●オープニング本文
前回のリプレイを見る●
――日本某所、『イツメパイユ』会議室。
「『幻装戦隊◆ラウズブレイバー』シリーズ初回放送は、目標視聴率も達成、各スポンサーからもいい反応が返ってきてる」
資料片手にスタッフへ説明するのは、パンツスーツの似合う凛々しい雰囲気の若い女性だ。
彼女は真壁秋良。『地球戦隊・KV☆STAR』の原案・及びプロジェクトマネージャーとして、弱小イベント会社に成り下がっていたイツメパイユを再び盛り立てた功労者の一人である。
そして今は、テレビシリーズとしてスタートした新たなヒーロー『幻装戦隊◆ラウズブレイバー』のプロジェクトマネージャーを務めているのだ。
「既に関連商品の企画も玩具メーカーから上がってきている。良い作品を作れば、自ずと人気はついてくる! 第二回も気を抜かずしっかりやろう!」
「はいっ!」
スタッフ達もやる気に満ちた返事を返し、各自第二回放送分の撮影に向けての準備に取り掛かった。
●
――ラスト・ホープ、UPC本部。
薄暗い会議室内に『幻装戦隊◆ラウズブレイバー』のテーマ曲が流れ、スクリーンにタイトルロゴが映し出される。
『地球軍特殊部隊として初めての戦いは、何とか勝利を収める事ができた』
三色のオーラが生み出したラウズリングを、三人のラウザーが握る。眩い輝きと共に生み出された巨大剣・ブレイソードがモグドリルを討ち砕いた。
爆発の後に暗転する画面。光を背に立つ大首領バグの姿に、幹部達のカットイン。
『何故オーララウズを集めるのか。どれだけの力を持っているのか。バグアバグの全貌は未だ謎に包まれている。しかし――』
闇の中に、機械のものと思しき光の明滅。その光に浮かび上がる、サルビアブルーのドレスにコートを羽織った少女の姿があった。
「‥‥中間管理職は、残業代が出ない‥‥めしょり」
ダイエットボールの上にだらりとうつぶせになっていた彼女は、機械のブザーに跳ね起きた。
「データ収集完了! ‥‥ラウザー同士も互いの特性や能力をつかめていない――? 連携も取れておらずバラバラですか」
闇に浮かび上がるデータ画像に手をかざし次々と切り替えていく。
「戦闘前に時間外でデータ収集機器を設置した甲斐があるというわけで! 今度こそは我々が勝利してみせるッ」
ぐっと両拳を握り締めた彼女から視点が引いていく。透明な巨大カプセル内に満たされた液の中、差し込む僅かな光をドリルの先端が反射した。
『ラウザー達の弱点を突くべく、バグアバグは次なる作戦を用意していた。未だ結束しきれずにいるラウザー達は、果たして‥‥』
司令室で言い合うラウズブレイバーの様子がフェードアウトしていく。
会議室内が再び明るくなり、スクリーンの横に立っているオペレーター・小野路 綾音(gz0247)の声が告げる。
「‥‥というわけでぇ。以上がACT.2の冒頭で流れる映像となります〜。前回、枠内に入りきらなかった分を、少しこちらに持ってきたらしいですねぇ」
綾音は手元の資料をめくる。
「えぇと〜、前回は主演メンバーの紹介的面もあったのですが〜。今回はラウズブレイバーの面々の『友情』を主軸に展開してほしいということでした〜」
団結力の弱さ等、ラウズブレイバーの弱点ををついてくるバグアバグ。それを前提にヒーロー達の友情を描いていきたいという方針である。
「展開によってはバグアバグチームの登場が少なくなるかもしれませんが〜。ACT.3はバグアバグ寄りのストーリーになるそうですので〜。ではでは、今回も成功めざして頑張っていきましょ〜」
