タイトル:【幻装戦隊】ACT.5マスター:きっこ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/26 23:40

●オープニング本文


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 残された僅かな力を振り絞り立ち上がったヴァティはバグを睨み据える。
「どうして貴様が閃光拳を使えるんだ!」
 バグの笑顔は答えを与えず、片手で幹部達に退くよう促す。
「まだだ‥‥」
 しかしラドルは装甲の一部を破壊され浅からぬ傷を負いながらも、双眸に赤く輝く光は闘志を失わず。志と意地を支えに前へ出る。
「まだ、私は負けていない! ‥‥私の正義は! バグアバグの正義はぁ!!」
 駆け出そうとしたその足元から立ち昇った焔の渦がラドルを制する。反射的に振り向いた視線を、バグは真っ直ぐに受け止める。
「ラドル。君にいなくなられては困るんだよ」
 焔はバグが生んだ闇にかき消され、膨張したそれはラドルをも呑み込んだ。闇が消えると同時に開かれたゲートも閉じる。
「答えなさい!」
「待ちやがれ!」
 背を向けたバグにヴァティの閃光拳とライラのライラキック、オーディのグングニルが同時に迫る。激しいスパークに照らされた光景に皆は目を疑う。三人の攻撃を、バグは左腕一本で止めていたのだ。
 閃光が膨張し、拮抗していたエネルギーが全て三人に跳ね返る。
「僕達はこの基地を破棄して撤退する。だから君達も急いだ方がいいよ」
 今度こそ、バグは背を向けて自らが生んだ闇の中に消えた。
 遠くから爆音が聞こえる。次第に近づいてくる爆音から逃れるように、ラウズブレイバー達は振動を続ける基地の内部を駆け抜けた。
 幻神達の作り出したゲートを飛び出した瞬間、爆炎を遮るようにゲートが消える。
 勢い余って地面を転がる四人の幻装天鎧が解け、立ち上がりながら多聞は汗を拭う。
(あれ以上戦いが長引いていたら‥‥ヤバかったな)
 制御装置をつけていても、ヤマタノオロチの力を抑えるには限界がある。限界を超えれば制御装置は壊れ力が暴走しかねない。
「すまなかった!!」
 突然紅狗が土下座をする。
「今度こそ、今度こそ一つになろう。もう一人で戦ったりしねぇ。だから、頼む。もう一度、俺も仲間に入れてくれ!」
「馬鹿か、お前」
 時定が言い放つ。顔を上げる紅狗の前に、彼の笑顔があった。
「いつ仲間から外れたんだよ」
 言って時定が手を貸し立ち上がらせる。その背後から、アイナが紅狗の肩を叩いて通り過ぎた。彼女が向かう先、軍用ジープの運転席に乗り込んだ多聞が窓から呼びかける。
「とっとと帰って今後の対策会議――と言いたい所だが、まずは休もうぜぇ!」
 基地に戻り、司令室に行く途中。時定は一人無人の廊下で崩れそうになる膝を支える。まだ一段階目であるにも関わらずこの反動――。
「なるほどな‥‥過ぎた力の代償、か」
 ヴォータンモードにより注ぎ込まれるオーディンの力は並大抵のものではない。許容以上の力を受け止める反動で器となる肉体は命を削られる事になるのだ。

 ゲートを抜けたバグは闇の中に佇んでいた。傷を受けはしたが幹部は皆無事に回収できた。しかし‥‥。
 バグは右腕を見つめる。以前、地球とのゲートを開いた時。地上の空気に触れた右腕は水晶で作られた彫刻の如く結晶化してしまっていた。
 まだ、誰にも気づかれていない――気づかせる必要も無い。この程度の代償など些細な事。
「全ては、全生命の再生の為‥‥」
 その呟きも誰に届く事無く闇に吸い込まれていった。
 深手を受けたドリレオンは液体が満たされた透明の筒の中で呻く。
『‥‥まだ足りない。ラウズブレイバーを倒す為には、もっと‥‥もっと力を――あの、ドリルを!』
 力を手にするため禁断のドリルを求めるドリレオンの筒の外、フェリアスは機器の調整を続けている。
「まさか私の永久歯が超高純度オーララウズになるとは‥‥」
 機械の上部に納められた結晶の中には抜け落ちた永久歯がある。
「これとラブプラ‥‥ライラプスを調査したデータがあれば、幻神さえも創生できる‥‥そう、私の幻神、私の幻装魔鎧! その名もッ!」
 カメラに駆け寄り幻神の名を叫ぶ。
「オルッ! ト」
 言い切らない内に画面がブラックアウトし、フェリアスの声だけが響く。
「ちょっ暗転やめ、せめて台詞最後ま」


