●オープニング本文
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『幻装戦隊◆ラウズブレイバー』は初回放送から着実に視聴率を伸ばしていた。
「発売されている玩具や関連商品も好調に売上を伸ばしているそうですよ〜。全八話の所、そろそろ中盤の山場という所でしょうかぁ。ストーリーも世間も盛り上がって来ましたねぇ」
いつものように笑顔で告げるのはオペレーターの小野路 綾音(gz0219)だ。
「ここから終盤までの五話の間に、伏線を回収できるようにしてほしいという事ですよ〜。それを含め、ラストに向けての展開を考えていかなくてはいけないですねぇ」
ACT.3でバグアバグの目的が明らかになった。しかし前回はラウズブレイバーが敗北して終わっている。
「今回、もしくは今回と次回をまたいでも良いそうですが〜『ラウズブレイバーの再起→勝利』に主軸を置いた展開にしてほしいそうです〜。あ、そうそう。今回か次回か、展開次第でしょうけれど、なんだかラウズブレイバーが揃いそうな予感ですので〜。全員揃っての名乗りを考案してほしいという事でした〜」
そして綾音はACT.4の冒頭に流れる映像をスクリーンに流した。
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ACT.3終盤、戦闘シーンのハイライトに被せてナレーションが流れる。
『集めたオーララウズを利用した全生命の再生──その目的を果たさんとするバグアバグの猛攻にラウズブレイバーは敗北し、紅狗は連れ去られてしまった。ラウズブレイバーは一体どうなってしまうのか──!?』
バグの開いたゲートが閉じ、バグアバグの放ったキメラに廃墟と化した町に残された時定は俯せに倒れたまま拳を強く握り締める。
「‥‥何が戦神だ、何が全てを貫くだ‥‥俺は‥‥俺は負けたんだ!!」
その拳に、悔しさを滲ませた滴が零れ落ちた。
「ちくしょう‥‥強く‥‥なりてぇよ‥‥!!」
アイナもナイアとの戦いに敗れ傷ついた身体を引きずるように、廃墟の中を歩いていた。
及ばなかった力、ミラーマスクの下の思いもよらなかったナイアの素顔──心身共に傷つきながら探していたものを見つけた。
「リトルレディ‥‥お姉ちゃんの歌を少し聴いて貰ってもいいかな?」
両親とはぐれ泣きじゃくる少女を胸に抱きしめ『フレンズ』を歌う。『夢のままじゃ駄目、諦めない』その歌詞を最後に唇を噛みしめる。
「‥‥私は地球人じゃない‥‥でも、この星を護りたい‥‥」
そんな彼女の上に、以前力を得た際と同じく光球が舞い降りてきた。光は柔らかにアイナを包み込む。
「これは──!」
同じ頃、多聞が地球軍の数部隊と共に駆けつけていた。限界まで力を使い果たした時定とアイナを回収し、キメラの残党を片づける為である。
多聞は広がる光景に顔をしかめる。中でもオーララウズを含んでいたと思われる場所はまるで空間ごと切り取ったような不自然さで切り取られていた。
「バグアバグめ、好き放題しやがって──ん?」
多聞の中に響く声がそれを知らせた。歩み寄り、手にしたのは金属に似た硬質な破片だった。
「これは‥‥あのちびっこい幹部が着けてた鎧か」
それは多聞が捜し求めていた答えを埋める最後のひとかけらだった。
「ようやくお前の力を借りることができる、か…後は俺がどこまで踏ん張れるかだな」
その欠片を落としていった本人は──
「‥‥うぐぅ」
枯れ木を杖にバグアバグ本拠地に帰りついた所で力尽き地べたに伸びていた。
「‥‥ム? 何か虫歯が痛くない?」
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【幻装戦隊◆ラウズブレイバー】
地球軍所属特殊部隊。普段は軍服着用。
敵組織により、体内に『オーララウズ』を宿した箇所を奪われた。そこに宿った幻神の力が奪われた箇所を構成、人知を越える力を得た戦士。
通常時は常人の二倍(敵雑魚を蹴散らす程度)、変身後はさらに数倍の力(幹部等と戦闘可能)を発揮。
