タイトル:老兵は去らずマスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/25 16:58

●オープニング本文


 私は平穏に最後の時を過ごしていた。
 命のやり取りをする日々から離れ、安穏に‥

 現在の戦争に置いては敵はバクアなる化け物と聞く。こちらも、兵士を「能力者」なる者にし、それと戦っているらしい。
 だが、全ては前線から退いた私には関係ないことだ。
 そう、私は平穏を選んだのだから。

 だが、どうやら世界は私を放っておいてはくれないようだ―――


「ウォルター!!」
「どうした。何を慌てているんだ? アーロン」
「落ち着いて、良く聞いてくれ。‥マイケルの奴が死んだ」
「なんだと‥!? 奴は昨日までぴんぴんしていたじゃないか」
「ああ、そうさ。だが、今朝、森へきこりに出た奴は、死体として戻ってきた。‥連れて行った若造3人と同じようにな。」
「犯人は? まだつかまっていないのか?」
「‥軍の説明じゃ、キメラの仕業だそうだ」
「‥‥分かった。とりあえず帰ってくれ。アーロン」


 ドアを友人の前で閉め、鍵を掛ける。

 ‥野郎ども、私の日常に踏み入るとはな。
 ‥キメラだかカメラだか知らんが、無事に戻れると思うなよ‥

 過去使った兵装全てに弾薬を込める。軽重なりふりかまわずに。
 そして、トラップに使う小道具も全てベルトやバッグに詰め込む。

 友の無念を晴らすために。
 自らの日常を守るために。

 ―――老兵は、今一度、その武器を掲げた。

●参加者一覧

綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
クライブ=ハーグマン(ga8022
56歳・♂・EL
鬼非鬼 ふー(gb3760
14歳・♀・JG
リヒト・ロメリア(gb3852
13歳・♀・CA
冴木 舞奈(gb4568
20歳・♀・FC
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
メシア・ローザリア(gb6467
20歳・♀・GD

●リプレイ本文

●ストラテジック
 森の入り口。ウォルターを救うため、そしてキメラの殲滅のため。8人の傭兵たちが集まっていた。

「まったく現役に任せてほしいものです」

 余計な仕事が増えたとでも言うかのようにため息をつくレールズ(ga5293)に対し、リヒト・ロメリア(gb3852)はウォルターの行動にある程度共感を覚えていた。

「敵を撃ち抜く銃となろう、覆い被さる闇を振り払う剣となろう。それがきっと、ボクの役目」

 そう、心に誓う。


 傭兵たちが取った行動は、4班に手分けしてウォルターを探すことである。

 A班:レールズ、リヒト・ロメリア
 B班:クライブ=ハーグマン(ga8022)、鬼非鬼 ふー(gb3760
 C班:綿貫 衛司(ga0056)、メシア・ローザリア(gb6467
 D班:樋口 舞奈(gb4568)、ウラキ(gb4922

 以上の班分けにすると、傭兵たちはトランシーバーで連絡を取り合いながら、それぞれの方角へと散っていった。


●サウンド・オブ‥‥‥

 3分ほど森の中を進んだところで、D班は銃声を聞いた。舞奈がすぐさま全員に確認を取る。

「発砲した人はいるー?」
「いや、こっちはまだ捜索中です」
「こっちもだ」
「こちらも、まだ何も発見しておりませんわ」

 一気に、全員に緊張が走る。
 この森はウォルターが侵入して以降、警察によって再発を防ぐため厳密な包囲網が敷かれている。そして、それが破られたと言う報告を傭兵たちは聞いていない。と言うことは―――

「ッ!」

 ウラキが全員に方角を伝え、4班に分かれた傭兵たちは一斉に銃声の響いた方角へ集結するように走り出す。銃声が響いたと言うことはウォルターがキメラと交戦状態にあり、救出を急ぐ必要があると誰しもが思ったからだ。
 最初に到着したのは銃声に注意するよう決めていたC班とD班。そこで、キメラがショットガンの横に噛み付いているのを発見した。辺りに人影は‥‥‥ない。

