タイトル:【FC】求む、心繋ぐ者。マスター:菊ノ小唄

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/30 23:57

●オープニング本文



 最近、沖縄の戦況を注視しているミスターS(gz0424)にとって、四国の動向は二の次である。
 しかし、指揮官にウィリアム・シュナイプ(gz0251)が就任したとの報告を聞くと、驚きの声を上げた。
「へぇー、それは思い切ったことをしたね。こっちの手を読もうと必死だ」
 彼は「これは楽しめそうだ」と笑うが、内心は「僕の敵じゃない」と思っていた。
 確かに用兵だけ見れば、ミスターは一枚も二枚も上手。だが、勝ちに不思議の勝ちはある。油断はできない。
「ウィリアム君はまだ、四国で活動するレジスタンスの詳細を知らないだろう」
 ミスターは東京解放戦線において、レジスタンスの活動を放置したせいで手痛い目に遭っている。まさに「千里の堤も蟻の穴から」を体現した格好だ。これを教訓とすべく、彼はある策を授ける。
「UPCとレジスタンスが組むと、何かと面倒だ。まずはここを封じようか」
 彼は部下に対し、レジスタンスを引きずり出す作戦を決行するように指示。あの手この手で存在を抹消しろと伝えた。
「僕はしばらくここを留守にする。沖縄の3姉妹をエスコートしなければいけないからね」
 ミスター肝入りの「レジスタンス討伐作戦」が、今まさに始まろうとしている。

●寸断
 社長また来てら、奥さんが心配なんだろ‥‥などと入室した人物を見ながら社員が笑い合っているのは、とある運搬会社、本社の通信室。それなりに手広くやっている割には結構ラフな会社である。

 通信室長が、社長ヨツモト・ケイジの入室に気が付いて笑いながら話しかける。
「さぼると奥さんが復職された時に怒られますよー」
「困ったことに今回は私が彼女に怒るほうでね。『フロラ』からの状況報告が無い、どうなってる?」
「え、こっちにも何も来てませんよ?」
「おかしいな‥‥遅くとも昨晩中にはコンタクトがあるはずだったんだが」
「そりゃおかしいですね、あの怖い淑女たちが怠慢だなんて有り得ない‥‥確認してみます」
「頼むよ」

 『チーム・フロラ』‥‥それは、この運搬会社の通信網を利用し活動するレジスタンスチームである。
 ヨツモト・アンリ社長夫人によって、社内から引き抜かれた女性陣(心は乙女、と認められた者も含む)約20名から成る。
 ‥‥なぜ一介の会社でそんなチームが作られたのか? それは、社長夫人にして社長秘書、現チームリーダー・アンリの私情から始まった。しばらく前、自社通信施設で働く愛娘をキメラの襲撃で亡くし、彼女は悲嘆に暮れていた。そして夫であり社長であるヨツモト・ケイジに、こう進言する。
「独自に、対バグアのレジスタンスチームを作りたい。貴方の手は煩わせない、私が指揮を執る」
 しかし悲嘆に暮れていたのはケイジとて同じこと。君1人に背負わせる気は毛頭無いと言い切り、会社の持つ情報網をフル活用して身軽に動けるチームの結成をむしろケイジからアンリに頼む。そして全力でバックアップすることを約束したのだった。
 アンリは会社に所属する全社員に、女性社員によるチームを結成する旨と目的を包み隠さず通達。志願者を募り、彼女の故郷・日本の四国を拠点とするレジスタンス『チーム・フロラ』を結成したのだった。

 そして、彼女らによって昨日行われた(はずの)バグア側基地の襲撃に関し、結果や状況の報告が全く無いのでヨツモト社長が確認に来た、というわけであった。確認の結果、わかったのは‥‥。

「社長。強襲作戦直前の、フロラへの物資輸送担当者と連絡が取れません」
「何だと?」
「通信機の反応無し。無断で切ったか壊された可能性が」
「‥‥様子を見に行ったほうが良さそうだな」
 低く呟いたヨツモトを、社長!!! と別の通信員が大声で呼んだ。

