タイトル:vorpal bunny girlマスター:菊池五郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/04 22:34

●オープニング本文


 ――大阪・日本橋。
 南海難波駅南口〜地下鉄恵美須町の2駅周辺、徒歩で約20分くらいの距離のこの一帯は、関西の電気店街として発展してきた。
 東京・秋葉原がそうであったように、デジタル系メディアを基盤としたヲタク文化は電気店街に根付いてゆく。大阪・日本橋も多分漏れず、電気店の中にヲタクショップが点在し始め、毎年その数を増やしていった。
 そして、ヲタク文化の発信地の中心だった秋葉原がバグアの占領下に置かれた後、ヲタク達の活動の舞台は、元々受け入れやすい土壌であった事もあり、大阪・日本橋へと移った。
 今日、大阪・日本橋は“第2の秋葉原”と呼ばれ、通称『ヲタウェイ』として発展を続け、栄えている。


 ヲタクショップの店頭に佇む1人の女性を前に、そのヲタクは立ち止まった。サラサラの髪の女性は微動だにせず、彼に微笑み掛けている。
 見れば人間離れした大きく円らな瞳に、肌は色白だがどこか硬質感がある。
「お、このキャラの等身大フィギュア、出たんだ」
 そう、女性は人ではない。ゲームキャラを模したフィギュアの中でも、ゲーム内で設定されている身長の高さを実際に有した1/1スケール、文字通り、“等身大のフィギュア”だ。
 その等身大フィギュアは日本橋でも人気のあるゲームキャラだった。
 ヲタクは遠慮なくペタペタと触る。髪の毛はかつらの素材を使用して本物そっくりに仕上げているし、関節は可動式でポーズは思いのまま。肌は作り物の硬質感こそ拭えないが、柔らかな軟質だ。着ている衣装も安物ではなく、そのままコスプレに着ていける本格仕立てだ。
 ディスプレイとして置かれた等身大フィギュアのお値段は48万C。何と、約岩龍5機分の貸出権に相当するが、これでも初回受注分は既に売り切れており、次回受注の予約も半分以上が埋まっているというから驚きだ。
 ちなみに、関節が動かず、髪の毛が樹脂製で固定されたものは25万Cと、こちらも刀の蛍火並みのお値段だ。
「48万Cか‥‥ボーナスが出たら買うしか!」
 これを安いと取るか高いと取るかは人それぞれだが、このヲタクは安いと取ったようだ。
 日本橋にいると金銭感覚が狂ってくるのは間違いないだろう。
 ヲタクが予約しようと店舗に入る。

 ――斬!! ‥‥ゴト‥‥。

 ヲタクの背後で風を切る音が聞こえ、その後、何か硬い物が地面に落ちる音がした。
 ヲタクが振り返ると、先程まで見ていた等身大フィギュアの頭部が足下に転がっていた。
 それをひょいと持ち上げる手。ヲタクがカフスを付けた手の元へ視線を追わせると、大胆に開いた胸元と滑らかな肩が見えた。着ている服はどうやら赤いレオタードのようだが、首には蝶ネクタイを付け、頭にぴょこんと兎の耳を生やしている。
「バ、バニーガール!?」
 ヲタクが驚くのも無理はない。そこにいたのはバニーガールさんだったからだ。歳は20歳前後の妖艶な女性だが、左手には髪の毛を掴んで等身大フィギュアの頭部を持ち、右手には1mはあろうか、わずかに反った鎌らしき刃を逆手に持っていた。
 どうやら等身大フィギュアの頭部を切り落としたのは、このバニーガールさんらしい。
 バニーガールさんはにっこりと微笑むと、ヲタクショップの店舗の上へ跳躍し、姿を消した。人間離れした跳躍力だった。