「遅かった‥‥ですか!?」

 全員の脳裏に、最悪の事態が浮かぶ。だが、何にしろ、目の前のキメラを片付けなければ始まらない。
 隠密潜行を発動したウラキのハンドサインを合図に、傭兵たちは一斉に攻撃を仕掛ける。メシアと衛司が弾幕を展開し、正面からのキメラの突撃を迎撃する。怯んだキメラがサイドに回りこんで飛び掛ろうとすれば、舞奈が盾でそれを防ぐ。そして、その一瞬の隙を狙い、今まで隠れていたウラキが必殺の一撃を仕掛けた。

「動く敵を狙うんじゃない‥‥狙うのは、標的の呼吸‥‥その一手先だ」

 その言葉通り、貫通弾を装填し、強弾撃を上乗せした死角よりの一撃が、舞奈の盾によってはじき返され無防備になったキメラの腹部に突き刺さる。大量の血を噴き出し、キメラは絶命した。

「倒しましたね‥‥けど‥‥」

 衛司がキメラの死体とショットガンの残骸を見る。だが、そこで気づく。ショットガンには『殆ど血が付いていない』事。そして、その付近に切れたワイヤーがあること。

「ここには、ウォルターさんは居ませんでした!捜索を続けてください!」

 急いで振り返り、トランシーバーに向けて叫び出す。そう、傭兵たちが聞いた銃声は、キメラがショットガンを使った自動射撃トラップに引っかかった結果だったのだ。
 罠の残骸を、ウラキが観察する。ワイヤーには深緑色と茶色ののペイントが吹き付けられており、それが周りの環境に溶け込むように偽装されていた。

(このトラップは‥‥流石は歴戦の兵‥‥不謹慎だけど、気持ちが高ぶるよ‥‥)


●ムービング・マッチング
 一方その頃。A班、リヒトとレールズは、衛司の連絡を受け、急いで反転しウォルターの探索を再開していた。

「遅れた分は大きいですね‥‥取り戻さないと‥‥ こちらはUPC軍です!生存者がおられましたらこちらに姿を見せてください!」

叫びながらも落ち着いて、二人は周囲を調査する。と、レールズが地面に張り巡らされた深緑色のワイヤーを発見する。

「ここをこうして‥‥これで!」

 レールズは、見事トラップの解除に成功するが‥‥その瞬間、二人の後ろから巨大な丸太が突っ込んできた―――

「やられたね‥‥どうやら前のトラップが解除された瞬間、次のトラップが発動されるようになってたようだね」

 覚醒していたが為に、大したダメージを受けなかったリヒトが頭をさすりながら起き上がる。
 レールズも同様に起き上がる。だが、二人は共に少し元の場所からは吹き飛ばされてしまったようだ。
 と、別所でも轟音が轟く。「キャン!」と言うキメラの鳴き声と共に、2体のキメラが草の上を吹き飛ばされるように飛来し、リヒトとレールズの目の前に落下した。

「まったく、はた迷惑なトラップですね」

 苦笑いを浮かべながら、レールズは呼笛を鳴らしたリヒトと共に戦闘態勢を取る。
 幸か不幸か、呼笛の音は付近にいたB班のふーとクライブと、もう2体のキメラを同時に呼び寄せる結果となる。増援のキメラが飛び出した場所はリヒトの背後で、そのままリヒトに襲い掛かる形となった。

 「まだウォルターさんが見つかってないのに‥‥ここでやられる訳にはいかない!」

 強弾撃を使用し、そのまま脇下から手を回し背後に喰らい付いたキメラを銃撃する。
 コンビを組んでいたレールズは、キメラの注意を引くため駆け寄るが、そこで片足を落とし穴に踏み入れてしまう。だが、その時にとっさに掴んだ物が、ガトリング砲トラップの発動のスイッチとなっていた。
 銃弾が、レールズの頭上を横断し、リヒトに襲い掛かろうとしていたもう一体のキメラに直撃する。SESがなかったためダメージこそ与えられなかった物の、注意を引くのには十分だった。

