タイトル:砲戦型ナイトフォーゲルマスター:菊池五郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 2 人
リプレイ完成日時:
2008/05/10 23:42

●オープニング本文


 初の陸戦型ナイトフォーゲル、LM−01『スカイスクレイパー』の開発は成功した(尚、ショップなどの表示は「スカイクレスパー」となっているが、スカイスクレイパー(skyscraper=摩天楼)の誤りである)。
 先の大規模作戦『五大湖開放戦』への投入を間に合わせる為、一部、近接武器やアクセサリの開発は間に合わなかったものの、ドローム社はゴーレムやタートル・ワームといったバグアの新兵器の投入をいち早く察知し、それらの対抗手段としてスカイスクレイパーを開発していたという。
 スカイスクレイパーに続く陸戦型ナイトフォーゲル、LM−04『リッジウェイ』の開発も進めているし、要望の多かった水中用ナイトフォーゲル、W−01『テンタクルス』も量産体制に入っている。また、能力者から提案のあった、そう遠くない未来に来るであろう砂漠での戦いに備え、試験的に関節部に防塵装置を装備したナイトフォーゲルの開発もある。

 しかし、その間、FG−106『ディスタン』など、ドローム社のナイトフォーゲル技術のノウハウを活かした機体が他社で開発されており、ドローム社の若き女社長ミユ・ベルナール(gz0022)は、ドローム社の実質の運営を握っている役員達より、シェイドに対抗できる新しいナイトフォーゲルを開発するよう言われていた。
 もちろん、ミユにもプランがない訳ではないし、そろそろ飛行機型のナイトフォーゲルを開発したいと思っていたところだ。
 それに先んじるかのように、ミユをチーフとする製作チームは、スカイスクレイパーの開発と平行して、シェイドに対抗する手段の1つとして、『高出力SESエンハンサー』の開発を進めていた。
 これはナイトフォーゲルのSESエンジンの出力を20%高め、搭載されているレーザーや粒子加速砲といった非物理武器の威力へ還元するものだ。理論上、消費練力はそのままに、威力を20%高める事が可能だ。
 五大湖開放戦でもたらされた、バグアの兵器に対し、非物理攻撃が効果的というデータがそれを裏付けしている。
 だが、高出力SESエンハンサーには致命的とも言える欠陥があった。SESエンジンを高出力化させる反動で、放熱量が通常の3倍になってしまうのだ。
 これでは現行のナイトフォーゲルの冷却機構では冷却が間に合わず、長時間の運用は不可能なので、このままでは搭載する事は出来ない。

 ラスト・ホープにある、ドローム社の社長室。
「‥‥知覚に特化したF−104か‥‥」
 コンソールに打ち込んでは消す動作を続けていたミユは1人ごちると、大きく伸びをした。
 モニターにはCGモデリングされたF−104『バイパー』がくるくると回っている。ミユは当初、高出力SESエンハンサーをバイパーに搭載しようと考えていた。レーザーや粒子加速砲は重量があるので、『ブースト空戦スタビライザー』を搭載しているバイパーが打って付けだからだ。
 しかし、冷却機構の問題を解決しない限り、高出力SESエンハンサーは搭載出来ない。
 ドローム社では結果が全てだ。先日も結果を出していない部署に、結果を出さなければ開発費の支給の打ち切ると告知したばかりだ。それはミユも例外ではなく、このまま高出力SESエンハンサーの搭載の目処が立たなければ、開発を断念せざるを得ない。
 伸びをしていた手をコンソールへ戻し、ふと、視線を下げると‥‥そこには見慣れた双房があった。
 Gカップオーバーのそれは、地球の重力に打ち勝って垂れる事無く、ビジネススーツの上からも窮屈そうに押し込まれているように見て取れる。織り成す谷間は黒部渓谷のように深く険しい。
 コンソールの上に乗っていたミユの両手が、おもむろにそれを鷲掴みにした。
 ――ふにふにふにふに。ふにふにふにふに。
 メロンのようにパンパンに張り詰めているが、揉むとプリンのように柔らかく、それでいて張りは全く失われていない。
「く‥‥ふぅ。はぁぁ‥‥」
 思わず夢中になって揉んだせいか、デスクに置かれた二つ折りのカード型の手鏡に映る自分の頬が紅く染まり、目が潤んできたので、慌てて手を止め、熱を帯びた熱い息を吐く。
 着目すべきはそこではなく、『胸そのもの』だ。
 視線を更に落とすと、スーツと同色のプリーツスカートが目に留まる。
「そうよ、これよ、これだわ! 何で今まで気付かなかったのかしら」
 プリーツを触っていたミユは喜々とした声を上げる。灯台下暗しとはまさにこの事だ。
 ミユはコンソールへ手を戻すと、再び打ち込み始める。CGモデリングされたバイパーが、みるみるその姿を変えてゆく。
「胸部にスペースを設けて高出力SESエンハンサーを搭載して、翼を放熱用の冷却索として利用すれば‥‥人型の時にはこうなるわね‥‥よし」
 計算上でも、放熱量が基準値に収まっている。これなら高出力SESエンハンサーを搭載しても、現行のナイトフォーゲルと同様の運用が可能だ。
 モニターに表示されたCGモデリングのナイトフォーゲルは、独特のフォルムをしていた。胸部に出っ張りができ、腰回りにスカートを思わせるギミックがあるのだ。
「あなたは、非物理攻撃に特化した砲戦型ナイトフォーゲル、PM−J9『アンジェリカ』、愛称はリカよ。後は能力者と図って、より高い完成度を目指さないと」
 モニターに映る生まれたてのナイトフォーゲルへ、ミユは嬉しそうに命名したのだった。

