タイトル:【ODNK】故郷のためにマスター:きっこ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/01 21:19

●オープニング本文


 日本・九州全域では、侵攻を続けるバグア勢力と、それに対抗する人類側との攻防が続けられている。
 高良山、耳納山、発心山、鷹取山と続く耳納連山。最高峰である鷹取山からは、筑後平野や背振山、阿蘇山などを一望でき、連山の裾野一帯ではぶどう狩りや柿狩りを楽しむ事もできた。
 また、連山の南側は、星野村を中心に八女茶の産地として広く知られている。
 この自然溢れる八女郡も、日々バグアの脅威に晒されているのだ。

「また、キメラの数が増えたような気がしないか?」
「そだな‥‥倒しても倒してもキリがねぇ」
 同志の問いかけに吐き捨てるように答え、青年は足元に転がる狼キメラの腹を蹴り飛ばした。覚醒により、炎の揺らめきを宿した髪を苛立ちにかきむしる。右耳にはリングピアスが上から下までびっしりと並んでいる。
「だからって止めるわけにもいかねぇしな。見回り続けっか」
 キメラとの戦いを諦めたその時、生まれ育ったこの地はバグアの手に渡ってしまうのだ。
 仲間に無線で定時連絡をし、狼キメラ三体の討伐報告を済ませると再び移動を開始した。
 青年の名は茶屋本耕介(ちゃやもと・こうすけ)。両親は先祖代々茶農家を営んでいる。ミュージシャンを目指して上京していた耕介だったが、デビューするための足掛りが中々掴めず。気づけば傭兵として日々の生計を立てていた。
 そんな折、バグアによる本格的な九州への侵攻が開始されたという情報を耳にした。茶農家よりもミュージシャンを選んだ身ではあるが、残してきた両親や生まれ育った土地が危機に晒されていると聞いて黙って見過ごす事はできない。
 同郷の傭兵を中心に有志を募って自警団を結成して以来、八女群と代々続く茶畑を守るために戦っているのだ。
 その時無線での連絡が入った。キメラの大群と遭遇した、北に向かったチームからの増援要請だ。
「くっそぉ、マジでキリねぇ!」
 一声上げると、耕介は仲間と共に北へ向けて駆け出した。

 現在、北九州を中心に多くの地がバグアの占領下に置かれているが、小さな町や村で構成されている八女群は比較的攻勢が緩い。ゴーレムやHWなどの戦力は大きな都市に割いているのだろう。八女群へは定期的なキメラの投下に留まっている。
 それ故に、これまで少数精鋭の自警団だけでも何とかやって来れた。しかし日々数を増すキメラとの戦闘に、このところ苦戦を強いられている。
 数日後、八女群上空に現れたHWにより、新たなキメラの投下が確認された。
 二度目、三度目の投下が行なわれた直後、耕介はUPCへ援軍要請を行なった。
「――だから、今俺達とやりあってる奴らはこっちで何とかすっから! HWがこいつらの後に落としてった、第二陣と第三陣の猿共を何とかしてほしいんだって! え? 急ぐって、決まってんだろーが!! 頼むぜっ」

●参加者一覧

伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
亜鍬 九朗(ga3324
18歳・♂・FT
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
勅使河原 恭里(gb4461
14歳・♀・FC
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
浮竹 軽(gb6375
22歳・♂・EP
メシア・ローザリア(gb6467
20歳・♀・GD

