●オープニング本文
前回のリプレイを見る●最初で最後の前後編公演
第六回公演を終えた会場はどよめきが収まらなかった。
「KV☆が負けちゃったよ!?」
「ブラックはわるものになっちゃったの?」
「みんなだいじょうぶなのかな‥‥ホワイトとゴールドはへいきなのかな」
「おれ、ブルーにがんばってほしい!」
圧倒的な力を見せ付けるクラッシュ・バグの攻勢にKV☆が大敗するというストーリーは、特に子供達には衝撃を与えていた。
「ようやくダークラピスのテクターがお目見えしていたな。ブラックとシャドウも意外なつながりがあったようだし」
「しかしドクター・ウォッシュの新型テクターの破壊力が加わって、KV☆はどう対抗するのか‥‥巨大魔獣にKV☆だけで立ち向かうのか?」
「そりゃアレだ。基地が変形するんだろ」
「ボスってまだ出てなかったよね。カッコイイ人とかだったらいいなぁ〜」
「え〜、男じゃないかもしれないじゃない!」
「それよりあたしはシルバーとオレンジの今後が気になるかも」
一定年齢以上のファンからは、後編の展開に期待する声が多く聞かれる。
会場を出る観客達の声を聞きながら、社長は満足気にうなずいていた。
「今回の公演も大盛況でしたね‥‥次回は最終回。この観客達を満足させる結果を出して、無事に公演を終えて欲しいものです」
次が連続公演の最終回。しかし若い社長の表情に寂しさはない。最終公演が成功したなら、次は映画の撮影が待っているのだ。
これまでの公演で、KV☆は着実にその名を広めファンを増やしてきた。今ではファンブックや劇場での応援グッズやKVテクターや各キャラの武器などの玩具まで発売され、劇場やイベント会場などで好調な売上を記録している。
また、出演者達の出資による戦災孤児達の招待席『フェアリーシート』等の活動も、傭兵をメインキャストに据えた舞台ならではの施策として注目を集めていた。
第七回公演が『舞台・KV☆』の集大成となる。その成否は、役者である傭兵達に掛かっていた。
●というわけで
LH本部では、オペレーターの小野路綾音(gz0247)により第七回KV☆公演の説明が行なわれていた。
「いや〜、思いもよらない展開にドキドキでしたよ〜。観客の皆さんも、最終公演をドキドキして待っているんでしょうねぇ」
言いながら、綾音は『イツメパイユ』から預かった資料を手渡していく。
「今回が舞台では最後の公演です〜。悔いのないよう、全力で当たってくださいな〜」
●以下資料
【地球戦隊KV☆STAR(テラセンタイ・ナイトフォーゲル・スター)】
クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STARである。
財団所有のKV☆養成所では、地球の平和を守るための戦士達が日夜訓練を重ねている。
普段は白と銀をベースにしたKV☆養成所のジャケットとブーツを着用。
変身時は「地球(テラ)パワー、セット!」の声と共に腕時計型の通信機兼発動スイッチを押す。
『KVテクター』というKVを思わせる装甲(口元以外を覆うヘルメット、胸・腕・脚装甲。背中に機翼)を纏った戦士となり、数倍の能力を発揮できる。
(舞台では、ジャケットやベルト、ブーツの模様に紛れるように装着されたパーツが展開し、装甲へと変形する仕組になっています)
・決定済KV☆
スターブラック・黒木メイ
スターホワイト・吹雪レイナ
スターブルー・天野ユウリ
スターピンク・春風サクラ
スターシルバー・星川ショウキ
スターオレンジ・時雨アヤメ
スターパープル?・下部戸レイ
シャインゴールド・陽ノ下ルミナ
(名前はお子様に判りやすいようカタカナに変えてあります)
【クラッシュ・バグ】
地球を乗っ取り占領するために宇宙から来た悪の組織。ボス、幹部、魔獣、戦闘員という縦社会によって構成されている。
魔獣は地球の生物をベースにメカ改造を施したモノが多い。名前は『改造元生物の名前+バグラ』。