「幻神天装!」の声と共に、幻神の姿とKV(AU−KV)をミックスした装甲『幻装天鎧(ゲンソウテンガイ)』を瞬着。
幻神(地球に伝承される幻獣や神)は和洋問わず。
奪われた箇所は身体のパーツのうちどこか一つ。武器は基本的に奪われた箇所に準拠する物を考案。
『奪われた部位』『幻神の姿や能力』『武器と必殺技』の三つがリンクしているのが理想。
オーラ、及び幻装天鎧の色は個体毎に異なる。
【バグアバグ】
突如として地球に現れた悪の組織。
謎の生命体キマイラを操り地球の征服をもくろむ。
侵略の目的は稀少エネルギー『オーララウズ』を得るため。幹部クラスはオーララウズを結晶化する技術を有している。
オーララウズは様々な場所や物に、時には人体にも宿っている。結晶化したものは『ラウズライト』と呼ぶ。
幹部は人型。衣装+悪役メイク。地球では時間的活動限界がある。
キマイラは獣人型(トラキマイラ、サメキマイラ等)。着ぐるみ着用。少量のラウズライトを含む象徴武器を持ち、それを破壊されると死に至る。
敵雑魚はキメラ(TV版ではCG)
★各詳細は前作までのOP末資料参照。
【第四話】
・最終話までに伏線回収する事を含め、今後を盛り上げていく展開を考慮した動き
・ラウズブレイバーは個々及びチームのパワーアップ。全員での決めポーズ時の名乗りを盛り込む。
(KV☆の時は『正義の翼で悪を討つ! 地球戦隊・KV☆STAR!』でした)
・バグアバグは前回から引き続き個々の動き+拉致した紅狗の利用法及び全生命の再生に向けての準備等
●リプレイ本文
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フェリアスはダイエットボールの上で手足をばたつかせている。
「消されるなこの痒みッ!忘れるなこの怨みッ! て、ぎゃー!」
落ちた拍子にがつりと、床に歯が転がる。前回抜けた虫歯の下から生えてきた永久歯。痒みの元である。
「ム? 何か痒みが消えた? 怨みって何?」
この惑星の、ダイエットボールには、ちゃんと乗りましょう
〜暗黒闘士FERIAS〜
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地球軍基地内の道場には一人修練用の槍を振る時定の姿があった。
「もっと、もっと鋭く! 速く!!」
腕時計型通信機が召集の合図を告げ、時定は指令室へと向かう。
指令室の扉の先には先に着いたアイナがいた。
「来たな。我々はこれより橘軍曹の救出に向かう」
言ったのは多聞だった。軍服を着崩した姿は変わらないが雰囲気が違う。まるで酔っている様子はないのだ。見ればあんなに散らばっていた酒瓶も綺麗に片づいている。
三人は先に敗戦を喫した場所へ向かった。
「我々って、隊長は──」
時定ににやりと笑み、多聞は腕に填めた制御装置を見せる。
「これはあのちっこい幹部の落とした破片から作った幻神の制御装置だ。こいつがあれば俺も自分の幻神をコントロールできる──幻神天装!」
驚く二人の前で多聞の肝臓から濃緑のオーラが発する。八頭竜の姿が輝き、雷電に竜の鱗を持つ装甲が彼を包む。
多聞はヤマタノオロチを宿したオロチラウザーだった。これまで酒浸りだったのは大きすぎるオロチの力を抑えるためだったのだ。
「三人の幻神の力をぶつけりゃ、前にここに開いたゲートをこじ開けられるはずだ」
「入口さえ開けば、私の宇宙艇の亜空間ドライブを利用して作った転送装置で敵の拠点までたどり着けるはず」
ヴァティは二人を振り向く。
「今の戦力では、奴らに勝てない‥‥だが、ラウザーは心の力で強くなれる‥‥それを忘れるんじゃないよ!」
頷き合う三人は幻神の力を高める。立ち昇った三色のオーラが絡み合い、閉じられた空間に衝突し輝きを散らした。
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「前回はよくもケルナグールしてくれたですな! お陰で虫歯が取れてありがとうございました」
邪悪な笑みを浮かべフェリアスは謎の小瓶を持って磔にされた紅狗に迫る。
「という訳で、お礼代わりに食らうがいい! このミズムシナールを!」