●リプレイ本文


 キメラの投下地点は鷹取山南稜、星野村北端からおよそ1km。投下と同時に駆け付けた自警団10名は、星野村と投下地点の中間でキメラと遭遇・戦端を開いていた。
 キメラは通常の2〜3倍はある日本猿型が20体弱。
 ここしばらく増え続けるキメラとの戦いにより、自警団の中には戦線を退いている者もいる。現在戦力として動いているのが10名。
 交戦中の猿達は半数以上まで減らせていたが、自警団の受けているダメージも少なくはない。
「村には絶対入れさせねぇぞ! 俺達がここで踏ん張らねぇと‥‥っ!」
 仲間に檄を飛ばした耕介は、膝を折った仲間の元へ駆け寄った。行く手を遮る猿を剣で薙ぎ払うが間に合わない。
「ナオトっ!」
 耕介の声に、肉を裂く音が重なった。
 ナオトを襲った猿は右脚を切断され地面を転がった。振るった蛍火をその腹に突き立てるのは勅使河原恭里(gb4461)だ。
「‥‥まだ倒れさせねぇよ」
 背中越しにナオトに向けられた一言。その間に、猿は後方から飛来した銃弾に頭部を撃ち抜かれて動かなくなる。
 ナオトに手を貸し立ち上がらせたのは浮竹軽(gb6375)。
「ここはは任せな」
「すまない」
 前線を退いたナオトとすれ違いざま伊佐美希明(ga0214)が言う。
「伊達に山猫と呼ばれてないさ。サポは任せておきな」
 手にはサプレッサーを装着したスナイパーライフル。隠密潜行で木々や茂みに身を潜めながら、疲弊した自警団メンバーが囲まれないよう狙い澄ました射撃を放つ。先程猿にとどめを刺したのも彼女の銃弾だったのだ。
「ここは俺らに任せろって話、聞いてねぇのかよ?」
 耕介の言葉に、リュイン・カミーユ(ga3871)は樹上の猿をフォルトナ・マヨールーで狙い撃ち言い返す。
「二陣、三陣へ行けだのぐだぐだ言ってる暇があったら、さっさと片付けるぞ。‥‥というか我に命令なぞ百年早いわ!」
「任せっきりにして負傷者が、ってのもなんか嫌だしねー」
 フローラ・シュトリエ(gb6204)の振るう機械剣で腕に傷を受けて跳び退った猿に、守原有希(ga8582)が蝉時雨を袈裟掛けに振るう。
「まず村に近い場所の安全確保せんば」
 でなれけば、二陣三陣のキメラを掃討できたとて村の安全は確保できない。連戦に備え、迅速かつ確実に。無駄は極力省いて力を温存する。
「猿如きには負けませんわよ」
 メシア・ローザリア(gb6467)は傭兵となって日は浅いものの、鉄扇を手に前衛に立ち猿達に攻撃を仕掛けていく。
「あんたが茶屋本か?」
 ドリルスピアを大きく振り回し、猿達が作ろうとする囲みを蹴散らしながら亜鍬九朗(ga3324)が声をかけた。
「俺も黒木の生まれだ‥‥必ず守るぞ」
「八女郡出身か! 助かるぜ」
 押されつつあった形勢が傭兵達の加勢によって一気に傾く。間もなく第一陣の猿達は全て打ち倒された。