「どうした」
「S20番基地より緊急連絡! キメラの群れが、フロラ滞在中の地域北側からフロラたちの居る市営公園へ一直線に向かってきています!!」
「どういうことだ? 公園?」
「フロラは先日の強襲作戦に失敗した様子!」
「は?」
「一般市民まで巻き込んだらしく、現在、公園で市民に取り囲まれ身動き出来ない、と!」
「なに? 市民を巻き込むような作戦ではないだろう‥‥!」
 唐突にそんな話を聞かされて、ヨツモトの声は困惑にかすれる。通信員が続けた。
「市民は殺気立ち、キメラの情報に耳を貸す者は少数、このままでは両者もろとも危険!」
 ヨツモトは絶句。そのままの表情で2秒ほど全力で思考を回転させ、今一番必要な指示を発した。それは、彼から滅多に聞かれることの無い怒鳴り声‥‥いや、悲痛な叫び声だった。

「傭兵を!!!! 大至急だ!!!!!」


 四国・某市北部に位置する、大きな市営運動公園の広場。そこではチーム・フロラが、昨夜から自分たちを包囲している100人近い市民へ説得を試みていた。フロラの武器、装備類は全て手放し市民が監視しており、彼女らは完全に丸腰である。
「違うんです、決して、皆さんに危害を加えるつもりは」
「既に危害を加えたじゃないか!」
「直前までやってた調査では、市民の居るような場所じゃなかったのよ!」
「だがそこに俺の親戚が居た! 建物の崩落で大怪我だ!」
 私の家族もよ! 僕の父親も! と怒声が響く。とても、話を聞いてもらえる状態ではない。

 実のところ、フロラのメンバーたちにも事情がよくわからないのだ。
 標的にする施設には敵しか居ない、と前日の朝まで調べつくし何度も確認した。しかし翌日行ってみれば30名を超える市民が働かされていた。それに気付かず(気付いても時既に遅く)施設の破壊や大きな攻撃に巻き込んでしまい、多くの重軽傷者を出すという結果に。
(大変なことになってしまった‥‥)
 リーダーのヨツモト・アンリは、市民を傷つけてしまった痛みや、未だに把握できない現状への困惑に顔を歪める。
(どうしてこんなことに‥‥誰かが市民を動かした‥‥? でも、誰が?)

 総勢130人前後が集まる広場。
 そこへキメラの群れが突き進んできていることを、彼女たちはまだ知らなかった。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
春夏秋冬 立花(gc3009
16歳・♀・ER
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG
狗谷晃一(gc8953
44歳・♂・ST

●リプレイ本文



 何よりも先ずキメラの脅威を取り除くのが先決‥‥そう考えたのは、終夜・無月(ga3084)とエレナ・ミッシェル(gc7490)の二人。彼らは、依頼主・運搬会社の通信施設から受けた情報をもとに、運動公園へ向かってくるキメラの群れを迎撃すべく早急に動き始めた。

 さて、その頃公園の広場では‥‥。
「だから私たちはそんなつもりでやったわけではなく‥‥!!」
「じゃあどんなつもりだ! なぜ我々の家族たちを傷つけた!?」
「わかりません! 事前の調査ではそこに彼らが居るという情報は全く無かった!」
「意味が分からない! それのどこが事前調査だ!!」
 市民がチーム・フロラを取り囲み怒号が飛び交っていた。