「おい、やめろ、俺の足に何をぐあぁぁあああああッ」
「‥‥あ、これ水虫殲滅薬だった」
「楽しそうだね」
いつからそこにいたのか、声と同時に白を基調としたスーツの男が姿を見せる。
「こんにちは、紅の狗。フェリアスの実験はどうだった?」
「お前は──?」
「僕のことは気にしなくていいよ。それより、君はべリアに興味があるみたいだね」
バグはゆっくりと回り込むように紅狗へ近づく。
「彼は姉を蘇生させる為に、バグアバグに協力しているんだよ。誰だって大切な人を失いたくないからね」
「全生命の再生、ってヤツか」
「約束は守るよ‥‥でも、彼は何度でも僕達に協力してくれるよ。大切な者を失う度に、何度でも‥‥ね」
笑みを含んだ声で告げ、気配を感じたバグはすっと身を引く。
「‥‥もう『君』と会うことはないと思うけど、もし会うことできたら。僕の名前を教えるよ」
バグが消えた後に現れたのは青燈だった。
「──っ、ベリア!」
「あがいても無駄だ。お前の幻神はここにいるのだからな」
青燈の手にある大きな水晶柱の中に、紅く半透明なライラプスの姿があった。
「これが幻神‥‥早速、雄か雌か見分ける為に服従のポーズをさせねば!」
言って水晶柱に飛びつくフェリアスにそれを手渡し青燈は、驚き自身の幻神を見つめる紅狗に近づく。
「アールマティのラウズライト‥‥姉さんの残した抱擁の力だ」
映し出された石に被せて幻界戦争の様子へと切り替わる。
「幻神達が司る幻界を護るための戦いで姉さんは犠牲になった。お前達人間の信仰心が薄れ力の弱まった幻神は俺達を捨駒にした‥‥!」
共に戦った双子の姉・亜夢が最後の力を振り絞り自らに宿る幻神アールマティの力──あらゆる力の吸収と鎮静の力をラウズライトへ結晶化させ青燈に託し息絶える。
遺されたその微笑みが、彼女を護れなかった自責の念となって今も青燈の胸を刺す。
彼が首から提げた石は、青燈の姉が今際に残したものだった。
「それじゃあ、あんたは──」
「そうだ、俺は幻界人。この世界の人間じゃない」
突如知らされた事実に戸惑いながらも、紅狗は真っ直ぐに青燈を見つめた。
「目を覚ましてくれよ隊長! そんなやり方で生き返らせるなんてこと、あんたの姉さんが本当に望んでるってのかよッ!」
「‥‥ッ、黙れ! 貴様にとやかく言われる筋合い等無いわ!!」
瞳に浮かぶ迷いを振り払うように紅狗に背を向けた。
「ラドル、後は好きにするといい」
「言われずとも、首領殿のご命令ですからネ。精一杯努めさせていただきますヨ」
闇から滲み出すように、白黒の道化装束が姿を現す。
ラドルが翳した手に紅狗は抵抗する間も無く意識を失い、彼の手によって連れ去られる。
「許せ、橘‥‥」
青燈の呟きを聞き、その涙を目にするものは誰もいなかった。
『ラドル、皆に戦闘準備を。ゲートが開くよ』
どこからともなく響くバグの声。ラドルはすぐには動かず目を伏せる。
その脳裏に浮かぶのは自らが洗脳を手がけた者達の姿──。『正義のため』と他者の自我を奪う。それは果たして正義と言えるのだろうか。
「‥‥今更、後悔なんてしませんヨ」
たとえラウザー達に彼らの『正義』があるとしても。
「たとえ地獄に落ちようと、ネ」
●
通路にひしめくキメラを薙ぎオーディが突き進む。
「雑魚に用はねぇ、紅狗はどこだ!?」
「にゃにゃっ、性懲りも無く追ってきたの?」
通路の先に現れたのはドリレオンだ。背に乗ったフェリアスが言う。
「行けドリレオン!」
駆けるドリレオンの前にオロチが立ちはだかる。
「前は俺の部下達を可愛がってもらったからな。お返しさせてもらうぜぇ」
手に握られた直刀は天叢雲剣。駆け寄り振り降ろされたそれをドリレオンは猫科のしなやかさで素早くかわす。空を切り地面を打った剣が、オロチの剛力により地を抉り礫を散らした。
「ほう! まさか、こんな隠し玉があったとは‥‥」
闘争本能を疼かせる相手の発見に喜びを滲ませた声にオーディが振り向く。
「ラドル!」
「だが、私の相手は‥‥やはり貴方にお願いしますヨ!」
身の内を焦がす焦燥の大きな原因──オーディとの決着をつけるべく、肌は黒く染まり黒い甲冑に身を包んだ戦闘形態へと移行する。爛々と輝く赤い双眸があざ笑うように光る。