「地理に明るい奴、一人二人ついて来い」
 恭里が言うと、団員のうち半数は自分も行くと言い出した。彼らの様子をリュインが一瞥し。
「いらんな。足手まといだ」
「なんだと!?」
 いきり立つ団員を手で制したのは耕介だった。
 フローラと軽が救急セットで治療したとはいえ、毎日のようにキメラと戦い続けた疲労は拭えない。
 悔しさに歯噛みする団員達に有希が言う。
「深手の方は村まで退がって、残りの方はここで最終防衛線形成をお願いします」
 万一打ち漏らしたキメラが村へ向かった場合、ここに残る自警団が最後の砦だ。
 耕介は頷いて、自分と同期の能力者である伸広を呼んだ。
「俺と、こいつがついてくぜ。‥‥お前らは村の防衛、頼んだからな!」
 後半は自警団のメンバーに向けて言い、耕介は皆に続いて山頂への道を進み始めた。
 キメラの二回目、三回目の投下があったのは最初の投下地点とほぼ同じと思われる。そこから、キメラ達は星野村を目指して南下を続けているのだろう。
 探査の眼を発動した軽は男のロマンであるゴーグルを額にずらし、双眼鏡で索敵しつつ移動を続ける。
 フローラも自らの五感を頼りに警戒を怠らない。
「猿‥‥猿、ね。先回りするような知能がないとよろしいのですけれど」
 メシアがぽつりと呟くと、有希が言った。
「迂回などされぬよう、警戒だけはしておいた方がいいかもしれません」
「守原様の紹介あって、同じ戦場に立っているんですもの。同じ前衛同士、実力、見極めさせていただきますわよ」
 言ってメシアは不敵に微笑んだ。
 傭兵としての経験は、有希の方が上である。だが、始めは皆新人。新人だからといって遜る必要も感じない。いつでも自分自身というものを持っていなくては、心はすぐに折れてしまう。
「あ、わたくし森ということで迷彩服を着込んできましたの。皆様、間違ってわたくしを撃ったりしないでくださいませね?」
 優雅に微笑んでみせるが、もし誤射などされようものならお仕置きタイムを用意してあるメシアである。
 その時、一人先行し偵察にいっていた希明が戻ってきた。
 二陣のキメラも、一陣と同じく猿の集団。数もおよそ20。おそらくは、三陣も同じようなものだろう。
「しかし、数がとにかく多いな。虱潰しにするしかねぇか。それこそ、ゴーレム1体相手をする方が楽なもんだが‥‥こりゃ、単なる嫌がらせだな」
 言って希明は顔をしかめて見せる。
 耕介達の案内により、比較的傾斜の緩い場所で待機する。樹上からの攻撃は避けられないが、ここならば猿達を逆落としに勢いづかせる事もない。
 もっと開けた所まで行ければよかったのだが、希明の報告からすると、そこまで到達する前に二陣と遭遇してしまうだろう。
 一団となって真っ直ぐ斜面を下って来る猿達を囲い込めるように、また前衛後衛の二段構えで陣形を組み襲撃に備える。
「銃に初弾を装填したら、弾倉に一発補充するといいですよ」
 有希が皆に提案した。そうすることで、装弾数が一つ増える計算になる。
 気配を察知し顔を上げた軽が言う。
「皆さん、次のダンスの相手がご登場なさったみたいですよ」
 そんな軽口や明るい振る舞いも、自らの臆病さを払い除けるためのもの。軽はスコーピオンのグリップを握る手に力を込めた。


 遠くから、枝葉が揺れる音が近づいてくる。
 枝を跳び渡り、または木々の間を縫う様に四肢で駆け。こちらの気配を、向こうも察知しているのだろう。鋭い威嚇の声が複数上がっていた。
 希明は直進してくる猿をスコープ越しに捉える。
「外敵なんて無い‥‥。戦う相手は常に、自分自身のイメージ‥‥」
 味方の射程に入るより先に、長距離射程を誇る自らの武器で一体でも多くダメージを。射撃眼により飛躍した射程での鋭角狙撃は猿の眼を打ち抜いた。
「少しでも勢いを削いでおかないとな」
 射程ギリギリで、軽はスコーピオンでの迎撃を開始した。
 リュインはアサルトライフルでセミオート射撃。
「猿は大人しく山で黙ってろ」
 一撃ずつ広範囲にヒットするよう、水平に射線を移動させ多数を狙い撃つ。狙い通り、複数毎に固まって行動していた猿達の連携は乱れつつあった。
「それでしたら、わたくしは樹上の敵を」
 メシアは手にした十字架を樹上に掲げる。超機械「ハングドマン」の電磁波が、枝から枝へ跳ぶ一団を地面へと落下させた。
「敵が体勢を立て直す前に突貫です!」
 有希は頭上を抜けようとする猿にS−01を発砲する。脚を撃たれ落下した所に、すかさず蝉時雨の一撃を。間髪入れずフローラの機械剣での追撃。
「確実に数を減らしていかないとね」
 反撃する間もなく猿は息絶えた。
 素早く跳びかかる二体の猿を、九朗はスピアの柄を地面に衝いて跳躍しかわす。
 母方の祖母は、今も黒木に住んでいる。星野村にも親戚が居たはずで、それだけに武器を振るうにも気合が入る。
「此処から先には一歩も通さんぞキメラめ!」
 豪破斬撃。紅の光を放つドリルスピアが、猿の脇腹を貫いた。
 その隙に九朗に爪を振るおうとしたもう一体には、恭里の円閃が炸裂する。
 全弾撃ちつくした希明は、リロードしながら移動する。陣の中でも後方にいるよう努め、全体の動きを把握しつつ特に樹上の敵を警戒しているのだ。
 定めたポジションに身を潜め再びライフルを構えると、味方の頭上に迫る猿に狙いを定める。
「‥‥集団戦ってのは、力押しでやるもんじゃねぇぜ、エテ公」
 銃弾をばら撒いたり剣で斬り倒すような華々しさはなくとも、こういった影からの支援が味方の勝利を支える。それが希明の信条なのだ。
 恭里は樹上の敵に拳銃を向ける。
「はっ、お山の大将気取りか?」
 挑発するように連射される銃弾にいきり立った猿が恭里めがけて枝から跳びかかる。
 後方に跳んでかわした恭里の脇から、駆け込んだフローラが斬り付けた。脚を狙った、体勢を崩すための一撃。向けられたフローラの視線を受けて、恭里は抜刀と同時に円閃を叩き込む。更にメシアの鉄扇での一撃を受けて猿は動かなくなった。
 と、その時。
「後続の猿達が近づいてきているようですわ!」
 敵の進軍を察知したメシアが皆に告げた。
 二陣はまだ半数程しか片付いていない。だからと言って、退くわけにもいかない。
「完全に護り通す、それだけです!」
 有希は猿から引き抜いた蝉時雨を握り直した。