 到着したラウル・カミーユ(ga7242)は、サブマシンガンを空に向けて連射。
 ダダダダダダダダダダダダ!!!
 大きな銃声が響いて群衆もさすがに驚き、言い合いをやめた。
「はい、注目ー♪ お喋り途中デ悪いんだケド、キメラの群が向かって来てるお知らせデース」
 結構大変な状況を軽やかに伝えるラウルの言葉を聞いて、市民が戸惑い、フロラの面々も顔を見合わせる。ラウルは、僕達キメラ倒しに行くケドさ、と言葉を続けた。
「もしもの為に、ソノ人達を壁なり盾なりスルとヨイと思うヨ。武器渡すかどうか、どっちが安全かは自分で判断よろー」
 提案だけ述べて、彼はタタタッと広場の外へと走り去る。
 それを見送りつつ、狗谷晃一(gc8953)が素早く市民に怪我人は居ないか確認した。現状、言い合いになってはいるものの、喧嘩などは発生していないようだ。聞けば事件で負傷した者は既に病院へ搬送済みだという。病院の位置を教えてもらう晃一とは別の場所から、春夏秋冬 立花(gc3009)が市民に声をかけた。
「‥‥一体、何があったんですか」
「レジスタンスチームが、バグア施設強襲作戦と称し、市民に多数の怪我人を出したんだ!」
「ですからそこに市民は居なかったはずで‥‥!」
 また喧嘩のような言い合いが始まりかけるのを立花が遮る。市民に向けて尋ねた。
「わかりました。ですが、今ここにキメラが向かってきています。レジスタンスの皆様のうち能力者だけでいいので、借りても宜しいでしょうか? 勿論、武器込みで」
 市民がフロラから取り上げた装備類の山をちらりと見る。しかし、壮年の男が進み出てきっぱりと言った。
「断る! たとえあんたたち傭兵が彼女らを監視するとしても、だ。同じ能力者同士であれば互角に近いし、見たところ人数も大差無いようだ。彼女らが何か仕出かした時、こちらに被害が出ないとは言い切れんだろう? 悪いが信頼は出来ない!」
 ある程度理性的な返答をした男に、そうですか‥‥と立花は相槌を打ってから話す。
「しかし今私が明らかに思うのは、彼女らの助けがないとあなたたちに被害が出る、ということです」
 使わせてください、と言葉を重ねた立花。
 そこへ、ハッハッハッハッ、と高笑いが。須佐 武流(ga1461)である。
「笑わせてくれるよな、お前ら」
「なんだと?」
「お前らさぁ、もし相手がこいつらじゃなくてバグアだったら、同じことやるか? 断言してやる、絶対にしないとな」
「当然だろうが? バグアが相手なら抵抗した瞬間死ぬ」
 苛々と顔をしかめながらも、静かに答える男。武流は頷く。
「その通りだな。要するにお前らは現在、自分より立場が弱くなりそうなやつらに勢い良く噛み付いてるだけだ。ただ単に自分らの不幸嘆いて何もしてねぇだけじゃねぇか?」
「ああそうだとも! 圧倒的な強さの敵におびえながら、これまで頼りにし協力さえしてきたレジスタンスには裏切られ!! これ以上何が出来る!!」
 遂に声を荒らげた男に、武流は問いかけた。
「そうやって嘆いて何が変わる?」
「‥‥ッ」
「別に体張って戦えとか言う気はねぇ。もっと他に、出来ることは無いのかテメェで考えな」

 常日頃から身近に脅威を感じながら過ごす中で、心の支えでもあったレジスタンスが自分たちを攻撃した‥‥それは市民にとって大変衝撃的な出来事であり、恐怖体験である。衝撃は人を混乱させ、恐怖は人を縮こまらせる。
 立花と武流の説得や発破は、とてつもないストレスの中に居る市民たちに対して簡単には伝わらなかった。しかし、『この状況では何も物事が進まない』ということを彼らに気付かせたようだ。

 立花は、返答しない、いや返答できない市民側からレジスタンスの武装を取り上げようとした。まだまだ納得は出来ない市民らの中にはそれを止めようとするものが居たりする。

「死にたくなければ逃げろっ! ここを離れるんだ、死んだら治してやる事もできねぇぞ!」
 時間的にはキメラがそろそろ到達してしまう頃だ。晃一が見かねて避難を呼びかける。が、市民は現状に躊躇していたり、協力的な気持ちになっていたりと、意見が割れていてまとまらない。武器をどうするか、貸すのか、レジスタンスはどうするのか、動かしていいのか? 混乱状態の大きな集団は中々動かず、遂にはキメラの足音が聞こえてきてしまった。晃一は歯噛みしながら、
「守りきるしかないか‥‥」
 と腹を決める。覚醒し、彼の銀色の髪が金に変わった。