 斯くして、砲戦型ナイトフォーゲル、PM−J9アンジェリカに対する能力者の意見を聞く場が設けられる事となった。

●参加者一覧

真田 一(ga0039
20歳・♂・FT
クリス・ディータ(ga8189
16歳・♀・DF
秘色・織(ga8241
17歳・♂・DF
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
香坂・光(ga8414
14歳・♀・DF
森里・氷雨(ga8490
19歳・♂・DF
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532
25歳・♀・AA
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA

●リプレイ本文


●ドローム社
 ラスト・ホープ内にあるドローム社。
 多くの能力者が愛機の改造で訪れるが、それは整備工場に限っての事。ロビーの受付より奥へ入る事はそう無い。
 以前、社長のミユ・ベルナール(gz0022)と新型ナイトフォーゲルの開発プランについて話し合ったファイターの真田 一(ga0039)は、受付で用件を告げ、カードキーを発行してもらっている。
 彼の横にはダークファイターの九条・縁(ga8248)の姿があった。後学の為に受付の仕方を見ておきたいとは本人の弁だが、その実は麗しい受付嬢が目当てなのは、その伸びきった鼻の下を見れば明白だ。
「パイの美味しいファミレスやメイド喫茶同様、顔とスタイルが選考基準に入っていますね」
 ダークファイターのクリス・ディータ(ga8189)は受付嬢を見ながらそう漏らすも、彼女も全く引けを取らない美少女だ。
「流石はドローム社ですね。隅々まで手入れが行き届いています」
「ピカピカで気持ちいいですよね‥‥もっとも、行き届いているのは手入れだけではないようですが」
 ロビーは清潔感に溢れ、綺麗好きなダークファイターの森里・氷雨(ga8490)もご満悦の様子だ。
 ほぼ死角の無い監視カメラの設置や、その死角に警備員を配置するなど、糊の利いたカジュアルスーツに身を包んだダークファイターのヤヨイ・T・カーディル(ga8532)は、昔取った杵柄か、このロビーを見ただけでも警備体制に隙がない事を察知していた。
 一がカードキーを発行してもらうと、受付の奥にあるゲートを通って会議室へ。
「ようこそドローム社へ。皆さんが来た連絡を受けて、お茶の用意をしていたの。紅茶で良いかしら? 良い茶葉が手に入ったのよ」
「う、うちも手伝うとです」
 中央に円卓を設えた会議室で、お茶の準備をして待っていたミユがダークファイターの秘色・織(ga8241)を笑顔で出迎えた。
 ファイターの守原有希(ga8582)は年上の女性に弱い為か、緊張して少し九州弁の訛りが出てしまう。気を取り直して、青の袴の着物に襷を掛け、長いみどりの黒髪をアップに纏めて緑の塗り箸で留めると、ミユを手伝って紅茶を配る。
「ミユ社長さん、何度見ても大きいなー。どうしたらあそこまでなるんだろ‥‥」
「大きいし、色っぽくて、大人の女性って感じだよね!(‥‥でも、どうしてAC研を潰そうとするんだろう‥‥)」
 ダークファイターの香坂・光(ga8414)は、ミユのGカップオーバーの胸が気になるのか、円卓の1つに腰掛けると、先程からずっと見つめていた。光のスタイルは、同年代の女の子から見れば標準だが、そこは大人の女性に憧れるお年頃。
 グラップラーの水理和奏も同感だが、彼女は懇意にしているドローム社の開発室へ、ミユが三行半を突き付けた事を憂いていた。