 ――ラスト・ホープ、UPC本部。
「ここ1、2週間の内に、日本橋で店頭にディスプレイされていた等身大フィギュアの頭部が狩り取られる事件が30件起きています」
 受付カウンターで、ビジネススーツ姿の女性、ミユ・ベルナール(gz0022)はそう切り出した。メガコーポレーションの1社、ドローム社の若き女社長だ。
「犯人はバニーガールという事が分かっています。赤・青・黄の3色のレオタードを着たバニーガールが、複数目撃されていますので、犯人は3人と考えられます」
 得物は共通して1m弱のわずかに反った鎌らしき刃物だ。
「人間離れしたスピードや跳躍力から、おそらくバグアの手の者だと考えられますが、一部で能力者の仕業ではないかと疑われています。お陰で、弊社が日本橋に開店させた健全バニー喫茶『HJK』の客足が著しく鈍っています。この事件を解決しない限り、HJKは冬は越せません」
 健全バニー喫茶『HJK』は、ドローム社が出資して経営しているコスプレ系飲食店だ。ミユの口振りから、HJKへ苦情が寄せられている事が窺えた。
「バニーガール達の実力を推し量れば、能力者の首も等身大フィギュアの頭部と違わず、1撃の元に切り落とせると推測されます。今のところは等身大フィギュアの頭部で済んでいますが、いつ、次のターゲットが本物の人間になるか分かりません。皆さんはそうなる前に“ヴォーパルバニーガール”を倒して下さい」
 ヴォーパルバニーとは、見た目は可愛いが、前歯が妙に尖っており、人の首を一撃で刎ねる恐るべき架空のウサギの事だ。
 ミユはヴォーパルバニーとバニーガールと掛け、等身大フィギュアの頭部を狩るバニーガール達をヴォーパルバニーガールと呼称していた。

●参加者一覧

幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
ヴィス・Y・エーン(ga0087
20歳・♀・SN
相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
クリス・ディータ(ga8189
16歳・♀・DF
メティス・ステンノー(ga8243
25歳・♀・EP
ジュリエット・リーゲン(ga8384
16歳・♀・EL
イリス(gb1877
14歳・♀・DG

●リプレイ本文


●ヴォーパルバニーガールさんに対抗
 大阪は日本橋、ヲタウェイのメインストリートから1本路地を入ったところに、ドローム社が運営する健全バニー喫茶『HJK』(=「HATUJOUKI(発情期)」)の入ったビルが建っている。まだ開店前で、ヲタウェイ自体人影はまばらだ。
「夢を与えるバニーガールさんが、恐怖を与えるとは何たるコトか! 嘆かわしい‥‥うちは今もーれつに嘆かわしいで! そない不埒なバニーガールさんは、この正義のバニーガールさんがとっちめてやろーやないか!」
「まったくですわ! キメラであろうと能力者であろうと、『HJK』の名を貶める行為、到底許す事など出来ません! 必ず見つけ出し、正義のバニーガールさんの名の下に裁きを下してやりましょう!!」
 グラップラーの相沢 仁奈(ga0099)は拳をグッと握り締め、心の底から込み上げてくる怒りを抑えるかのように全身を震わせている。その横では、エクセレンターのジュリエット・リーゲン(ga8384)が腕を組み、ダンッ! と履いている低めのハイヒールを地面に打ち付けた。
「その気持ち、分かるわ。犯人が何の目的で人形の首を刎ねてるのかは問題じゃない。そこに悪があるのなら倒すのみよ」
 ドラグーンのイリス(gb1877)もアメジスト色の瞳を爛々と輝かせながら深々と頷く。アーマージャケットを纏い、傍らにバイク形態のAU−KVを停めている。
「ウサギさんで良かったねー。もしニンジャやクノイチだったら、裸んぼで首切ってるよー」
「‥‥それ、違うから。アレは防具を付けてないと回避率が上がるだけで、クリティカルヒットとは関係無いし」
 スナイパーのヴィス・Y・エーン(ga0087)のどこか間違った知識を、エキスパートのメティス・ステンノー(ga8243)が突っ込みながら訂正する。
「もっとも、高価な等身大フィギュアの首を刈るなんて、悪趣味な上に大迷惑だけどね」
「なんとか‥‥壊されないように‥‥したいですねぇ。壊れたら‥‥修理はします‥‥けどぉ‥‥」
 ダークファイターのクリス・ディータ(ga8189)の意見はもっともで、スナイパーの幸臼・小鳥(ga0067)は頷いた。
「僕ね、首を狩られるお人形さんが可哀想で、代わりに囮になろうと思ったけれど、みんな心配してくれて、止めたんだ‥‥」
「フィギュアは壊れても作り直しが利くわ。でも、水理和奏という人間はこの世に1人だけ、あなただけだから」
「うん、無茶言ってごめんね、そしてありがとう。HJKを力を合わせて守り抜こうね!」
 グラップラーの水理 和奏(ga1500)は、姉と慕うドローム社の若き女社長ミユ・ベルナール(gz0022)が用意できる等身大フィギュアの数が限られている事から、自分が等身大フィギュアに扮して囮になろうと考えていた。しかし、ヴォーパルバニーガールさんの実力は未知数なので、和奏の実力といえども危険な事に変わりはない。クリス達が止めるのは至極当然だ。
「しっかし、小鳥の言うように、何とか壊さないようにしたいわよね、この等身大フィギュア」
「だよねー、なまじ知ってる人だから、首狩られるシーンなんかシュールだよ」
 メティスとヴィスは苦笑を浮かべる。ミユが貸し出した等身大フィギュアは、近々、ドローム社が販売するというリネーア・ベリィルンド(gz0006)を模したものだからだ。その試作品だという。
「あ‥‥硬い‥‥私、初めて‥‥勝ったかも‥‥知れないですぅー」
「相手はフィギュアやしなぁ、ノーカンやろ」
「うっぅー、ショックですぅ‥‥」
 直接触って自分の胸と比べると、相手の胸は樹皮製であり、弾力性だけみれば“πタッチ乙女”に軍配が上がる。ちょっとだけ嬉しそうな顔をする彼女の白銀の髪を、仁奈が慰めるように優しく撫でた。その掌の温もりが、今は胸に深く染み入るのは何故だろう。
「開店までに準備を済ませないとね。等身大フィギュアで誘き寄せるとして、それまでの間は目立たないようにコスプレでもして、ヲタウェイに溶け込んでおかないと。ヴォーパルバニーガール達も同じカッコしてれば油断するかもしれないしね、リネーアもさ」
「着替えは店内をお使い下さいな。HJKにはわたくしから話を通しておきましたから、店内と店外、どちらも使えますわ」
 イリスが準備を促すと、ジュリエットがテナントビルの裏口を指差した。