幻装戦隊◆ラウズブレイバー


「と言うわけで〜、以上がACT.5のオープニングとなります〜」
 映像が終了しオペレーターの小野路 綾音(gz0247)が照明を灯す。
「えぇと、前回ラウズブレイバー全員の名乗りを入れて欲しいと指定があったのですが〜、入っていなかったんですよねぇ。今回は忘れず入れてくださいという風に言われてますので〜」
 それ以外に関しては前回のストーリーを受けて、ラウズブレイバーはバグアバグの本拠地を探る動きを。バグアバグは本拠地の詳細や全生命の再生を求める理由などを――これは今回で一度に明らかにせずとも、徐々に示していく方向でも構わないが、明らかにしていって欲しいという事らしい。
「イツメパイユさんからの指定以外は、継続して個々の動きを盛り込んで行って良いそうですので〜。今回も頑張りましょ〜」


【幻装戦隊◆ラウズブレイバー】
 地球軍所属特殊部隊。普段は軍服着用。
 敵組織により、体内に『オーララウズ』を宿した箇所を奪われた。そこに宿った幻神の力が奪われた箇所を構成、人知を越える力を得た戦士。
 通常時は常人の二倍(敵雑魚を蹴散らす程度)、変身後はさらに数倍の力(幹部等と戦闘可能)を発揮。
「幻神天装!」の声と共に、幻神の姿とKV(AU−KV)をミックスした装甲『幻装天鎧(ゲンソウテンガイ)』を瞬着。

 幻神(地球に伝承される幻獣や神)は和洋問わず。
 奪われた箇所は身体のパーツのうちどこか一つ。武器は基本的に奪われた箇所に準拠する物を考案。
『奪われた部位』『幻神の姿や能力』『武器と必殺技』の三つがリンクしているのが理想。
 オーラ、及び幻装天鎧の色は個体毎に異なる。


【バグアバグ】
 突如として地球に現れた悪の組織。
 謎の生命体キマイラを操り地球の征服をもくろむ。
 侵略の目的は稀少エネルギー『オーララウズ』を得るため。幹部クラスはオーララウズを結晶化する技術を有している。
 オーララウズは様々な場所や物に、時には人体にも宿っている。結晶化したものは『ラウズライト』と呼ぶ。

 幹部は人型。衣装+悪役メイク。地球では時間的活動限界がある。
 キマイラは獣人型(トラキマイラ、サメキマイラ等)。着ぐるみ着用。少量のラウズライトを含む象徴武器を持ち、それを破壊されると死に至る。
 敵雑魚はキメラ(TV版ではCG)

★各詳細は前作までのOP末資料参照。

●参加者一覧

如月(ga4636
20歳・♂・GP
フェリア(ga9011
10歳・♀・AA
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
ドッグ・ラブラード(gb2486
18歳・♂・ST
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER
布野 橘(gb8011
19歳・♂・GP
白蓮(gb8102
18歳・♀・PN
伊達 士(gb8462
20歳・♀・DG
CHAOS(gb9428
16歳・♂・SF
日下部 司(gc0551
17歳・♂・FC