いまいち気合の入らない声で、シリーズ第二話の打ち合わせがスタートした。
●
【幻装戦隊◆ラウズブレイバー】
地球軍所属特殊部隊。普段は軍服着用。
敵組織により、体内に『オーララウズ』を宿した箇所を奪われた。そこに宿った幻神の力が奪われた箇所を構成、人知を越える力を得た戦士。
通常時は常人の二倍(敵雑魚を蹴散らす程度)、変身後はさらに数倍の力(幹部等と戦闘可能)を発揮。
「幻神天装!」の声と共に、幻神の姿とKV(AU−KV)をミックスした装甲『幻装天鎧(ゲンソウテンガイ)』を瞬着。
幻神(地球に伝承される幻獣や神)は和洋問わず。
奪われた箇所は身体のパーツのうちどこか一つ。武器は基本的に奪われた箇所に準拠する物を考案。
『奪われた部位』『幻神の姿や能力』『武器と必殺技』の三つがリンクしているのが理想。
オーラ、及び幻装天鎧の色は個体毎に異なる。
・最終武器ラウズリング
ラウズライトをはめ込んだ直径50cm程のリング。
ラウザー達の呼びかけに降臨し、皆で握り幻神の力を共鳴させると巨大武器へと姿を変える。
顕現済:『ラウザーマグナム』『ブレイソード』
・登場済(変身登場順)
ライララウザー(ライラプス・赤)/橘 紅狗(少尉)
ラジエルラウザー(ラジエル・橙)/天野 鈴奈
ヘルフィラウザー(ヘルフィヨトル・緑)/碧川 霧
ヴァティラウザー(サラスヴァティ・白)/アイナ
オーディラウザー(オーディン・黒)/黒木 時定(中尉)
ベリアラウザー(ベリアル・青)/祠堂 青燈<敵側ラウザー>
・統括隊長:原嶋 多聞(少佐)
【バグアバグ】
突如として地球に現れた悪の組織。
謎の生命体キマイラを操り地球の征服をもくろむ。
侵略の目的は稀少エネルギー『オーララウズ』を得るため。幹部クラスはオーララウズを結晶化する技術を有している。
オーララウズは様々な場所や物に、時には人体にも宿っている。結晶化したものは『ラウズライト』と呼ぶ。
幹部は人型。衣装+悪役メイク。地球では時間的活動限界がある。
キマイラは獣人型(トラキマイラ、サメキマイラ等)。着ぐるみ着用。
敵雑魚はキメラ(TV版ではCG)
・登場済幹部(登場順)
大首領バグ<ボス>
ヴァーミリオン・ナイア<幹部>
ラドル<幹部>
醒凰鬼イスフェネクス<幹部>
暗黒闘士フェリアス<幹部>
・故キマイラ
モグドリル
【その他の役】
・キマイラ(スーツアクター)
・未登場幻神の精神体(ラウザー達のサポートキャラクター)
など。
上記は案であり、それ以外も可。
【第二話】
・ラウズブレイバー達の友情を主軸にした物語
・バグアバグはラウズブレイバーの団結力不足(付随して個々の弱点も可)を突いた作戦で攻撃
●リプレイ本文
●
光と闇が満ちる空間で、バグを前にフェリアスが報告をしている。
「敵の弱点を踏まえた上で、今回は『ベリア×ライラ』『ラドル×オーディ』『ナイア×ヴァティ』で勝負をかけるのがいいと思います! あ、×の前後ですが、私としては逆でも」
彼女の発言は暗転に遮られ、白抜きの文字が表示された。
この惑星での、フェリアスの減俸は、早い
〜暗黒闘志FERIAS〜
●
──地球軍基地内、ラウズブレイバー司令室。
「毎度毎度しつけぇなぁ、あの野郎め‥‥」
開いた自動扉内に逃げ込んだ時定を、多聞の豪快な笑いが迎える。
「何だ、また改造軍服の件でお偉いさんに追い回されてたのか?」
「完全にブラックリスト扱いだぜ」