「今回は、不本意だが助っ人もいてな」
「この感じ‥‥危ない!」
ヴァティの声に後ろへ跳んだオーディの胸を赤い拳がかすめる。
ダークレッドのパイドロスを象った装甲に包まれた戦士だった。
「いいぜ、纏めて相手してやる」
グングニルの矛先を向けたオーディに向けたヴァティとベリアの声が重なる。
「待って! それは──」
「いいのか? そいつは橘だぞ」
驚くオーディにパイドロスの戦士が言う。
「のこのこやってくるとは、勇敢さだけは一人前らしい」
その声は紛れも無く紅狗のものだ。
「オーディを殺せ」
ベリアの声と同時に紅狗は地を蹴り、ラドルと共にオーディへ襲いかかる。それをオーディは正面から迎え討つ。
「今、正気に戻してやる」
一対二は不利と加勢しようとするヴァティの先で火球が炸裂する。放ったのはナイアだ。
「邪魔をするな!」
ホログラムの女と同じ顔を持つナイアに、思い出せない過去への苛立ちを怒りとしてぶつける。アイナと仲良さげに映っている、その女の顔が鏡の仮面の下に──。
「お前と戦うタメニ自ら仮面をかぶるさっ」
双剣フォーマルハウトとアルビレオを振りかざしてアイナに向かう。
ドリレオンは攻撃を避けながらドリルを繰り出していくが、次第にオロチのパワーに押されていく。
「くっ、バニシングドリル!」
鬣のドリルを全て一体化させた巨大なドリルが猛速でオロチに迫る。
待ち受けるオロチは剣にオーラをつぎ込む。蓄積された力が限界に達し目映い光を放つと同時にそれをドリルに叩きつける。
「剛断撃!!」
壮絶な破壊力がドリレオンのドリルを弾き返す。
「馬鹿な! この自分を上回るなんて」
狼狽するドリレオンに入れ替わりベリアがオロチに斬りかかる。
「よぉ飲んだくれオヤジ。こないだの軍法会議以来だな」
「祠堂‥‥お前紅狗を──!」
「黙れ!」
オロチの力に対し自身の速度を生かして息もつかせぬ連撃を浴びせる。
オーディもまた、元来の速さに腕力まで強化された紅狗と甲冑のブーストによるトリッキーな攻撃を繰り出すラドルに防戦一方だ。
圧倒的不利の中にあってオーディの戦意は失われていない。
「まだだ、まだ狙い時じゃねぇ‥‥」
その間に傷ついたドリレオンは強固な鱗を持つトカゲキマイラを鷲掴みにする。
「ドリルは不死身なんだ、こんな所でやられる訳には‥‥貴様と融合して──」
トカゲキマイラの悲鳴が響き渡った。ドリレオンの身体から発した光に、象徴武器である鱗鎧を奪われたのだ。
「これでまたひとつ完全な生命に近づいた」
パワーアップと回復を済ませたドリレオンを紅狗が捕まえる。
「おいドリル、こっち来い。貴様の使い方を教えてやる」
紅狗はドリルを抱えてオーディに迫る。その間にドリレオンはバニシングドリルを発動させた。
「貴様の神もこれで終わりだ!」
「ぐああぁっ!」
ドリレオンのドリルと鱗鎧がグングニルを弾きオーディを吹き飛ばす。壁に打ちつけられたオーディは槍を地に突き立て辛うじて立ち上がる。
影から戦況を見守っていたフェリアスが飛び出しドリレオンを褒めそやす。
「よくやったドリレオン!ほーれネコジャラシ+マタタビ+喉ごーろごーろ」
「ごろごろ、撫でさせてやってるだけなんだからね」
そう言いつつも顎を上げて懐きモードのドリレオンを撫でていたフェリアスがふと気づく。
「‥‥喉にはカタイ鱗ないのですな? なんで?」
「なるほどな、そこかぁっ!」
オロチが剛剣で弾き飛ばしたベリアの左剣がドリレオンの喉に突き刺さる。
「ぎにゃっ!?」
「ピーンチ! 撤収ッ」
苦しみ動けないドリレオンの身体を小柄なフェリアスがひょいとかつぎ上げ走り去る。
オーディは一瞬の隙をついて槍を投じた。ラドルがそれを払っている間に一気に紅狗との距離を詰める。
「んのバカ野郎が!さっさと目ぇ覚ませええ!!」
拳で紅狗を殴りつけ、この時の為にずっと溜めていた力を一気に解放する。
刹那、紅狗の中にライラプスの声が響く。
(お前は、それでいいのか。全てを忘れ、身を獣とし、欲望のままに戦う。それが本当にお前のすべきことなのか?)
