タイトル:求む、浜辺の清掃員。マスター:菊ノ小唄

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/23 21:39

●オープニング本文


 長さ50mちょっと、幅20m弱。波も静かなこじんまりとした、とあるビーチ。
 しかしそこは、とても夏本番を迎えられる状態ではなかった。ごみ、ごみ、ごみ。人が捨てたもの、流れ着いたもの。割れたビン、紙くずから空き缶、果ては壊れた自転車などの粗大ごみまで、オンパレード。

 思わず呟く。
「‥‥どうしてこうなった」


 件の小さなビーチは、すぐそばに住んでいるヨツモト・ケイジ氏が仕事の片手間に管理している。仕事の都合で妻と共に自宅を離れ、しばらくラスト・ホープに滞在していたが、昨夜遅く1ヶ月振りに長旅を経て帰宅。
 その翌朝。未だ休んでいる妻を起こさぬよう、静かにリビングへ下りたヨツモト。朝のビーチが見られるのも久しぶりだ、と思いながら窓に目をやって、窓の向こうに見えるビーチの惨状に凍りついたのだった。

 この有様を見て、(留守中の警備は人に頼んであったが、家内の言ったとおり管理人も雇っておくべきだった‥‥)と大いに反省し、さてどうしたものかと腕を組んだ。
「まずは掃除をせんとなぁ。‥‥問題は、笑えるほど人手が足りんことだが」
 というのも、ごみの量が凄まじく、自分と妻の2人でどうにかできるようなレベルではなかった。清掃業者に頼むか、と仕方なくビーチ関係のファイルを漁り始めたのだったが、ここで問題が。

 昨夜家の前で通りかかった近所の住人と少し立ち話をしたことを思い出したのだ。
「最近不良騒ぎとか、キメラが出たとかいう噂が多くてね。お宅も気をつけてな」
「そうなんですか?」
「キメラのほうは噂だが。悪ガキどもは怪我人出してるそうだ」
「うわ‥‥どっちが怖いか分からなくなる話ですねぇ」
「まったくまったく」

 そんなやりとりを思い出しながらヨツモトは眉間にシワを寄せる。
 可能性は低いだろうが、清掃業者に頼んで大掛かりな作業をしているところへキメラが出没して惨事に、というのは避けたい。

「‥‥よし。警戒も清掃も同じところへ頼んじまおう。ああいう連中に掃除頼んでおけば、万が一ってことがあってもなんとかなるだろ。早く終われば好きに遊んでくれと貸し出しても良いし」

(別に面倒とか億劫とか金がかかるとか二度手間が嫌だとかそんなわけじゃないんだからな、安全のためだ、安全のため‥‥)と心の中でぶつぶつ言いながら、清掃業者とは別の連絡先を調べ始めたのだった。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
小笠原 恋(gb4844
23歳・♀・EP
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
八葉 白珠(gc0899
10歳・♀・ST
橘 咲夜(gc1306
18歳・♀・ST
八葉 白夜(gc3296
26歳・♂・GD
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA

●リプレイ本文

●準備も肝心

 依頼当日の朝。
 早くも日差しが強くなってきており、海面は日の光を反射してキラキラ輝いている。

「わー、海でーす♪」
「暑い海! 白い砂浜!」
「‥‥けど、なんだか汚いですね。念入りにお掃除しないとです!」
「わ、ほんとだ、だいぶ汚れちゃってるね」
 小笠原 恋(gb4844)とヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)が、浜辺を見てあららーという顔をした。
「‥‥まぁ1ヶ月も放ったままだと、ねぇ」
 相槌を打つのは、ヴァレスの妻、流叶・デュノフガリオ(gb6275)。日傘を差して夫の隣に立っている。そこに大荷物を抱えて現れたのは、依頼人のヨツモトと、村雨 紫狼(gc7632)だった。ビーチパラソルにゴザ、クーラーボックス。軍手や長靴、サンダル、麦藁帽子に汗拭きタオル。熱中症や怪我を防止するための準備である。
「美少女や人妻美人がケガ、なんて事態は避けねぇとな!」
 集まってきた人数を数えていた紫狼が気付く。
「あれ、7‥‥?」
「そうだった、1人来れないそうでな。7人で頑張ってもらえるかい?」
 と伝えるヨツモトに
「オッケー、任しといてくれ☆」
 と、サムアップ付きで答える紫狼の視線はちゃっかり花柄ワンピース水着の少女に向かっていたが、ある意味それは大変素直な返事であると言えようか。ヨツモトは脇見をしている紫狼の頭を丸めた新聞紙ではたきつつ、
「しかし助かるなぁ、ホント」
 と、ほっと一息。