●アンジェリカ
「今日はナイトフォーゲルを実際に使用されている能力者の皆さんの、PM−J9、アンジェリカへの忌憚ない意見を聞かせて下さい」
 ファイターの榊兵衛達全員が思い思いの席に着くと、ミユがコンソールを操作する。席の前に置かれたミニディスプレイに、PM−J9『アンジェリカ』のCG画像が表示された。スペックは公開されていないが、手元のコンソールを操作すると、戦闘機形態とロボット形態の画像や武装が見られた。
「胸はある程度装甲厚めのボインで‥‥と思ったんだが」
「これはまた、随分と趣味に走ったフォルムだな」
「はい、『ブースト空戦スタビライザー』のお陰で、ある程度、航空力学は無視できますから」
 アンジェリカのロボット形態は、依頼書で読んでいたよりも女性的なフォルムではなかった。ガッカリ気味の縁。
 むしろ、シューティングゲームの自機として登場しそうなデザインの戦闘機形態の方が趣味に走っていると榊兵衛は思えた。
「わたしはまだ能力者になったばかりで、ナイトフォーゲル戦の経験はありませんが、精一杯の意見を述べさせて戴くつもりでいます。少しでもお役に立てれば幸いです」
「私もナイトフォーゲルでの実戦経験が無い身で大変恐縮ですが、宜しくお願いします」
「でも、新米故の先入観の無さも役に立つと思います」
「そうだね。俺らの意見で、アンジェリカをいい機体に仕上げたいね」
 クリスはまだナイトフォーゲルによる実戦の経験はないし、ヤヨイと有希、織はこの依頼が初めてになるが、だからこそ頑張りたいと意気込みを語る。
「アンジェリカが人型になった場合、放熱の役割を果たす翼がスカートの部分になるとの事だけど‥‥想像していたよりも小さめで助かったよ。どのナイトフォーゲルにも言える事だけど、放熱も翼も重要な役割を果たすところだから‥‥あまり広げ過ぎて流れ弾にも当たってしまうようだと、かなり致命的になるからね」
 『SESエンハンサー』の放熱板を兼ねた翼は、ロボット形態のCGを見る限り、スカートと言うよりは背中に付けたリボンっぽく見える。スカートへの被弾率の高さを心配していた織だが、それは解消された。
「ただ、冷却機構を翼一対のみに依存するのは、被弾を避けて通れないナイトフォーゲル戦において、やはり致命的でしょう。冷却板にペルチェ素子を用いて放熱効率を向上させるほか、プリーツやパニエといった補助翼を付けて複葉機としたり、縁さんの意見にもありますが、胸部にブラジャー、冷却剤パック付のメトロニウム追加装甲を付けたり、胸部にエアインテーク、腰部にエアダクトを設けて、冷気や水蒸気を確保するのは如何でしょうか?」
「翼にペルチェ素子を使用すると、メトロニウム単一より防御力は落ちてしまいますね。胸部の追加装甲は興味深いです」
 氷雨の冷却機構の冗長化と徹底的な効率上昇の意見は、榊兵衛の後押しもあった。ミユは追加装甲を兼ねたブラを気に入った様子だ。
「性能は、“知覚に特化したF−104『バイパー』砲戦型ナイトフォーゲル”の名に恥じないようにして戴きたい。高い知覚は当然として、遠距離からの砲撃を想定しているのならば高い命中は必須です。それに、バイパーをベースにしているのですから、高い装備力に加え、多い副兵装・アクセサリスロットはそのままにして欲しいところです」