オーディのオーラに呼応するように飛来した紅いオーラが装甲を包み破砕する。赤のオーラは紅狗の身体をライラプスの幻装天鎧で包んだ。
「‥‥すまねぇ、おかげで目が覚めたぜ」
ライラの姿にラドルとベリアが驚く。
「馬鹿な! 私の洗脳がそう簡単に解けるなど‥‥!」「幻神が人の意思に応える筈が──!」
「さぁ、これで三対二だぜぇ?」
オロチの声を合図に、ライラとオーディも反撃に転じる。
●
ライラの復帰を安堵しながらも、ヴァティはナイアを相手に苦戦していた。
「ワタシの望みはオマエをタオスこと‥‥」
ナイアの奥底に残された、アイナへの憎しみ──。
ホログラフの二人のように二対の剣に感情を込めてアイナにぶつける。
尽きることなく思えるその体力に押され始めたヴァティは天へ腕を伸ばす。
「天翔る光の矢よ!」
飛来した光球はこれまでも彼女を救ってきた仲間の魂。それを解析したシャクティナックルは銃へと変化する。
「ヴァティラウザー目標を狙い撃つ!」
トレースした恵比須天の武器シャクティブラスターを向けた先、ナイアは双剣から無数の火弾を放つ。
「喰らえ、烈光弾!」
光の誘導弾連射が火弾を全て相殺し、その爆発を抜けて飛び出したアイナがナイアに肉迫する。
同じくオーディも、幻神の宿る右腕が光を放つ。
「こいつは‥‥そうか、オーディン。負けっぱなしじゃお互いいられねぇよな」
オーディンの持つ人知を越えた力が右腕から全身へと広がっていく。
「ヴォータンモード、ファースト・ブレイク! いくぞ、ラドル!! 神速ってやつを見せてやる!!」
重鎧の装甲が弾け飛び軽鎧へ変化したオーディの幻装天鎧全面に守りを司るルーン文字が銀色に浮かび上がる。
「く──何だと‥‥!?」
怒濤の連続攻撃にラドルは押されていく。軽量化でより速度を増したオーディの速度が、ラドルのブーストの速度を僅かに上回っているのだ。
「グングニルよ、我が腕となりて奴を穿て!」
渾身の力を込めて突き出された槍がラドルの装甲の一部を砕き、ラドルは爆発と共に後方へ吹き飛んだ。
「我が槍に貫けぬものなし!」
ベリアもオロチに続くライラとの連戦で窮地に追い込まれていた。
爆発で吹き飛ばされ、動けないナイアにマイティモードに戻ったヴァティが拳をくり出す。
「私の魂よ燃えろ! 閃光拳!」
ナイアにヒットする直前、拳が止まった。
「どうしたの私‥‥」
マスクの下、アイナの頬を涙が伝う。
ナイアの中にラドルの声が響く。
『嫉妬、劣等感、憎しみ──あの女への好意はすべて貴女が自分の醜さを隠そうとするためのものでしかない』
アイナと過ごした記憶が全て、黒い感情で塗りつぶされていく。
『貴女が解放されるには、あの女を消すしか無いのですヨ』
ヴァティのマスクに映る自身の美しい顔。その下に隠された嫉妬に駆られた醜い心が顔を歪める。
「嫌あぁぁ!」
ナイアが手で顔を隠した刹那、ヴァティに黒い閃光拳が直撃する。
ラドルとベリアの周囲にも雷渦が立ち昇りラウズブレイバーを遠ざける。
「貴方とは、はじめましてだね。荒ぶる八岐の大蛇」
穏やかな声と共に、白いスーツの男が姿を見せた。足下からゆっくりと、それまで明かされていなかった顔までが映し出される。
「紅の狗また会ったね。黒の騎士、白の亡霊、彼らのおかげかな?」
地球人と変わらない若い青年のように見える。が、笑顔を張り付けたような表情はともすれば仮面にすら思えた。
「でも、約束は約束だ。僕はバグ。バグアバグの首領だ」
バグが名乗り、ラウズブレイバー全員が身構えた所で画面はブラックアウトする。
黒木時定(オーディ)/如月(
ga4636)
アイナ(ヴァティ)/鬼道・麗那(
gb1939)
橘紅狗(ライラ)/フーノ・タチバナ(
gb8011)
原嶋多聞/桂木穣治(
gb5595)
フェリアス/フェリア(
ga9011)
ラドル/ドッグ・ラブラード(
gb2486)
ドリレオン/白蓮(
gb8102)
ヴァーミリオン・ナイア/伊達 士(
gb8462)
祠堂青燈(ベリア)/CHAOS(
gb9428)
バグ トカゲキマイラ(二役)/日下部 司(
gc0551)
亜夢/小野路 綾音(gz0247)