 花柄水着の少女、八葉 白珠(gc0899)は紫狼の視線になど全く気付かずビーチ到着。
「恋さん、今日もよろしくお願いします!!」
 と友人の恋に向かって手を振り、元気良く挨拶。そしてくるりと隣の兄を見上げ、
「白夜兄さま!海、楽しみですね!」
「えぇ、こういう依頼も偶には良いものです」
 はしゃぐ妹に頷く兄の八葉 白夜(gc3296)。今回は保護者として依頼に参加。白珠の友人である恋や、以前同じ依頼に一緒になった終夜・無月(ga3084)に対し、丁寧に挨拶をして回る。
「この度も同じ依頼に参加させて頂きますが、何卒よろしくお願い致します」
「いえこちらこそ‥‥」
「‥‥お大事になさって下さいね」
 ひそ、と小声で気遣う白夜。生命というものに造詣の深い彼は、包帯で隠してある無月の服の下の大怪我を看破したのだった。無月は微笑む。
「大丈夫ですよ、ありがとうございます‥‥」
 受けた依頼は如何なる事情があろうとやり遂げる。それが無月の信条である。

「流叶〜、そろそろ行くよ〜?」
 水着に着替え終え、キメラ警戒のため持参した武器をビーチパラソルの下にまとめたヴァレスが妻に声をかける。どうも流叶は日焼け止めを自分の背にうまく塗れず、てこずっている様子。
「ん、もうちょっとで塗り終わ、るか‥‥ひゃぁっ!?」
 唐突な、背を撫でられる感触に驚く流叶。
「ちょ、ちょっと!?」
「遠慮しなくてもしっかり塗ってあげるよ♪」
 と塗り続けていたヴァレスはふと思いつき、流叶の背中を指で、つつー‥‥となぞってみる。
「自分で塗‥‥にゃぁぁっ!」
「‥‥かわいっ♪」
 そんなキャッキャウフフな準備風景もあったり。


●いざ掃除!
「んじゃ第一回! チキチキ! エコ活動で地球に優しく清掃たいかーいっ!!」
 紫狼が宣言。参加者は各々掃除道具を抱え、浜辺へ散った。

 白夜、白珠、恋の3人は浜辺のゴミ拾い。
「暑いです‥‥日差し、かなり強いですけど白夜さん大丈夫ですか?」
 砂浜の照り返しや気温もきつい。恋は体の強くない白夜を案じ、声をかける。白夜は微笑を返し、
「帽子を借りれたので何とかなりそうです。それにしても暑い‥‥白珠も無理はしないように」
「はいっ」
「しらたまさんは元気ですね〜」
「元気ですよー! あ、恋さん、あっち拾いにいきませんか?」
 恋と白珠の2人はゴミ袋片手に波打ち際へ。それを見送った白夜は、先に電磁石の付いた柄の長い道具を持って砂浜を歩き回る。金属片などが落ちていたりしないよう、スキル探査の眼とGooDLuckを併用し、念入りに確認していく。
「なかなか、砂浜を清めるというものも心地良いものですね‥‥」
 帽子の陰からこぼれる金色の髪が、陽光をはじいて煌めいた。