●リプレイ本文


「トロス! うぅ、後2秒暗転が遅ければ‥‥とほり」

 この惑星の2秒はとても長い
 〜暗黒闘士FERIAS〜

 うなだれるフェリアスの後ろで、ドリレオンが涙ながらに訴える。
「フェリアス様、弱点は大声で言わないで下さいね」


 モノトーンの道化装束姿のラドルは一枚の写真を見つめている。写真の中には高貴な衣服に身を包んだ一族が佇んでいた。
「正義のため、私は何を失っているのか‥‥」
 感情の無い呟き。化粧を施された顔からもそれは窺い知る事はできない。
 あの日。地球から遠く離れた星で、この一族は幼い少女までもが命を奪われた。全生命の復活が成るのであれば、彼らもまた――。
「また、見てるんだね。僕が奪った君の過去を‥‥迷っているのかい?」
 突如響いた声はバグのものだ。闇から融け出すように、白を基調としたスーツの青年がゆっくりと姿を現す。
「あの時も言ったよね。選ぶのは君だ。どんな選択でも僕は構わないよ」
 バグの、仮面と見紛うように張り付いた笑顔は、心なしか柔らかく感じられた。
 ラドルは静かに答えを返す。
「‥‥今更、何を迷うと言うのですか。あの日、貴方に頭を垂れた。それが全てですヨ‥‥」


「全く、お前のせいで酒も飲めねぇたぁ‥‥」
 机に足を上げてだらしなく椅子に腰掛けているのは多聞だ。愚痴の矛先は自らに宿る幻神ヤマタノオロチである。オロチの弱点である酒を飲む訳には行かないのだ。
 時定は始末書を面倒そうに、しかし手馴れた様子で書いている。
「くそ、上の連中、始末書ばっか嫌みのように押しつけやがって‥‥」
 その時司令室の扉が開いた。振り向いた全員が驚きに凍る。扉から室内へ歩み入ったのは青燈だったのだ。
「祠堂!? ‥‥てめぇ何のつもりだ?」
「隊――ベリアッ! 何しに来やがった!?」
 立ち上がり身構える時定と紅狗を諌めた多聞の視線を受けて、青燈は言う。
「‥‥投降する。好きに扱え」
「何だと!? 今更――!」
 いきり立つ紅狗を押さえつけ、多聞は屈託無い笑顔を見せた。
「そうかぁ、歓迎するぜ」
 そんな彼に呆れつつ、アイナが青燈へ敢然と言い放つ。
「それが本心ならバグアバグの基地へ案内しなさい」
「いいだろう‥‥ついて来い」
 青燈が向かったのは深い森の茂る山中だった。
 ラウズブレイバー達を従えて歩く間、青燈の胸に生々しい記憶が蘇る。
 幻界人であり、幻神達の戦いの道具として死んでいった姉の亜夢。彼女は肉体すら残らず、青燈に残されたのは彼女のラウズライトだけだった。
『姉君の形見か‥‥』
 声は基地にいる青燈に呼びかけたフェリアスのものだ。
『祠堂青燈ッ! 人を生き返らせるのは‥‥人を殺める事と同義だ。君は君自身の手で、姉君を生き返す(殺める)事が出来るか?』
 フェリアスの声を胸に青燈は、後をついて来る紅狗を盗み見る。
『出来るのならば‥‥ラウザー基地へと侵入しライララウザーを抹殺するのだ!』
「何だ?」
 森のある場所で、紅狗は足を止めた。紅狗だけではない。ラウズブレイバー達の幻神が一同に力を解放する。龍脈の集うその場所に幻神のオーラがぶつかり、基地へのゲートをこじ開けた。


