい、あんたらいつまでそこでグダグダやってんだ! 早く退治してくれ!」

 これは失礼。



「おーい、こっちだー!」

 雪原を転げ回っていた尻はエドワードの呼びかけで動きを止め屁をふかし、そちらへ移動し始める。

「よーし、来い来い‥‥」

 「ミスティックT」と「S−01」そして先の尖った旗を手に待ち構える彼であったが、接近してくる尻への攻撃は一時控えることにした。霧依が「ちょっと待ってね!」と差し止めてきたので。

「まず私たちが調査してみるから」

 言い残し彼女は、ニーオスそしてエルレーンを従え、緊張みなぎらせている尻に接近していく。
 ちなみにウェストも研究者として調査には賛成だが、直接接触は避け、彼らの行動を見守るに止めている。理由は屁を浴びたくないからだ。無害なのは報告からはっきりしているが、しかしあえて体験したい代物でもない。

「大丈夫よ‥‥危害は加えないわ‥‥一人ぼっちで怖かったのよね‥‥逃げなくていいのよ‥‥」

 優しく言い聞かせるのが聞いたのだろうか、尻は屁をかますこともなくじっとしている。
 現地部隊の部隊長は遠巻きにその光景を眺め、嘆息していた。

「おお‥‥尻が‥‥尻が心を開いておる‥‥」

「尻に心とかあるんですか?」

「馬鹿者、お前達にはあの尻が括約筋をゆるませ微笑んでいるのが分からないのか」

「いえ、分かりません‥‥というか、何故隊長はそこまで尻にこだわりを‥‥」

 不審そうな隊員達にルキアがこそっと近づき、スブロフを手に交渉をする。

「ねー、スキー板トカ、スノーモービルがあったら借りたいんだけど」

 霧依は布を爪に巻いた「エーデルワイス」でFFを突き破り、お尻を優しくなでなで。
 彼女はこの場において、一番の尻専門家と呼べる。特に未成熟な少女のお尻についてなら、ただの一瞥と一お触りで生産地まで判別可能なほどだ。
 そんなプロの目から判断してみるに、このお尻は少なくともハイティーン。
 ただ少女かどうかは分からない。理由はいろいろ考えられるが、とにかく前には判別するべきものが作られてないので。

「にしても‥‥FF無ければ顔を谷間に埋めて×××‥‥」

 彼女がだだ漏らす危険な妄想を聞かないふりするニーオスとエルレーンは、つんつん手持ちの武器で尻をつついてみたりしている。

フスー

 それが気に入らなかったのか、すこ屁が流れてきた。
 生ぬるいそよぎを浴びつつニーオスは言う。

「本当に尻だなこれ」

「ふーん、だ‥‥ただのおしりにいみなんてありませーん。かぁいいおんなのこについてるから、いみがあるんですぅー」

「はいはい、2人とも少し下がっててね。さて、じゃあ調査の仕上げね」

 彼らを下がらせ霧依は、エーデルワイスにビニール手袋を装着し潤滑油を塗り付け――そのまま一気に尻の穴へ、肩まで埋まるほど突き入れた。
 見ていた隊長が自分の尻を押さえて悲鳴を上げる。

「ぎゃひい!」

 尻から滝のような汗が吹き出すのもかまわず霧依はそのまま、グイグイゴリゴリ容赦なく中を探り回す。
 隊長、七転八倒。

「ひぎい! も、もうやめてえ! いやあっ!」

 なんかこの人あやしい。
 並み居る部下たちとともにルキアは思った。借りたスノーモービルに跨がりながら。

「前立腺の有無で性別が判明する筈っ! 因みに重要なのは角度ね。侵入時の角度が悪いとイ○○ク浣○みたいな細いものでも上手く入らず苦痛を与えてしまうものなのよね」

 いらない知識を披露した彼女は、クワッと目を見開いた。
 何かを見切ったらしい。

「みんな〜! この子、お」

 次の瞬間すさまじい放屁が起き台詞を続ける暇もないまま、遠くまで吹き飛ばされる。

「放屁プレイなんて斬新よぉ〜♪」

 歓喜にも似た声が聞こえたようなのは気のせいだと思おう。
 決めてウェストは「エネルギーガン」を取り出す。

「実際に受けてみるのもありだが、研究者は全てにおいて客観的でなければね〜」

 霧依が吹き飛ばされた様からざっと風速を推測しつつ、屁を弾ませている尻へ電撃を加える。
 尻は跳びはね全力で転がり始めた。よろついているようなのは、先程の触診の影響があるのだろうか。
 スノーモービルに乗ったルキアが、「バラキエル」を発砲しながら追いかける。
 ペイント弾の洗礼を浴びた尻は放屁で対抗してきた。
 あおられ危うく転覆しそうになる前に飛び降り跳躍、尻の直近から「カルブンクルス」の電流を食わす。