●1たす2たす3バ‥‥ニーガールさん
 仁奈は自前の赤いバニースーツにうさみみヘアバンド、ヴィスは愛用のジャングルブーツに合わせて都市迷彩柄のコンバットバニースーツ‥‥と考えていたが、流石にHJKにも特殊なバニースーツはなく、ミユも直ぐには用意できないので、自前で用意するしかない。持っていない彼女は、HJKからメタリックシルバーのバニースーツを借りた。
 尚、下着のラインが浮き出るのと、バニースーツのハイレグからはみ出そうになるので付けていないらしい。
(「バニーガールの衣装か‥‥AU−KV着てアーマー形態になれば防御の心配はないんだけど‥‥もう少し小さいサイズはないの?」)
 イリスは仁奈に手伝ってもらい、HJKにある様々なサイズのバニースーツを着てみたが、どれも胸元が余ってしまう。最終的にパット補強という線になった。
 メティスがバニースーツへ着替えさせ、見事に着こなしているリネーアの等身大フィギュアを横目で見て疎ましく思ってしまう。嗚呼、もしかしたらヴォーパルバニーガールさん達が等身大フィギュアの首を狩っているのは、こういった負の感情からかも知れないと、イリスは悟ってしまった。
「客引きの振りをするのでしたら、実際になさって下さいな」
 彼女にチラシの束を差し出すジュリエットは、黒をベースにしたメイド服を着て、肩にフリルの付いたハイウエストのエプロンを合わせ、蜂蜜色の髪に束ねてフリルで縁取られたキャップの中に入れている。ヴィクトリア風のメイド姿だった。
 中世時代、貴族令嬢はメイドとして花嫁修業をしたというが、今のジュリエットはまさにそれで、
「ふふ、花嫁修業に必要なあーんな事やこーんや事を、たぁっぷりとベッドの中で教えたいわ」
 と、メティスが艶やかな紫色の唇を舌なめずりし、獲物を狙う猛禽類の眼で見据えている。ジュリエットー、後ろ! 後ろ!