 次の瞬間、皆はバグアバグ本拠地の中にいた。
「‥‥せ、精々感謝するんだな!!」
 青燈は赤面しつつ言う。始末できず基地まで到達してしまった彼を肯定する声が響く。
「それでよかったのです、ベリア‥‥いえ、祠堂青燈」
 神妙に言っておいて、びしりと青燈を指差す。
「でも敵を新基地へ連れてくる必要ないでしょがー!」
「青燈は纏めて片付けるつもりで連れてきてくれたんだよね?」
 閃いた雷光と共にバグが姿を見せた。
「少し早いけど、君の願いを叶えよう」
 バグがかざした左手の先、絡み合う光と闇がある形を造り出していく。忘れもしないその姿に青燈が進み出る。
「姉‥‥さん?」
「青燈‥‥――っ!?」
 蘇った亜夢が振り向いた瞬間、彼女の身体から桃色のオーラが立ち昇る。悲鳴を上げる亜夢のオーララウズはバグの闇に呑み込まれていく。
 悲劇を好むベリアルは生み出したオーラの鎖で青燈を拘束する。
「ベリアル、貴様っ‥‥姉さん!」
 動けない青燈と、消えかけた亜夢の視線が交錯する。僅かに動いた口元が弟に告げた。
「未来を、恐れないで――」
 それは一瞬の出来事。亜夢は消え、バグの手には大降りのラウズライトが残った。
「まあまあの純度だね。少ないけど消費した量の足しにはなるか」
 バグの綺麗すぎる笑顔が青燈を見つめた。
「これで、また手伝ってくれるよね」
 眼前で起こったそれが過去の痛みと重なり呆然としていたラドルは、我に返り青燈へ言う。
「‥‥全てを為すためには、必要なのです‥‥また、すぐに‥‥」
 会える、と。言い切ることは出来なかった。
「俺は‥‥過去に縋り、未来を拒むことしか出来ない憶病者だ」
 青燈は俯き声を絞る。
「命を愚弄する希望など、貴様諸共叩き潰してくれる!!」
 バグを睨む彼の奥底に眠っていたオーラがベリアルの縛鎖を断ち切った。千切れた鎖はベリアルの姿となり青燈の身体から離れる。ベリアルを引き剥がしたオーラは契約を司る天空神ヴァルナのもの。
「幻神天装!」
 両の拳から発した青いオーラは同色のオーガを模った装甲で青燈を包む。両腕に絡むのは悪魔を縛するという天刑の縄だ。
「俺達も行くぜ!」
「幻神天装!!」
 幻装天鎧を纏った戦士達が各幻神のオーラを背に身構え、声を揃えてその名を叫ぶ。
「幻装戦隊ラウズブレイバー!!」