「って言うか、私のお尻の方が形いいよ! ほら、鍛えてるから、今なら足も腰から上もついてますってね」

 痙攣する桃色の塊。そして身をくねらせる隊長。

「のおっ! おうっ!」

 待ち構えていたエドワードが「ミスティックT」で連続し電磁波攻撃をし、ついで、柔肌に旗をぶっ刺す。
 動きをくい止められたところ、エルレーンが屁対策の「ガード」を構えつつ走ってきた。

「いーちげーきひーっさぁーつ!」

 彼女はその鈍く光る「デビルスT」を、力いっぱい穴にぶちこみ、引っ掻き回した。

「ええい、ばけものおしりめっ! 終わっちゃえッ!」

 もはや止まって治すアレでも効かないだろうというダメージを受けていそうなところ、ニーオスの「ディガイア」が追い打ちをかける。
 剣だけでいっぱいいっぱいなところになお拳をねじ込むという暴挙。

「おらおらおらおらおらおらぁー」

 もう隊長は立っていられず倒れた。

「そ、それ以上は無理‥‥無理ぃい」

 だが部下は誰も助け起こそうとしない。

「む。なかなかしぶといね〜」

 そこにウェストが凶悪な「機械剣α」を突き刺した。
 戻ってきていた霧依が背後から「ヘスペリデス」で練成強化をかけ、悪魔のごとき台詞をハアハアしながら口走る。

「まあ、こんなになっちゃってかわいそう‥‥でもまだ余裕がありそうね? いける? いけるわよね? 大丈夫あなたはやれば出来る子よ、お姉さんそう信じてる!」

 その言葉を待たずエドワードの「ミスティックT」が止めを指した。
 尻の穴に直に突き刺した機械から流れてくる電流は尻の内部を呵責なく責め立て涅槃へ導いた。
 尻を。

「あひいいいいいいいい!!」

 そして尻に感情移入し過ぎな隊長を。
 ぐったり力の抜けた肉塊に指を突き付けルキアは、たいして意味のなさそうな説教を始める。

「単体で勝負しちゃダメさ、全体を見なきゃ」

 エルレーンはさわやかに汗を拭う。

「ふう‥‥今日もいいお仕事をしましたなの」

 ニーオスは己に言い聞かせる。雪が止んできた空を見上げ。

「間違いなく尻だった‥‥」



 空は晴れてきた。
 尻キメラの残骸をあれこれ調べているウェストは、ルキアからの雪玉攻撃に悩まされている。

「ルキア君〜邪魔しないでくれたまえ〜我輩はこのキメラの身体構造を調べているのだから〜」

「そんなん後でいいじゃん、雪合戦トカ、ほら、冬のロシアで戦う訓練になるかも、よ?」

 部隊から熱いコーヒーをごちそうになっているエルレーンは、やりきった顔である。

「おししょうさまにほうこくしないとね‥‥『今日は、でっかぁいおしりをたおしました!』って☆ミ」

 今後とも変態的な敵が出てきた場合は、優先的に討伐しよう。乙女っ子はそう心に誓う。

「バグアの斜め上ぶりは果てしないですね‥‥次は何が出てくるのやら」

「言えてるな。想像もつかねえよ」

 エドワードとニーオスはふと会話を止めて背後を盗み見る。
 隊長と霧依がそこにいた。

「私も好きですよ、お尻。特にスパンキングなど最高ですわ」

「ええ、いいですなあれは。あの痛みが何とも言えません」

「あら、受け手なんですね隊長さん」

 斜め上の存在はなにもバグアに限ったことではないらしい。
 しみじみ思い彼らもまたコーヒーを飲む。やや苦めのやつを。尻の性別を改めて聞いてみる気も起きないままに。