「非物理武器特化の砲撃用機体なら、いっそそこに更に特化させるのもいいと思うんだよね。物理攻撃や回避を捨てて、射撃の命中と非物理攻撃の威力に当てるの!」
「物理攻撃は岩龍以下にしてでも、知覚の基本値は悪魔や看護士を上回れば良し!」
「私も同感です。やはり非物理攻撃特化と言う事ですし、知覚は現行機よりも高めがいいですよね。いっその事、バイパーの攻撃と知覚を入れ替えてしまうくらいで」
 クリスの発言を切っ掛けに、話題はアンジェリカのスペックへ移る。光も縁もヤヨイも、アンジェリカはバイパーをベースとしている以上、知覚を現行のナイトフォーゲルのトップクラスとした上で、バイパーと同等の装備力や兵装を求めていた。
「‥‥非物理武器を主武装と考えるなら、練力もバイパーより高くしないと‥‥顧客は食いつかないだろうな。最高速と旋回能力は、バイパーより向上を期待したいところだ」
「ブースト空戦スタビライザーの練力消費も考えなければなりませんしね」
「あまりに遅すぎると、他の機体と足並みを揃えて、戦場へ速やかに投入できませんから」
 練力や移動力の心配も尽きない一と有希、織。
「命中向上の素案として、LM−01や岩龍といった電子支援機との連携の運用は出来ませんか? 具体的には電子支援の受信機能を強化するというものですが‥‥」
「スカイスクレイパーや岩龍の電子支援は対ワーム用ですから、すぐに、という訳にはいきません。機体そのものの能力とするより、アクセサリによる補助の方が実現しやすいでしょうか」
「特化型は非物理攻撃に強い敵相手は厳しくなるけど‥‥そこは1人じゃないしね、僕達は。他の人との役割分担すればいいんだろうしね♪」
「非物理兵器の射程に入るまでに撃墜されないか心配だが、『盾』のナイトフォーゲルがどこかで開発していると聞いた気がするし、物理兵器に対してはバイパーもいるので、腕と小隊の連携‥‥バイパーと入れ替わりで相手の攻撃に対処するとか‥‥で何とか‥‥」
 有希の電子支援機との連携案は、すぐに実現できるものではなかったが、光と一が言うように、ナイトフォーゲルは単体で運用する事はそうないので、アンジェリカの弱点は仲間との連携で補えば問題ないだろう。
「アンジェリカは、バイパーの基本スペックを維持しつつ、知覚と命中、練力を高めます。ただ、高スペックの機体は改造費も最初から高くなりますので、その点はご了承下さい」
「強化に伴う高コスト化は仕方の無い事だと思います。バイパーベースの強化バリエーションという時点で、ハイエンド機は決定したようなものですし。ディアブロやディスタンに対抗出来る機体を期待致します」
「最新世代機は、導入後の改造強化コストと難易度がネックです。そこでリカは、特定箇所なら強化難易度を低下させるのはどうでしょうか?」
「そうだな。ディアブロ対策として、機体強化で知覚を強化しやすく‥‥改良の余地を残して‥‥は邪道か?」
 意外な事に、改造費に関してはそれ程反対意見はなかった。ヤヨイも氷雨も一も和奏も口を揃えてディアブロやディスタンの名を挙げているように、アンジェリカはそれらの機体同様、シェイドに対抗できるハイスペック高級仕様が求められていた。