二人が話している間も、紅狗一人表情が険しい。
「たいちょ――ベリア、何故バグアバグなんかと。ちっ、わけ分かんねぇ」
「紅狗、割り切れよ。今の祠堂は敵だ、ためらいは命取りだぜ?」
「うるせぇ!」
声を掛けた時定に紅狗が怒鳴る。一触即発の空気が流れた刹那、バグアバグの出現を知らせるアラームが鳴り響いた。
「‥‥けっ、出動かよ」
荒れている紅狗の肩に宥めるように手を置き、多聞は彼と時定を交互に見た。
「アイナとはおそらく現場で合流できるだろう。行ってこい!」
出動する二人を見送り一人になった司令室で、多聞は微笑んだ。
「あのくらいの言い合いくらいで仲裁なんかしねえさ‥‥お互いに遠慮なく何でも言える関係になってもらいたいからな。‥‥腹の中に全部溜込んでいるよりは言い合った方がいいんだよ、人間てのはな」
多聞の声を聞くのは、自身の内に宿る存在。それはまだ、秘められたまま──。
●
市街地で民間人を避難させる地球軍の防衛ラインを襲うキメラの群に、幻装天鎧を纏った戦士二人が飛び込んだ。
「悪を見つけりゃ捕らえて砕く。ライララウザー、参上!」
「手にする槍は神の正義、オーディラウザー推参!」
北欧の戦神オーディンを彷彿とさせる全身鎧と破曉を融合させた黒い装甲のオーディが、神槍グングニルで大きく敵を薙払う。
「それ以上民間人には近寄らせん!」
一方で、リンドヴルムにアヌビスの頭部を冠した赤い装甲のライラは、単身敵陣深く切り込んでいく。
「俺一人で蹴散らしてやる!」
爪先から脛までを覆うグリーヴ・ライラキッカーを主軸に戦うが鰐の鱗を持つ豹のキメラ達は素早く、思うようにヒットしない。
「にゃ〜ははは〜!」
突然甲高い高笑いが響き渡った。
キメラ達の背後から現れたのは、銀のボンテージに身を包んだ黒猫女だ。長い尾を鞭のように振るい地面をぴしりと打つ。
「にゃははは〜、あちきは冥土キャット。文字通り冥土送りにゃー! にゃっ!?」
眼前に飛来した物を、キャットは鞭で叩き落とす。それはトランプ手裏剣だった。
「幻神天装!」
アイナの頭部から放たれた白い光は、一瞬サラスヴァティを象った。そのオーラが背光を思わせるリングを背負う白いミカエルの装甲へ変じる。
「輝く白は素敵に無敵、愛の女神ヴァティラウザー!」
ヴァティが合流したその時、ライラはキメラの群を跳び抜けて駆け出す。
「ベリア、そこを動くな!」
「バカ野郎! バラけたらこの間の二の舞だぞ!? ‥‥くそっ、勝手にしろ!」
オーディの制止も聞かず駆け去るライラに吐き捨てた直後、モノトーンの道化服にピエロの化粧を施した男──ラドルが姿を見せた。
「ようこそいらっしゃいました。ラウザー殿。ですが‥‥今日はこの娘を処理しなくてはいけないので‥‥失礼しますヨ」
意識を失っている少女がナイフを突きつけられているのを見て、オーディはたまらず駆け寄る。
「その手を離せ!」
「いやいや、貴方も素直な人ですねぇ。では‥‥お付き合い願いますよ‥‥」
後ろに跳び退り、ライラ、ヴァティと充分に引き離す。いつの間にかその手から少女の姿は消えていた。
振り向いたラドルは闇の衣に包まれ、その身すらも黒く染めていく。
各所にブースターを備えた黒い甲冑包まれた全身の中、眼と口だけが爛々と赤く輝いている。
「ラドルって言ったか? かなり出来そうじゃないか」
言いながら槍を構え地を蹴る。ブースターで加速したラドルの拳を柄で受け止め、弾きとばして槍の間合いに放り込み放った一閃。それをラドルは跳躍しかわす。