「やってしまうのです、キメラ共!」
 フェリアの声にどこからともなく湧き出して来たキメラの群れに、単身ヴァティが向かう。
「この程度一人でも充分、私が片付けてあげる」
 先陣を切ってバグへ向けて駆けるヴァルナの前に、ラウズライトを埋め込み強化された深紅のトカゲキマイラが立ち塞がる。
「邪魔をするな!」
 ヴァルナの両手にはラウズライトを凝縮したガントレット、ジャッジメントフィストがある。その手刀がキマイラを瞬時に薙ぎ飛ばした。さらにラドルが行く手を遮る。
「まだ、やり直せますヨ‥‥?」
「‥‥退け」
「その気は、ないですか‥‥なら‥‥」
 この場で始末をつけるのみ――!
 ラドルの肌が黒く染まり、全身を黒い甲冑が覆う。目と口が内なる闘志を表すように赤く輝く。ブースターの勢いに乗せて放たれた拳を迎え撃ったのはオーディのグングニルだった。
「ラドル! てめぇの相手は俺だあああ!!」
 全力で繰り出される槍さばきを、ラドルも全力で相手取る。互いが互いの攻撃を受け止め、かわし、僅かな隙を見逃さずに打ち込んでいく。
 その間にヴァルナがバグへと間合いを詰める。
「世話になった礼だ!! アトモスフィア=ブレイバー!」
 周囲の大気がヴァルナの両手に集まる。操る風がヴァルナを高速で押し出すに合わせ、両手に圧縮した大気をゼロ距離から放つ。
 外すはずのない一撃を流水の如き動きでかわしたバグは、左手でゲートを開き姿を消した。
 入れ替わりにゲートから飛び出したのはドリレオンだ。
「ベリ‥‥いや、裏切者め。バグ様の元へは行かせないっ」
「おっと。お前は俺が相手してやる」
 ヴァルナの前に割り込むように立ったのはライラだった。彼は背中越しに小さく告げる。
「早く行けよ‥‥隊長」
「橘――すまん」
 ヴァルナが基地の最奥部へ向けて走り去るのを見送りながら、ライラはドリレオンの黒い体毛を指差す。
「おいドリル、貴様を小脇に抱えた感覚はまだ残ってるぜ。‥‥もふもふ感が、たまらなかったんだ」
「あのまま洗脳されていれば、ここで我がドリルに倒れる事もなかったものを!」
 ドリルの鬣を振りかざし突進するドリレオンに、ライラも高速で駆けていく。
 フェリアスはオロチを前に叫ぶ。
「血風纏いて運命(さだめ)を拓くッ! 漆黒闘神‥‥オルトリアァァスッ!」
 大きく開かれた口で犬歯が光る。黒のオーラが幻神オルトロスを浮かび上がらせ、フェリアスの全身を幻装魔鎧が覆う。漆黒のアヌビスを原型としながらもそのマスクは凶相を浮かべ、胴体にはパイドロスのマスクが備わっている。
「此処から先は通さ‥‥ぎゃあああ、それ私のダークネスーツの一部!?」
 オルトリアスの視線はオロチの腕に填められた変身補助装置に釘付けになっていた。それに対し、オロチは笑みを含んだ声で答える。
「あのときのちびっこ幹部か! いいものくれてありがとよ! おかげで助かってるぜ」
「うおおお即刻処分すべし!」
 国士無双強化版、天上・天下無双を両手に突進するオルトリアスを迎撃すべく、オロチは天叢雲剣を構え力を溜める。
「処分なんてさせるか! だいたい身の丈にあってないのにそんな立派な刀持ちやがって、うらやま‥‥使いこなせるものかっ」
 思わず本音がちらつくオロチの言葉が的中し、オルトリアスの双刀は基地の壁と天井を多いに抉り取る。
「ゲェー!? 刀が長すぎたー!?」
「言わんこっちゃねぇぜ、剛断撃!」
 限界まで蓄積した力を込めた渾身の一撃をオルトリアスに叩き込む。
 基地破壊による減棒が脳裏を掠め全身から力の抜けたオルトリアスは容易く吹き飛んだ。
 オーディは自身の信念とプライドを賭けて、そして自分を信じてくれている仲間のために、これまで以上の槍さばきで次第にラドルを圧倒していく。
 それを悟っているラドルは不利に立たされながらも冷静だった。
(「オーディの速度に今の私では適わない‥‥なら!」)
 力を乗せると同時にラドルの左拳が下がったのをオーディは見逃さなかった。
「そこだ!」
 鋭く突き入れた穂先がラドルの装甲を砕き脇腹を穿つと同時に、ラドルは脇を締め槍を押さえ込む。
「肉はくれてやる! だが‥‥骨は頂く!」
 誘導するために作られた隙だったとオーディが気づいた時には、豪速の右拳が迫っていた。
「これで、決着だ! オーディィィィ!」
「あの程度の反動、恐れるほどではない! リミットブレイク!!」
 力を解放し、軽鎧となったオーディは完全とは行かないまでも直撃は避けた。甲冑を弾き飛ばした勢いで緩んだ脇からグングニルを取り戻し一気に畳み掛ける。
「俺とお前じゃ背負ってる重さが違うんだよ! 俺は仲間の思いも背負っているんだ!!」
「背負っている重さだと‥‥貴様に何がわかる!!」
 互いの信念を乗せた一撃がぶつかり合った。