また、ドクター・ウォッシュの開発した『D(ダーク)テクター』を装着した戦士も新たな戦力となっている。
・登場済幹部:クリムゾン船長、ドクター・ウォッシュ、コマンダー・シャドウ
・『D(ダーク)テクター』:ルナゴールド、ダークラピス
・故 魔獣:クマバグラ、ライオンバグラ、クモバグラ、クラゲバグラ、バクバグラ、アゲハバグラ、ハムバグラ
【国連地球防衛軍・特別即応班】
『Union Deffence Force』『Special Counter Team』
財団所有のいわゆる民間戦力であるKV☆と対極にある公的な軍。
KV☆と協力体制をとることもあるが、戦力的にはクラッシュ・バグ戦闘員と互角程度なので言わばやられ役。
・登場済:沢渡ユキ少尉
【フェアリーシート】
戦災孤児や戦争による被害を受けた子供達を対象とした招待席。役者達の有志による出資でまかなわれている。
●リプレイ本文
●
開幕前の舞台に、ヘッドホンのようなパーツをはじめ白い金属とタイツで全身を覆った少女が靴底のローラーで颯爽と現れる。
足元に中型犬サイズの陸戦形態阿修羅ロボ・シュラを連れ、KV☆の惨敗から地割れに呑まれた二人の帰還など、これまでのあらすじを語る。
「皆は一時、戦いを他のKV☆達に任せて特訓を行う事にしたの。あたし? アリスだよ。やっと身体が完成したんだ」
舞台の幕が開き、アリスはKV☆養成所研究室にいるショウキに声を掛ける。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの事だけど‥‥」
「姉だなんて認めない! ありすはあの人のせいで死んだ‥‥なのに、裏切ってまた僕達を苦しめているんだぞ!」
「アレは事故だった‥‥それに助けてくれたのはお姉ちゃんなんだよ。きっと本心から裏切った訳じゃ‥‥」
「確かに、僕が迷いを断ち切れたのもあの人のおかげだ。だけど‥‥!」
「お願い、信じて! 確かにあたしは本当のありすじゃない。鼓動する心臓も赤い血も流れてはいないけどこの記憶と心だけは本物だから」
そこへレイナが現れ、ショウキを捕まえる。
「アヤメが特訓しているのに、こんな所にいたのね! 特訓メニュー三割増し確定!」
「ええぇっ!?」
そのままショウキは引きずられていく。
場面は変わり、トレーニングルームには竹刀に錘をつけたものを様々な方向へ振るアヤメの姿があった。
「うん。やっぱり斜め45度からの切り上げが一番しっくりくるかな?」
そこへレイナが引きずってきたショウキを投入し、しばらくレイナによるスパルタ特訓風景が続く。
と、そこへ配膳カートを押してルミナが現れる。
「お腹が空きませんか? 栄養をつけないと、強くなれませんよ」
淡々とした口調だがお母さんのような台詞を口にしつつ、部屋の一角にお膳を並べていく。
「こんなものしか作れませんが‥‥」
純和風の家庭料理にアヤメが歓声を上げ、全員で和気藹々と食事をする光景がフェードアウトする。
●
クラッシュ・バグ基地では、戦闘員達が慌しく戦いの準備を進めていた。それを興味無さそうに見つめるのはコマンダー・シャドウ。
「ウォッシュの奴、敵味方無く攻撃するとは‥‥見損なったぜ。俺は、このままでいいのか‥‥?」
「シャドウ!」
呼び止める声に振り向くと、メイが駆け寄ってくる。
「言えなくなる前に言っておきたい事がある。どうやらお前に惚れちまったらしい」
「クッ‥‥俺が命の恩人だから、か? 残念だがそれは人違いだ。俺には全く覚えが無いんでな」
皮肉めいた笑みを浮かべ言うシャドウにメイが詰め寄る。
「覚えていなくても構わない! でもあれは確かに‥‥」
「違うと言っているだろう!」
強い言葉と共に手を振り払い言う。
「お前、ここに来たのはやるべき事があるからなんだろう? ウォッシュは感づいているぜ‥‥」
去っていくシャドウが向かった先は司令室だ。