 傷を受けていた猿達も、数が増えたことで勢いを増した。
 なるべく群れを散らすよう後衛は射撃で援護・牽制し、前衛は敵を通さぬよう武器を振るう。
「そー簡単に通すわけにゃ行かねぇなぁ」
 恭里の円閃を受けてなお前進を止めぬ猿に、恭里の蛍火が閃いた。
「知ってっか? そーいうのをサル知恵っつーんだ」
 眼にも止まらぬ剣捌きが、猿の身体に二本の傷を刻み付けた。
 混戦の中でも後衛に敵を逃さぬために、前衛の味方同士の距離を空けすぎないよう気を配る。それでも多勢に無勢。前衛のみでカバーしきれるものではない。
「鬼さんこちら、と」
 味方が戦いやすいようにと、単体の気を惹くよう動き攻撃する軽に向けてフローラの声が飛ぶ。
「浮竹さん、上っ!」
 見上げた頭上に咄嗟にバックラーを掲げる。軽は全身に伝わる衝撃を受けきれず体勢を崩し、三匹の猿に囲まれた。
「か、勘弁してくれ‥‥」
 自身障壁と盾で少しでもダメージを軽減させる。生き残るためにはヘタに動くよりこちらの方が得策だと算出されたからだ。
「私が相手だよ!」
 瞬天速で駆けつけたフローラと、距離の近い九朗が一体ずつ引き受ける。
 元体操選手である九朗は身体の柔軟性を生かして猿の攻撃をかわし、素早く横に回りこむとドリルの旋撃を突き入れた。
「大丈夫か?」
「助かった〜、恩に着るよ」
 軽は残る一体にバックラー越しに銃弾を浴びせ、希明も狙撃でダメージを上乗せする。猿が倒れた後、空いた空間に駆け込みながらスコーピオンに再装填し、軽は再び前衛の援護を開始した。
 一対一では引けを取らない歴戦の傭兵も、多数の敵の中で避けきれない攻撃もある。敵は残り十体を切っていたが、皆も大なり小なりいたるところに傷を受けていた。
 それでも、攻撃の手を休めることはない。
 一体を仕留めた有希は、脇を抜けようとする猿に、刃を地面に水平に片手平突きを入れ間合いを詰める。そのまま腹を横に斬り裂くと、返す刀で袈裟斬りに繋ぐ。
 一瞬動きの止まった猿の延髄に、リュインの鬼蛍が深々と刺さる。
「これだけの数、正面から戦ってはいられん。進軍を抑えるために、まずは手足を奪うぞ!」
 言って、リュインは疾風脚で駆け未だ無傷でいる猿の右脚を横に薙ぐ。動きを奪ってしまえば仕留めるだけだ。
「うちはまだ札のあっぞ!」
 有希は無傷でいる猿の懐に入ると同時に、右脚を踏み切った。素早く回り込んだがら空きの脇に、渾身の力を込めて紅く輝く蝉時雨の刃を叩き込んだ。
「戈を止め武を為し、此処に希望ば有らしめる!」
 群れを五体にまで減らした時、傷を負った猿達は誰からともなく逃げだした。脚を引きずる一体の前に瞬天速で回り込んだフローラが立ちはだかる。
「自警団の人達の今までの頑張りを無駄にはさせないわよ」
 機械剣の薙ぎ払いが首にヒットし、猿はゆっくりと崩れ落ちた。その隣では、メシアが瞬即撃を猿の喉に突き入れる。
「―――わたくしの前に立ちふさがっていい敵など、存在いたしませんのよ?」
 戦いの中ハイになっているのか、鉄扇の刃に倒れた猿を足蹴にメシアは高らかに笑い声を上げた。
 自らの方へと逃亡してきた猿に、希明は抜き放ったイアリスを構えた。唸りを上げて跳びかかる猿を左にかわす。その脇腹に、希明は深々と刃を突き立てた。
「‥‥あの世への渡し賃だ、とっときな」
 希明が刃を抜き、猿が倒れた時。
 皆の周りいる猿は全て絶命し地に伏していた。