 さて、最初から市民と接触すらせずに、公園のキメラの迎撃を行っていた無月とエレナ。
 無月はスキルブリット・ストームを使用してSMG「ターミネーター」で、イノシシ型キメラ20頭の群れを真っ向から足止めにかかった。ばら撒かれる弾丸を雨霰と叩きつけられ、イノシシの突進が鈍る。隊列が崩れ、動きがバラけた。
「十字撃いきます‥‥ご注意を」
 とエレナに伝えつつSMGを大剣に持ち替え、無月は足の鈍った群れに突撃。両断剣・絶を重ねた十字撃が、無月の聖剣「デュランダル」から放たれた。薙ぎ倒されるキメラは10をこえる。

 弾丸の嵐、続く十字撃を潜り抜けた半数弱のキメラを、エレナの設置したM−183重機関銃の弾丸がお出迎え。地面に設置された機関銃が鉄砲水か何かのようにキメラを襲う。
 それでもなお走り続けるキメラが5、6頭、重機関銃の横を駆け抜けた。

 その200mほど先には、未だ装備を完了していないレジスタンスたちと、市民の大集団。
 足の動く限り走り続けるイノシシ型キメラが、彼らに迫る。

 そのときラウルが、集団から離れて駆けてきた。合図と共に全力で閃光手榴弾を投擲。
 真っ白い光と轟音がキメラの目と平衡感覚を再びキメラたちの足が鈍り、走る方向にもズレが生じる。ラウルは狙撃眼と強弾撃を用い、良い的となったイノシシたちを次々に潰していった。
 その間にエレナや無月、そして武流、立花やレジスタンスの一部も到着。エレナとラウルは射線に注意を払った位置取りで制圧射撃を開始。
「押さえてるカラ、やっちゃって☆」
 ラウルの声に、立花はレジスタンスに指示を飛ばし、武流は軽やかにヒット&アウェイを繰り返し、晃一は市民を庇える位置から超機械で能力者たちの援護を‥‥銃声、振動、金属音が飛び交う。
 そしてものの数十秒で残りのキメラは狩り尽くされた。イノシシ型キメラの進軍は完全に阻止されたのである。


 公園に安堵の空気が流れた。
 しかし傭兵たちは休む間もなく別の仕事‥‥この事件が起きたあらましを突き止めんと、依頼内容には含まれぬ調査を開始した。
 立花と無月、武流の三人は広場に残ってレジスタンスやメンバーから話を聞くことにして、エレナ、ラウル、晃一は、件の事件で負傷した者たちの居る病院へ。

 立花、無月、武流は広場で再びざわつき始めている人々を静かにさせ、怪我人が居ないことを確認してから事情聴取を開始した。‥‥とはいえ、事情がわからぬために混乱し対立し反感を抱いている市民たち。
「とりあえず、はっきりしていることだけ教えて下さい」
 立花がそう言って、話を聞き始める。百人にも上る市民集団が口々に話す内容を三人がかりで纏めていくと、『自分たちの身内が、自分たちの知らないうちに例の施設で働いていた』という共通点が浮かんだ。
 そしてレジスタンス側からの話では、『施設で働いていた者たちはまだ施設内のことを全然把握できていない様子だった』とのこと。
「短い時間で、目立たず、知られずに人を集めたわけですか‥‥」
「民間人のフリをしていた、とかでしょうか」
 まだ絞りきれない。あとは病院へ調査に行った者たちからの情報を待つことにした。