 無月は持参した竹箒で浜の掃き掃除に勤しみ、細かいごみを、重体の自分にもできる範囲で集めていく。‥‥しかし暫くして、怪我による発熱で意識が朦朧とし、視界が揺らいだ。そしてそんな時に限って、ふと見た海の波間に怪しい影が!
 瞬間より短い刹那。
 無月の抜刀術で『箒から』抜かれた白刃が海を割り、波は真っ白な飛沫を上げた。だが、赤く染まるかに思われたその飛沫は白いまま。それもその筈、波間に残ったのは真っ二つになった発泡スチロール箱であったので。
「あれ‥‥?」
 と首を傾げている無月の近くで偶然今の出来事を目撃した紫狼。拾った大きな板切れなどを抱えたまま固まっている。フリーズ状態から回復した紫狼は
「えっと、あの、何事、っていうか、それ箒‥‥?」
 と思わず尋ねるが、無月は至極真面目な顔で答える。
「キメラが居ると聞いていましたので念の為に‥‥」
「そ、そっか成程‥‥でもあれ、どう見たってごみだぜ?」
「そうみたいですね‥‥キメラだと、思ったのですが」
 ぼんやりとしている無月を見て、軍手を外した紫狼は無月の額にぺたりと触れてみた。そして案の定、
「熱あるし! ンなとこで日向ぼっこしてる場合じゃねーよ、休憩休憩っ」
「いや、仕事をやらないわけには‥‥」
「休憩も仕事のうち! 昼飯食ってからまたやればいーんだって」
 怪我のほうこそ気付かなかったものの、熱があるなら無理は禁物だと無月をビーチパラソルの下へ入れる紫狼。そして自分は掃除再開。

「うっわなんで靴とか落ちてんだ、って何これ、看板?」
 流されたもの、落し物など、海辺のゴミは千差万別である。その中でも紫狼は、女の子が拾うには色々ときつそうなものを優先して拾っては運び、拾っては運び。可燃、不燃、資源ごみに分けて積み上げていると、
「これも頼むよ、どこ置こう?」
 と、ヴァレスが流叶と共に、水中から拾ってきたゴミを抱えてやってきた。
「おー、大漁っ。濡れてっから乾かしたほうがいいなー。そこの新聞紙広げて、分けといて!」
「了解」
 流叶が日向にばさばさと新聞紙を広げ、ヴァレスはそこにゴミを下ろす。
「さてと、もうひと頑張りしようか流叶」
「そうだね」
 2人は再び水際へ戻り、先ほど依頼人が用意した網の端と端をそれぞれ持って水中へ。かなりの大きさがあり、水の抵抗もあって、水中とはいえ1人ではうまくいかない作業だ。ビニール袋、小枝、ガムの包み紙などなど‥‥。細かいゴミが網にかかり、さらに抵抗が増す。
「流叶ー、そっち、向こう行けるかい?」
「そこで網が絡まってる、ゴミが流れそうだ」
 覚醒した能力者2人がかりなので苦ではないが、骨は折れる仕事だった。2人でそんな状態なので、1人でやろうとすると厄介。それが少女の動きでは余計。
 置いてあった網を見つけた白珠。投げ網の要領で水中のゴミを取ろうとしたところまでは良かったのだが、網はうまく広がらず、引き上げようにも彼女では腕力が足りない。
「‥‥! ‥‥!! ‥‥!?」
 二進も三進もいかなくなって途方にくれていたが、
「しらたまさん1人じゃ重いですよ」
 と気付いた恋が手伝い、ようやく一仕事終えたのだった。


 出前のバイクが来て、無月が受け取る。一同集まって昼食休憩後、もうしばらく掃除タイムが続いた。
 ヴァレスと流叶はゴミ拾い勝負に突入。ルールは簡単だ。海の底に沈んでいるゴミを拾って、回収した量が多かったほうの勝ち。
「さて、今日こそ勝たせてもらうよ流叶!」
「良いけど、私が勝ったら…分ってるね?」
「俺の奢りでスペシャルパフェを食べ放題、だろう? ‥‥今日こそ勝つ! 勝ってミニスカのセパレートチャイナ服を着せる!」
 出費自体は勝っても負けてもヴァレスである辺り、さすが愛妻家を自負するだけのことはある。ちなみにヴァレス、5連敗中。そろそろ連戦連敗から脱したいところ。
「精々頑張ると良い、私も負ける気は無いよ」
「ようし‥‥じゃあ、スタート!」