 一方ライラはグリーヴによるライラキックと拳による格闘戦でドリレオンに猛攻を仕掛けていた。
「どうしたドリル、げふ、お前の‥‥ぐはっ、実力、は‥‥そんな、ごふっ」
 言葉とは裏腹に劣勢になっていくライラに、キメラを片付けたヴァティが合流する。
「どうしたの! ‥‥貴方らしくない」
「すまねぇ‥‥」
「二対一か――」
 呟き、ドリレオンは戦況を見る。幹部二人も劣勢となっている今、やるしかない。
「来い、禁断の究極ドリルよ!」
 高く伸ばされた手に激しいスパークが散る。それが収まった時、ドリレオンはヴィジュアル系ボーカルへ衣装をモデルチェンジしていた。ベストポジションに浮かぶドリルマイクこそが新たに手にしたドリルだ。
「ドリラーオンステージ、ドリルの叫びを聞けー!!」
 激しく回転するドリルマイクがドリレオンの生命を削り、その魂のシャウトを増幅させる。ラウザー達を螺旋の衝撃が絡め取り、壁へ、天井へと叩きつけた。
 同時に渦巻いていた魂の叫びも掻き消え、ドリレオンは狼狽する。
「な‥‥こんなはずでは!?」
「真の力‥‥表裏一体の究極の力」
 辛うじて立ち上がりヴァティが呟く。幻神とのシンクロ率を高めればパワーアップ出来る。それはオーディのリミットブレイクのようにリスクを伴う。
「もし私が正気を無くしたら、その時は‥‥分かるわよね?」
 皆が止める間も無く、ヴァティは力を解放する。ドリレオンの魂の叫びに、ヴァティの苦痛の悲鳴が重なる。
「ヴァティ!」
 皆の声に、崩れ落ちていた彼女はゆっくりと立ち上がる。その頭部――幻神の宿る脳から金光が放たれた。サラスヴァティの姿はヴラフマーへと進化する。
「全ての愛を司る黄金の神ヴライラウザー!」
 金色の幻装天鎧を纏ったヴライはゴッドナックルを繰り出す。
「魂よ輝け‥‥金剛閃光拳!」
 ゴッドナックルから放たれる巨大なオーラの拳がドリレオンをマイク諸共弾き飛ばした。
 一瞬とはいえ生命力を削って必殺技を繰り出したドリレオンの消耗は激しい。本来ならば一度発動すれば命を削り切るまで発動するはずの技なのだ。
「これが、禁を犯した反動か‥‥」
 地に伏したドリレオンが呻いたその時、基地全体を鳴動が揺るがした。
 バグを追いきれず戻ってきたヴァルナが言う。
「『箱舟』が動く。急いで脱出するぞ!」
 彼に促されるまま駆け出すラウズブレイバーに、オルトリアスが叫ぶ。
「オロチラウザー! 貴様だけは私が倒すッ! ‥‥その装置をバグ神様に見られ『また敵の援助かい?』と言われて減俸される前にッ!」
「減俸がなんだってんだ! 俺なんて満額もらったことなんか‥‥って何言わせるんだよ!」
 駆けながら振り向き言い返したオロチの姿は崩れた天井の向こうに消えた。


 崩れ去った基地を脱したラウズブレイバーが見たものは、大空へと飛び去っていく一隻の戦艦だった。
 完全に消えるのを見送り、青燈は皆を振り返る。
「俺も‥‥共に闘わせてくれないか?」
「俺からも頼む」
 青燈の言葉を後押ししたのは紅狗だった。
「隊長がいてくれるなら、安心して離れられるからな」
 驚く皆に、紅狗は寂しそうに笑う。
「仮にも敵の捕虜になった身だ‥‥スパイ疑惑がかけられてな。もっと監視の厳しい、別の隊へ異動することになった。この隊で戦うのも、これが最後だったのかもな」
 突然の報せ。
 時定は寂しさを表には出さずに言う。
「負けるな、勝ち続けろ。ただお前の信念のためだけに、だ」
「ああ」
 頷き、紅狗は時定と拳を打ち合わせる。
「お前さんはよく無茶するからな‥‥体には気をつけるんだぞ」
 いつも見守ってくれていた多聞には感謝と尊敬を込めて敬礼を。
 複雑な表情で無言のまま見つめるアイナの肩を叩き、青燈と向かい合う。
「胸を張って行け、橘。お前の名に恥じ無きように」
「‥‥後は頼んだぜ」
 微笑んだ紅狗がすれ違うその時、青燈は彼にだけ聞こえるように囁いた。
「ありがとう、紅狗‥‥我が誇らしき戦友よ‥‥」
 その言葉を胸に、紅狗は振り返る事無く歩き出した。



黒木時定(オーディ)/如月(ga4636
アイナ(ヴライ)/鬼道・麗那(gb1939
橘紅狗(ライラ)/フーノ・タチバナ(gb8011
原嶋多聞(オロチ)/桂木穣治(gb5595

フェリアス/フェリア(ga9011
ラドル/ドッグ・ラブラード(gb2486
ドリレオン/白蓮(gb8102
祠堂青燈(ヴァルナ)/CHAOS(gb9428
バグ トカゲキマイラ(二役)/日下部 司(gc0551

亜夢/小野路 綾音(gz0247)