●知覚兵器案
「改造費や難易度の話が出ましたけど、練力は大型タンクをショップへ卸す事で代替が利くと思います」
「前々から不満に思っていたのですが、何故試作型ばかりがショップに並び、完成型は出回らないのでしょう? ‥‥能力者は実験台ではありません。せめてドローム社製品だけでも改善して欲しいです」
 装備力や兵装数がバイパーを基準にしている事を前提に、氷雨が代案としてショップに並んでいない装備の充実化を切り出すと、クリスが腹を割って意見をぶつけてくる。
「この場での確約は出来かねますが、今後の開発展開として検討しましょう。ですが、当社の製品は、試作型でも十分実戦に足る性能を有していると自負しています。実験台、というと言い方が悪いですが、実戦で得られるデータは今後の開発に繁栄させて戴いています」
「それが企業ってモンだし、大人の事情って奴だろ。今後の開発に繁栄させてもらえるんなら、天使のリカちゃん以外にも、摩天楼や他の現行機が使う事を考慮して、バルカンとスナイパーライフルのポジションに収まる知覚兵器が欲しいな。今までの戦闘データを見たところ、防御は高くても抵抗はそれ程でも無いって連中が多い。そういう連中には物理系だと牽制にもなりゃしねえ事も有り得るし、何より知覚兵器の弾幕はビジュアルが格好いいしな」
「光の弾幕、格好良さそうだよね! それなら、全方位系の範囲兵器があると面白いかなって思ったんだ。味方まで巻き込む可能性が高いから使いどころは難しいだろうけど」
 ミユの返答を良い意味で捉え、縁は知覚兵器の開発案を挙げる。その発想は光に受けたようで、2人して弾幕の話でしばし盛り上がる。
「非物理のスナイパーライフルも良いが、加速砲やレーザー砲の射程が少し伸びないものか‥‥射程を延ばすとなると、やはり威力は下がるか‥‥出力を上げればサイズが大きくなるか‥‥」
「2連装レーザーキャノンはどうでしょうか? 砲を2つにすれば威力も上がるという単純な考えからですが、既存のレーザー砲を流用すれば比較的容易に開発できる‥‥と思うのは素人考えでしょうか? 後、威力よりも練力消費を抑えて弾数を増加させた低出力版粒子砲も欲しいですね」
「その気持ちは分かるなぁ。既存のリロードが効かない知覚兵器の為に、1回分の補給の役割を果たすエネルギーパック的なアクセサリなんかはどうかな? アンジェリカが出回れば、知覚兵器が使われる機会が増えるだろうけど、いちいち補給に戻らなきゃいけないんじゃ手間がかかりすぎると思うんだ。せめて1回分でも手間を省く事ができるなら状況もかなり変わるんじゃないかな?」
 アンジェリカが砲戦型ナイトフォーゲルを謳っている事もあり、一は知覚兵器の射程を延ばす案を出す。一方、ヤヨイと織は現行の知覚兵器のネックとなっている消費練力やリロードを補う案を挙げた。
「エネルギーパックが開発されれば、合わせてM−12帯電粒子加速砲の量産化は必須だと考えます」
「G放電装置もショップへ卸して欲しいところですが‥‥社長から未来科学研究所へ打診して戴けませんか? もしくはドローム社で、弾数を増加させたり、リロード機能を付与したり、消費練力を低下させるといった、継戦能力の改良を加えて新規で生産して欲しいです」
 クリスの意見は先の発言の続きだが、流石に他社へ働き掛けるのは難しいのか、有希の言葉にミユは微苦笑を浮かべた。
「うちの理想は、使い易い牽制武器として、練力消費を不要とし、リロードが可能で且つ弾数を増加させた高分子レーザー砲の分隊支援火器化を推します」
「火器もいいですけど、水中での運用も視野に入れる必要があるでしょう。投擲も可能な小型レーザースピアは、接近戦に弱いであろうリカの弱点を補えると思います」
「確かに、これからの戦いでは水中用の装備も必要だな。高分子レーザークローの技術を応用して、水陸両用デスサイズ‥‥その刃に転用できないか?」
「それなら高分子レーザークローの地上用バージン‥‥じゃなかった、バージョンも欲しいぜ」
 有希の意見を皮切りに、氷雨と一、縁が接近戦用の兵器の案を出すと、ヤヨイは低出力版レーザーソード、和奏は非物理対応型シールド案を、それぞれ挙げた。
「後はせっかく女性型なんだからこう‥‥胸のところが開いてミサイルやレーザー、みたいなのがあったら面白いな♪ でも固定武装的になっちゃうかな?」
「おっぱいミサイ‥‥こほん、胸部ミサイルは欲しかったんですけどね。胸部にはSESエンハンサーを内蔵していますから」
 光がミユの胸を見ながらそう告げた。ミユも胸部ミサイルについては非常に残念がっている様子だ。


「貴重なご意見の数々、ありがとうございます。アンジェリカの最終調整や今後の開発展開に活かさせて戴きます」
「俺もナイトフォーゲルは大好きだから、アンジェリカがいい機体に仕上がる事を願ってるよ。何か必要な事があったら何でも言ってね」
 ミユが礼を述べると、織ははにかみながら応えた。彼らの目の前にはお土産として「てんたくるすのぬいぐるみ」が置かれている。
「お疲れさまでした。揉んであげるね☆」
 和奏はミユが頑張ってる姿を見て、社長も結果を出さなければならないドローム社の厳しい現実を肌で感じると、自分ももっとも大人にならなければと考え直し、ミユの肩を揉んで和解した。