ラインホールドを模した重装甲Dテクターを装着したドクター・ウォッシュが、侵攻地図が表示された巨大ディスプレイを前に各地に投入した魔獣・戦闘員に指示を出している。
『どくたーうぉっしゅ、こまんだー・しゃどう、イツマデ遊ンデイル?』
シャドウとウォッシュが舞台袖を振り向く。現れたのはカブトガニにヒトの手足がついた魔獣だった。
「カニバグラ‥‥! 本星所属のお前が何故ここに」
驚くウォッシュの質問に答えず、機械的な声が続く。
『我ラガ主ハオ怒リダ。地球人ノめすニ現ヲ抜カシテイル暇ハナイゾ』
「これから一斉攻撃を行なう。陥落は時間の問題だ」
『手助ケハシナイゾ‥‥我ニハ主ヨリ受ケタ指令ガアル』
「貴様の助けなど要らぬわ。ドクター・ウォッシュの名に掛けて、全てを破壊し地球を我らの手に!!」
ウォッシュはテクターで肥大した拳を握り締め、憎しみを込め客席を睨め回した。
●
舞台が暗転しKV☆養成所の出動アラームと敵出現を知らせる電子音声が鳴り響く。
飛行要塞化した養成所のタラップに皆が集まるが、レイナの姿が無い。
「あの子は、きっと来ます。今は私達で戦いましょう」
言ってルミナが駆け出した。続こうとするショウキの腕を掴みアヤメが言う。
「この戦いが終わったらご飯食べに行こうね。もちろんショウキのお・ご・り・でだけどね〜」
ショウキは笑顔で答える。
「いいよ。おごりって‥‥いやっ、なんでも無い。かならず連れて行くよ」
「約束ね! 誰も犠牲にはさせない。ぜったい皆で勝つんだから」
基地を降り山岳地帯に踏み込んだ四人に、突然刃の生えた丸い物体が転がり襲い掛かった。
その正体はカニバグラだ。高速で連続バク転することで、きぐるみに隠された刃パーツが飛び出す仕組になっているのだ。
『貴様ラノちから、コノかにばぐらニ見セテミロ』
「地球パワー、セット!」
全員が同時にテクター発動スイッチを押す。メインテーマが流れ、テクターを装着したKV☆達がポーズを決める。
「天翔る不屈の銀狼、スターシルバー!」
「暗雲切り裂く一陣の光、KV☆スターオレンジ!」
「数多を照らす恵みの光、シャインゴールド!」
「蒼き電子の守り手、スターシアン! シュラ、そっちはお願い。あたしはこっちを!」
ミカガミを思わせる蒼いテクターを纏いスターシアンとなったアリスが、シュラと共に戦闘員に向かう。
「みんな星になれ!! フォトンスイング」
小悪魔然とした笑みを浮かべ、スターハンマーに重力を乗せた一撃で戦闘員達を吹き飛ばす。
『青イKV☆‥‥過去でーた無シ。新タナル戦士ナノカ?』
カニバグラは一歩引いた位置で戦いぶりを眺め、甲羅部分の機械パーツを忙しなく明滅させる。
「新型テクターで武器も変わったんだから!」
オレンジは短柄の軽戦斧、スターアックスを手にカニバグラに向かう。そのテクターはモデルがノーヴィ・ロジーナに変わり、ポイントに碧のラインが入っている。
次々繰り出される攻撃を鋏で受け止めるカニバグラ。
『みかんノKV☆、過去でーた修正。攻撃B、防御C、すぴーどAA。瞬発力ニ乗セタ一撃ハ特筆スベキ』
防戦一方になったところに、ルミナのクサナギ、ショウキのゲイザーストームが同時に炸裂。花火と爆煙が消えたそこに、カニバグラの姿はない。
オレンジが呟く。
「やった、の‥‥?」
「いいや、まだだ」
聞き覚えのある声に四人が身構える。現れたのはシャドウだった。
「悩むのは俺らしくない。今のウォッシュに力を貸す義理もないが、あんたらとも全力でやりあってみたくってな。来いよ、全力でな!」
言って、手甲に包まれた両拳に影弾を宿す。
速攻で飛び込んだオレンジのアックスは手甲で防がれ、シルバーがスターゲイザーを連撃で叩き込む。が、シャドウはテグスを操りいなす。影弾を宿した拳を連続で当てる度に爆発が起き、弾き飛ばされた二人への追撃を防ぐ為にゴールドが掌をかざす。
「ヤサカ!」
「シャドウ・ウォール!」