「そう、この感じだ。強い奴とやり合うのはだからこそ楽しい。久々に燃えてきた‥‥!!」
拳と槍の応酬の中オーディの声には喜びすら滲む。力を惜しまず注ぎ込んだ連撃を受けながらラドルが言う。
「人間にしておくのが惜しいな‥‥ここで貴様の魂を葬り、肉体は利用させて貰うぞ!」
同じ頃、ライラと対峙するのは三対の堕天の翼を背にアンジェリカカラーのディアブロ装甲を纏ったベリアラウザーだ。
「くそっ」
ライラは攻撃を何とかかわしながら蹴りを打ち込むが、背の翼で飛翔するベリアに悉く避けられてしまう。
「お前達、特殊部隊として動いているそうだな‥‥馬鹿共の大将は相当の馬鹿にしか務まらない。まさか、あの飲んだくれ将校か?」
「あんたにあの人を悪く言う資格があんのかよ!」
怒りに任せて放った蹴りはまたもや空を切った。
●
一人残されたヴァティを前に、キャットは高笑い。
「にゃはは! 作戦通りにゃ〜、ナイア様!」
キャットの背後から現れたのはブラックレザーのスーツに紅のロングマフラーを靡かせたヴァーミリオン・ナイア。彼女の傍らには白手袋を填めたトカゲキマイラが執事のように付き従っている。
ナイアのミラーマスクに映り込んだヴァティが数歩進み出た。
「やっと骨のある相手のお出ましね‥‥アンタ、この女を知らないか?」
空中に映し出されたホログラムは一人の女性だ。わずか視線を送り、ナイアは笑みを含んだ声を返す。
「お前に答える必要は、ない。な?」
「ナイア様、そいつと戯れるのはお止めににゃった方が」
遮るように前へでたキャットは頭部のネコ耳を動かす。
「さぁ、心の闇をあちきに聴かせるにゃ‥‥そしてそれがお前を襲うのにゃー!」
見開かれたネコの瞳を見たヴァティは膝をついた。
脳裏に浮かぶのは、今と同じく膝を屈して見た光景。しかしそこは地球ではなく。傷つき崩れ落ちた自らの周囲に倒れ伏した仲間達。誰一人立ち上がる事はなく、ヴァティは胸に渦巻く感情を声に乗せ叫んだ。
「うあああぁぁっ!」
「にゃっ!?」
その衝撃派で、キャットの見せていた幻影が途絶えた。しかしヴァティの怒りは消えない。
「記憶を失おうと、お前達の罪は忘れない! ラウザー『7』の仲間達の無念、思い知れぇっ」
「返り討ちにしてくれる」
ナイアは両拳のクローから火炎弾を放った瞬間、ヴァティのシャクティナックルがナイアのクローへと姿を変えた。
「この程度!」
放った火炎弾が、ナイアのそれをも巻き込みナイアへと向かう。とっさにナイアを庇ったのはトカゲキマイラだった。
「お前が技を写し取るのは承知済みだ。いくらでも対応できる‥‥フォーマルハウト!」
炎に包まれたトカゲキマイラが倒れたその向こうに、ナイアが星の名を冠した剣を一閃する姿が見えた時にはもう遅い。
「くっ!」
剣から放たれたフレア弾を正面から食らったヴァティが後方に吹き飛んだ。
●
劣勢に追い込まれ片膝をついたライラはベリアの言葉を一笑に伏した。
「ハッ、俺がバグアバグに協力? ふざけるな!」
期待通りの答えにベリアは含み笑いを漏らし空中へと舞い上がった。
「なら、今の仲間を助太刀しなくてどうする?」
飛び去ったベリアを睨み付けたが、彼の言葉にライラは仲間を捜し振り返った。真っ先に視界に飛び込んできたのは、立ち上がるのもやっとの様子のアイナだった。
幻神との同調が高い分肉体への負担も大きい。体力の限界によって幻装天鎧が解除されてしまったのだ。
彼女の前に、ナイアが悠然と歩み寄る。