 病院に向かった三人は、医師経験のある晃一の口利きと協力要請により、ある程度怪我の軽い患者と接触することができた。ラウルが尋ねる。
「ネ、君はなんであの場に居たノ?」
「‥‥話しても、安全か‥‥?」
「問題無い、安全確保が俺の仕事だ」
 晃一の後押しに、患者が口を開いた。
「脅されたんだ‥‥姿は運搬業者だった」
「ほーウ?」
「俺は工場の作業員で、事件前夜、予定通りに業者が来た。俺ともう二人の作業員がその業者から荷物を受け取る際、『ちょっと手を貸してくれ』とコンテナの中に呼ばれた。そこで、家族の命と工場を守りたかったら協力しろ、此処へ来い』と‥‥」
 言葉を途切れさせた患者に、エレナが身を乗り出して問いかけた。
「その話、誰かに相談とか出来なかったのー?」
 それを聞いて、患者の男は目を瞑る。
「‥‥いつの間にか自分の上司を手駒みたいに使ってる上に、危ない銃を持ってる男が居たとしよう。そいつが銃と要望を突きつけてきたら、お嬢ちゃんはどうする?」
 エレナはベッドに付いた手と体を離す。
「‥‥ふつーの人なら、大人しく言うこと聞いとくところかな」
「俺も、まさにその、ふつーの人でな‥‥」
 このような調子で他の数名からも話を聞くことが出来た。
 彼らの話を総括すると、
『運搬業者本人らしく、全て同一人物と思われる。見たことの無い強力な銃を所持。用意周到に逃げ道を塞いで脅しをかけて日時と場所を指定し人を集めた。時折、人を見下すような態度が言葉の端々に感じられる話し方の男』
 となる。ペンをクルクル回しながら、ラウルが呟いた。
「‥‥バグア、かナ」
「恐らくな」
 晃一が頷き、エレナが
「もう逃げちゃったと思う?」
 と首を傾げる。
「依頼主から情報のあった、行方不明社員のことだろうしな、もう居ないだろう」
「ご遺体がどっかにあるカモ、ってくらいカナ‥‥。僕は広場の皆さんに事情の説明してくるヨ」
 席を立ったラウルが、あ、とエレナを見る。
「ここなら無線使える距離だよネ。エレにゃん、こっち残るんなら追加情報あれば連絡頂戴ナ」
「はーい」
「俺もここでしばらく患者らの様子を見つつ調べてみよう」
「ヨロシクー♪」

 広場に到着したラウルは、病院で入手できた情報を傭兵たちに伝えた。広場で聴取された内容と照らし合わせ、矛盾が無いか確認しつつ立花・無月・武流、そしてフロラや市民の代表メンバーなどと共に情報を整頓。
「ショーン・レイニーという方は、長くこの辺の担当でした?」
「そうね。土地勘はかなり有るはず」
「それじゃあこの道も知ってるだろうな」

 ショーン・レイニーという運搬会社の社員が、この地での仕事前か仕事中、バグアに体を乗っ取られた。バグアは社員に成りすまして仕事をこなしつつ、社員の記憶を利用し脅して人を集め、そのまま行方をくらました‥‥ということらしい。証拠が揃っているわけではないが、話のつじつまは全て合う。

「でもこれだけが事件の原因ってわけじゃナイと思うヨ。事前調査をしていたとはいえ、リアルタイムで張り付いていれば市民への被害は無かったかもしれナイ」
 ラウルの言葉に、 レジスタンスチーム・フロラのリーダー、アンリが静かに頷いた。
「ええ‥‥人手不足は理由にできませんね」
 そしてフロラからは市民へ謝罪があり、医療面の支援を行うことも約束した。それだけで関係を修復できるとは言えないが。

「ショーンは居なくなってしまったのですか‥‥」
 戦友を失い、市民を傷つけ、アンリを始めとするフロラの女性たちの表情は暗かった。

 一仕事終えて、ラウルがフロラの一人の肩をトントンと叩く。顔を上げるのはモア。フルネームはモア・ブランシュ、つい最近まで軍に所属する医師だった女性である。
「‥‥はい? あぁ、貴方は」
「モアせんせ、軍医辞めたんダネ」
 ラウルがこそっと短く話しかける。彼は一度、この人物からの依頼を請け負ったことがあった。彼女もそれは覚えており、
「えぇ‥‥身軽で、いいですよ」
 と小さく微笑み、言葉少なく答えた。


 レジスタンス、市民、傭兵、軍人。それぞれが手に手をとって動けば変わるものも多いだろう。しかし‥‥四国に照準を合わせた大きな敵、ミスターSは彼らを寸断しようとしており、既に被害は広がっている。
 それぞれに出来ることは多くもあり、少なくもある。この日、それを痛感した面々であった。