放たれた弱ビームの牽制はシャドウの眼前に現れた影壁に吸収されてしまう。
「どうした、KV☆の力はそんなものか!」
「くっ‥‥扱いきれずに封印していたけど、やるしかない! アリス!」
アリスのサポートでシルバーのテクターが光を放つ。
「これが、僕の力だ。フェンリルレイジングサイクロン!」
光は白銀狼の形へと変わる。狼型のライトが駆け巡り、嵐の如く爆発が起こる。その中心にいたシャドウは膝をついた。
「なるほど‥‥良い事を教えてやる。ルージュは今、一人でウォッシュと戦っているはずだ」
彼がシャドウカーテンで撤退した後に残されていたメモリを、アリスが耳パーツに差し込む。
「これは、クラッシュバグの基地データだよ!」
●
岩に囲まれたクラバグ基地周辺。
「これはオレの復讐だ。これ以上、誰かを巻き込むつもりはない‥‥例え裏切り者と言われようと」
戦闘員に囲まれたメイの言葉にウォッシュが憎憎しげに言う。
「様子がおかしいと思っていたが、やはりそういうことか」
「闇をもって悪を狩る黒き雷光。暁の翼、ダークルージュ!」
テクターを装着し、スターサイズ、ダーククレイブ、月詠の三つの武器を使い分け戦闘員達を薙ぎ払う。
「行け、ダークラピスよ」
「りょーかいっ」
ラピスの攻撃に加え次々現れる戦闘員に加えウォッシュのレーザーに押されるルージュに、駆けつけたKV☆が加勢する。
「良かった、間に合ったね」
「大丈夫ですか、ブラック」
声を掛けるオレンジとゴールド。シルバーは僅か視線を送りウォッシュを指差す。
「これ以上やらせはしない。この星の為に!」
「正義ぶって、うっとおしいのよっ」
ラピスが戦闘員と共に再び猛攻を仕掛ける。
乱戦を前に、ウォッシュはにやりと笑む。絞り込むような音と共にエネルギーが彼の全身に収束する。ゴールドがそれに気づいた時には遅く、
「纏めて葬ってくれるわ!」
テクターに備わった無数の砲身からの一斉掃射がKV☆を襲う。舞台全域を覆うほどの激しい爆発と火花の中からラピスがよろめき出た。
「ウォッシュ様‥‥あたしは‥‥そうだ! あたしは!!」
激しく痛む頭を抱え悲鳴を上げたラピスは、そのまま舞台端で意識を失う。
煙が晴れた。戦闘員は全て消滅、ルージュとKV☆達だけは辛うじて立っていた。
彼らの前に立つ一人の人物が、ウォッシュの一斉掃射を引き受けた痛々しい姿で崩れ落ちる。
「シャドウ! そんな身体でオレに力を分け与えたりしたら‥‥」
駆け寄るルージュに力を託したシャドウは口端を歪めて笑う。
「後は高みの、見物だ‥‥せいぜい楽しませて、くれよ‥‥」
痛みに耐えながらそう言い残し、シャドウカーテンで姿を消した。
舞台で戦いが続く中、客席横の出口付近を照らすスポットがシャドウを切り取る。
「くそっ‥‥あいつ、最後まで俺を別人と勘違いしたままで‥‥」
その苛立ちに気づかされ、シャドウは自嘲する。
「ククッ、そういうことか‥‥俺は、あいつを‥‥」
想いを胸に秘めたまま、シャドウは姿を消した。
●
ウォッシュは怒りに任せて声を張る。
「どいつもこいつも、何故我の邪魔をする!! 全て消し去ってくれるわ!」
「お待ちなさい!」
凛と響く声と共に二階席に現れたのはレイナだ。ゴールドがレイナに言う。
「決心がついたのですね」
「ええ。お母様御免なさい‥‥レイナは封印を解きます。地球パワー、セット!」
テクター発動と同時に、過去を振り払うように印を切る。額に光の紋章が現れると、装着した白いテクターには金と銀の豪奢な装飾が浮かび上がる。
「煌く光は王家の証、絶対王聖スタープリンセス!」
プリンセスはワイヤーで客席上を舞いながら宣言する。
「我が名はレイナ、バグ王家最後の血統を受け継ぐ王女。目覚めなさい‥‥我が友、光の使徒ラピス」
舞台に下りる直前にかざしたロイヤルリングの光で紺碧のテクターに銀色の装飾が現れ、ラピスは立ち上がる。
「輝ける碧海の使徒、シャイニングラピス!」
「洗脳が解けたのね。貧乳脱出おめでとう」