 駆けつけた傭兵達の活躍により、星野村は守られた。
 村へと戻る道を歩きながら、耕介は決まり悪そうにしつつも礼を述べる。
「あんたらが俺らと合流してくれてなかったら、村にキメラの侵入を許してたかも知んねぇ。来てくれたのがあんたらで、助かったよ」
 恭里は右手首に巻いていたリボンを髪に結びなおしながら言った。
「お前らの故郷は守れたか?」
 恭里の表情に複雑な色が浮かぶ。自分の『故郷』はもう‥‥。それを察し、また家族を失った自らの想いも込めて希明が耕介に告げる。
「守れる故郷があるって事は、有難い事だぜ。大事にしなよ」
「ああ。俺も、自警団のリーダー格としてもっとしっかりしねぇとな」
「自警団、自警団と。名前は無いのか? ならば『T−SAVE』なんてどうだ?」
 リュインが提案すると、自警団の二人は顔を見合わせた。
「そういや、名前無かったな」
「『T−SAVE』か、悪くねぇな!」
 嬉しそうな耕介に、リュインは笑って言う。
「Tはお茶(Tea)のTだがな」
「お茶の美味さー、焙じ茶にして茶粥にしたら贅の極みやね」
 微笑んだ有希に耕介は手を打って、
「その訛り、長崎出身か? なかなか通だな! そいや、亜鍬も同郷だって言ってたな」
「ああ、久しぶりに親戚や祖母に顔を見せに行くのも良いかもしれないな」
 最近は顔を出す機会も減ってしまったが、幼い頃は良く母と共に訪れていたのだ。
 そんな九州出身者達に、軽が言った。
「この辺って温泉もあるんだって? どっか案内してくれないかな。よかったら皆もどう?」
「いいねぇ、私も行こうかな」
 フローラが言うと、メシアも頷いて。
「悪くありませんわね」
 自分の言葉に盛り上がる皆の中で、軽はイチゴ・オレで生き残った実感を味わう。友人に誘われて傭兵になったものの、戦う度に後悔の念に晒される。
 この一杯と、救う事のできた人達の笑顔があるから。まだ、なんとか頑張れる。
「よーっし、じゃあ『T−SAVE』がとっておきの秘湯に案内してやるぜ!」
 耕介達に案内され、皆は鷹取山の秘湯と湯上り後の水出し冷茶で戦いの疲れを癒したのだった。