 無月は掃き掃除を再開し、恋と白珠は浅瀬のゴミ拾い。
「色々な物が漂着していますね‥‥」
 恋は呟く。水中の大方のゴミはヴァレスと流叶が片付けたものの、それでもまだ小さなゴミが。
「全て拾うのは難しいですが、目に付く限り拾うだけでも変わりますよね、きっと!」
「そうですね、がんばりますっ」


●掃除終了!
 そんなこんなで細かいところまで掃除が終わり。
 様子を見に来たヨツモトは、綺麗に片付いた砂浜、しっかりと分別されたゴミに感激。
「しかしすごい量だ‥‥本当にありがとう」
 と参加した能力者たちに感謝する。そしてふと小さなゴミの山がいくつもあることに気付き首を傾げた。小さな山になっているのは、ボトルキャップやビニールなど普通に有りそうなゴミばかり。
「あれは?」
 尋ねたヨツモトに流叶とヴァレスが説明した。
「あ、それ、拾ったゴミの量で勝負をしていて」
「計量前なので分けてあるんですよー。分別は済んでるんで量ったらまとめます」
「あぁ、了解了解。量りは要るかな?」
「お願いします!」
 ヴァレスの食いつくような答えにヨツモトは楽しそうに笑い、
「それじゃ暗くなる頃、夕飯の準備と一緒に持ってこよう。それまでみんな自由時間としてくれ」
 と言って、自宅へと戻っていったのだった。

「夕飯の『準備』ってなんのことだろう?」
 疑問に思った流叶が夫に尋ねるも、
「さぁねぇ‥‥ま、楽しみに待ってようよ。うちのシャチどこ行った、シャチ!」
「はいはい。更衣室に置いてあるから持ってくる」
「オッケイ♪」

 無月はしっかりと仕事を終えて、持参したビーチパラソルの下で一息つく。白夜から、『ベルガ史書』という小説を借りた。
「ありがとうございます‥‥」
「いえいえ。何はともあれ、お疲れ様でした」
「白夜さんも、ご無理なさいませんでしたか」
「大丈夫ですよ、殆ど道具任せでしたしね」
 白夜も熱い日差しをパラソルで避け、のんびりと読書を開始。読むのは『海と猛毒』という、戦争後の悲しい話。楽しく遊ぶのも良いが、賑やかな明るい風景から少しだけ距離を置き、物語の世界に浸るのもまた一興。‥‥大事な妹に不埒な目を向ける男の動きに注意しつつだったが。
「はぁはぁ・・・ハクたんのみじゅぎ萌 「うちの妹が可愛いのは認めますが、その辺で」
 にっこり笑う白夜に本で視線を遮られ、そんなぁーと無念そうな顔をする紫狼。どこまでもフリーダム。

 恋は、自分と白珠にサンオイルを塗る。
「うふふっ、しらたまさんの肌ってもちもちでプニプニです♪」
 るんるんと楽しそうに塗り終えると、
「さぁしらたまさん、私と一緒に泳ぎましょう♪」
 と白珠の手を引く。白珠は浮き輪を持って頷くが、その前に、と兄・白夜のほうへ行き、
「あの!白夜兄さまも一緒にいきませんか!」
 と声をかけた。残念ながら
「折角小笠原殿が誘って下さっているのです。私の事は気にせず遊んで来なさい」
 白夜からはやんわりと断られてしまったが、白珠は素直に頷くと恋と一緒に元気良く海へ。