舞台に降り立ったプリンセスが冗談めかして言うと、豊乳を取り戻したラピスが胸を張りつつ怒ってみせる。
「こっちが本物だもん! 詰め物なんかしてないもん!」
「おのれ‥‥我の力を思い知るがいい!」
ウォッシュは一斉掃射を連発する。
素早さを生かしてかかいくぐり接近したオレンジ。スターアックスの柄が伸びる。
「R−45!」
45度に斬り上げたアックスをウォッシュがかわす。が、脳波とリンクするアックスのブーストが軌道を変えウォッシュを捉えた。
「ぐっ‥‥!」
シルバー、シアン、ラピスが追撃し作った隙にプリンセスとルージュが駆け寄る。
「必殺、閃光拳!」
プリンセスの超音速のオーラ拳が、ウォッシュの体内を破砕する。
「これは奪われた者達の思いだ。スターオブゾディアック!」
ルージュの電撃を宿したスターサイズでの十三連撃。
パワーアップしたKV☆達の反撃にウォッシュは膝をつく。
「これ以上放てば、身体が‥‥だが!」
気力で立ち上がり、ウォッシュはエネルギーを溜める。ルミナは不死鳥のテクターに宿した雪嵐の翼を円形に開き、太陽光を集めた。
「ドクター、私はここです。ゴメンナサイ‥‥今、楽にしてあげますから‥‥!」
最大出力で放たれたヤタノカガミ。連射する光弾がウォッシュの一斉掃射を相殺する。
「一般庶民の皆さん、皆の熱い魂を私達に貸して下さい!」
プリンセスの声に客席全員がペンライトを灯すと、KV☆達が武器を集め組み立てたスターキャノンがまばゆい光を放つ。
「憎しみでは奴らに勝てない‥‥」
「皆の希望を、力に変えて」
「「打ち砕け! スーパースターキャノン!!」」
「ぐあああっ!」
七色の閃光が弾け、ウォッシュのDテクターが砕け散る。満身創痍の身体を引きずり、ウォッシュが客席側へと歩み寄る。
「くくっ‥‥我を倒したところで、本星から新たなバグアが派遣されるだけだ。貴様らに死が訪れるまでの束の間の時を、精々楽しんでおくんだな!」
爆発が高笑いもろともウォッシュを呑み込み、後には何も残らなかった。
「有難う、皆さんのお陰で悪は倒せました」
プリンセスを始め客席に礼を言うKV☆達を眺めながら、ルージュが言う。
「もうオレはブラックには戻れそうにない。でも、もう少しいてやるよ」
舞台が暗転し、声が響く。
『でーた採取、完了シタ……我、帰還スル』
甲羅から手足を出し立ち上がるカニバグラの姿が照らし出される。
『よくやった。カニバグラよ。私はバグ星の支配者、クラッシュ皇帝。地球は必ず手に入れて見せるぞ』
『アト僅カデコノ惑星ハ我ラノモノ。地球人ドモヨ、『ソノ時』ヲ恐怖ニ震エナガラ待ツガ良イ』
クラッシュ皇帝とカニバグラの、続編を匂わせる台詞で舞台は幕を閉じた。
●
舞台最終回を終え、スタンディングオベーションの中カーテンコールが行なわれる。
見えない所で頑張っている人/ジャンガリアン・公星(
ga8929)
コマンダー・シャドウ/Y・サブナック(
gb4625)
シャイニングラピス/桜井 蒼生(
gb5452)
アリス(シアン)/雪代 蛍(
gb3625)
陽ノ下ルミナ(ゴールド)/天戸 るみ(
gb2004)
時雨アヤメ(オレンジ)/シャーミィ・マクシミリ(
gb5241)
星川ショウキ(シルバー)/柿原 錬(
gb1931)
吹雪レイナ(プリンセス)/鬼道・麗那(
gb1939)
黒木メイ(ルージュ)/柿原ミズキ(
ga9347)
役柄を気にして不参加を表明していた一人を共演者が手招きし、スタッフが白衣と眼鏡をつけさせ半ば強引に舞台へと押し出す。
ドクター・ウォッシュ/桂木穣治(
gb5595)
歓声と達成感に包まれながら、感謝の気持ちをファン達に伝える。客席も含めた全員で主題歌を歌う等、短いながらも楽しい時間を過ごした。
後日、社長からは『舞台・KV☆』七編に出演した経験のある全ての傭兵に、感謝状と演じた役の衣装がプレゼントされたという。