「ふぇぇ!? や、パフォーマンスとかは‥‥私は恥ずかしいですし‥‥うにゃぁぁ‥‥」
「小鳥ちゃん、それじゃぁダメだよ。ほらほら、もっと脚を開いて」
「あぅあぅあぅ‥‥うー‥‥私‥‥付近でも散策しようと思ってたのにぃ‥‥にゃぁー」
 HJKの入ったテナントビルが見えるT字路で、クリスと小鳥はパフォーマンスをしていた。遣り取りから分かるように、小鳥にそのつもりはなかったが、クリスに無理矢理引っ張られた形だ。
 クリスは、上半身は夏用のセーラー服で下半身はハイレグレオタード、ロングブーツを履き、ジャケットを羽織った、変身ヒロイン風の出で立ちだ。
 相棒の小鳥はねこみみふーどを被り、ねこぐろーぶを付け、クリスの歌に合わせて猫槍「エノコロ」で棒ダンスをしている。
 この辺りは歩行者天国になるので、パフォーマーも少なくない。その中でもクリスと小鳥は観客が多い。クリスがポーズを取ったり振り付け付きで往年の戦隊ものソングを熱唱し、真っ赤になりおどおどしながらも、ポーズのリクエストがあれば応じてしまう小鳥の受けがいいからだ。
 しかし、人が集まるという事は必ずしもいい事ばかりではない。
『ヒット! 小鳥、あまり長い間足止めしてられないから!』
 クリスがパフォーマンスをしている最中、囮として等身大フィギュアを設置したHJK前に、上空から黄色いバニーガールさんが飛来してきた。ヴィスは向かいのビルの屋上で待機し、ヴォーパルバニーガールさんが出現し、等身大フィギュアに斬り掛ろうとしたところをスナイパーライフルで狙撃した。
 だが、狙撃による足止めには限界がある。
「これはこれは美人なバニーガールのお姉さん‥‥倒しちゃうのはもったいない‥‥でも、命の危険がある以上、手は抜かないよ」
 ようやく一般人に退避を促して人垣を解体させたクリスが、じゅるりと口の端から垂れた涎を拭いつつ、貫通弾を込めた小銃S−01を撃つ。彼女が見てもイエローヴォーパルバニーガールさんは掛け値なしの美女だった。
 イエローヴォーパルバニーガールさんは、鎌のような得物の肉厚の刃でそれを受け止める。攻防一体の武器のようだ。
「動きが‥‥止まりましたぁ! そこ‥‥ですぅ!」
 しかし、足を止めるにはそれで十分だ。小鳥が『強弾撃』と『影撃ち』を組み合わせて、真デヴァステイターを3連射し、その間、接近したクリスがイアリスで流し斬りを繰り出す。
 ヴィスと小鳥の援護射撃もあり、クリスはイエローヴォーパルバニーガールさんと数回斬り結び、鍔迫り合いをし、その豊満な身体付きを直に味わった後、斬り伏せた。


「現れたわね、悪しきバニーガール! この“閃光の戦乙女”が成敗してさしあげますわ! って今、わたくしのおでこを見て『閃光ってそこね、クス♪』とか思いましたでしょ!? もう許しませんわ! さぁ、覚悟なさい!!」
 近くの路上でチラシを配っていたジュリエットは、ヴィスが青いヴォーパルバニーガールさんを狙撃したのを受けて駆け付けると、半ば被害妄想を交えた啖呵を切りつつ、メイド服を脱ぎ捨てる。紺のバニースーツに、お揃いの白のうさみみとカフスタイ、紺のニーソックスにハイヒール姿に変わる。
「店の前で暴れる困ったバニーガールさんがおるみたいや‥‥危ないから、片付けるまでちょい待ってて下さいな」
 ヴィスからトランシーバーで連絡を受けた仁奈は、HJKのバニーガールさん達に客を店外へ出さないよう告げると、レジカウンターの裏に置いておいたベルニクスを装備して外へ出る。
「な、なかなかやりますわね!」
 ジュリエットはエアストバックラーで鎌を受けつつ、懐に入るタイミングを窺うが、手数が多い上に隙が少なく、なかなか入り込めない。胴を狙うのは難しいと踏み、機動力を削ごうと足を狙おうとしても、それも難しい。
 強引に懐へ入り込み、レイ・バックルとファング・バックルを併用してイアリスで斬り掛かるも、紙一重でかわされ、逆に逆袈裟懸けに斬り付けられてしまう。
「焦ったら相手の素速さに翻弄されるだけや!」
 瞬天速で駆け付けた仁奈が、ベルニクスを横に薙ぐ。ブルーヴォーパルバニーガールさんが横へ跳躍してかわしたところへ、ジュリエットがイアリスを振るう。ブルーヴォーパルバニーガールさんの反撃を受けつつも、再び仁奈は跳躍を誘い、今度は疾風脚を使い、ジュリエットとの連続攻撃で着地の際の隙を衝いて一気に畳み掛けた。