 「運が良いんでしょうか、悪いんでしょうか‥‥」

 襲い掛かったキメラに対し、紅蓮衝撃とソニックブームを使ったセリアティスを振るう。
 その衝撃波はこちらを向いたキメラの顔面を、正面から両断した。
 丁度同時に、リヒトが背後のキメラを倒した所である。

 残りの2体のキメラは―――

「Get Down!」

 「伏せろ」と言う意味を持つ言葉と共に、ふーが閃光手榴弾を投擲する。
 その閃光により視界を覆われたキメラは、先程トラップに引っかかったことも合わせ恐れを成したのか、逃走を開始する。が、狩人から獲物に変わったと言う状況に、そう簡単には適応できなかった。

 「そう簡単に、撤退させるわけには行かないね」

 クライブとふーは、専門用語を利用した的確な攻撃でキメラの一体を牽制し、追い込んでいく。そして、運が悪いことに、キメラは落とし穴に嵌ったのである。
 そこを見逃す傭兵たちではない。集中攻撃により、4体目のキメラも呆気なく撃破されたのである。
 だが、残りの一体は既に森に逃げ込み、既に見えなくなっていた。A班とB班は、捜索を再開した‥‥


●アサシン・オーバー・アサシン
 探索を継続していたC班は、前方に銃声を聞く。先程一度騙されていたため、今度は慎重に前進した。そこで発見した物は―――既に血まみれになっており、片腕が無くなっていた老人の姿であった。
その前方では、2体のキメラが威嚇の構えを取っている。

「ッ!よくも‥!」

 メシアが、キメラに向け突進する。その気勢に押されたか、キメラはメシアにターゲットを変える。
 同時に綿貫も、ククリナイフを構え、近距離戦の構えを取った。

 ――――勝負は、短時間で終了した。
 既に気勢で押されたキメラが、怒りに燃えた傭兵たちに勝てるはずはなかった。女王の如き形相を浮かべたメシアがキメラを打ちのめし、衛司は、急いでウォルターの傷口の処置に掛かる。

「‥まだ‥‥終わっておらん‥‥後ろに‥‥注意し‥‥」

 処置中にウォルターの微かな台詞を聞き取った衛司が急いで振り向き叫ぼうとした瞬間、草むらから飛び出したキメラがメシアに飛び掛っていた。

「不意打ちとは、中々やってくれますわ!」

 キメラの牙を銃で受け止め、衝撃により後ろから押されながら、メシアはキメラを投げ飛ばす。
 そこへ丁度、D班の舞奈が到着する。舞奈は、突然飛んできた「何か」を、そのまま攻撃した。吹き飛ばされた加速度と舞奈の攻撃により、キメラは絶命する。
 仲間の死を見届けた残り一体は、逃げ出そうとするが――

「隙だらけだ」

 隠密潜行で隠れていたウラキが、走って来たキメラの腹を狙い、狙い済ました一撃を打ち込む――


●エンドゲーム

 合流の路上で最後のキメラを倒したA班、B班と合わせ、傭兵たちはコーヒーなどを飲ませ、ウォルターの体力と意識を維持しながら、森から出て行った。
 事前に舞奈が、トランシーバーで救急車を呼んである。
 それに乗せられたウォルターは、傭兵たちに微笑みかけていた。

「やはり、私も年老いた物だ。これからは、お前さんのような、新時代の兵士たちの時代かも知れんな。」


 後日、傭兵たちはウォルターの見舞いに訪れていた。
 ウォルターは片腕を失っていたものの、優しく傭兵たちを迎えた。
 そこで傭兵たちが救援に遅れたことについて陳謝すると――

「誰のせいでもない。私が自らの力を見誤っただけだ。」

 と、依然としてその微笑みは、曇らなかった。