「先ほど、何かを尋ねたな。その答えは‥‥く‥‥っ!?」
突如苦しみ、機械人形の如き動きでミラーマスクを押さえる。
「知ってい‥‥『シ・ラ・ナ・イ』‥‥シラン!!」
彼女自身の声に重なる歪んだ声。傍らにいたキャットはうろたえ振り返る。
「ラ、ラドル様っ!」
それに気づいたラドルが怒声を発した。
「ナイア、何をしている! 早くとどめをさすのだ!」
その隙をついてオーディはラドルから離れ駆け出した。
「ヴァティ!?くそっ、間にあってくれよ!」
ラドルの声でマスクから手を離したナイアは元の彼女に戻っていた。
「‥‥ヴァティラウザーの、最期‥‥だ‥‥?!」
振り上げた剣は、グリーヴが生み出す俊足で駆け寄ったライラのキックで弾き飛ばされ、オーディの投じた槍の衝撃がナイアを退らせる。
「手間かけさせるなッ! ‥‥ほら、立てよ」
怒鳴ってしまった手前罰が悪そうにしながらも、ライラは手を差し伸べる。
「その、悪かったな。ここからは、俺達全員で戦うんだ」
「余計な事を」
言葉とは裏腹に、手を取るアイナの顔には笑みがあった。その時、天から降り注いだ謎の光がアイナを包んだ。
「貴方達‥‥」
その光は仲間の魂だった。光が彼女を癒し、再びサラスヴァティの力をその身に纏った彼女にオーディが言う。
「さて、そろそろやり返そうぜ?」
「ええ。お遊びはここまでよ!」
頷くヴァティに続いてライラもバグアバグに言い放つ。
「今からてめぇらをぶっ飛ばしてやるぜ。運命は、俺達を、導いている!」
「おにょれ、三人纏めてあちきの幻覚で──め、眼が〜!?」
見開いた双眸にまばゆい光が飛び込んだ。光の中心にあるラウズリングを三つの手が掴み、三人の声が同時に響いた。
「ラウズユニゾン!」
その光に圧倒されながらも、ラドルは三人に向かって駆けた。
「最終武器が発動する前に、討つ!」
「遅いっ!」
オーディの声と共に、集束した光が宿る槍が神速で突き出された。
オーディは黒い甲冑を貫いた槍を振り上げ、ラドルを上空へ放り投げた。
「くっ、この光は‥‥!?」
ブーストで逃れようにも、荒れ狂う光の風が身体を包み逃れられない。上昇した先に待ち受けていたのは、上空に跳び上がったライラ。
「行くぜ!」
踵落としにグリーヴを叩きつけられ急降下するラドルを待ち受けるのはヴァティだ。
「十字を切って己の罪を悔いなさい。ラウズハリケーン!」
彼女の閃光拳がラドルを撃ち抜き、吹き飛んだラドルは眼を押さえて苦しむキャットにぶつかり爆発が巻き起こる。
三人の協力技ラウズハリケーンの爆煙が消えた後には、キマイラの命とも言うべき象徴武器である尻尾鞭を破壊されたキャットが倒れていた。
「猫に九生あり、猫を殺せば七代祟るにゃ〜‥‥ここで死んでにゃるものか」
がくりと息絶えるキャットを背に、ヴァティが投げキスをする。
「私に惚れたら火傷するよ」
「次はお前か!?」
ライラが指さした先、ナイアの隣には道化装束に戻ったラドルの姿があった。キャットに直撃する寸前に甲冑をパージし脱出したのだ。
「小癪な‥‥! 仲良く首を洗っておきなさい!」
ラドルは生み出した闇に呑まれるようにしてナイアと姿を消した。
「そうだ、あの少女は──大丈夫か!?」
オーディがラドルに囚われていた少女を見つけ駆け寄った瞬間、
「ギャー!」
「なっ!?」
突如少女の両手に現れ振るわれた二振りの国士無双を、グングニルで辛うじて受け止めた。
「ぜぁはぁ、目覚め一発敵の顔とか、わりかし洒落ならんですバイ!」