「えっと‥‥あのその。わたし泳いだ事ないんです」
 白珠の申告に頷いて、
「怖くないですよ〜」
 と手をつないでぱしゃぱしゃ海に入った恋。
「キャ! 入った瞬間はやっぱり冷たいですね」
 2人は少し沖へ移動。しかし白珠は少し及び腰。
「ふふっ、この辺りはまだ足がつくから大丈夫ですよ」
 と言った直後、深くなっていたところに踏み込んでしまい慌てる恋。足の届く場所を探して数秒わたわたしたが、目の前の白珠の浮き輪に手を伸ばすことができ、事なきを得た。
「だいじょうぶでしたか‥‥っ?」
「きゅ、急に深くなって、びっくりしました‥‥もう少し浅い所で、しらたまさんの泳ぎの練習です〜」
 こくこくと頷く白珠。浅めの場所で恋と向き合い両手をつなぐ白珠は、そこで固まる。浮かび方がわからない。白珠は体の力を抜いてなんとか浮かび、恋に引っぱってもらって水面を進むも、今度は息苦しくなってばしゃばしゃと足を付いてしまった。
「あ、そうか、息継ぎを覚えないとですねっ」
 恋が気付いて、足をどうの、頭をどうの、と教えては白珠が挑戦したがうまくいかず。一応水で遊ぶ感覚は楽しめたという事で2人は浜へ戻って砂遊びに興じた。
 その頃、夫婦は仲良くシャチのフロートで遊んでいた。流叶がシャチに乗り、ヴァレスが引っ張る。突然揺らして、
「あぶなっ、ヴァレス!?」
「ほらほら〜♪ 落ちるなよー♪」
 とシャチの上の流叶を驚かせて遊ぶヴァレス。シャチに飛びついて大きく傾け、
「落ちっ、危ないって言ってるだろう‥‥!?」
 落ちかけた流叶がヴァレスに抱きついた。ヴァレスは流叶の胸が当たって一瞬ドギマギするも、役得?などと思う、が、夫の思考を見抜いた流叶にぺしぺし頭を叩かれる羽目になるのだった。

●終わりに。
 日が傾き、17時。町内放送で時報が響き、紫狼がいそいそとどこかへ姿を消した。
 ヨツモトと共に再び大荷物で戻ってきた紫狼が持っていたのは、
「おーい! みんなでバーベキューやんぞコラー!!」
 そう、バーベキューの道具。ヨツモトが『夕飯の準備』と言っていたのはこれの事だった。
 皆で集まり、バーベキュー開始。野菜に肉に、焼きおにぎりや鮭のホイル焼きなども出来るよう準備されていて(家内が作ってくれてね、というヨツモトの嫁自慢にヴァレスが負けじと流叶の自慢で張り合う場面も)、盛りだくさんの内容。
 陽が落ちてだいぶ涼しくなり過ごしやすくなった砂浜で、無月も食事を楽しんだ。紫狼がトングを掲げる。
「やいやい、そこの夏バテっ子! 野菜食え、肉食え、魚も食え☆ まだまだあるぜ!」
「や、夏バテでは‥‥でもよく食べて早く回復しなくてはなりませんね‥‥」

 白夜は、妹を見て声をかける。
「そうそう白珠、帰ったらきちんと肌の手入れをなさい。日焼けが酷いと痛みますからね」
「はい!日焼けしないように気をつけます!」
 本人は至って真面目に答えているつもりだが答えが少しズレている。白珠は既に全身しっかり日焼け済みだ。白夜はくすくす笑って頷いた。

 ヴァレス・流叶夫婦は食後、集めたゴミの計量を行った。結果は‥‥
「また負けた‥‥俺、勝負運無いのかなぁ」
 膝から崩れ落ちたヴァレスの零す涙が、砂浜を濡らす。
「弱いだけだろう、精進することだな」
 奢ることよりまた負けたことのほうがショックだったヴァレス。流叶の言葉で砂上の涙の染みが更にぶわっと広がるのだった。

「浜も綺麗になった上に海で遊べて、最高のお仕事でした♪」
 とは恋の言葉。ハプニングあり、笑いあり、涙あり。すっかり綺麗になった浜辺は、彼らのお陰で無事にレジャーシーズンを迎えることが出来そうである。