「こ、これが、ミユお姉様が言っていた同人誌『姉妹丼をもう一杯』か。僕は見ちゃダメって事だけれど、気になっちゃう‥‥僕‥‥親子丼大好きなんだ! きっと、僕とミユお姉様が一緒に姉妹丼を食べるお話しなんだろうな」
 準備運動を兼ねてヲタウェイをジョギングしていた和奏は、同人ショップでミユのイラストが描かれた『姉妹丼をもう一杯』というタイトルの同人誌を見付けた。食べ物系の内容と勘違いしているが、このタイトルを見ればリプレイを読まれている方はどういう内容かおおよそご理解戴けるでしょう。もちろん18歳未満は購入禁止です。
『職人が丹精込めて作った人形を壊した罪。街の人達を恐怖に貶めた罪。ついでに、跳ねるたびに揺れる胸が許せない! このイーリス・フォン・シュヴァルツェンベルクが月に代わっ‥‥ではなく、ヲタクに代わって退治してあげる! 覚悟!!』
 そこへトランシーバーからイリスの声が聞こえてくる。ヴォーパルバニーガールさんと交戦状態に入ったようだ。
 HJKの客として出入り口付近で且つ窓際の席に座り、コーヒーを飲んでいたメティスも、ヴィスの連絡を受けてテーブルの下に置いておいたイアリスと菖蒲を持ち、直ぐに店を出る。
 目の前でイリスのリンドヴルムが吹き飛ばされた。
「イリス!?」
「き、気を付けて。あいつの武器は鎌だけじゃないよ。大振りは危険だから」
 パワー勝負に持ち込もうと、竜の咆哮で弾き飛ばそうとすると、赤いヴォーパルバニーガールさんはそれをかわし、両手の鎌を交差させ、熱波らしき波動を飛ばしてきたというのだ。
「赤いから、火属性のヴォーパルバニーガールさんなのかな? 僕のルベウスは火属性だけど、効きにくそうだから刹那の爪にチェンジっ」
 そこへ瞬天速を使った和奏も駆け付け、起き上がるイリスをメティスと2人で庇うようにレッドヴォーパルバニーガールさんと対峙する。
 自身障壁とGooDLuckを発動させたメティスが防御の要となり、イアリスで二双の鎌を受け、受けきれなかったものはロウ・ヒールで回復する。手数、素速さ共に相手の方が上なので、菖蒲は出せず防戦一方になる。
「ふふ、美しい顔をしているじゃない。これでキメラなんてとても残念だけど‥‥逃がしはしないわ」
 灼熱の魔眼が妖しく煌めく。機動力のある相手を釘付けにしてしまえば、攻撃を当てるのは容易くなる。ヴィスが援護射撃で気を逸らし、和奏が疾風脚を使って刹那の爪で斬り付け、イリスが竜の爪を付与したバスタードソードを振るった。


「1人くらい欲しかったかな‥‥」
 赤・青・黄色の3人のヴォーパルバニーガールさんは倒され、その遺体は近畿UPC軍が回収していった。造りものとはいえ、美しい顔に黄金律ともいうべきプロポーションをしていた事から、クリスとメティスはとても残念がった。
 ところで、バニーガールさんに変身ヒロインにねこみみに体操服+ブルマが揃っているのだ。そしてここは大阪・日本橋のヲタウェイ。
 ヴィス達はヲタク達に囲まれ、戦いの余韻に浸る暇もなく、ミニ撮影会が始まっていた。


 メティスと仁奈、ジュリエットはミニ撮影会を抜け出し、ミユが用意した大阪のホテルの部屋でくつろいでいた。
 3人で一緒にお風呂に入り、お互いに身体を洗いっこして親交を深めるはずが‥‥。
「っあぁ、あふ‥‥お、お2人とも、意地悪、ですのね。わたくしのその‥‥あまり大きくありませんのに‥‥ひぃあぁぁん!」
 バスルームの床に投げ出された瑞々しくしなやかな、でも痛々しい傷の残るジュリエットの肢体を、メティスと仁奈の指が、唇が、優しく愛おしく愛撫し、解きほぐしてゆく。
「ふふふ、疲れてるみたいだから癒してあげる‥‥そっちも大きくしてあげないと、ね」
「そうやな。お店じゃ出せない特別メニュー、あるんよ‥‥じっくり味わって欲しいで♪」
 ジュリエットはメティスに仁奈の身体の一部を目の当たりにし、激しく精神的ダメージを受けたようだが、2人のマッサージによって蕩けていき、やがて1つに混ざり合っていったのだった‥‥。