脱兎の如く距離を取った少女が白いコートを脱ぎ捨てると、下からサルビアブルーのドレスが現れた。
「‥‥テメェか。覚悟はできてんだろうな?」
怒りのオーラを放つオーディを前に、フェリアスはしれっと言う。
「作戦の人質役を買ってでたものの、連日連夜の疲れで熟睡熟睡。それはさておきッ!」
ひらりとオーディを跳び越して、小さな身体に冥土キャットの身体を抱え上げた。
「メイドキャッチフェリキュア♪ とか言いつつ、ぱぱっと回収〜」
瞬時に離脱する逃げ足の早さを上空から眺めていた青橙は、
「‥‥あのキマイラ、どうせなら冥土キャットではなく猫耳メイドにすれば良かったのにな」
一人ぽつりと呟きその場を飛び去った。
●
光と闇が満ちる間で一人瞑想していたバグは立ち上がった。冥土キャットの眼を通じて戦いを観察していたのだ。冥土キャットの視力が奪われた時点でリンクを断った。
「あの人間達がラウズブレイバーか」
どこか楽しげにさえ聞こえる声が響き、バグは天を仰ぐ。脳裏に思い出されるのは激昂するヴァティの姿だった。
「あれにまだ生き残りがいたなんてね。・・・・念のため、ラドルにナイアの調整をしてもらおうか」
バグの命に従いナイアのミラーマスクを直したラドルの姿が去り、
「・・・・バ・・・・グ・・・・ア、イ、ナ・・・・」
残されたナイアの声が闇に消えた。
●
戦いを終え帰還した三人を司令室で迎えたのは、多聞の最上級の笑顔と桜餅と甘酒だった。
「もうすぐひなまつりだし、手製の桜餅だぜえ。疲れたときの甘いものと酒が最高だよなあ」
紅狗は甘酒片手に桜餅をぱくつく。
「この甘酒、甘過ぎなくて美味いな!」
「だろぉ〜? ほら、アイナも食え食え」
「槍使いの腕の速さ、なめんなよ?」
時定の神速の突きが、紅狗が狙っていた最後の一つを奪い去った。
「あ、ちょ、俺の桜餅ぃ〜! 返せ、返せよ‥‥んがっ!?」
涙まで浮かべて時定に掴み掛かる紅狗の口に、アイナが自分の分を突っ込んだ。
「そんなに欲しいならあげる。私は失礼するよ」
そのまま去って行ってしまったアイナだったが、数日後。
「お、見てみろ。アイナの新曲だってよ」
司令室のモニターの一つ、民放につながっているそれを作業着姿の多聞が指す。
『大切な友に贈りたい‥‥「フレンズ」』
「勝手な行動してる奴が友ねぇ‥‥」
愚痴る紅狗の背を、時定が叩く。
「おい、あれ!」
画面の中のアイナは着用を嫌っていた軍服に身を包んでいた。
「まったく、素直じゃねぇよなぁ」
あっけに取られて画面を見つめる二人に言い、多聞は豪快に笑って見せた。
●
黒木時定(オーディ)/如月(
ga4636)
アイナ(ヴァティ)/鬼道・麗那(
gb1939)
橘紅狗(ライラ)/フーノ・タチバナ(
gb8011)
原嶋多聞/桂木穣治(
gb5595)
フェリアス/フェリア(
ga9011)
ラドル/ドッグ・ラブラード(
gb2486)
冥土キャット/白蓮(
gb8102)
ヴァーミリオン・ナイア/伊達 士(
gb8462)
祠堂青燈(ベリア)/CHAOS(
gb9428)
トカゲキマイラ/日下部 司(
gc0551)
アイナが歌うED曲が終わり、地球軍基地廊下に立つ時定が映し出される。
「抽選で三名様に俺の改造軍服のスペアをプレゼントだぜ!」
「黒木、貴様そこへ直れ!」
「あ、やべ」
スペアを手に逃げた時定だったが、現れたのは上官ではなく笑い合う紅狗と多聞だった。
「宛先はここだぜ!」
「次回も観てくれよ」